皆さんに最愛の人はいますか?
中にはきっと、忘れられない思い出もある人もいると思います。
今回のテーマは「後悔」「永遠の愛」を取り入れております。
失ったものは取り戻せるというケースもありますが取り戻せないケースもあります。
今回は後者の方で、悲しいお話を書かせていただきます。
閲覧注意とだけ先に伝えておきます…
あなたには大切な人はいますか?
大切な人ならば、手離さないでください。
きっと、後悔をしてしまうかもしれません。
失った後に気づいても手遅れになります。
どうか、それだけは忘れないでください…
-モモside-
「みーたん…今なんて…」
「…モモ、別れましょ」
突然の事だった。
みーたんが言ったことの意味はすぐに分かった。
でもどうして?今まで普通に付き合って、メンバー以上の事もして、何もなかったやん…。
悲しくて、寂しくて、でも許せなくて感情がごちゃごちゃになる。
「い、いやや…なんかモモ悪い事したん…?悪いなら治すから…」
「ごめんな…私のせいなんやけど…これ以上モモを傷つけたくないねん…」
なんやそれ…理由も教えてくれへんの?
意味わからんし、納得なんて出来へん。
モモ馬鹿やから理由が分からないと困るんや…みーたんも知ってるはずやのに…。
でもみーたんはすごい悲しい顔して言ってるから本気じゃないことなんてモモでもわかる。
「モモ…ごめんな…」
「待ってやみーたん!!なんで何も言ってくれへんの!?訳分からん!!」
怒りというより、大好きな人が傍からいなくなるのがどうしようもなく怖かった。
感情が抑えきれなくて目から涙が出始める。
「いやや!!みーたん!!一人にしないで!!」
でもみーたんはもう扉を閉めて行ってしまった…
なんでや…今まで普通に…ずっと一緒にいてくれるって…
嘘やったん…?そうやってモモの事騙してたん…?
あぁ、モモ馬鹿やから…きっと頭のいいみーたんには苦痛やったんやな…
でも…なんであんな悲しい顔してたん…?
「…教えてやみーたん…なんでやの…ひぐっ…ぐすっ…うわぁぁん…」
-ミナside-
私はモモの部屋の扉の前にもたれかかって座り込んだ。
最低や本当…別れたいなんてこれっぽちもあらへん…。
でも…あんなことしでかしておいて…これ以上モモと一緒におる資格なんか…ない…。
あぁ…モモが泣いてる…本当は抱きしめて一緒にいてあげたい…ずっと傍にいるって言ってあげたい…
でも…もう遅い…。
私はよろけながらも足を動かしある部屋に向かった。
部屋の前に着き、ノックせずに開ける。
そこには一人の人物がいた。
「みーたん…」
「…もう死ぬほど辛いわ…あんなモモ見たくあらへんかった…」
「…ごめんな、サナのせいで…」
「サナもモモも悪くあらへん…悪いのは全部私や…私が弱いから…二人共傷つけたん…」
ふらふらしながらサナに歩み寄る。
足を踏み外しそうになるところをサナが抱きかかえてくれた。
「みーたん…無理しなくてえぇんで…?今なら…」
「…もう遅いわ…。決めたんや、ちゃんと責任とらへんと…」
「…そっか。サナ、嘘は嫌いやからな?」
「分かっとるわ…」
そう言ってサナを押し倒す。
「あっ…もう…」
「サナ…」
「本当最低やなみーたん…えぇよ…滅茶苦茶にシて…?」
サナの潤んだ瞳に私は理性を抑えきれず、夜を共に過ごした。
きっかけはモモと喧嘩した日だった。
その日はどうしてもお互い譲り合えず、大喧嘩をしてしまった。
謝りたくても顔を合わせられなくて、どうしようか悩んでいた時、サナが心配して話を聞いてくれた。
その時だった。
『みーたん…サナ、みーたんのこと好きや…』
『サナ…』
『モモりんのこと…分かってるんよ…でも、お願い…今だけはサナのこと見て…?』
今思えばその時、断っておけばよかったと思う。
しかし、どうしても寂しかった私はそのまま一線を越えてしまった。
それ以来、モモに知られて振られるのが怖くて、サナと揉めて仲違いしてしまうのも嫌だった。
私がしっかりしていれば…こんなことにはなっていなかったのだろう。
結局私は二人を傷つけない方法を考えることが出来なかった。
どうやっても傷つけるだけなのに…私は本当に誰かを傷つけてばっかだ…。
後悔と罪悪感しかなく、でも後戻りは出来なくて、こんな結果になってしまった。
しかし、私はまだ知らなかった。
これが悲劇の始まりであるという事を…。
-2週間後-
「ミナ、少し話があるんだけど」
ジョンヨンから呼び出されたミナ。
周りも何かを察して部屋に戻る。
今はジョンヨンとミナの二人っきり、しかもジョンヨンはかなりのご立腹な様子だった。
「なに、ジョンヨン」
ミナが口を開くと胸ぐらをつかまれ、壁に押し当てられた。
「なにじゃないわよ!!あんた、モモに何を言ったわけ!?」
「…」
「黙ってんじゃないわよ…!!私、言ったわよね?モモを傷つけたら容赦しないって、泣かせたら私がモモをもらうって…それが何!?モモはずっとあんたを呼んでるのよ!?なんで何も反応しないわけ!?」
「…要は嫉妬?モモが手に入らないからその腹いせ?」
「っ!!うるさい!!あんたにそんなこと言われなくたって分かってるわよ!!」
「じゃぁ、それ以外何?特に何もジョンヨンにしてないじゃない」
「そんなむかつく奴だとは思わなかったわ!!でもね!!モモが苦しんでるのを見て、黙ってられるわけないじゃない!!あんたと別れてからずっと部屋で泣いてるのよ!?みーたんどこってずっと待ってるのよ!?あんたそれでも何もしないわけ!?」
「…」
ミナとモモが別れてから2週間が経っていたが、それ以来モモは部屋から一歩も出ようとしない。
ご飯も食べず、何も口にしていない状態でずっと泣いているらしい。
それを聞いて罪悪感と後悔で胸を痛めるミナ。
「…私にはもう、モモのそばにいる資格なんてない…ほっといて…」
「それが何かって聞いてんのよ!!モモはずっとそれを知りたがってるの!!なのにあんたが何もしないからあの子はどんどん痩せて…元気もなくなってるのよ…っ」
「…今傍にいてあげられるのはジョンヨンだけだよ。私が行ったところで何も解決にはならへん…」
「っもういい!!見損なったわ!!」
そう言ってジョンヨンはミナから手を放し部屋に戻っていった。
その場に座り込むミナ。
「…モモ」
ジョンヨンの話が本当なら私はモモにとんでもない事している。
しかし、どのように説明すればいいのか全くわからない。
浮気していたから別れてほしい?いや、直球に言ってしまえばモモはきっとサナと揉めるだろう。
だからと言って何も言わないでモモと別れたのも間違っているとも分かっている。
「なんて言えば良かったんやろうなぁ…はは…」
考えるのも疲れてきてしまった…ごめんな…モモ…サナ…私にはもうどうすればいいか…。
ミナは考えるのが辛くなってきていた。
このままではいけないと思いながらも自分がどうすればいいのか悩んでも答えは出ないままだった。
「…モモ…本当はすぐにでも…部屋に行きたい…でも、無理や…サナに手ぇ出してしもうたし…」
「…本当ですか、ミナおんに」
自分しかいないはずのリビングから声が聞こえ、声の方を振り向く。
そこには呆れた顔をしたツウィがいた。
「ツウィ…聞いてたんやな…」
「見損ないました、浮気してモモおんにのこと傷つけて…最っ低」
「…ツウィもモモの事好きやったもんな、そりゃ怒るか…」
「今も好きです…ミナおんにが必ずモモおんにの事幸せにするって言ってたから諦めたのに…今の聞いて気が変わりました」
「…そうやろな、自分でも呆れとるし正直モモの事が忘れられへん…情けないわ本当」
「このことはモモおんににも言いますから。絶対に許さない…!!」
「許さんでいいよ…悪いのは全部私やもん…」
「呆れた…もう二度とモモおんにと私に話しかけないでください」
そう言ってツウィもモモの部屋に行ってしまった。
モモが聞いたらきっと嫌われるんだろうなぁ…でも自分で蒔いた種だし…何も言えないや…。
しかもツウィにも嫌われたし…ダメだなぁ、私。
そんな事を考えているとサナが戻ってきた。
「みーたん…大丈夫…?」
「サナ…大丈夫やで…気にする必要ないやん…」
「お部屋行こ…?」
「そうやな…申し訳ないけどお邪魔するわ…」
壁に手をやりながらゆっくり廊下を歩いているとモモの部屋があった。
何やら話し声が聞こえる。
ジョンヨンとツウィの声だ。
『モモ!いい加減目を覚まして!あいつは浮気してた上にモモの事捨てた奴よ!?』
『そうですよモモおんに。裏切者は早く忘れて新しい人を探した方がいいです。」
あぁ、やっぱり悪く言われてる。
自業自得だから仕方ないけど、改めて言われると胸に来るなぁ…。
ふとサナの方を見ると下唇をかんで泣きそうな顔していた。
「サナは悪くないんやで…悪いのは私だけや…」
「だ、だって…サナのせいでみーたんがっ…」
「大丈夫…サナは優しいなぁ…」
「ぐすっ…本当にごめんな…」
サナはやっぱり優しいな。
その優しさに甘えてばっかで本当にごめんな…。
『…みーたんもさーたんも悪くないんよ。二人共。』
ふと聞こえた声に耳を傾ける。
久しぶりに聞いた声はどこか弱々しかった。
『だって、みーたんの幸せがモモの幸せやもん…。みーたんが幸せって感じられへんかったならそれはモモのせいやねん…』
「…っ」
幸せじゃないなんて思ったこともない。
ずっと幸せだったしむしろモモと別れてから胸にぽっかり穴が開いてしまった。
『騙されてるんですよモモおんに!!あの人は自分の事しか考えてない!!おんにの事なんて一個も考えてない!!』
『そうだよ!!私だったらモモの事を幸せにできる!!あいつの代わりになるから!!』
『二人共ありがとな…でも、モモは…みーたんじゃなきゃ無理やねん…』
モモの言葉に涙が出そうになる。
どうして…こんな自己中な私を好きでいられるん…?
いっそ嫌いになってくれたら…そんな事を思ってしまう。
『モモな…この先どんなことあってもみーたん以外を好きになりたくないねん…皆には言ってへんかったけど…一人で上手くいかなくて泣いてた時も…他のグループの先輩からいじめられてた時もあったん…でもいつも助けてくれたんは…みーたんやったんよ…』
『え…なんで言わなかったのよ…』
『言えへん…心配かけるやん…でもみーたん…気付いてたみたいで……ずっと傍にいてくれたん…モモにとってはみーたん、王子さまやねん…』
『っでも…』
『だから我儘言ってるのはモモの方やで…例え他の人と付き合っても、それがみーたんにとって幸せならモモはそれだけでえぇねん…』
「っモモ…!!」
私はなんて馬鹿なんだろう。
こんなにも自分を思ってくれている人を甘い考えで踏みにじってしまうなんて…。
後悔ばかりする一方で、私は涙を堪えきれず零し始めた。
その様子を見ていたサナは私を抱きしめ
「みーたん…部屋行こ…」
「…そうやな…これ以上聞いてたら…狂いそうや…」
そして私たちはサナの部屋に向かった。
-サナの部屋-
みーたんを連れてベッドの上に座らせる。
さっきからずっと泣いてばっかのみーたん。
そんなん見てたらサナも泣きそうになるやん…。
「ね、みーたん…膝上乗ってもいい…?」
「…えぇよ」
みーたんと向き合う感じで座る。
サナが背中に手を回すとみーたんも返してくれた。
でもみーたんはずっと泣いててこっちを見てくれない…
ねぇ、サナだけ見てよ…どうしてモモりんのこと考えてるの…
責任取るって言うてたやん…ねぇ、みーたん…お願い…
「…なぁ、サナ」
「なに、みーたん。」
それ以上は言わないで…お願い、みーたん…
「やっぱりこんな関係…もう終わりにしよう?」
「…なんでや」
「私、これ以上自分の気持ちに嘘はつきたくないんや…」
「嘘つきたくないって…責任取る言うたんのも嘘なんか…?」
「…」
「…なんで黙ってるん、決めたんちゃうの…ねぇ、そうやってまた傷つけるつもりなん…!?」
「…ごめん」
「嘘嫌いやってサナ言うたやん…!!なんでっ…」
うぅん、本当は分かってた。
みーたんはサナと続かないって。
だって、こんなにもモモりんの事愛してるんやもんな。
元々サナに入り込む余地なんてなかったことも分かってたんやで。
それなのにチャレンジしたサナを誰か讃えてほしいわ。
「いややっ…!せっかくみーたんと一緒になれたんに…こんなん嫌や…!」
「…ごめんな、サナ…」
謝りながら手をほどくみーたん。
そしてサナをベッドに優しく座らせてくれた。
「えぐ…ひっく…嫌いや…みーたんもモモりんも大っ嫌いや…!!」
「サナ…ごめんね…」
「早く行ってな…顔も見たくないねん…!!」
「…分かった、サナ、ありがとね…」
みーたんはサナの頭を優しくなでてそのまま行ってしまった…
嘘。本当はみーたんもモモりんも大好き。
嫌われるべきはサナだけのはずやのに…
「ぐすっ…ひっく…うえぇぇん…」
どうしよう、涙が止まらない。
自分で勝手にみーたんをモモりんから奪った罪悪感と、みーたんに振られた事が思ったより響いている。
こんな顔見られたくない…
するとジヒョが部屋に戻ってきた。
「…サナ」
泣いてるサナの顔なんか見せたくなくて、布団に急いで潜り込む。
しかし、ジヒョは布団を捲り
「よく顔見せて…?」
「なんでや…どうせ悪い事した罰とでも言いたいんやろ…!!」
つい本音とは裏腹の言葉が出てしまう。
しかし、ジヒョはサナを抱きしめてくれて優しい声で
「…頑張ったわね。サナ。」
「っ」
「貴女がしてしまった事は良いとは言えないわ…でも、それだけミナの事好きだったんでしょ?」
「…好ぎだっだよぉ…分がっでだげど…やっぱり辛いよぉ…」
「よしよし…今日はいっぱい泣きなさい…なんでも聞いてあげるわ?」
「ジヒョぉ…」
ジヒョの肩に顔をうずめて泣き始める。
みーたん、サナはみーたんの幸せを祈っとるで。
短い間だったけど…一緒にいてくれてありがとう。
大好きやったで。
サナの部屋から出た私は自分の部屋に戻ろうとする。
すると部屋の前には先客が二人ほどいた。
「…来たわね。」
「…なに?部屋に入れないんだけど」
「私たちはあなたに用があってきたんですよ」
「私に話しかけるなって言っておいて自分からは話すんだ?」
「うるさいです、本当は話したくもないです」
ジョンヨンとツウィだった。
「用はなに?」
「随分、長い時間サナの部屋にいたじゃない。お楽しみの最中だったかしら」
「…もうサナとの関係は終わらせたよ。」
「え…」
予想外の答えだったのか、驚く顔をしている二人。
「私はもう間違えない。モモは誰にも渡さない。二度と手離さない。」
「っ本当に上手くいくかしら?モモは貴女の事はもうあきらめるって言ってたわよ」
「…さっき部屋で話してた内容とは違うよねそれ」
「!?まさかさっきの話…」
「聞こえてたよ、だってあんな大きな声で話してんだから聞こえるわ」
「だから何よ…もう二度とモモには近づかないで」
「悪いけど、もう決めたから。その様子だと追い出されたって感じね。また腹いせのつもり?」
「い、わせておけば…!!」
ツウィが私の胸ぐらをつかむ。
しかしそこから先に進むことはなかった。
「何してんのよ。ツウィ、ジョンヨン」
「ナヨンおんに…」
「だっておんに!この人がモモおんにを!」
「ほらほら、ツウィちゃん落ち着いて。」
ナヨンおんにとダヒョン、チェヨンが来た。
ダヒョンはツウィをハグして落ち着かせている。
「いったん冷静になりなさい…本当にモモ馬鹿ね二人共。」
「おんに!!ミナの肩を持つつもり!?」
「誰もそんなこと言ってないでしょ…私はミナに話があるから戻ってきたのよ。」
「ナヨンおんに…」
「ミナ、少し部屋でお話しましょ?」
「…分かった。」
「ちょっと待ちなさいよ!!話はまだ終わってないわよ!?」
「一発引っ叩かないと気が済まないです…!!」
「ジョンヨンおんに、どうどう」
「ツウィちゃんも。ほら、お部屋に戻って色々聞くからさ。」
ダヒョンとチェヨンの落ち着き具合にびっくりするが、私はナヨンおんにと部屋に戻る。
-ミナの部屋-
「ふぅ…どうして年下の子ってあんなに血気盛んなのかしら」
「…ありがと、ナヨンおんに。」
「ミナも煽りすぎよ。あのまま叩かれてたらどうすんの。」
「…でもそれはあの二人がそれだけ本気ってことだし、私が招いた事だから仕方ないなって思う。」
「あんたはいつからそういう子になったのよ…まぁ、いいわ。」
そう言ってナヨンおんにはベッドに腰かけて、私の顔をじっと見始めた。
「で、どうするの?今後。」
「…モモのところに行って、謝ってくる。そして今度こそ手離さない。私にはモモが必要なんや…」
「果たしてそう上手くいくのかしら?」
「…どういうこと?」
「さっきモモの様子見てきたけど酷く痩せているし、ご飯もまともに食べない。食べても吐く状態よ?あんた、自分が何したか分かっているのかしら?」
「っ…私が復縁を望むのはおこがましいって言いたいの?」
「そういうことを言ってんじゃないわよ。そこに関しては普通に上手くいくわ。でもね、腕にはリストカットの痕が残ってたわ。それも深いものがね。」
「え…」
「そこまであんたはモモを追い詰めたのよ。正直、私としてもこれ以上モモには近づかないでほしいと思ってるわ。」
ナヨンおんにに言われるまで私はモモの状態を理解していなかった。
ナヨンおんにが言うのであればそれが正しいと思う。
でも私は…
「…なら私の命を懸けてでも、モモは守る。ずっと一緒にいて何でもしてあげる。グループを抜けたって構わない。私が招いた結果だから、私が責任を取るべきだし、どんなこと言われようとも覚悟はしてるよ。」
「…そんぐらいの覚悟があるのなら、十分よ。逆にモモからしても貴女はいなければならない存在よ。ちゃんと責任は取りなさい。」
「…分かってる。」
「あー、もう。本当にいつの間にあんたたちは大人になっていたのかしらね。」
ナヨンおんには伸びをしてベッドに寝転んだ。
そして私にこう言った。
「明日、あんたとモモ以外を連れて出かけるから。その時にしっかりやるのよ?」
「…ありがとう。ナヨンおんに。」
「それと今日はもう遅いから寝なさい。あんたも頭に血が上りすぎ。表情に出してなくても分かるわよ。」
「…ごめん。」
「全くよ。ダヒョンとチェヨンにも感謝しなさい?あの二人を抑えてくれたんだから」
「…明日伝えるよ。」
「そうね、あの二人もあんたには怒ってたけどちゃんと分かってるわ。心配しなくてもミナ、あんたは一人じゃないのよ」
「…」
色々考えると私は全員を傷つけてしまったんだなと改めて理解する。
迷惑をかけすぎた…明日、ちゃんとツウィとジョンヨンにも謝らなきゃな。
モモ…待っててな、明日会ったら必ず謝って、二度と手離さん。また一緒にいような。
もう間違えないから…。
-翌日-
目が覚めるともうナヨンおんにの姿はなかった。
心なしか、家自体が静かだ。
もう行ったのかな…、体を起こして部屋を出る。
モモの部屋に行かなきゃ…行ってちゃんと話さなきゃ…
自然とモモの部屋に足を運ぶ。
モモの部屋の前に着き、扉をノックする。
「…モモ?いるの?」
しかし、返事がない。
まだ寝てるのかなと思いながら、静かに扉を開ける。
すると部屋にはモモの姿はなかった。
リビングかな…そう思い、リビングに向かう。
しかし、リビングにも姿はなかった。
どこに行ったんだろ…探していると変な匂いが鼻に来た。
「なんやこれ…鉄の匂い…?」
ここにはないはずの鉄の匂いがして更に疑問がわく
なんでや…鉄なんて使ってる覚えないはず…
その時、昨日のナヨンおんにの言葉を思い出す。
『リストカットの痕があったわ。それも深いものがね。』
「まさか…!!」
思い当たる節があり、急いでその場所に向かう。
-風呂場-
やっぱり、匂いはここからしていた。
シャワーの音はするものの、人が動いてる気配がない。
「モモ!!」
名前を呼ぶと同時に扉を開ける。
そこには大量の血を流しながら倒れているモモの姿があった。
2週間ぶりに見たモモの姿はひどく痩せこけ唇も青く、今にも死にそうだった。
「モモ!!モモ!!しっかりして!!」
シャワーを止め、モモの腕を止血する。
モモの腕には大量のリストカットの痕が痛々しく残っていた。
それも二の腕の部分まで、深く、何重にも…
「(私のせいや…!!私がっ…モモをっ…!!)」
後悔しながらも腕をタオルで止血し、体をバスタオルで拭く。
かなりの時間シャワーを浴びていたせいか、モモの身体は冷たかった。
「(あかん…!!温めないと…!!)」
近くに洗濯したばかりの毛布があり、それを使ってモモの身体に巻く。
それと同時にミナは119番にかける。
「もしもし!?今すぐ救急車を!!私の…大事なモモを助けてや!!」
幸いにも救急車は5分以内で着いた。
しかし、救急車の隊員たちは青ざめていた。
[こ、これは…お前ら!!急ぐぞ!!]
[イ、イエッサー!!]
隊員達は急いでモモを担架に乗せ、救急車に運ぶ。
[連絡した方は貴女ですよね!今すぐご家族にご連絡を!!]
「え、は、はい!!」
-とある場所-
「…分かった?ミナは自分勝手な事をしたって思ってるし、ちゃんと反省もしてるわ。」
「「…」」
「別に仲直りしてって言ってるわけじゃないわ。ただ、あの子の気持ちは分かってあげて欲しいの」
ナヨンたちはレストランにきていた。
そこでミナの気持ちを代弁し、ジョンヨンとツウィに話していた。
「…モモをあんなに追い詰めたのに、分かってほしいなんておこがましいよ。」
「私はあの人の気持ちなんか分かりたくもないです。」
「かー、随分頑固ねぇ…実際、モモにミナの悪口言って追い出されたんでしょ?それははっきり言ってモモの気持ちを全然理解してないのと同じだわ。」
「っ…」
「…」
「悪い言い方しちゃうけど、モモもミナもお互いに依存しちゃってるのよ。逆に言えば、それだけ…あら?ミナから…もしもし?」
ミナからの電話を取るナヨン。
するとすぐに顔つきが変わり
「はぁ!?わ、分かったわ!!ミナ!!貴女はモモと一緒にいてあげて!!私たちもすぐに向かうわ!!」
そう言って電話を切ったナヨンは急いで上着を着て荷物をまとめる。
「皆!!今すぐここを出るわよ!!」
「え、な、何かあったの?」
「…モモが出血多量で倒れてて危篤状態らしいの…」
「!!」
「や、やばいじゃんそれ!!急ごう!!」
「モモ!!」
「モモおんに!!死んじゃいやだ!!」
ジョンヨンとツウィが勢いよく店を飛び出る。
「待ちなさいジョンヨン!!ツウィ!!」
「ナヨン!!場所はどこ!?」
「△△病院よ!!急いでいきましょ!!」
あの状態のモモを置いてくんじゃなかった…
ミナがすぐに処置してくれても…もしかすると…
最悪の状況としか思えないけど…モモ…どうか無事で…!!
-病院-
「え…今なんて…」
[…拒食症や摂食障害による栄養失調を起こしています。及び自傷行為による出血が多すぎて輸血が追い付かない状態です。]
「モ、モモは…モモは助かるんですよね?」
[…何とも言えません。しかし、その状態で長時間冷水を浴びていた事により低体温症も引き起こしています。はっきり言って最悪の状態です…助かる見込みは正直…]
「そ、そんな…」
[手は尽くします…ですが、最悪の場合も考えておいてください。]
「…」
先生からの話が終わり、私はモモの病室に入る。
今のモモは呼吸もままならなく、人工呼吸器で生かされている状態だと聞かされた。
そのほかにも、点滴、輸血をつなぐ様々な針や、首に酸素を送るチューブなどが痛々しくつながれていた…
摂食障害、拒食症による栄養失調、リストカットによる多量出血、長時間の冷水による低体温症…
何一つ気付けなかった…
はっきり言ってモモはいつ死ぬか分からない状態だった。
今まで自分がしてきたことはモモを追い詰め殺そうとしていたのと同じだった。
謝って済む問題なんかじゃない…
「モモ…」
バンッ!!
勢いよく扉が開き、振り向くとそこには青い顔をしたメンバーたちがいた。
「ああぁ…モモ…モモぉ!!」
「モモおんに…」
ジョンヨンとツウィが私を押しのけモモのそばに駆け寄る。
「ねぇモモ!!モモ!!」
「モモおんにいぃ…目を覚ましてぇ…」
二人が泣きながらモモに声を掛けるも、反応はない。
私はその光景をただ見てるだけしかできない…
「ミナ…先生から聞いたわ。」
ナヨンおんにが声を掛けてくれた。
「貴女がすぐに処置してくれたから…モモは…」
「おんに…私は…モモを…」
「あんたのせいよっ!!あんたがモモをこうしたのよ!!」
ジョンヨンが声を張り上げ始める。
「ジョンヨン!!ミナが処置してくれなければモモは危なかったのよ!?」
「おんに!!またこいつの肩を持つの!?どう見たってモモがこうなったのはこいつのせいじゃない!!」
「そうですよ…!!この人がモモおんにをこんな目に合わせたんです…!!この人殺し…!!」
「…っ」
人殺しか…
そう言われると私はモモを殺したも同然だ…
何も言い返せない…
その言葉にナヨンおんにとダヒョンが反応する。
「ツウィ!!あんたなんてこと言うのよ!?」
「ツウィちゃん!!ミナおんにに謝って!!」
「なんでわかってくれないんですか!?原因は全てこの人じゃないですか!!」
「原因と言えばあんたもよサナ!!」
ジョンヨンがサナの方を睨み付け声を張る。
それに続きツウィもサナに言い始める。
「あなたも同罪ですよ!!モモおんにの事親友とか言って騙し続けてたんですもんね!!この裏切り者!!人殺し!!」
「だ、騙してなんて…ないもん…」
「騙してたじゃないですか!!モモおんにを嫌ってたから平気でそんな事出来たんだ!!絶対に許さない!!」
「サ、サナだって…モモりんに酷い事したって…ぐすっ…分かってるもん…!!」
「それがこの結果なのよ!?分かってるじゃ済まないの分かってんの!?本当クズねあんた!!」
「ふっぐ…えぐっ…うぇぇぇん…」
ジョンヨンとツウィの罵倒にサナが泣いてしまう。
流石のジヒョも声を荒げる。
「ジョンヨン!!ツウィ!!言いすぎよ!!サナがどんな気持ちでいたのか分かってんの!?」
「分かりたくもないわよ!!あぁそうか!!あんたサナの事好きだもんね!?だから庇うのね!!見損なったわ!!」
「今そんな話してないでしょ!?ただサナの気持ちも考えなさいよって言ってんの!!」
「考えて何になるんですか!!それでモモおんにの傷が癒えるとでも言うんですか!?」
…モモの傍でそんな怒鳴るのは違くないか?
全部私のせいやろが…
「…取り消せや」
「あ!?」
「サナは何も悪くあらへんやろ…私のせいでこうなったんや…!!責めるんなら私を責めろや!!」
「な、なによ!?開き直りね!?やっぱりあんたモモの事なんてどうでもいいんじゃない!!」
「どうでもなんかよく思ってへんわ!!大体モモの傍でこんな事してんのが大間違いやって思わへんのか!!すんやったら外でしろや!!とことん付き合ったるで!!」
普段こんな大声を出すなんてこと滅多にしない。
でも少なくとも、モモの傍でこんな事話してたらきっと余計に悲しむ。
それだけは絶対に許せない…!!
「…まだ文句あるんなら今から外出ぇや…相手したるわ…!!」
「っ…分かったようなこと言うんじゃ…」
するとチェヨンが何かに気づいた。
「モモ…おんに…?」
その言葉にメンバーがモモの方に振り向く。
「何か…言ってるよ…?」
その言葉を聞き私はジョンヨンとツウィを押しのけ、モモに近づき耳を口に近づける。
「…たん…ど、こ」
「モ…モ…?」
「みー…たん…ど…こ…?」
「モ…モモ…モモ…!!」
「みー…たん…?」
「そうやで…みーたんや…!!ここにおるで…!!」
「みーたん……」
モモが目を覚まし、私は涙が零れそうになる。
「モモっ!!モモっ!!私が馬鹿やった!!辛い思いさせて本当にごめんな!!」
「みー…たん…モモ…の事…好…き…?」
「好きどころか愛しとるわ!!もう手離さん!!二度と辛い思いなんかさせへん!!」
「ほ……んと…?」
「当たり前や!!ずっと一緒や!!どんな事があってもモモの事守ったる!!私にはモモが必要なんや!!」
「…モ…モも……みー…たん…じゃ、な…きゃ……いやや…」
モモに対して罪悪感と後悔が止まらない。
どれだけ苦しんだのだろう。
どれだけ辛かったのだろう。
考えてもきりがないほど、私はモモへの気持ちが止まらなかった。
「っモモ…どうしてそこまで…」
「おんに…」
ジョンヨンとツウィが悲しい表情で二人を見つめる。
「…分かったでしょ?モモはそれだけミナの事が好きなのよ。どんなに酷い事されても、やっぱり好きなものはしょうがないのよ。」
「…認めたくない。」
「気持ちは分かるわ。でもね、認めなきゃいけないときだってあるのよ。現実から目を背けても、自分が辛いだけなの。」
「…」
私はサナの方に目をやりながらジョンヨンとツウィに言う。
「サナだって本当は認めたくなかったと思う。でも、大事なのは好きな人がこれで本当に幸せなのかってところよ。だからミナの気持ちを受け止めて、関係の終止符を受け入れたのよ。あの子だって辛かったと思うわ。」
「好きな人が…本当に幸せか…」
「モモおんに…言ってた…」
『だって、みーたんの幸せがモモの幸せやもん…。みーたんが幸せって感じられへんかったならそれはモモのせいやねん…。』
「あら、モモそんなこと言ってたのね。全く…あんな甘えん坊がそんな事言うようになったなんてね。」
「…」
「…私達がモモおんにに言ってた事って、結局自分の気持ちを押し付けてただけ…だったんですかね…」
「捉え方によってはね。でも、間違ってるかって言ったらそうとも言い切れないわよ?」
「…ごめん、ナヨンおんに。」
「謝るんなら私じゃなくて三人にちゃんと言いなさい?」
「でも…私酷いこと言っちゃった…」
「私もです…」
「あんだけ自分の気持ちは言えるのに、なんでそこヘタレるのよ。大丈夫、三人共二人の気持ちはしっかり分かってるわ。」
「…だといいけど」
本当、この二人は頑固ね。
まぁ、かわいい妹達の為だし、ここはおんにが手伝ってあげようかしらね。
サナの方に声を掛けて仲直りを計らおうとした時、ミナの声が遮った。
「モモ!!モモ!!しっかりせぇ!!」
「み…たん……苦し…ぃよぉ……」
モモの容体が変化してしまった。
私は急いでナースコールを押した。
呼吸もひどく、顔色も悪くなってきている。
「死に…たく……な…い…」
「もう喋んないほうがえぇ!!先生たちもうすぐ来るから!!」
「ね……み…ぃ…たん」
「頼むモモ…もう喋らんで……辛いだけやで…っ」
「モモ……生まれ……変わっ…たら……お嫁さんが…いぃ…な…」
「何言うとるんモモ……まだこれからやろっ…」
「…あ…い……して…る………み…たん…」
モモはそう言って目を閉じてしまった。
それと同時に一定だった機械が大きく鳴り始めた。
「モ、モモ…?」
さっきまで握っていた掌が急に力がなくなり、ほどけてしまった
「なぁ…嘘やろモモ?そんなんで誤魔化されへんぞ…驚かせたいだけやろ…?」
容体が急変してからほんの数十秒の事だった。
病院の人たちが駆け付けてきた。
[おい!!急ぐぞ!!]
[平井さん!!平井さん!!しっかりしてください!!]
[すみません!!どいてください!!]
病院の人たちがモモの処置を行う。
モモの傍から離れなければならないようだが私にはそんな余裕なかった。
ずっとモモの手を握り、声を掛け続ける。
「モモ!!モモ!!」
[名井さん!!落ち着いて!!]
「ミナ!!先生たちに任せるしかないわ!!」
ジョンヨンが私を羽交い締めにして抑える。
「離せやジョンヨン!!モモはっ!!私が傍にいてやらへんと!!」
「分かってるわよそんなの!!でも今は先生たちを信じるしかないわ!!」
「モモ…!!モモ…!!嫌や…!!」
[まずい…!!脳に血種があるかもしれない…急いでオペだ!!準備しろ!!]
先生たちが急いでモモの寝ているベッドをオペ室に移動させる。
「モモっ!!モモおぉぉぉ!!」
数時間後に先生がオペ室から出てきた。
しかし、栄養失調、多量出血、脳に血種など様々な症状が合併し、モモの身体はもたなかった。
モモはオペ中に息を引き取った。
「お世話になりました…」
[平井さんを救うことが出来ず…誠に申し訳ございません…]
「いえ…モモはきっと先生たちに感謝しています…。最後まで手を尽くしてくださりありがとうございました…。」
[…書類の手続きとその他の処置はしておきます。どなたかご両親とご連絡を取っていただいてもよろしいですか]
「分かりました。本当にありがとうございます。」
そう言って先生は部屋を出て行った。
モモは遺体安置室に運ばれた。
部屋にはミナとジョンヨンがつきっきりだ。
モモが息を引き取ったことを聞いた時のミナは絶望的な表情をして膝から崩れ落ちていた。
他のメンバーも信じられない顔をして泣いていた…。
サナとツウィが一番泣いてたな…。
今は少し落ち着いているけど、思ったより心の傷は大きい。
大事な家族が…一人いなくなってしまったから…。
-遺体安置室-
「…ミナ、大丈夫?」
「…」
ミナはモモの遺体をずっと見ている。
顔色が悪かったモモの顔は、病院の人たちが処置をしてくれて、健康的な色になっていた。
その顔を見るたびに、モモはまだ寝ているんじゃないかって思ってしまう。
本当は驚かせようとしてるんじゃないかって…。
「モモ、よく頑張ったね。痛い思いしたのに、よく耐えたね…ゆっくり休んで…ねっ…」
ダメだ、モモの顔を見るたびに泣きそうになる。
「…ジョンヨン、無理せんでえぇよ…。」
「無理…なんかじゃ…っ」
「モモには…私がついておくから…な?」
そう言ったミナは様子が変だった。
目には覇気もなく、表情も虚ろで今にも何かをしでかしそうだった。
「ミナ…貴女が一番心配よ…」
「なんやそれ…はは…さっきまで怒鳴り散らしてたとは思えへん…」
「…ごめんね、酷いこと言っちゃって。」
「うぅん…ジョンヨンは間違ってへん…私が全部悪いんや…皆を悲しませた上にモモを殺してしまった…人殺しや」
「っ…ミナ…」
「ジョンヨン…モモに…寄り添ってくれてありがと…それで…散々迷惑かけて本当にごめん…」
「…私だって、モモの気持ちを分かってあげられてなかった…貴女とサナの気持ちも…」
「…そんなことあらへんよ。モモの気持ちを考えられへんかったのは私や…ジョンヨンに言われたとき…すぐ駆け付けてあげれば…」
ミナはそう言ってまたモモの方に目線を戻す。
そしてモモの頭をなでてあげていた。
「モモ…本当は寝てるだけやろ…みーたんは騙されへんで…驚かすの好きやったもんな…」
ミナが声を掛けても勿論反応はない。
「…本当に、死んでしまったんやな……」
私はその言葉を聞きまた泣きそうになる。
これ以上この場にいたら、本当に涙が止まらなくなる。
「ミナ…私、先に出てるね」
「分かった…ジョンヨン、ありがとな」
「…お願いだから変な事だけは考えないでね」
「なんやそれ…考えてへんわ」
そう言って私はミナを残して部屋を出た。
部屋の前には、メンバーたちが座っていた。
「…ミナは?」
「…モモについてあげてる。」
「そっか…」
皆話したいことはあるけど、そういう空気ではなかったので話せなかった…
「さっきモモのご両親にご連絡したわ…今向かってるって…」
「…ありがと、ジヒョ」
「いいえ…」
そしてまた沈黙が広がる…。
モモを失った私たちは何も考えることが出来なかった。
これからの事、応援してくれてるonce、モモのご両親…
考えなければならないことはいっぱいなのに何も考えられなかった。
そしてこの後、私たちは更に後悔することを考える余裕もなかった…
-ミナside-
部屋で一人になった私は、ただただモモの顔を見ていた
「モモ…本当、綺麗やな…」
遺体となってしまったモモは本当に何も動かない。
認めなければならない事実だが私はまだ認めることが出来なかった。
「…変なこと…か…ごめんな、ジョンヨン…一個だけ嘘を言ってしまったわ…」
私はポッケの中から小さい瓶を取り出した。
瓶には「青酸カリ」と書いてある。
「モモ…すごいやろ、勝手に持ち出してしもうたわ…あんなとこに置いてあったのも中々やけどな…」
ばれたら窃盗罪で捕まるわな…
でももうモモがこの世にいないってだけで私は生きる意欲を失った。
メンバー、once、両親…様々な人たちの顔が思い浮かぶ。
メンバーの皆…散々迷惑かけたのに更に迷惑かけることになるわ…ごめんな
once…今まで応援してくれてありがとう、これからもTWICEを応援してください…
父さん、母さん…先に逝ってしまう事をお許しください…親不孝な娘で本当にごめんね…産んでくれてありがとう…次生まれてくる時も父さんと母さんがいいな…
モモ…寂しがり屋だからきっと一人で泣いてるやろ…待っとれ、みーたんもすぐそっち逝くからな…
私は瓶の蓋を開け、中身を確認した。
「凄いな…こんなん飲んだら即死やな…」
一度深呼吸をし、私はその中身を全部飲んだ。
するとその効果はすぐ発揮され、私はのどを抑えた。
「がっ…!!うぐっ…!!く、苦し…」
あぁ…これは本当に飲むものじゃないや…
「モ…モ…」
意識が遠のいていく中、私はモモの手を握り最後の力を振り絞って声を掛ける。
「モ…モ…わた……し…も……愛し…て…る…」
そして私は意識を手放した。
最期にモモに言えて良かった。
モモ…もう一人になんかさせへん…
生まれ変わったら…また一緒にいような…
-ジヒョside-
私たちは、モモのご両親が来るまで病院にいることにした。
先生たちは無理しないでくださいねと言ってくれた。
色んな人に迷惑かけてるなぁ…
それにしてもミナ遅いな…
「ねぇ、ミナ呼びにいかない?」
「そうね…今後の事とかモモの親御さんにも色々話さないといけないしね」
そして私たちは遺体安置室に向かった。
-遺体安置室付近-
向かっていると何やら騒がしい。
部屋の入り口付近で先生たちが集まっている。
なんだろう…何かあったのかな
[あれほど言っただろう!!すぐ閉まっとけと!!]
[も、申し訳ございません!!]
[名井さん!!しっかりしてください!!]
[くっそ!!まさかこれを持ち出されてるなんて!!]
何か嫌な予感がする…
ただ事ではないと分かったので駆け足で部屋に向かう。
[み、皆さん!!]
「あの、何かあったんですか?」
[大変なんです!!名井さんが持ち出した青酸カリを飲んで自殺を図ったみたいなんです!!]
「え!?」
「ちょ、ちょっとどいてください!!」
サナが先生たちをかき分け部屋に入る。
「い、いやあぁぁぁ!!みーたん!!しっかりしてえぇぇ!!」
サナの悲鳴が聞こえ急いで私たちも部屋に入る。
そこには仰向けになったミナが倒れていた。
「ミ、ミナ!?あんたなんてことを!!」
「みーたんいやや!!死なないで!!」
サナが必死に声を掛けるもミナは反応しない。
触ってみるとミナの身体はすでに冷たく、心臓の音も脈もなかった…。
「せ、先生!!ミナを助けてください!!」
ナヨンおんにが先生に訴えるが…
[…青酸カリは強力な化学物質です、それを全て飲み干していました…]
「そ、そんな…何とかならないんですかっ!!」
[私たちが駆け付けた時、もう名井さんは…]
その先は先生たちも口を閉じてしまった…
そんな…ミナ…
「い、いややぁぁぁ!!」
サナが泣きながら部屋を飛び出てしまった。
「サ、サナおんに!!待って!!」
「おんに達!!サナおんには私とチェヨンが何とかするから!!」
ダヒョンがそう言ってチェヨンと一緒にサナを追いかけた。
今のサナが何をするか分からない…!!
お願いダヒョン、チェヨン!!
「ミナおんにぃ!!起きてください!!私まだミナおんにに謝ってないんですよぉ!!起きてえぇ…!!」
「この馬鹿ミナ!!変なこと考えないでって言ったじゃない!!どうしてよぉ!!」
ツウィとジョンヨンがミナを揺さぶりながら声を掛けるが反応は一切ない…
「ジヒョ!!ミナが…ミナが冷たいの!!どうしよう!!温めないと…!!」
でも私はもう分かっていた。
ミナはもう起きることはない…認めたくないけど…受け止めるしか出来なかった。
ミナ…間違ってるけど…それが貴女が選んだ道なのね…。
「…ミナはもう…起きないわ。青酸カリよ?生きてたら…逆に凄いわ。」
「ジヒョ!?なんでそんなこと言うのよ!!」
「分かってるわよ…私だって認めたくない…でも、ミナが選んだことなら…尊重するしかないじゃない…!!」
私は涙を堪えきれず座り込んで泣いてしまう。
あの時ミナを一人にするんじゃなかった…
残っておけばよかった…
リーダーとして二人に何もしてあげることが出来なかった…
私たちは大事な家族を1日のうちに2人も失ってしまった…
-外-
「サナおんに!!待って!!」
私とダヒョンおんには部屋から飛び出してしまったサナおんにを追いかけていた。
「サナおんに!!危ないよ!!」
私たちの叫びは届かずサナおんには止まらない
まずい、信号赤になりそう…このままじゃ…!!
でもサナおんには何かに躓き、そのまま転んでしまった。
「サナおんに!!大丈夫!?」
私たちはサナおんにに駆け寄り、声を掛ける。
サナおんにを起こしたが
「離して!!サナもみーたんとモモりんのとこいく!!」
「ダメだよサナおんに!!そんなことしてもモモおんにもミナおんにも喜ばないよ!!一回落ち着いて!!」
「一人は嫌やぁ!!みーたんももりん!!一人にしないでぇ!!」
ダメだ…今サナおんにを離したら本当に死んじゃう…!!
何とか止めなきゃと思ったその時
バシッ!!
サナおんにが何かに引っ叩かれた。
ダヒョンおんにが涙目になりながらサナおんにの頬をビンタした。
予想外の事に私とサナおんには目を見開く。
「サナおんにごめん…でもね、二人が死んで悲しいのはサナおんにだけじゃないんだよ?私達だって辛いんだよ?」
「ダヒョンおんに…」
「私だって二人ともっと一緒にいたかった…いっぱい出掛けたかったしこれから頑張っていこうって思ってたんだよ。でも、こうなった以上私たちは7人で頑張らなきゃいけないんだよ…」
「で、でも…!!サナが二人を殺したんや!!サナのせいで二人は死んだんや!!だったらその罪は償わなきゃっ!!」
するとダヒョンおんにはまたサナおんにをビンタした。
「それが間違ってるんだよサナおんに!!一人で抱え込まないで!!私たちがいるよ!!私たちがサナおんにのこと支えるから!!お願いだから死ぬなんて言わないで!!」
ダヒョンおんにはサナおんにに伝え涙を拭う。
私もサナおんにに言いたいことがあるので口を開く。
「サナおんに…私も二人がいなくなって悲しいし後悔してる…どうして助けてあげられなかったんだろうって…でも、こうなってしまった以上、私たちは現実と向き合わなきゃいけないよ…でも、それから逃げるのだけは間違ってる…二人の生きたかった分を私たちは生きなきゃ…」
「うぐ…ひっく…うわぁぁん…みぃたぁぁん…ももりぃぃん…」
サナおんにが更に泣き始めたが、もう死ぬことは考えないと思う。
私たちはサナおんにを抱きしめ一緒に泣いた。
ミナおんに…モモおんにには会えたかな?
今度こそ二人共…幸せになってね。
-ジヒョside-
私たちは今後の事を話した。
ミナとモモが生きたかった分を生きると。
これからもTWICEは9人であることを忘れないと。
ジニョンさんとマネージャーさん達にも話したら、同じことを言ってくれた。
ジニョンさんは二人が来世で幸せになってくれると信じようと言い、私たちは黙祷をした。
モモとミナのご両親にはジニョンさんとマネージャー達が話してくれるとのことで私たちは宿舎に戻った。
-宿舎-
二人がいなくなってしまった宿舎は、とても静かで気まずい空気が流れた。
私たちは各々の部屋に戻る。
私はサナが心配だったので、一緒に部屋で寝ることにした。
「サナ…」
「大丈夫やでジヒョ…サナはもう分かってるから…」
そうは言うもののサナはかなり精神的にやられている。
自分の好きな人と親友が一日でいなくなってしまったから…。
私は思い出したように、机の中からあるものを出す。
「サナ…これ…」
「てが…み?」
「…ミナからよ、ミナの机に置いてあった。貴女宛てに。」
「みーたん…が…?」
「読んであげて…」
サナは封筒から手紙を出す。
『サナへ
これを読んでるってことはもう私はこの世におらへんってことか。
モモも死んでしまったってことなんやろな。
まず、こんな形で残してしまったこと、ごめんなさい。
私は口下手だから…手紙で貴女に伝えたい事全部書いていきます。
サナは優しくていつも気にかけていてくれたね。
初めて韓国に私が来た時も、三人でよく一緒に韓国語の勉強してたの今でも思い出します。
モモと私は理解できてなかったし、練習とかあったはずなのに、つきっきりで教えてくれてありがとう。
私がTWICEとして頑張れたのはサナのおかげでもあるんだよ。
私の事を好きって言ってくれた時、嬉しかった。
その時しっかり言っておけば良かったのに…私は貴女を穢して…傷つけてしまった…。
気持ちに応えることが出来なくて…本当にごめんなさい。
貴女の優しさに甘えてしまって…ごめんなさい。
貴女は優しいから…今回の事をきっと自分のせいにしてると思う。
でもこれは全部私のせい…私がモモを蔑ろにして…貴女まで巻き込んだからこんなことになったの。
だから貴女は気に病むことは一つもないわ。
私の事は忘れて、新しい幸せを見つけてね。
私はモモを追いかけて先に逝ってしまうけど、サナはそんな事考えちゃだめだよ?
このやり方は間違ってるし、ただ悲しませるだけ…
良い事なんて一つもない。
お願い、どうか死ぬなんて考えだけは持っちゃダメ。
説得力無いかもしれないけど約束してほしい。
サナ、私はただ貴女の幸せだけを祈ってるよ。
今までありがとう。
ミナ』
手紙を読み終えたサナは涙が止まらなかった。
「なんやこれっ…全然説得力無いやんみーたん…」
「サナ…」
「ジヒョ…みーたんは…ももりんに会えたかなぁ…?」
「…きっと会えたわよ。だって追いかけてまで好きなんだもの。生まれ変わってもきっと一緒にいるわ。」
「そうやなぁ…こんないい女を振ったんやから向こうでも会えてなかったらもう知らんっ…」
強がっているサナだが手は震えてるし、涙は止まってなかった。
私はサナを抱きしめ
「サナ…無理しないで…?思ってること全部聞くわ…」
「ジヒョ…サナは無理なんか…」
「強がっても分かるわ…本当はまだミナの事、吹っ切れてないんでしょ?」
「っ!!」
「今は私だけだから…全部ぶちまけちゃいましょ?」
「ジ、ジヒョぉ…」
サナは私の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
「みーたんやだよぉ…寂しいよぉ…置いてかないでよぉ…」
「どうしてモモりんなん…サナだってみーたんの事愛してるんだよぉ…」
「みーたんの優柔不断めっ…生まれ変わって泣きついてきてももう知らんからなぁっ…」
サナは言いたいことを沢山吐き出してくれた。
相当ミナの事が好きだったんだと痛感させられる。
こんな可愛い子を振るなんて…ミナ、来世で会ったら絶対に渡さないんだから。
だから、ね…ミナ、来世では絶対モモを手離さないでね。
私も皆も、貴女たちの幸せを心から願っているわ。
「サナ…こんな形で言いたくなかったけど…私、サナのこと好きよ。」
「え…?」
「このタイミングで言うのは間違ってるって分かってるけど…やっぱり伝えたい。サナ、貴女の事愛しているわ」
サナは目を見開いて私の顔を見た。
そして俯き少し考えた後で私に言った。
「…すぐには応えられへん…」
「そうよね…でも私、待ってるから。サナが落ち着いて、少しでも意識してくれるまでずっと待つわ。」
「ジ、ジヒョ…なんでそんな…」
「サナが好きだからに決まってるわ。貴女の為ならなんだってする。だからお願い…貴女は一人じゃないのよ。」
「ジ…ヒョ…」
サナは更に泣き始めた。
サナ…私はずっと待ってる。
貴女が立ち直れるまでずっと傍にいるから…。
私は一晩中サナに付き添った。
あの悲劇から3ヶ月が経った。
私たちは夢のドーム公演が実現した。
東京ドームでの1週間ライブ…
ようやくここまで来た。
私は墓場に来ていた。
「ミナ…モモ…ようやくここまで来たわよ。貴女たちが一番望んでいた場所に…」
ミナとモモの墓場はご両親のご希望により隣同士になっている。
私は花を添え、お辞儀をした。
「あの後ね、大変だったのよ。誹謗中傷もすごかったし記者も宿舎にまで来て大変だったんだから。本当お騒がせしてくれたわねぇ。」
私はこの3ヶ月であったことを二人に報告した。
「あぁ…それとサナは元気にしてるわよ。最初こそ大変だったけど、今じゃもう前より元気になったわ。もう心配しなくても死のうなんてことは考えないわ。」
すると一人こちらに近づいてきた。
「ジヒョ…」
「サナ、どうしたの?」
「そろそろ出発するって、行こ?」
「そうね、行きましょうか。サナは二人に言わなくていいの?」
「そうやな…ちょっとだけ。」
サナは二人の墓前に立ち、お祈りををした。
「みーたん、モモりん…覚えてる?三人で約束した東京ドーム…今日からだよ。」
サナは二人に語り掛けるように話し始めた。
「あの後ね、サナ正直立ち直れなかった。二人がいなかったって言うのと、孤独感がすごくて…死のうって思ったこと何度もあった…でも、その度に皆が助けてくれて…今はもう平気になった。サナは一人じゃないって皆が教えてくれたから。だから、ありがとう。サナは幸せだよ。」
サナの声は少し震えていた。
日本からきて3人で支えあってずっと一緒に頑張ってきたから…。
「だから2人共、見守っててね。サナはもう大丈夫だよ。二人の分も頑張ってくるよ。」
そう言ってサナは立ち上がる。
「ごめんね、ジヒョ。もう行こ?」
「…分かった。」
「…ね、ジヒョ。手、握ってもいい?」
「良いわよ。」
そう言ったサナは私の手を握ってきた。
実は私とサナは付き合い始めた。
1ヶ月前かな、私が改めて告白したらサナは受け止めてくれた。
嬉しかったし、絶対もう泣かせない事を誓った。
ミナ、もう心配しなくてもサナは大丈夫。
私もサナの事を絶対に悲しませないし、手離したりしない。
貴女とモモは向こうでくっついてるかな?
生まれ変わって会ったら、見せつけてあげるわ。
じゃあ、また来るね。
どうか、お幸せに…。
-END-
お客様、お久しぶりです。
東條 聖輝です。
今回、シリーズ系はお休みして普通の話を作ろうかなと思った所存です。
思ったより長編となってしまい、申し訳ありません。
多分、書いてきた中で一番長いです。
文章も展開もごちゃごちゃになってしまいましたが、色んな視点で見ることが出来るんじゃないかなと思います。
今回の物語で大切な人を失う事はどうしようもなく悲しい事、後悔しないためには今自分が何をできるか、そういったことも含めているつもりです。
大切な人がいるのならば、しっかり考えて、今の関係性がどうなのか考えてみるといいかもしれません。
偉そうに言ってしまい申し訳ありません…。
では次回お会いいたしましょう。
東條 聖輝でした!!