@chablis777
シャブリ

---------------------------

----N----069---------------
----a-----------------------------
----t-----------------------
----u-Z-o-r-a--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------

(咲太郎)千遥のために描くんだよ。
お前 言ったよな?
漫画映画は 子どもの夢なんだって。
その夢を千遥に見せてやれよ。
♪~
(仲)じゃ 次は…。(なつ)おはようございます。
(井戸原)うん?遅れて すいません…。
(井戸原)今 キャラクターの検討会をしているとこだ。
牛若丸は もう仲ちゃんの絵で決まった。
はい…。
いいと思います!君は出さないのか?
えっ まだ いいんですか?
そのために遅刻してきたんだろう?
はい!
これです。うん。
これは… 常盤御前だ。
はい。
(仲)じゃ 次は 常盤御前を検討しようか。
はい。
なつは 千遥への不安を抱えながらアニメーターとしての第一歩を踏み出しました。
みんな うまい…。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(仲)やっぱり みんな美人を描こうとしてるな…。
牛若丸の母親という点では僕は この絵に一番 母性を感じるんだけどな。
えっ…!
それは また 仲ちゃんのなっちゃんびいきなんじゃないのかい?
ひいきで 作品は決めないよ。一つの意見。
(堀内)しかし 常盤御前がただの母親でいいんでしょうか?
常盤御前は再会を願って会いに来た牛若丸を冷たく突き放しますよね?
それで絶望する牛若丸が前半の山場になる。
最初からいい母親みたいな顔していたら牛若丸が絶望しても客は感情移入しないんじゃないですか?
(井戸原)う~ん それはあるな…。
最初は 常盤御前を悪者のように描いた方が見る人に 衝撃を与えることになる。
その点では 僕はこの表情に ひかれるんだけどね。
(茜)あれ もしかして堀内さんが描いたんですか?
違うよ。これ 誰が描いたの?
(麻子)私です。
(下山)やっぱり 絵には描く人間が出ますね。
どういう意味ですか?
えっ いや… 女性の内面はやっぱり 女性が鋭く捉えてるなっていう意味ですけど…。
(仲)う~ん なっちゃんとマコちゃんの対決か…。
マコちゃんは何で こうしようと思ったの?
常盤は 初め その美貌と知性で1,000人の女の中から選ばれ侍女のような身分で召し抱えられたにすぎませんでした。
そこから 源 義朝の側室に上り詰めたんです。常盤御前は したたかで強い女性なんです。
う~ん…。
なっちゃんは どう思うの?
私は…そんな怖い顔の母親を子どもに見せたくありません。
は…?
いや 子どもだっていろいろ考えながら見ると思うんです。
ただ怖いだけの母親 見せられて後で優しくなっても それじゃ納得できないんじゃないですか?
顔が怖いからって根っから優しくない人だと思わないわよ 子どもだって。
そでしょうか?
子どもには どんなに怒られた時でも母親の愛情は伝わると思うんです。
何の話をしてるの? あなた。
えっ…。
漫画映画は 子どもが見るものです。
子どもが 夢を見るように見るものだと思うんです。
♪~
まあ 確かに こっちの常盤御前もこっちの常盤御前も内面的には 両方あるはずなんだよ。
そう。 結局2人とも中途半端ってことだろうな。一面的で 人物の奥行きが感じられないってことだろう。
はい…。
はい…。
(井戸原)よし じゃ 次いこう。(一同)はい。
(ため息)
何かあった?
別に何も…。
別に何も か…。
うそだね。 あった。
明らかに 何かあった。
明らかに いつもと様子が違う。
そんなに明らかですか?うん 明らかだよ。
だって その服装前にも見たことあるもん。えっ?
とうとう 前と全くおんなじ服装で来ちゃったよ ハハハ…。
証拠見せようか? あのね これね…。
いいです! いいです…。
そんな… 毎日替えるのは無理ですよ。
夏は そんな重ね着しませんし。
まあ それは許すけど…何かあったんなら話してみなよ。
本官に話して 楽になれ。
警察…。
あ… あの私の住んでるおでん屋によく来るお客さんの話なんですけど…親戚の家から 幼い妹が一人で家出をしたんです。
その家では警察に届けたって言ってるんですけどもし その子どもに何かあったんならそういう知らせがその家にあるものですか?
路上で暮らす子どもも亡くなる子どももまだ たくさんいた 戦後間もない頃です。
そういう子どもがまだ生きてると思いますか?
う~ん…。そんなことは奇跡ですか?
あのころは 警察も混乱していたかもしれないけどそこにいるのは やっぱり人間だからね。
僕が まだ新米で派出所に勤務していた頃近くの飲食店から逃げ込んできた娘さんがいたんだ。
生活に困って娘を売るっていう記事が新聞に載っていた頃だからその子は その店が怖くなって逃げたんだ。
逃げてきたんですか?
店との間にはあっせん業者が入っていてまだ その時点では違法とは言えないって警察の上司は判断した。
だけど そこにいた僕の先輩は諦めなかった。
法律を 一生懸命 勉強して戦後定められた日本国憲法の中に「何人も いかなる奴隷的拘束も受けない」という条文があるのを発見してそれを根拠に 娘を自由にしたんだ。
勝手にですか?
うん。
上司も 飲食店の店主も怒ってね先輩は 辞職も覚悟してた…。
あっ 今 その子は先輩の知り合いの旅館で元気に働いてるよ。
奇跡なんてもんは 案外人間が 当たり前のことをする勇気みたいなもんだよ。
その勇気を持ってる人間はどこにでもいるよ。
その先輩は 下山さんじゃないんですか?
だから 警官を辞めたんですか?
僕? ハハハハ… いや いや いや…。
僕なんて 勤務日誌に似顔絵ばっかり描いて怒られてた人間だよ ハハハハ…。
え~ だから辞めたんだ ハハ…。
きっと そのお子さんも誰かに助けられてるんじゃないかな。
そですよね…。
ほら… 早く食べなよ それ。
はい…。
ゆっくりね…。
♪~
頂きます。
なっちゃん マコちゃん。(2人)はい。
ちょっと。
2人の絵を合わせてちょっと描いてみたんだけどこんなので どうかな?
すごい…。
どうしたら こんな絵が描けるんだろう…。
なっちゃんは 誰かを思い浮かべて常盤御前を描いたの?
あ… はい。 北海道にいる母を…。
うん やっぱり お母さんか…。
お母さんを描くのが悪いわけじゃないんだけど自分の母親には 優しさばかりを求めてしまいがちだからね。
お母さんだって 一人の女性だし内面には もっと怒りや苦しみ 悲しみだとか子どもが見たくないものだっていっぱい持ってるはずだろ?
はい…。
私は 子どもの気持ちばかり考えて常盤御前のことを考えてなかったかもしれません。
私は 生い立ちだとか理屈ばかり考えてました。
どれも大事なことだよ。
それになっちゃんの悩みは正しいと思うよ。
子どもが見て本当だと思ってくれるような絵を僕らは探し続けていかなきゃいけないんだから。
子どもの力を侮ったら それで終わりだ。
子どもの力…。
ね。 マコちゃん。
もちろんです。
あの マコさん…さっきは すいませんでした。生意気なこと言って。
だから 謝らなくていいのよ。
口に出したことは仕事で責任取るしかないのよ 私たちは。
仕事で?
じゃないと 本当に認めるなんてできないでしょ。
仕事で認め合うしかないのがアニメーターのつらいとこだ。
なっちゃんは もうアニメーターなんだから。
はい。
なつよ 今は 頑張るしかないぞ。


via Twishort Web App