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【芸能・社会】

ピエール瀧被告判決、裁判官異例の説諭10分 「『人生』に応えられていますか」

2019年6月18日 19時11分

判決を聞くピエール瀧被告(イラスト・勝山展年)

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 コカインを摂取したとして麻薬取締法違反の罪に問われたミュージシャンで俳優のピエール瀧(本名・瀧正則)被告(52)に、東京地裁は18日、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。小野裕信裁判官は、瀧被告が所属するテクノユニット「電気グルーヴ」の前身バンド名と同じ「人生」の文字が掲げられた証拠資料の写真を見せ、今後において「人生と書いてくれた人の気持ちに応えられているか胸に手を当てて考えてほしい」などと10分近くにおよぶ異例の説諭を行った。

黒いスーツ姿で入廷した瀧被告は被告人席で手を組み、神妙な面持ちで口を真一文字に結んでいた。証言台では、主文の読み上げに小さくうなずきながら、言い渡しが終わると裁判官と検察官に向かって頭を下げた。

 執行猶予についての説明をする中で、小野裁判官の“劇場型”説諭が始まった。「あなたが立ち直るために何が必要か考えながらお話を聞かせてもらい、その中で一点だけ引っ掛かったものがある。それをあなたに見てもらいたい」

 証拠書類の中から1枚の写真が示された。「左上に漢字2文字が掲げられていますね?」と問われた瀧被告が「はい」と答えると、小野裁判官はその「人生」という文字について「あなたの活動において、インディーズ時代を含めて何度か出てくる言葉」と指摘。その上で「あなたに聞きたいことが3つある。『これからの人生をどう生きるか』、そして『人生という言葉の持つ意味』、『人生と書いてくれた人の気持ちにあなたは応えられていますか』です」と畳み掛けた。

 「人生」は1985年に瀧被告の現相方・石野卓球が高校2年生のときに地元の静岡で結成したインディーズバンドで、瀧被告も「畳三郎」の芸名で参加していた。いわばアーティストの原点だ。

 3つの質問に答えさせる形ではなく、小野裁判官が言葉をつないでいく。「復帰できるとしても何年先の話か全然(自分は)分かっていませんが、あなたの意思と努力でいつか瀧さんが薬物というドーピングなしでも、音楽でも芝居でもいいパフォーマンスをしている、むしろ『以前よりすごいじゃないか』と社会の人が見てくれることを切に願います」と更生に期待を込めた。

 そして「迷ったり仕事によるストレスに悩んで孤独になることを僕は心配しています」と憂慮しながら「そのときこそ、自分の行為が『人生』と書いてくれた人の気持ちに応えられているか、胸に手を当てて考えてほしい。それが、あなたがいるべき場所を見失わないために必要なことです」と説いた。

 時折小さくうなずきながら真っすぐと小野裁判官を見つめていた瀧被告は、最後に深々と頭を下げて法廷を後にした。

 

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