表紙変えたくて消しちゃった末路。
サナがふたなりだからジヒョちゃんは女です。初恋は彼女持ちの年上イケメンという設定です。
サヒョ
▶︎▶︎▶︎No.1
シーツがぐしゃぐしゃで体がベタつく、寝起きの悪い朝に光が眩しくてイライラする。シーツがベタベタすると思ったら血がついていて生理か。と余計腹ただしくなったのは言うまでもなく、お客のシーツを汚したことに冷や汗が止まらなかった。
すぐさま昨日使ったシャワー室に行きシーツを洗う。ジャーという音であの人が目覚めなければいいのだけれど。
血がついて時間が経ったのか硬くなって取れなくなっていた。
ジ「やっばいじゃん…」
サ「…なーにが?」
ジ「…さ、サナさん!?」
サ「あぁ…汚しちゃったのか。」
あの夜みたいに鋭い視線でシーツを眺めた。
昨夜の愛液もついていたし丁度良かったと、自分ではなだめておいたつもりだったけど
流石にシーツを汚しちゃまずいよなぁと、
反省した。
ジ「…ごめんなさい。」
サ「いや、そんなことよりナプキンとか。」
ジ「…あ、コンビニで買ってきます。」
サ「ええよ、俺の彼女のナプキンあるから、
それあげるわ。一つくらい無くなってもバレへんやろし。」
ジ「悪いですよ。もし万が一彼女さんに見つかったらどうするつも…」
サ「そこらへんは俺がやっとくでええよ。」
そう言って頭をポンポンされた。子供じゃないないんですよ!と言いたくなったけど今の身分じゃ言えるわけなかった。
なんとか、シーツも洗い綺麗になってナプキン、着替えは流石に買ったけど気持ちさっぱりした。
サ「生理前だったのにヤらせちゃって悪かったな。」
ジ「こちらこそシーツ汚してごめんなさい。
彼女さんにバレたら私に叱ってくれても構わないので。」
サ「んなことするわけないやろ。
ジヒョちゃんは悪くないんやし?俺が貸したわけやから大丈夫やで笑」
ジ「で、でもっ…」
サ「はい、今日のお代、あんがと。」
私の言い分も聞かず仕事の代金を押し付ける
サ「ジヒョちゃんは自己責任とかそういうのきびしそうだから笑。はい、お金。」
ジ「い、いらな…」
サ「シーツ代とかいらんから、ほい。じゃあまたね。」
サナさんのペースに合わされエレベーターのボタンを押した。骨ばった手が私に手を振った。振り返す余裕もなく私はそのままドアが閉まるのを待った。
私とサナさんの関係はある意味セフレ。といってもお金関係いわゆる風俗的な関係で繋がりがあった。初めてあの風俗店に来た時は、イケメンだと評判だったらしい。私はその場にいなかったからわからないけれど。
店頭に張り出された私の顔写真で、サナさんは私を指名した。これは少なくなかった。
私の顔だけで判断して性行為をする。だから不満を言われることも少なくない。
「顔だけはいいよね。」「もったいない。」
「この仕事向いてないよ。」
一番傷ついたのはそれだった、私の収入源はここしかない。ここでしか働く場所もない。今更どうやって職を手につけようか考えただけでも苦しいのに。
顔写真で指名されると2回目にまた指名されることはなくなる。だから1回目のお客さんと2度の夜を過ごしたことは一度もなかった。
サナさんとの初夜は正直怖かった。
またあんなこと言われたらどうしようとか、イケメンから言われたらもうやってけないなとか勝手に落ち込んでしまった。
すると。
サ「ラーメンでも食いに行こ。」
ジ「…え…」
サ「体調悪そうやし、ラーメン食ってからでも出来るやろ?」
ジ「…は、はい…」
そんな風に見えたのかな。不思議と頭を抱えた。体目当ての人ばかりだったから、心がすごく温かくなった。
サ「あ、おごるわ。」
ジ「え、」
サ「遠慮しなくてええよ。」
そういって千円分奢ってくれた。
サ「その分気持ちよくしてよ笑」
そう言ってホテルのベッドに押し倒される。
あぁ、気持ちよくできなかったらどうしよう
ぐいっと引き寄せてキスをする。
サナさんのソコに手を当て触る。
サ「ん…ジヒョ…」
ジ「さ、サナさっ…んぁ…」
これほどの快感に溺れたことはなかった。小さく震えた体はサナさんを求めてしまっていた。果てた後の優しさも全てが私にマッチして好きだと感じてしまった。
だめなのに。
——朝。
ジ「…ん、あ、サナさん…」
サ「ジヒョちゃんとやるの今までの中で一番気持ちよかった。」
ジ「っ…ほ、んとですか…」
サ「うん、ほんまにありがとう。」
思わず笑みが溢れてしまう。この仕事をやって初めてそんな事を言われた。あの感覚が気持ちよくて未だに少しむらっとする。
耳元で囁かれた「愛してる。」嘘だとわかっていても心地よかった。
サ「…あ…ミナ…」
サナさんがスマホの画面を見てぽつりと呟く
ジ「ん、誰ですか?」
サ「俺の彼女。」
ジ「彼女!?」
サ「あぁー…っとね、まぁ…いや……」
驚いた。サナさんには彼女がいた。いや、この業界では珍しくない。セフレ同然にこの風俗に来る人も少なくないからだ。
サ「…ジヒョちゃんはセフレとして、頼んだねん。俺には彼女おるし、彼女大好きやけど遠距離やから…寂しなってしもうて。」
ジ「…そ、うなんですか。」
サ「ジヒョちゃん、ごめんな。昨日は愛してるとかいうてしまって。勘違いさせてしまったんと違う?」
ジ「勘違いなんて…してませんよ!風俗では愛してるとかそんなの、大事な人がいても当たり前のように使ってますから!」
フォローになってないフォローをしたところでサナさんの彼女「ミナ」さんから電話がかかってきた。
ジ「うわっ…ごめんな、まっとって。」
ジ「はい…もしもし?」
「ミナ」さんは相当怒ってるのか声が大きく電話から音が漏れてくる。
ミ「昨日サナの家行くっていうたよな!」
サ「ごめん、寝ちゃってた。」
ミ「サナの馬鹿!」
サ「ごめん、ほんまにごめんな…」
ミ「昨日しか会えなかったんに…」
サ「これからは気をつけるから…」
ぶちっと切れた音がした。
サ「ごめん。めちゃくちゃ声聞こえたやろ笑…」
ジ「その…ミナさんはサナさんのこととても好きなんだって伝わりました!」
サ「優しいこと言うんだね、ジヒョちゃん」
口元を緩め私の頭に手を当てた。くしゃっと寝起きの髪が崩れる、優しく撫でてくれた。
私の鼓動が早くなるのも知らずに。
サ「じゃあ、また頼むね。次もジヒョちゃんを指名するから。」
ジ「っ…はい、また!」
この仕事のやりがいを感じたとともに私は人生で初めて恋をした。サナさんに。