東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

新潟・山形地震 命を守る「すぐにげて」

 最大震度6強を記録する地震が十八日夜、起きた。新潟、山形、石川の各県沿岸に津波注意報が出され、多くの住民が避難した。地震予知は難しいが、その後の災害には十分に備えて命を守りたい。

 テレビを見ていたら地震速報が入ってきて驚いた人も少なくないのではないか。八年前の東日本大震災を思い出した人もいるだろう。だが、当時とは伝える情報が違っていた。

 発生直後は「震度6強」など震度情報が続いた。次いで「津波注意報」が目立つように。注意報が発令されている海岸線には黄色のラインが付いていた。NHKも民放も同じ黄色を使う。

 東日本大震災までは注意報や警報を示す色が局によって違っていた。今は津波警報は赤、大津波警報は太線の紫に統一されている。局によってだが、テロップも「ただちに避難を」や平仮名で「すぐにげて」と呼び掛けている。

 日本海側は震源が海岸に近く、津波到来までの時間が短い。アナウンサーは繰り返し避難を呼び掛けた。視聴者を守ろうという意気込みが感じられた。できれば多言語で発信してほしい。

 新潟県・粟島は、島民約三百四十人のうち百三十人程度が避難勧告もないうちに高台に避難した。「日ごろの訓練の経験を生かせた」と住民は語っているという。津波は微弱だった。空振りと思わず、「被害がなくてよかった」と考えて帰宅してほしい。

 残念だったのは、避難を促すテレビ画面に、海岸近くで警察や消防の人、中には住民らしい人まで映っていたことだ。

 東日本大震災では多くの警察・消防関係者が避難を呼び掛ける中で犠牲になった。若手を安全な場所に行かせ、危険を承知で残っていたベテラン警察官もいた。

 警察官らがいることが、逆に避難を遅らせるというマイナス面もある。より安全な広報の仕方を考えたい。

 新潟県から北海道までの日本海沿岸は地震が起きやすい「ひずみ集中帯」とされる。政府の地震調査研究推進本部は今後三十年で、震源に近い佐渡島北方沖でM7・8程度が起きる確率は3~6%、秋田県沖でM7・5程度が起きる確率は3%程度としている。警戒を怠ってはならない。

 話題になるのは首都直下地震や南海トラフ地震だが、どこでも大地震が起きる可能性がある。避難訓練がスムーズな避難に役立つ。常の新たな教訓である。

 

この記事を印刷する

AdChoices
ADVERTISING

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】