【格闘技】井岡、“パパ”で4階級制覇!10回TKO 涙の雄たけび2019年6月20日 紙面から
◇WBOスーパーフライ級王座決定戦ボクシングの世界戦各12回戦は19日、千葉・幕張メッセイベントホールで行われ、WBOスーパーフライ級王座決定戦で、同級2位・井岡一翔(30)=Reason大貴=が同級1位アストン・パリクテ(28)=フィリピン=を10回1分46秒TKOで破って王座を獲得、日本人男子初の世界4階級制覇を達成した。また、世界戦15勝目で、具志堅用高を抜き、日本選手単独最多となった。WBAライトフライ級タイトル戦は、スーパー王者・京口紘人(25)=ワタナベ=が挑戦者の同級12位タナワット・ナコーン(26)=タイ=に3-0で判定勝ちし、同級初防衛に成功した。 TKO勝ちが宣告された瞬間、井岡がコーナーに駆け上がった。勝利の雄たけびは、涙へと変わっていく。日本初の世界4階級制覇。ボクシング史を塗り替える快勝に、30歳は感極まった。 「今までにないプレッシャーだった。引退を撤回して。『井岡は違う』と言ってもらえるような試合をしようと思って、ずっと追われているような気持ちだった。それが涙につながったと思う」 試合を決めたのは右カウンター。ぐらついたパリクテを、猛烈な連打で追撃し、TKOを呼び込んだ。「ここしかないと思って思い切り(パンチを)まとめた。(判定1-2で惜敗した)前の試合の経験を生かせた」と、汗をぬぐった。 国内での試合は2年2カ月ぶりだった。その間、さまざまなことがあった。2017年大みそかの引退宣言。父・一法会長が率いる井岡ジムを離れ、18年9月に米国で現役復帰。同年11月には17年5月に結婚したタレント谷村奈南と離婚。そして現在は新恋人がおり、数カ月後には第一子も誕生する予定だという。「生まれてくる子供をチャンピオンとして迎えたいという気持ちがあった」。決戦を終え、「けじめ」として、結婚することも明かした。 2年ほどの間で、様子は変わった。試合前も、かつてのピリピリムードは減り、穏やかな表情を浮かべることが増えた。イスマエル・サラス・トレーナーは「人間としての成長と、充実した練習が、井岡を変えた。リングにもいい影響があるだろう」と、分析していた。 それが表れたのは7回だった。不利を悟ったパリクテが強引な攻めに出てきたが、下がらず打撃戦に応じる。「ガードの上からでも脳が揺れたと感じるパンチだった。けど、下がらず打ち合おうと思った。はっきり白黒をつけたかった」。結果、打ち疲れて、手が止まった相手に逆に連打を入れ、勝利への流れをつくることに。気持ちの強さは、4階級制覇に直結したのだ。 今後は、再び海外を主戦場にしたいという。「他団体王者と統一戦がしたい。(WBC同級王者)エストラーダを意識してます」。目を輝かせた井岡は、また日本を代表するボクサーとなった。 (藤本敏和)
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