月の起源は、マグマに覆われた原始の地球に巨大な天体が衝突してできた可能性が高いことを、
海洋研究開発機構(神奈川県)や神戸大学(神戸市灘区)などの研究チームがスーパーコンピューター
「京」(同市中央区)を使ったシミュレーションで裏付けた。固体同士の衝突では説明できない矛盾を、
地球の表面が液体のような状態だったと仮定することで解消できたという。
研究成果は英科学誌ネイチャー・ジオサイエンスに発表された。
月は地球に対する規模が際立って大きく、「火星ほどの規模の天体に激突された原始地球から、
岩石が宇宙に飛び散って作られた」という説が最有力とされてきた。1960~70年代に米国の
アポロ宇宙船が月から持ち帰った岩石が地球とほぼ同じ成分だったことも、その根拠とされた。
しかし80年代のコンピューターの発達を受け、衝突の様子を試算したところ、
月は衝突してきた天体の岩石で形成されるはずとされ、矛盾が生じていた。
同機構や神戸大などの研究チームは、地球はどろどろのマグマ(液体)に覆われた状態だったという仮説を立て、
京を使って検証。衝突の角度や速度、マグマの深さなどを変え224通りの条件で試算した結果、
天体に衝突された地球からマグマが飛び散り、月が形成される様子を再現できたという。
研究に携わった神戸大大学院の斉藤貴之准教授(天文学)は「月の起源は世界中の科学者が長年議論してきたが、
今回の研究でかなり前進したのではないか」と話す。(霍見真一郎)
2019/6/19 18:20神戸新聞NEXT ↓写真付き
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201906/0012441932.shtml