金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)議事録

 

1.日時:

平成31年4月12日(金)9時30分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室




【神田座長】
 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。

 ただいまから、市場ワーキング・グループの第21回目の会合を開催いたします。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 最初に、事務局から議事に関して事務的な説明をお願いいたします。

【小森市場課長】
 何点かご説明させていただきます。

 まず、委員の皆様の座席でございますが、本日もランダムとさせていただいております。また、今回も、神田座長のご判断によりまして、議事の途中で5分程度の休憩をとっていただく見込みとしております。

 また、年度が変わりましたことに伴い、メンバーの皆様の中で所属や肩書などが変わられた方もいらっしゃいますので、机上に本日現在のメンバーの名簿を配付しておりますので、ご覧いただければと思います。

 前回以降今回までに大崎委員、それから濱口委員が、それぞれ一身上のご都合ということで委員を退任されておりますので、ご報告を申し上げます。

 次に、オブザーバーでございます。オブザーバーにつきましてもご出席者、変更がありましたので、ご紹介を申し上げたいと思います。

 全国銀行協会、三井住友銀行の萩原常務執行役員です。

【萩原オブザーバー】
 よろしくお願いします。

【小森市場課長】
 信託協会、三菱UFJ信託銀行の米花取締役、専務執行役員です。

【米花オブザーバー】
 よろしくお願いいたします。

【小森市場課長】
 日本投資顧問業協会、三井住友DSアセットマネジメントの神谷専務執行役員です。

【神谷オブザーバー】
 どうぞよろしくお願いいたします。

【小森市場課長】
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、本日の議事に入らせていただきます。

 本日も盛りだくさんで恐縮ですけれども、高齢社会における金融サービスのあり方のうち資産形成制度、それから高齢社会における資産の形成・管理の心構え、そして高齢社会における金融サービスの方向性、この3つをテーマとしてご議論をお願いいたします。

 最初に、資産形成制度につきまして、厚生労働省と事務局からご説明をしていただきます。具体的には、厚生労働省から、お手元の資料2の「iDeCoをはじめとした私的年金の現状と課題」についてご説明をいただきます。その後、事務局から資料3、「人生100年時代における資産形成」について説明をしていただきます。

 その後になりますけど、事務局から高齢社会における金融サービスのあり方についてということで、資料4、「今後の議論の見取り図」、そして資料の5、これは前回も一度ご議論いただきましたけども、「高齢社会における資産の形成・管理の心構え」、それから資料6になりますけれども、「高齢社会における金融サービスの方向性」、これらについて説明をしていただきます。

 資料5は、前回、事務局から提示したペーパーにつきまして、皆様方からいただきましたご意見等を踏まえて、事務局において改訂、更新をしたものということになります。これに対して資料6は、金融機関の側で考えられる対応策について、これまでの当ワーキング・グループにおけるプレゼン、ご報告やご議論を踏まえ、事務局で作成したものを今日初めて皆様方にご提示させていただくということになります。

 全部のご説明をいただいた後で、まとめて討議の時間ということにさせていただきたいと思います。

 なお、本日ご欠席の野村委員から意見書の提出がございましたので、皆様の席上に配付させていただいております。適宜ご参照いただければと存じます。

 それでは、まず厚生労働省年金局企業年金・個人年金課の吉野課長から、iDeCoをはじめとした私的年金の現状と課題について、20分程度でのご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【吉田企業年金・個人年金課長】
 厚生労働省年金局企業年金・個人年金課長の吉田と申します。本日はよろしくお願いします。

資料2をご覧ください。iDeCoをはじめとした私的年金の現状と課題につきまして、20分ほどご説明をさせていただきます。短時間ですので、かいつまんだ説明になるかと思います。

 まず、私的年金の現状ですが、2ページをご覧ください。我が国の年金制度体系です。よく3階建てと言われるわけですが、絵の部分、20歳以上の全国民をカバーします国民年金、その上に被用者をカバーします厚生年金保険がありまして、3階部分として確定拠出年金、確定給付企業年金、代行部分を有する厚生年金基金、公務員の退職等年金給付、さらには個人型確定拠出年金、iDeCoがあります。

 左側、1号被保険者には2階がないわけですので、国民年基金とiDeCoがあります。

 我が国の企業年金、個人年金のカバレッジですが、上の箱の部分を見ていただきまして、20歳以上65歳未満人口に対する加入者の割合は25%、厚生年金被保険者に占める加入者の割合は4割弱、38.9%となっております。

 3ページをご覧いただいて、企業年金の加入者数の推移です。長らく企業年金の中核を担っていた適格退職年金・厚生年金基金から確定給付企業年金(DB)、確定拠出企業年金(DC)に移行しているのがグラフの色の変化から見て取れるかと思います。そして、この間、企業年金の加入者数は大きく減少しております。

 4ページ、企業年金制度の実施状況を従業員規模別に見たものになります。企業年金がある企業は青い部分ですが、2008年37.5%から2013年25.8%、2018年には22.6%と低下してきています。それを従業員規模別に見ますと、赤囲みの部分ですが、従業員規模が300人未満の企業で減少が大きくなっています。

 なお、オレンジ色の部分は退職一時金制度の実施割合です。

 5ページをご覧いただきまして、中小企業の企業年金の実施率の低下などを受けまして、さきの2016年の法改正では中小企業向けの施策の充実とともに、iDeCoの加入者範囲を、これまでの1号被保険者と企業年金のない2号被保険者から、企業年金加入者、公務員等共済加入者、第3号被保険者にまで拡大しました。

 これまでは私的年金といえば企業年金で、企業年金のない方には個人年金といったように、企業年金か個人年金の二者択一だったわけですが、そうではなく、これからは企業年金と個人年金の組み合わせにより、老後の所得確保を図ることができる環境の整備をしたところです。

 6ページ、iDeCoの加入可能範囲の拡大の資料でして、原則、全ての国民がiDeCoの加入が可能となりました。

 7ページ、iDeCoの加入者数の推移です。2016年9月、個人型確定拠出年金の愛称をiDeCoに決定しました。そして、2017年1月、先ほど言いました加入可能範囲の拡大後、加入者数は急増しまして、直近の2019年2月末現在では118.1万人となっております。

 8ページ、加入範囲拡大前と拡大後を比較しますと、これまで加入できなかった2号被保険者のうち企業年金加入者は約13万人、公務員等共済加入者は約25万人、3号被保険者は約4万人、合計約41万人が加入しております。従来から加入可能だった1号被保険者も7万程度、2号被保険者も39万人増加しております。

 9ページ、iDeCoの加入者の年齢構成をみますと、つみたてNISAと比べると、20歳代、30歳代の若年層の加入割合が低くなっております。

 10ページ、11ページは掛金別の加入者数の割合になります。第1号被保険者は1万円台、1万円未満、6万円以上の順に多くて、第3号被保険者は2万円台が半数以上を占めております。

 11ページ、第2号被保険者の掛金別加入者の割合を見ますと、企業年金なし、企業型DC加入者の割合は2万円以上が最も多くて、DBなどへの加入者、共済組合員では1万円台が最も多く、上限に張りついているというところです。

 12ページをご覧いただきまして、iDeCoの資産額でございますが、2018年3月末で1.62兆円、前年比プラス0.24兆円となっています。参考までに企業型の資産額は11兆7,000億円余りとなっております。

 13ページ、iDeCoの給付額になりますが、年金により受給している方の1件当たりの給付額は66万円、一時金により受給している方の1件当たりの給付額は直近で328万円となっております。

 14ページ、運用資産の構成割合ですが、DBについては、バランスよく、さまざまな商品に投資が行われているわけですが、DCについては、元本確保型商品に資産が偏っております。

 15ページ、徐々にではあるものの元本確保型商品から投信にシフトしております。

 16ページをご覧いただいて、年代別に見ますと、若年層ほど、若干ではありますが、投資信託の割合が高くなっております。

 17ページ、iDeCoの運用商品の提供数ですが、上限35本の中、平均17.8本となっております。

 以上が私的年金の現状ですが、続きまして今後の話として、高齢期の就労と公的年金・私的年金をめぐる対応につきまして、制度の見直しの検討状況についてご説明をいたします。

 19ページをご覧いただきまして、OECDの報告書が指摘するように、少子高齢化が進展する先進諸国の年金制度に共通する課題として、給付の十分性と制度の持続可能性という、この2つの要求をどうやって実現するかといったパラドックスがあります。このジレンマから抜け出す解決策としてOECDが3つ提案をしておりまして、1つは就労の長期化、もう一つは所得再分配機能がある公的年金の支給努力の対象を最も脆弱な人々に置くこと、そして、3点目として公的年金給付の削減を補完する私的年金等の奨励が挙げられております。

 20ページをご覧いただきまして、特に我が国は少子高齢化が他国よりも進んでいることはご案内のとおりです。平均寿命は延伸を続けており、2017年時点で女性は87.26歳、男性は81.09歳となっております。2017年の将来人口推計では、2065年時点で男女ともに現在よりさらに4歳前後延伸することが仮定されております。

 21ページ、65歳を迎えた方が特定の年齢まで生存する確率の数値になります。2015年、65歳を迎えた1950年生まれの方で、赤字の部分になりますが、既に男性の3人に1人、女性の5人に3人が90歳まで長生きする見込みです。これが2055年に65歳になる1990年生まれにつきましては、男性の5人に2人、女性の3人に2人を超える方が90歳まで長生きする見込みです。さらに、女性については5人に1人が100歳まで長生きするという見込みになっております。

 22ページ、高齢期における所得状況ですが、高齢者世帯の収入の66%を公的年金が占めております。この公的年金の給付につきましては、マクロ経済スライドにより、中長期的な水準の調整が見込まれているのはご案内のとおりで、老後の所得確保における私的年金の重要性が増すものと考えております。

 23ページ、寿命の延伸により65歳時点の平均余命は長期化する一方、公的年金の給付水準は今後、マクロ経済スライドによって調整されていくことが見込まれています。つまり、若い人ほど65歳時点になった時点の平均寿命は長くなりますが、公的年金の所得代替率は低下するわけです。

 24ページをご覧いただきまして、高齢夫婦無職世帯の現在の収入・支出の状況になります。引退して無職となった高齢者世帯の家計は、主に社会保障給付により賄われています。ライフサイクルにおいて、当然のことではあります。現在、高齢夫婦無職世帯の実収入20万9,198円と家計支出26万3,718円との差は月5.5万円程度となっております。その高齢夫婦無職世帯の平均貯蓄額は、赤囲みの部分、2,484万円となっております。

 今後、実収入の社会保障給付は低下することから、取り崩す金額が多くなり、さらに余命も延びることで取り崩す期間も長くなるわけで、今からどう準備していくかが大事なことになります。

 25ページ、高齢期における資産形成状況ですが、2人以上の世帯で世帯主が65歳以上の世帯について見たものですが、預貯金、生命保険等の掛金、有価証券等の合計である貯蓄現在高の階級別の分布を2002年と2017年で比較すると、4割程度が2,000万円以上の貯蓄現在高となっている一方で、貯蓄現在高が低い100万円未満の方や100万円~500万円の世帯の割合がやや増加しております。

 一方で、高齢者が元気になっている、体力面の若返りが見られると言われております。26ページをご覧いただきまして、健康寿命は今、延伸を続けておりまして、2016年時点で男性が72.14歳、女性が74.79歳となっております。また、近年、健康寿命の延びは平均寿命の延びを上回っております。

 27ページ、65歳以上の方の新体力テストの合計点は向上傾向にあります。1998年から2016年までの間に高齢者の体力が5歳ほど若返っていると指摘されております。
次に、高齢者の就業関係になりますが、28ページをご覧いただきまして、左の図、60歳以上で仕事している方々に対して、「あなたは、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいですか」というアンケートの問いに対する回答ですが、約8割が「65歳を超えても就労したい」という回答をしておられます。

 右の図、60歳~74歳の方の就業率は男女ともに年々上昇傾向にあります。特に女性の上昇率が大きい状況になっております。

 29ページ、35歳~64歳の男女に、60歳以降も就任を伴う就労の意向がある方に、その希望する就労形態を聞いたところ、「パートタイムの社員・職員」が最も多く、次いで「フルタイムの社員・職員」という結果になっております。働き方も多様化しているということです。

 30ページをご覧いただいて、高齢者の就業理由ですが、アンケートの結果によりますと、60歳代前半では「生活の糧を得るため」が最も多いですが、60歳代後半にもなると「健康にいいから」、また「生きがい、社会参加のため」といった回答が増えまして、60歳代後半になりますと就業理由も多様化すると考えております。

 31ページをご覧いただきまして、左の図のように日本の人口は2025年以降、それまでの高齢者の急増から、今後は生産年齢人口の急減へと局面が変化をいたします。生産年齢人口の急減とそれに伴う人手不足の中で、右の図のように、高齢者等の労働参加の促進が経済・社会の活力維持に不可欠となっています。

 我が国においては、平均寿命の延伸による国民一人一人の高齢期の長期化への対応という観点からも、また、生産年齢人口の減少とそれに伴う人手不足への対応という観点からも、高齢者の就労促進が重要な課題になってくると考えております。

 32ページをご覧いただきまして、雇用と公的年金の関係でございますが、1994年から年金制度改正と高年齢者雇用安定法の改正という両者の連携により対応がなされてきております。1994年の年金改正以前は、60歳以降の生活は年金を中心としたものと位置づけられていましたが、1994年の改正で、年金については60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金の定額部分というのがあるのですが、それの引き上げを開始いたしまして、これを受ける形で高年齢者雇用安定法は、60歳定年の義務化と65歳までの継続雇用制度の導入に関する計画の策定指示などの改正を行いました。これによりまして、赤字の部分ですが、60歳代前半は、雇用の促進を図りながら雇用と年金を組み合わせていただくという位置づけになりました。

 その後、2000年の改正では、年金につきましては、60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金の今度は報酬比例部分の引き上げを開始いたしまして、一方、高年齢者雇用安定法は、定年の引き上げなどによる高年齢者雇用確保措置の導入が努力義務化されることとなりました。

 その後、高年齢者雇用安定法につきましては、2004年の改正で高年齢者雇用確保措置が義務化され、さらには2012年の改正で希望者全員の継続雇用が義務化されました。
こうした年金、高年齢者雇用安定法の改正によって、60歳代前半については、赤字の部分ですが、雇用を中心とした期間という位置づけになってきていると評価できるかと思います。

 こうした公的年金と雇用の改革の流れの一方で、2の部分ですが、企業年金・個人年金制度につきましては、2011年の法改正で企業型DCの加入可能年齢などについて一部の対応が行われただけで、対応が遅れている部分だと認識しております。

 33ページ、未来投資会議などでは、さらに65歳以上への雇用継続の引き上げに向けた検討がなされており、2018年11月に中間整理が取りまとめられております。

 34ページをご覧いただきまして、適用(加入)と受給の関係を整理したものになります。公的年金の①の部分、国民年金の被保険者資格は60歳の前まで、②厚生年金の被保険者資格は70歳の前まで、③公的年金の受給開始年齢の選択は65歳を基点に繰り上げ、繰り下げとなっています。

 一方、私的年金は、①の部分で確定給付企業年金の加入は70歳の前まで、②確定給付企業年金の支給は60~65歳の間で規約で定める年齢から、③と④の部分が確定拠出年金(DC)の加入になりますが、これは原則60歳の前まで、⑤の部分、確定拠出年金(DC)の受給は60~70の間で、任意の時点で受給可能となっております。この升目を右に動かしていけるかどうかというのが大きな課題となっております。

 35ページをご覧いただきたいと思います。我が国の60歳代の就業率は諸外国と比べても高い水準にあるわけですが、DCの拠出可能年齢は60歳、企業のDCについては最大一部65歳までとなっており、諸外国と比べては短いわけです。

 36ページ、OECDの報告書でも、より確実に十分な退職所得を老後に得ることができるよう長期間のDC拠出を奨励しております。

 37ページ、38ページをご覧いただきたいと思いますが、公的年金は、ご案内のように、65歳の支給を現行であれば70歳まで繰り下げることができ、その場合の増額率は42%となっております。高齢期の就労期間の延伸を年金制度上も反映するとともに、より柔軟な受給のあり方について公的年金サイドで検討を進めておりますが、これにさらに充実した私的年金を組み合わせることで、選択肢が生まれると考えております。

 38ページをご覧いただきまして、フル就業できるうちは公的年金を繰り下げ、引退後、増額した公的年金と私的年金を含む貯蓄の取り崩しで、長期化する高齢期の生活水準を確保することができます。

 部分就業、短時間就業の際には、現行でも公的年金を部分受給して、一部を繰り下げることも可能となっております。この②の際に、例えば公的年金のかわりに、まずは私的年金を充て、公的年金を繰り下げ、または一部繰り下げるということも可能になると考えております。

 いずれにしましても、長期化する高齢期に就労、公的年金、私的年金の3つを組み合わせることが大事になりますし、この3つのほかにも、ここ市場ワーキング・グループで検討されております金融資産の充実、また、不動産資産の流動化などを組み合わせていくことも大事な視点ではないかと考えております。

 39ページをご覧いただきまして、DC制度に対する改善点として、手続や掛金に関する事項のほか、中途引き出しの緩和を求める声があります。

 その一方で、40ページを見ていただきまして、特に2018年1月から始まりましたつみたてNISAとiDeCoは類似の機能を果たしているという指摘がございます。

 この点につきましては、41ページをご覧いただきまして、10月の市場ワーキング・グループでも高田委員からご説明があったとおり、さまざまなライフイベントに対応するため、iDeCo、またNISAがすみ分け、役割分担をしながら、両者がともに拡大・発展していくことが必要ではないかと考えております。

 42ページをご覧いただきまして、現在、社会保障審議会企業年金・個人年金部会というものがありますが、そこで企業年金・個人年金を取り巻く状況変化を踏まえた見直しの検討のご議論をいただいているところです。

 43ページ以降ですが、iDeCoに関する広報にも力を入れさせていただいております。シンポジウム、セミナーの開催、またiDeCo公式サイトの充実、加入者の行動分析、ポスター、パンフレット類の作成、また、民間企業、大学生を対象とした勉強会を実施させていただいております。

 45ページをご覧いただきまして、間もなく年金ポータルというものの運用を開始いたします。これまで厚生労働省、また日本年金機構、さらにはiDeCo実施主体である国民年金基金連合会など、さまざまな関係機関のホームページで個別にお知らせしていた年金に関する情報をシンプルにまとめまして、年金の仕組み、また手続について調べるための入り口として活用できるものをつくりたいと考えております。

 最後になりますが、最終、50ページを見ていただきまして、金融庁でもやられていると承知しておりますが、厚生労働省における職員の福利厚生の一環として、我々、iDeCoのみならず、つみたてNISAにつきましても職員が加入しやすいようサポートを行っております。

 長くなりましたが、以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして事務局の田原総合政策課長から人生100年時代における資産形成について、これも20分程度でご説明をお願いします。

【田原総合政策課長】
 それでは、お手元の資料3に基づきましてご説明をさせていただければと存じます。吉田課長からお話しされたことと重なる面もかなり多いかと存じますので、できるだけ簡潔にご説明を差し上げられればと存じます。

 まず、2ページをおめくりください。まず、現状分析でございますけれども、日本の高齢者世帯の平均所得金額は、欧米諸国に比較しまして決して高くないという状況にございます。公的年金につきましては、ただいまご説明ありましたけれども、OECD平均を下回る状況にございまして、私的年金を含めれば、OECD平均をやや下回るぐらいという状況にございます。

 3ページ目以降でございます。そういったこともありまして、日本の65歳~69歳の就業率は高いという状況にございます。就業理由につきましても、「頼まれたから」とか、「健康にいいから」とか、「生きがい、社会参加のため」といった理由もあるわけですが、大きいのは「生活の糧を得るため」という環境にあるということでございます。

 4ページをご覧いただきますと、そういった中で日本の高齢者の資本所得の割合が諸外国に比べて低いことは、かねてから指摘されているところでございます。

 また、5ページ以降、今後の課題でございます。今後の課題として大きく3つ挙げさせていただいておりますが、1つ目は、先ほど吉田課長からもお話がありました長寿化ということでございまして、資産形成への必要性が高まっているということでございます。

 7ページをご覧いただきますと、これは、日本だけではなくて、国際的にも大きな課題となっているという状況にございます。

 8ページ目以降、加えまして、今、課題となっておりますのが現役世代の収入・貯蓄の減少でございまして、私どものイメージでは、日本人は非常に貯蓄が大好きであるというか、貯蓄を一生懸命、勤勉にするというイメージがあるわけでございますけれども、マクロ経済環境などもございましたし、さまざまな事情から金融資産額は30代・40代の家計を中心に減少しておりまして、資産形成が十分に行えていないという状況にございます。

 また、9ページをご覧いただきますと、統計の見方につきましては、いろいろ気をつけなければいけないところがあるわけでございますけれども、長期的に日本の家計貯蓄率は減少しているという状況にございまして、アメリカ、イギリスと比べて、こういうレベルなのかというのは、私も認識を新たにした次第でございます。

 10ページ、金融資産額につきましては、先ほど吉田課長からご説明ございましたけれども、高齢者世帯で金融資産額が少ない世帯の割合が上昇いたしまして、二極化が進んでいるという状況にあるわけでございます。

 こういった環境の中で、11ページ、私どもでどれぐらいの資産形成をしたらいいのだろうということで、一つ試算をしたものがございます。これは、あくまで65歳で退職後、30年間、世帯で月25万円の生活費を支出する場合ということで、支出につきましては、総務省家計調査で世帯主年齢が65歳以上の1カ月の消費支出という統計を活用したもので、年金収入につきましては、厚生労働省さんの平均モデル世帯からとっているものでございますので、あくまで1つの仮定の計算ということでございますけれども、先ほども収入が20万円、支出が25万円としたら5万円補うという話があったわけですが、退職後の支出が月25万円と不測の支出のようなものがあるとして、1億円程度必要だと考えたときに、公的年金と退職金、私的年金を、8,000万円、それから1,000万円~2,000万円もらえる世帯でありますと、かなり機械的ではありますけども、1,500万~3,000万円程度を資産形成することになってくるかということでございます。

 また、先ほど来ご説明がありますように、退職金ですとか、私的年金がそれぞれ手当てされていない企業にお勤めの方がいらっしゃるわけでございまして、そういった方々につきましては、Cの資産形成部分をためるというより、まずBの退職金・私的年金部分をどういうふうに資産形成していくかということになろうかと思いますし、そもそも厚生年金のない自営業者の方などは基礎年金だけということになりますので、先ほど3本柱という話がございましたけれども、基礎年金を受けながら収入を見込んで、さらにどれぐらい必要かということを各自でご判断されて、資産形成されていくことが必要になっていくということかと存じます。

 1ページおめくりいただきまして、そういった中で課題となってまいりますのが、かねてから我が国でずっと議論されておりますけれども、どういう形で資産形成をしたらいいかということでございます。

 諸外国と比較いたしますと、こちらも名目で比較いたしておりますので、インフレ率などを勘案しますと差は縮むわけでございますけれども、特に大きいのが米国との差でございまして、米国は、この30年間で家計金融資産が2.7倍になりまして、もう1京に近い額になっているということでございますが、日本の場合はほぼ横ばいになっているという状況でございまして、その背景といたしましては運用リターンの違いというものも影響しているということで、積み立て投資というものが重要ではないかということで、ここ数年来議論させていただいているところでございます。

 13ページをご覧いただきますと、そういったこともございまして、アメリカでは、足元20年間で、それぞれの世帯で金融資産額が増加しているわけでございますけれども、特に45~54歳、55~64歳で、しっかりと資産が形成できているという状況になってございます。

 一方、14ページをご覧いただきますと、ちょうど私ぐらいの世代になるわけでございますけれども、アメリカですと、私ぐらいの世代というのは、20年前に大体400万円ぐらい持っていたものが、収入を積み上げた分と運用部分、緑の部分が退職口座でございまして、この大きい青、生命保険と紛らわしいですけれども、青の大きい部分は投資信託、あるいは株式、こういったものの運用を通じまして、かなり金融資産を積み上げているという状況にございますが、日本の場合は、ほぼ横ばいということになっているのではないかと考えているわけでございます。

 こういったことを踏まえて、制度のあり方ということで、16ページ以降でございます。

 現在、生涯を通じた貯蓄の支援手段といたしましては、iDeCo、財形、つみたてNISAというものがあるわけでございます。年金でありますiDeCoですとか、財形年金につきましては、払い出し、拠出可能年齢に一定の制限を設けられているということでございますけれども、つみたてNISAは柔軟に利用できるということでございまして、今日の主要な課題というものは、生涯を通じた中で、主に高齢期の資産形成に向けた資産形成ということかもしれませんけれども、そういったものに対応する制度として、まず年金制度がある中で、つみたてNISAは、それを補うとともに、そこに至るまでのさまざまなライフイベントにも柔軟に対応できるという特徴があると考えております。

 また、そういった観点から、税制面でも差がございまして、iDeCoにつきましては、拠出時と運用時に税金がかからない。給付時につきましては税金がかかりますけれども、さまざまな控除制度ですとか、軽減税率が適用されるという一方、NISAにつきましては、当初は課税ということで、課税された資産を非課税で運用し、給付時も非課税ということになっているところでございまして、その比較につきましては、17ページに記載させていただいているところでございます。

 18ページでございますけれども、私どもといたしましては、そういった観点から、つみたてNISAの普及・定着というものが重要であると考えておりまして、現状、つみたてNISAにつきましては、ご利用者数が100万を超えたということで、1年で100万を超えたというのは非常に順調だったと思うわけですけども、成人人口に占める割合を見ますと1%ということで、我々の直面する課題からすれば、まだまだこれからかと思っているところでございます。

 また普及に当たりましては、当然のことでございますけれども、iDeCoといった制度とも足並みをそろえて、普及に努めていく必要があると考えているところでございます。

 19ページ、ご参考でございますけれども、こちらも先ほどの吉田課長のプレゼンテーションの中で、高田委員のプレゼンテーションを引いたものございましたけれども、併用によりまして、日常のさまざまなライフイベントに対応しながら、生涯を通じた資産形成が可能となるということでございまして、両制度につきましては、そういう意味では補完し合うということであろうかと存じます。

 そういった制度につきましては、できるだけわかりやすい制度という観点で、先ほど吉田課長からもご指摘がありましたけれども、一元化を目指すとか、いろいろな意見がございまして、そういったことについては柔軟に考えていく必要があろうかと思いますけれども、先ほど来申し上げているような観点からしますと、まずもっては両制度をしっかり定着させていくという観点から、何が必要なのかということを考えていく必要があるのかと思っている次第でございます。

 最後のページでございますけれども、投資ですとか、資産形成につきましては、さまざまな議論があるところでございまして、もとよりリテラシーを高めて、その上で、それぞれの方々のリスク選好に応じて判断されることが大原則でございまして、そこが大きく日本では欠けていたということで、その反省をもとに今、金融庁といたしましても、さまざまな関係者の方々と足並みをそろえて金融教育に力を入れているところでございます。

 一方で、私どもで今、そういう中でつみたてNISAのセミナーをやらせていただいておりまして、ある自治体でやらせていただいたセミナーの前後のアンケートの結果ですが、セミナー前、つみたてNISAを開設されている方は4%でしたが、セミナー後は4割の方がつみたてNISAの活用を検討したいということでございますので、資産形成というものはどういうものかということについて、ご存じの方が残念ながらまだまだ少ないということで、どういうふうにリテラシーを高めていく、あるいは制度を普及・定着していくかということについて、私どもも力を入れてやっていく必要があるということであろうかと考えているところでございます。

 以上、駆け足でございますが、ご説明とさせていただきます。よろしくご議論のほどお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして事務局の小森課長から今後の議論の見取り図、高齢社会における資産の形成・管理の心構え、そして高齢社会における金融サービスの方向性について、10分程度でのご説明をお願いいたします。

【小森市場課長】
 まず、資料4をご覧いただきたいと思います。今後の議論の見取り図ということで、これから当ワーキング・グループにおいて、どういうところを目指していくのかといったことで、1つの案を提示させていただいているものでございます。

 図をご覧いただきますと、報告書(本体)、付属文書①、②ということで3つございます。

 まず、付属文書①のところからご説明させていただきますと、資産の形成・管理での心構えということで、当ワーキング・グループでの議論を踏まえて、高齢社会が進行する中、資産形成・管理において資産寿命を延ばす観点から、広く国民が知っておくことが望ましい事項を整理したものといったことで、国民向けの文書ということでございます。こちらにつきましては、前回、骨子のようなものを一度、ご議論いただいたところでございます。

 その右側にある付属文書②金融サービスの方向性というものでございます。文書①の中で示される国民のニーズなどに対応いたしまして、顧客の資産寿命を伸ばしていく上で金融サービスの提供者がどのようにして、こうしたことをサポートできるのか。考えられる対応を整理する紙ということでございまして、こちら金融サービスを提供する者に対しての文書といったことでございます。

 上の報告書(本体)でございますけれども、これは昨夏、金融庁で出しました中間的な取りまとめ、それから市場ワーキング・グループでのご議論を踏まえまして、高齢社会における金融サービスのあり方について幅広く整理したものといったことでございます。

 付属文書①や②の内容に含まれている事項についてはもちろんでございますけれども、これにとどまらず、資産形成制度や金融リテラシー、高齢者など顧客の側に立ったアドバイザー、高齢者などの顧客の保護、これらの項目は例示にすぎませんけれども、こうしたものも含めた形で幅広く整理した報告書をまとめていってはどうかといったことでございます。

 一番下の※でございますけれども、こうした資料を作成した後、国民向けである文書①につきましては、より平易な言葉を用い、さらにライフステージ別など、焦点を絞った形で国民向けのわかりやすいパンフレットを事務局において作成してはどうかと考えているところでございます。

 続きまして、資料5をご覧いただきたいと思います。高齢社会における資産の形成・管理での心構えということで、前回いただいた議論を踏まえまして大幅に加筆を行っているものでございます。

 1番目の現状認識のところ、左側の項目はほとんど変わっていないところですけれども、例えば「長寿化に伴い資産寿命を伸ばすことが望まれる」ということで、前回、「必要」という書き方をしていたのですけれども、少し表現をやわらかくしております。

 また、右側につきましては、少し言葉を足しております。例えば「現役期における資産形成やリタイヤ期以降の資産管理など」といった前段をつけまして、「生涯に渡った計画的な資産形成・管理の重要性を認識する」といったようなことでございます。

 その下の項目につきましても、金融サービス提供者のサポートのあり方について、「誠実にコンサルティング機能を発揮し個々人をサポート」といったようなことを書いております。

 3つ目の点につきましても、自助の充実につきまして、「就労継続による収入増の検討や支出等の再点検、長期・積立・分散投資等」ということで言葉を補っております。

 下の項目につきましても、「本人」のほか「親族、地域コミュニティ、社会全体」といったことで言葉を増やしており、あるいは「事前の備えや認知・判断能力の低下後の適切な対応」といったことにしております。

 下の具体的な心構えのイメージでございます。まず、1点追加しておりますのが、それぞれの時期に対応いたしまして、どういう時期であるかといったことを一言で書いている文をつけております。

 現役期につきましては、「長寿化に対応し、長期・積立・分散投資など、少額からでも資産形成の行動を起こす時期」という形で定義をしております。レ点で書いてあるところにつきましても、上の現状認識と同様に言葉を付け足したり、あるいはトーンを少しやわらかくするといったようなことをしているところでございます。

 大きく変わっているような点について申し上げますと、2つ目のレ点でございますけれども、「生活資金やいざというときに備えた資金については元本の保証されている預貯金等により確保しつつ、将来に向けて少額からでも長期・積立・分散投資による資産形成を行う」といったことで言葉を足しております。

 その下の矢印がついております。ここの部分に限りませんけれども、この矢印の中で、レ点で書いてあるようなことにつきまして敷衍して、さらに説明しているといったようなことでございます。

 こちらについてお読み上げさせていただきますと、「つみたてNISAやiDeCoなど、長期・積立・分散投資のための制度を利用して、少額からであっても安定的に資産形成を行う」「資産形成においては、①投資期間が長期であればあるほど、投資タイミングと投資対象を分散すればするほど、市場の価格変動に強く、収益がバラつきにくくなること」「市況変動に一喜一憂することなく着実に長期・積立・分散投資を継続することが、長期的な資産形成には重要であること」「自らにふさわしいリスクの程度を認識し、過度にリスクの高い投資は行わないこと」「金融サービス提供者に支払う販売手数料や信託報酬等の高低が長期投資の果実に与える影響が大きいこと等を認識する」といったことを書いてあるところでございます。

 下のライフプラン等に関するところにつきましても矢印が伸びております。「資産形成を実践して金融に関する知見を得ていき」、実践的なリテラシーといったものを得ていき、「自らの資産及び収入・支出状況と照らし合わせ、長期的なライフプラン・マネープランを検討していく」と書いております。

 下のレ点につきましては、今回新たに加えたものでございます。「金融サービス提供者が顧客側の利益を重視しているかという観点から、長期的に取引できる提供者を選ぶ」と書いてございます。

 次に、その下のリタイヤ期前後でございます。リタイヤ期前後の方につきましても、長寿化に伴いまして数十年ぐらいスパンが想定され得ることから、この期につきましては、「リタイヤ期以降の人生も長期化していることに対応し、金融資産の目減りの防止や計画的な資産の取崩しに向けて行動する時期」と書いております。

 1個目のレ点につきまして、こちらも矢印を伸ばしております。「金額や形式等を退職前の早期に確認する」「公的年金等を始めとする毎月の収支や資産・負債等を『見える化』し、老後の生活に十分なものかを確認する」と書いております。

 これが退職金がある場合でございましたけれども、その次のレ点で収支の改善策の実行ということで、老後の生活に十分なものなのかを確認した後、「自らにとって十分な金融資産がないと考える場合には、フルタイムでない場合も含めた就労の継続、支出の見直し、自宅等の不動産がある場合には売却等による金融化、などを検討する」といったことを書いております。

 その上で、その下のレ点が中期的な資産運用の継続、計画的な取り崩しの実行ということで、こちらにつきましても長い矢印の内容となっておりますけれども、「長期・積立・分散投資を現役期より行っている場合は、続けられるうちは続け、長期運用による果実を享受しながら資産を計画的に取り崩す」「長期・積立・分散投資を現役期より行っていない場合であっても、長寿化を踏まえると、リタイヤ期前後から長期・積立・分散投資を始めても遅くない場合も多い」「自身の資産や収入・ライフプランをよく吟味し、必要に応じ、信頼できるアドバイザー等に相談するとともに、リスクにもよく留意した資産形成を検討することも考えられる」「なお、退職金等と資産を運用する場合は、ライフプランを踏まえ、当座の生活資金や十分な予備資金等を余裕をもって控除した上で、当面の資金使途がない資金についての運用を検討する。その際も、加齢とともに取れるリスクが小さくなっていくことを認識し、リスクを抑えた長期・積立・分散投資を基本とする」と書いているところでございます。

 裏のページに移っていただきまして、高齢期でございます。こちらにつきましては、資産形成といった点から離れまして、定義でございますけれども、「資産の計画的な取崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期」としているところでございます。

 高齢期に沿ったマネープランの見直しというところの矢印でございますけれども、「健康寿命を過ぎた頃から心身の衰えは進行し、その程度は個々人によって様々。各々の衰えの程度や望む水準に応じて、医療・介護費がどの程度かかり得るか、見極める」。

 次のレ点につきまして、「認知・判断能力の低下や喪失に備え」の後に、「本人や周囲が気づく前から」という言葉を加えさせていただいております。その上で、下の点につきましても追加を主にさせていただいておりますけれども、「取引関係のシンプル化など、金融面の自身の情報を整理するとともに、適切な限度額の設定など、使い過ぎ防止のための手段を講じる」ということで、前回、前々回のプレゼンテーションの中でご提案がありましたものを記載させていただいております。また、「金融資産の管理方針(運用・取崩し、財産の使用目的、遺産相続方針等)を決めておく」といった点を追加しております。

 その下の矢印のところでございます。「認知・判断能力が低下・喪失したとしても、可能な限り、これまでと同様の金融サービスを受けやすくするよう、金融面の本人意思を明確にしておく」といった点を加えているところでございます。

 以上が資料5についての説明でございます。

 最後に、資料6になります。こちらが高齢社会における金融サービスの方向性ということでございまして、資料5で示されている顧客・国民の側のニーズに対応するために、どのような金融サービスが今後考えられるのかといったことについて書いているものでございます。

 四角囲みになっている1ポツでございます。「顧客の変化や社会の構造変化に応じた金融サービスの方向性」ということで、長寿化に伴って自助を充実させるニーズが増えていることに応じて、「資産形成・管理やコンサルティング機能を強化」と書いてございます。

 また、「ライフスタイルや保有資産、所得等の多様化により個々のニーズは様々」で、「多様な顧客に応じ、商品・サービスの多様化や『見える化』を推進」ということを書いてございます。

 3つ目が認知・判断能力の低下・喪失への備えを行う顧客の増加といったものに対しましては、「判断能力が高いうちに示された本人意思の尊重や資産の運用・保全の高度化に資する商品・サービスの充実」といった方向性を示しているところでございます。

 この3つに共通する前提、あるいは共通する事項として、下の2つの点も非常に重要ではないかと考えております。

 1つ目が顧客本位の業務運営の徹底ということで、「顧客にとって、過度にリスクの高い商品の販売を行わない等、ふさわしいサービスを提供することや手数料の明確化、リスクやリターン等の分かりやすい情報提供等」といったような顧客本位の業務運営が前提となるものだと考えております。

 また、サービスが持続可能となるようコストの開示、あるいは適切な対価の請求といったご議論もいただいたところでございます。

 下の2ポツでございます。顧客の各年代別から見た金融サービス提供者の考えられる対応ということで、資料の5で示しておりました現役期、リタイヤ期前後、高齢期といったそれぞれのライフステージに応じた顧客の一般的な特徴と、それに対応して金融サービス提供者が考えられる対応を整理しているものでございます。

 まず、現役期でございますけれども、他の年代に比べますと保有資産は少ない、あるいは住宅ローン等の負債を多く保有しているという特徴があるところでございまして、ネットの金融資産はまだ多くないといった状況であります。その一方、老後用の資金も含めまして、資産形成ニーズを潜在的に保有している層だということでございます。

 こちらにつきましては、「顧客の要望に応じ、金融以外の資産・負債も含む家計のポートフォリオ全体を俯瞰し、個々の状況に即したマネープランの提案など総合的なコンサルティングサービスを提供」「資産形成のニーズに対して、短期的な取引関係に終わらせず、長期・積立・分散投資等を提案」「顧客との信頼関係の構築により、退職後も含めた長期的な取引関係に繋げる」といったような方向性が考えられるのではないかと考えております。

 リタイヤ期前後につきましては、定年あるいは加齢によって働き方を変える、退職金を得るといったような形で、資産運用や資産取り崩しに入るということでございます。収支の改善が必要な場合には、就労の延長や支出抑制が有力な選択肢になります。また、残りの寿命の過ごし方を具体的に考える時期でもあるということでございます。

 金融サービス提供者の考えられる対応といたしましては、「就労延長や支出抑制策を含めた、特定の金融サービスに留まらないライフプラン・マネープランの提供(退職金がある場合には、それを含めたプランの提供)」といったことが考えられると思います。

 また、就労延長、資産の取り崩し、長生きリスク、こうした状況に応じた多様な商品サービス、定率の取り崩しのサービス、ターゲット・デート・ファンド、トンチン年金等といったものがあろうかと思いますが、こうしたものの充実。顧客の利益に沿ったワンストップ化サービスの提供。また、他社の類似商品との比較のしやすさに配慮した商品の説明、内容の開示といったことも考えられると考えております。

 高齢期でございますが、心身の衰えに応じ、介護等のニーズが増大し、マネープランをまた改めて見直す時期ということでございます。また、認知能力の低下・喪失に備えて、金融面でも準備を行う時期であろうかと思います。

 金融サービス提供者側の対応といたしましては、「非金融サービスとも連携した総合的なサービスの提供」「認知能力が衰えた後でも、できる限りそれ以前と同様に金融サービスを享受できる環境作りの推進(金融ジェロントロジー等の学問的知見の取入れ、信託サービスや投資一任サービスの強化)」といったような点ではないかと存じます。

 資料6につきまして、また先生方からご議論、ご意見をいただきまして、加筆、あるいは改訂といったことを今後考えていきたいと思っております。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければありがたく存じます。

 進行役として申し上げさせていただきますと、今後、このワーキング・グループで取りまとめに向けたと議論をお願いしたいと思っておりまして、今日で申しますと資料4の見取り図というのは今日初めてお示しするものになります。

 それから、資料5は、前回お示ししてご意見をいただいたものを盛り込んで改訂したものであり、これに対して金融セクター側の話を書いた資料6は、今日初めてお示しするものです。

 したがって、資料4と資料6は今日初めてお示しするものですので、幅広くご意見、ご指摘をいただけると大変ありがたく思います。資料5につきましては、ご意見をぜひいただきたいわけですけれども、できましたら、具体的な修正案なり、そういうものもあわせてお出しいただけると後の作業に大変ありがたいので、その辺も意識していただけますと大変ありがたく存じます。

 今回も大変たくさんの委員の皆様方にご出席いただいており、ありがたく存じます。他方で時間も限られておりますので、大変申し上げにくいのですけれども、ご発言はなるべく簡潔にお願いできればありがたく思います。

 それでは、どなたからでも、どの点についてでも結構でございます、ご質問、ご意見をお出しいただきたく存じます。いかがでしょうか。池尾先生、どうぞ。

【池尾委員】
 資料5ですけれども、前回から随分拡充されたというか、いろいろ目配りされて、よくなったといえば、よくなったと思いますが、丸くなった感じで、メッセージ性みたいなものは逆に薄れたのではないかという気はします。

 もちろん、いろいろな意見があるので、相反するような意見もあるというか、特に高齢者のライフスタイルは、かなり多様だということからして、当然いろいろな意見が出てくるということもあるので、いろいろなことに配慮する必要性は確かにある。だけれども、あまりヘッジすべきではないという感じはして、特に国民向けにパンフレットをつくるとかいうことを考えているのであれば、メッセージ性というのははっきり出すべきじゃないかという気はしています。

 関連しますが、例えば厚生労働省さんの資料でも、「マクロ経済スライドで中長期的な給付の水準が調整される」という表現になっているわけですね。これは、はっきり言って削減されるとか、低下するというのが事実だけども、それをやわらかな表現にしているのだけど、やわらかな表現にするということが批判を避けるという意味で賢明なのかもしれませんが、はっきり言うべきことははっきり言わなきゃいけない。

 はっきり言うと、だけど、いたずらに不安をあおるべきではないという批判も当然考えられて、そういう批判にも一定の理があることも事実ということで難しいのですけども、これまでの役所の枠を超えて国民に訴えかけるという姿勢をせっかく金融庁としてとられているのだから、ぶれないでメッセージ性を大事にするようにお願いしたいということで、修正というよりは、スタンスとしての要望を申し上げておきたいと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、駒村先生、高田委員、宮本委員、野尻委員の順でお願いしたいと思います。駒村先生、どうぞ。

【駒村委員】
 ありがとうございます。今の池尾先生のお話を引き継ぐわけではないですけれども、厚労省の資料の23ページ、ここが1つ重要な図になるわけですけれども、先ほど池尾先生からもお話があった点ですけれども、代替率62.7%が2014年度、1974年生まれからは代替率が52%、50%と下がっていく。この代替率の高さ自体は意味がなくて、変化率が非常に重要な意味を持っているということですね。

 つまり、約63%のものが50に下がるということは、年金の実質水準が20%下がる、対賃金で評価して20%下がるということを意味している。特に基礎年金については、対賃金比で36.8%が26まで下がるということは、30%の実質年金が下がるということを意味しているということが、国民にこれで伝わるかどうかということだと思います。

 さらに、この次のページを見ると、24ページには、今の高齢者の標準的な収入・支出状況が出ていますけれども、今のマクロ経済スライドを受けると社会保障給付の19万円は、おそらく15万円ぐらいまで団塊ジュニア世代から先は下がっていくだろう。

 それから、非消費支出の2.8万円は、昨年5月の経済財政諮問会議の見通しだと、これが1.3倍、1.4倍ぐらいに上がってくるとなると、月々の赤字は5.5万円ではなくて、団塊ジュニアから先の世代は10万円ぐらいになってくるのではないか。しかも、それが長寿により長い期間続くということだから、早目に資産形成に入っていかなければいけないことを国民、特に若い世代に伝えるようにしなければいけないと思います。

 その上で、さらに厚生労働省の資料でとても重要なのが37から38ですけれども、就労と公的年金と私的年金の最適ミックスを選べるような柔軟な仕組みにしていきましょうということは極めて重要なメッセージであろうと思います。

 ただ、政府として、よくよく取り組んでいただきたいのは、繰り下げ受給にしろ、退職老齢年金にしろ、就労継続にしろ、在職老齢年金の問題とか、加給年金の問題とか、あるいは社会保険料あるいは税が上がって手取り部分があまり増えないとか、そういうものもありますので、税制も含めてパッケージで、この議論を進めていただかないと、アクセルとブレーキを同時に踏んじゃうような形になっちゃうと思います。

 今の話をストックベースで見たのが、金融庁の資料3の11ページですけれども、今の高齢者ではなくて、団塊ジュニア世代のマクロ経済スライドがきき切った世代を見ると、この絵姿もかなりマイルド過ぎる。退職後の収入はもっと減るでしょうし、支出は増えることは覚悟しなきゃいけない。

 したがって、金融庁の資料になってくるわけですけれども、単に節約だけではどうにもならない。これからマクロ経済スライドから逃げられないわけですし、社会保険料の上昇は続きますから、今の高齢者も単に節約だけではなくて、ちゃんと将来の絵姿を見据えて、運用も含めて資産の維持に努めていくべきだというメッセージを明瞭に伝えていただきたいと思います。

 それから、資料5、資料6であります。資料5には、前回、私たちのチームで報告したように、加齢とともに認知機能低下リスクというのは誰にでもあるということを強調していただくことと、早目の対応が必要であるということ。

 それから、資料6については、まさにファイナンシャル・ジェロントロジーの研究は私どももやっているわけでありますけれども、もう一つ、新金融サービスについても、依然として介護関係のサービスと金融関係のサービスが連携していくという踏み込みがまだ広がっていないようにも思いますので、両者にまたがるような民間のサービスの開発というか、推進というものを民間企業も意識していただきたい、そこは強いメッセージが伝わればと思います。伝わるかどうか、先ほどの池尾先生と同じですけれども、強いメッセージが伝わるような書き方にしたほうがいいのではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 どうもありがとうございます。今回、厚労省の吉田課長様にご説明いただいたのは非常によかったと私は思うのです。今回の対応、もちろん金融庁の金融審議会ということではあるのですが、今回の高齢化全体ということでありますと、自助と共助の連携というのでしょうか、こうした部分が非常に重要になるだろうと思います。

 先ほど池尾先生からも駒村先生からも代替率等の議論があったわけですけれども、考えてまいりますと、代替率がだんだん下がってくるような状況の中で、当然のことながら自助努力に対応して資産形成をしなきゃいけないこともあるわけですが、ただ一方で、一定の公助があることのセーフティーネットという部分も重要だろうと思います。

 そうしますと、いかに全体的なバランスをどうしていくか、また統合してトータルに制度設計ができるか、そういうトータルなピクチャーをいかに示すことができるかというのが重要なところになるのだろうと思います。

 もちろん、こうやって代替率が下がってくるということになりますと、吉田課長の議論の中にもあったのですが、例えばDB、DCでも、特にDCのところで、どうしても元本保証型、確保型のものが多くなってしまうような現実もあります。要は、考えてみるとリスク許容度があまり上がらない状況であるわけで、リスクプレミアムが高まってしまっているので、そんな状況になっているということもあるわけです。

 ですから、そのような状況もある中で、こうした現実にどう対応できるかということは重要で、いかにトータルの中での一体化した対応ができるかというところが重要だろうと思います。

 そうなってまいりますと、リスク性資産というのでしょうか、元本保証型のところからなかなか脱出できないことを考えると、今回のこういう議論を通じて、よりインベストメントチェーンを拡大できるような、マクロ的な環境づくりも同時に必要ではないかと思います。これだけ自助努力をということで、先ほどの議論の中でも資産のウエートがなかなか高まらないというような、アメリカと比べても低いということがあるわけです。従っていかに成長戦略として、自助努力による資産を高めることが国民的な合意として資産形成を行う、そのためにも、国富を上げるといったようなことの重要性というものをインベストメントチェーンを通じて議論する必要があります。担い手である金融機関も、また税制を通じてもというようなことも含めて、またマクロ的な環境も含めた対応をという、その次元も私は重要ではないかと考えておりまして、その辺の指摘も対応する必要があるじゃないかと思います。

 それから、3番目に金融機関が担い手という金融サービスの方向性になるわけで、今回の資料で言いますと4番目でありますとか、6番目といったところが中心になるわけであります。私は、今回のこういう金融サービスの担い手ということで言いますと、場合によっては、例えば最近、医療なんかでは、かかりつけ医というのがありますけれども、場合によってはかかりつけ金融機関みたいな、そういう家計に寄り添う対応みたいなものがあってもいいのではないかということを非常に感じているわけであります。

 そのような状況の中で、こうしたかかりつけ金融機関というものを含めた全体での担いをどのようにできるのかということ。また、こうした高齢化、もしくは認知症も含めた対応の中で、どのような形で対応していくのかということが重要なのではないかと思います。

 そういう意味では、高齢化については、誰でも対応するものだということで、私も前回、成人式だけではなくて、高齢式みたいなものも必要ではないかということを申し上げたわけでありますけれども、必ず通るものとしてのメニューみたいなものを、今回のこうした国民合意的なものの中で、より取り入れていくということも重要ではないかと思います。また場合によっては、そうしたかかりつけの金融機関というのでしょうか、このようなものの中で必ず対応できるというのでしょうか、いろいろなイベントとして対応できるようなことが重要ではないかと思います。

 また、今回の金融サービスの方向性という中では、先ほども資料6の中の議論としてあるのですけれども、いかに利便性を考える、顧客ファーストというような状況になってまいります。いかにこうしたサービスが一体としてできるような、すなわち顧客の側からした対応というものを、今回の対応を含めてより進めることと、最後にご指摘もございましたけれども、非金融サービスというものと今回の高齢化ジェロントロジーというのは一体化しておりますので、こうしたものとの連携が重要になります。場合によっては、制度面におきましてもより一体として対応できるようなインフラ整備というようなものが必要ではないかと思っております。今申し上げたように、今回の金融を超えた、いかにトータルで国民合意ができるのかというところは、いろいろな意味の壁を越えてというのでしょうか、対応できるようなことが重要ではないかと思う次第でございます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、宮本委員、どうぞ。

【宮本委員】
 ありがとうございます。前回のワーキング・グループで出された「心構え」について、このような内容を広く発信していくことの重要性や、その際に留意すべき点など、本当に様々な角度から活発な議論がなされて、ここまで来ているということだと思います。今日ご説明いただいた「心構え」は、前回の意見も踏まえて、よくまとまっていると思いますし、池尾先生のおっしゃるようなメッセージ性等を盛り込んだパンフレットによる発信は、事業会社においても活用して参考にできるもので、産業界から見ても非常に重要であると思います。

 それから、金融サービスの方向性については、このワーキング・グループでこれまでも議論があったとおり、顧客本位の業務運営が大前提になると思いますが、投資信託を1つの例としても、一般の個人にはネーミングがわかりにくいといった点とか、商品の数が多いことで比較検討を行うことが難しいというような課題もあると思います。本日事務局で作成された資料にも記載の通り、わかりやすさや手数料を含めた類似商品との比較のしやすさに配慮した商品の説明、あるいは内容の開示等、金融機関側の見える化の推進も極めて重要だと考えています。

 それから、厚生労働省から本日、iDeCoをはじめとした私的年金の現状と課題についてご説明いただきましたけれども、当社の例も少しここで述べさせていただきたいと思います。

 1点目は、高齢者の就業という点です。高齢者の就業拡大については、当社も現在、新たに定年の年齢を60歳から65歳に引き上げると共に、給与・退職金制度を含む具体的な制度設計の検討を始めています。これに関しては、年金支給開始年齢の引き上げという対応もありますが、会社にとってはベテラン従業員の退職とか、少子化の中での採用難という状況の中、技能の継承とか、人材の確保といった面から定年年齢の引き上げという側面は非常に大きな意味を持つと考えておりまして、これによって現場力の維持とか向上を図ろうということも重要だと考えています。この複数の視点を念頭に制度改定を検討しているところであります。

 それから、2点目は見える化ということです。当社も社員向けの支援メニューの1つとして選択型のDCを用意しているのですけれども、ご説明にもあったように、20代に元本確保型商品の資産の比率が高いといった面も見受けられます。社として、社員の老後の資産形成に向けた教育面の取り組みに努めていますが、リタイヤ期前後に限らず、現役期においても将来の収支とか資産・負債の見える化、これによって老後の生活を見据えて、個人で確認ができることは非常に重要だと考えておりまして、今回の「心構え」や、このワーキング・グループでの総括が非常に強い後押しになっていくことを、産業界としても期待しているところであります。

 以上であります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 ありがとうございます。まず、厚生労働省の方がヒアリングに参加されるというのは、我々にとっては非常に重要なことだと思っています。ほかの委員からも、そのご指摘はあって、大変うれしいことだと思っています。

 今日たくさん資料が出ておりますので、意見は5つほどにまとめました。なるべく簡単に申し上げていきたいと思います。

 1点目は、資料3になります。11ページ、先ほど駒村先生も、このページ、言及されていたのですが、私どものように投資教育をやっている中で、よくこれに類するものを使うのですけれども、1点考えておかなければいけないのは、左側の支出の合計は、毎年の数字の掛け算でつくり上げていく。右側のAも同じような毎年の数字の掛け算、もしくは毎年の数字の積み上げでつくっていくのですが、BとCは現在高になるということで、一般的に考えると割引率を使うとかいう形にしないと、PLとBSがごちゃごちゃになっている感じがします。

 それを考えると、必要な金額というのがもっと大きい可能性もあれば、少なくて済む可能性もあるというところは、我々、もう少し厳密に議論していく必要があるのではないかと思います。

 それから、同じ資料の18ページ、資産形成期に対してのつみたてNISAというのは非常に大事だということは重々認識した上ですが、我々の議論の中では、退職後というか、資産の取り崩しのシーンも出てくるわけでして、そちらは、これまであまり目を向けられていなかったという点でいくと、一般NISAをどうしていくかということも議論の対象として大事ではないかと。要は、高齢期に入って、つみたてNISAがどれだけ効力があるのかということだと思っています。

 その意味で、一般NISAについてどう改善していくというか、どのように変えていくかが大事なポイントになるのではないかと思っています。これが2点目になります。

 それから、3点目になりますが、資料4、資料5、資料6で、国民側の心構えと金融機関側の対応の整理というのがそろってきました。非常にいいアプローチではないかと思っているのですが、1つ気になっているのが資料5の中の真ん中、現役期ですが、ライフプラン・マネープランの検討のところで、信頼できるアドバイザー等を見つけて相談をするという、私は大事なメッセージだと思っているのですが、これに対する金融機関側のアプローチはどうすべきなのかというところは、できれば対になっているのがいいと思っています。

 広く言えば、顧客本位の業務運営の徹底というところになると思うのですが、せっかくであれば、そこの対応があるといいのではないかと思いました。これは3つ目になります。

 それから、同じ資料5ですが、リタイヤ期前後の3つ目のレ点のところを読みますと、「中長期的な資産運用の継続(長期・積立・分散投資等)と計画的な取崩しの実行」、これも細かい点ではあるのですが、積み立てしながら取り崩しをしましょうというのはロジックとしてはとても合わないと思っておりまして、取り崩したお金をまた積み立てしますという話は、毎月分配型投信の分配金を受け取って、それをまた再投資するみたいなイメージにつながりますので、私としては、ここは長期とか分散投資は大事だと思うのですが、取り崩しの時期に積み立てという言葉が重なることは、メッセージとしてはあまりクリアにならないのではないかと思っております。どう書き直していくべきかは、別途、議論を必要とするのではないかと思います。

 それから、最後のポイントですが、せっかく厚生労働省がヒアリングにご参加いただいたこともあって、この中でカバーされていないところで、私は、自分がイギリスの制度設計等を少し勉強した経験もありましたので、そこからいくと、確定拠出年金とNISAとの最大の違いは所得税の控除があるところだと思うのですが、この所得税の還付の方法が、イギリスの場合ですとDCの口座に振り込まれていきます。変な言い方ですが、政府拠出みたいなものですね。本人の拠出、企業の拠出、それに税金の還付による政府拠出というようなものがあります。

 実際やるとなると、そう簡単じゃないというのもよく承知した上ではあるのですが、それによってDCの加入者、特にiDeCoだと思うのですが、加入者のインセンティブが上がるのであれば有効だと思います。政府に負担があるわけではないですし。どうせ銀行口座に返しているのだとすれば、これをDCの口座に振りかえるだけの話ですので、ぜひ、そういう形での加入者へのインセンティブアップみたいなものもできないだろうかと考えています。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、ここで休憩をとらせていただきたいと思います。今、札を立てていただいている委員の先生方、10名いらっしゃるのですけれども、休憩後の順番としては、私のメモで申し上げますと佃委員、中野委員、鹿毛委員、林田委員、加藤委員、福田委員、島田委員、神作委員、黒沼委員、竹川委員の順でお願いしたいと思います。

 それでは5分間、休憩をとりたいと思います。よろしくお願いします。

( 休 憩 )

【神田座長】
 それでは、再開をさせていただきたいと思います。

 佃委員、中野委員の順で、佃委員、どうぞ。

【佃委員】
 ありがとうございます。私からは、質問半分、コメント半分みたいな感じですけども、資料4、資料6に「金融サービス提供者」という言葉が何度か出ていると思うのですけども、この範囲ってどこからどこまでかという質問です。

【小森市場課長】
 基本的には金融機関の方々というふうに思っておりますが、他方で金融サービスを提供する人たちが大きな金融機関にとどまらず、アドバイスされる方方たちも含み得るものだと意識しております。

【佃委員】
 ありがとうございます。そうすると、例えばアセットオーナーは、一切、今回の対象外と理解しておいたほうがいいわけですね。

【小森市場課長】
 リテールの場面などで、個人とつながっている人たちというのを主に意識しています。

【佃委員】
 ということですね。ありがとうございます。

 というのは、資料4の上に高齢社会における金融サービスのあり方について幅広く整理とあって、一方で、先ほど田原課長からご説明いただいた資料3の12ページを見ると、日本では運用リターンによる金融資産額の伸びが小さいとあり、ここは本質的な課題だと思います。

 そうした中で1点、これは、吉田課長にご質問ですけども、たまたま一昨日、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議でも議論になったのですけども、スチュワードシップ・コードの精神を現実のものにしていくことは極めて大事だし、特に高齢社会になればなるほど非常に大事になってくると考えていますけども、スチュワードシップ・コードの受け入れを行う企業年金等がいまだに少数にとどまっているという現状があると思います。

 アセットオーナーが高齢社会の中でますます頑張っていただかなきゃいけない中で、コードの受け入れすらしていないというのはいかがなものかと思うのですが、このあたり、厚労省としてどのような課題認識をされているか、お伺いできればと思います。

【吉田企業年金・個人年金課長】
 ありがとうございます。企業年金にとっても、スチュワードシップ活動を行って、中長期的に投資リターンの拡大を図るというのは、高齢期の所得確保を図るという企業年金の基本的な役割となじむわけでありますので、受給者の期待にも沿うという意味では大きな意義を持っているとは思っております。

 そういうことで、資産運用のガイドラインの中でもちゃんと評価軸に入れてくださいということは、さきの改正でやっているわけですが、いかんせんご指摘のとおり、今受け入れたところが15基金しかないというような状況でございまして、現場、企業年金の人たち、職員さんを含めてですが、一体何をやったらいいのか、また、その不安みたいなのも一方であると聞いておりますので、ここは我々のみならず、金融庁さんともしっかり連携をして、経済界含めて、母体企業含めて、企業年金側の理解を得られるような取り組みをしていかないと、今、言っているだけで、受け入れてくださいという形で言っていて、具体的なアクションがこの一、二年間続いていない。15基金しか進んでいないというところに問題意識を我々も持っていますので、金融庁さんと一緒に取り組みを進めていきたいと思っております。

【佃委員】
 ありがとうございます。個人的には、一番川上のアセットオーナーが不安だからという理由でリスクアバーシブになっちゃうと、まさに先ほど高田委員からご指摘があった全体のインベストメントチェーンが機能しなくなってしまうので、そこはぜひ金融庁さんと一緒にやっていただければと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、中野委員、どうぞ。

【中野委員】
 ありがとうございます。資料5の心構えについてからです。私自身、このワーキング・グループにおけるゴールの方向性が、これでより具体的に認識できるようになったと感じております。

 一方で、最初に委員からコメントがございましたのと同様に、表現がぬるくなったなと感じます。最近の金融庁さんのメッセージというのは非常に強くなって、具体的になった。そして、行動惹起に向けた、よりはっきりしたメッセージという意味で、僕は非常に高く評価していると、僭越ですが考えていたものですから、この言葉遣いがすごくぬるくなって、残念だと感じているところです。

 そして、全般にぬるくなった部分があることも含めてですが、特に現役期に対しては強烈な危機意識の惹起があってもいいのではないか。

 危機意識というのは、言ってみれば20世紀の1億総中流社会というものがまだ前提にあって、親御さんが教育をしてきて、その認識から抜け切れていないという途上に日本の我々世代がある中で、もうそうではないのだ、これから訪れる社会はいや応なく格差社会だ。格差社会というものが本来のグローバルスタンダードであって、格差社会をしっかりと受け入れた上で、自分たちがどう行動しなければいけないかという行動惹起につながるような表現がもう少しあったほうが、本気度が高まるであろうと感じています。

 一方で、矛盾することですが、全般に見ると、悲観トーン一辺倒が強過ぎるといいますか、これだと、国民がうれしそうに読むことができないのは当然のことなので、実際にここに入れていただきたいことは、まず、お金を持っている高齢層、持っていない高齢層が二極化しているというデータが先ほどはっきり示されているとおりでもありますので、とりわけ持っている世代に向けてはもっと前向きに、より豊かな人生を実現していくことの目的を盛り込んでいただきたいです。

 お金を抱え込んでいるだけでなく、もっともっと有効に活用させて、お金を働かせることで、より豊かな人生が実現できて、それは具体的にアメリカでも、ヨーロッパでも、高齢世代にミリオネアというような人たちが普通の中でも出てきている。こういったことをイメージできるような表現を一緒に入れていただければ、より明るいものになるのではないかと思います。

 もう一つが、預貯金偏重という現実の中で、それはゼロ金利で、お金を退蔵させているだけ。それでは新たな富を生まないということに対して、お金を動かしていくということが次の世代のために、リスクマネーを供給していくという意識に導かれることで、その行為が自分だけではなくて、将来に向けての社会的意義を持つといったより前向きな行動惹起のサポートの考え方になるのではないかと思っております。

 先ほど高田委員からインベストメントチェーンという重要なフレーズがあったとおりで、それこそが国民全体で、我々自身の持っている資産がインベストメントチェーンの担い手になって、そして、それがちゃんと回ることによって、はっきりと日本自身が経済成長しないでも金融立国として存続し得るのだと思います。

 ですから、前向きな期待というのをこの中にぜひ盛り込んでいただけると、みんなが気持ちよく読めるようになるのではないかと感じております。

 それから、心構えなるものですが、パンフレットにすることは大いに賛成ですが、どのようにして多くの国民に読んでもらうような仕掛けをするか。ただつくっても、多分、普通には読まれないと思うので、一定の年齢になった人に強制的にダイレクトメールで送りつけるとか、各自治体にそういうことを依頼するなど具体的な施策も、あわせて考えていく必要があると思っております。

 それと資料6ですが、重要なフレーズとして、「顧客本位の業務運営」がありこの顧客本位の徹底というのは各金融機関で認識していないところはない一方で、現場では表層的にしか受けとめられていない。

 ですから、顧客本位とは一体何かということの徹底理解へ金融機関側の現場に危機意識を持ってもらうため例えば高齢者へのサービスにおいては、担当者は事前に顧客本位の仕事しかやりませんといった宣誓書とか誓約書にサインするというような行為が一つあるだけでも、精神的に随分高いレベルの意識が持てるのではないかと思います。

 そして、自分のためではなくて、会社のためではなくて、専ら顧客のために、この業務に携わるということを都度認識してもらうということは改めて必要であろうと思いました。

 それから、具体的には、高齢者に対しては、それぞれのお客様に対して、これまで徴収してきた手数料の累積した分などを顧客本人に開示して共有するとか、あるいは家族にそれをしっかりと告知するとか、そのような仕組みも高齢者向けサービスにおいては実は必要であろうと思っております。

 それから、話は変わりますが、つみたてNISAについてです。口座数が100万を超えたということで、一定の成果を金融庁さんも認識されていると思いますが、一方で現場をよく見ると、口座数のマジックといいますか、ある種の欺瞞みたいなものが存在しています。

 すなわち、口座数を獲得するということが各金融機関の目標値になっていますので、実際にほんとうに正しく使われているかどうかということは、まだ検証の必要がある。例えば最低投資金額を1,000円などに下げている金融機関もありますので、そうすると1,000円のつみたてNISAをお願い営業でつくってもらうというケースが非常に多く、地方銀行さんなどのつみたてNISAの平均1人当たり積立額は、おそらく数千円にとどまっていると認識していて、迫力がない。そのあたりも改善の余地を認識していただきたいと思います。

 それから、もう一つ、実際に最近、私自身も見ていることですが、既につみたてNISAで始めたにもかかわらず、利確という行動に残念ながら出てしまう人たちが、多くはないのですが、散見される。まさに投資行動の間違った典型的な例で、こんなことをやっていたら、当然、将来の財産づくりなんておぼつきません。長期で継続してもらうことこそが、この制度には不可欠なことですから、長期で継続したら一定の恩典が受けられるような仕組みの改善はいかがでしょうか。

 例えば税額の恩典の追加が、10年以降やると得られる、あるいは10年以降は非課税枠が大きくなるなど、いろいろなことが考えられると思うのですが、そういったこともぜひ今後の検討にのせていただければと思います。

 あと、iDeCoとつみたてNISAというのは、同じ行動目的を持った同様の制度として一体的な普及をお願いしたく、既に厚労省と金融庁がより垣根を越えた活動をされていますけど、何よりもっと一層、ここに一緒にメッセージを出していくということを推進していただきたいということを最後にお願い申し上げます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】
 資料4に示される「今後の方向性」、5の「まとめ」の部分は、これまでの大変インテンシブな多岐にわたった議論をよく整理されていて、私どもの議論の実感とも大体合っているという感じです。どうもありがとうございました。

 これについて何点か、簡単にコメントします。

 第一に、メッセージ性という点では、確かにはっきりしているほうがいいと私も思います。問題は中身であって、つまり、寿命が100年の時代になると大変だよというメッセージではなくて、そういう時代になっていくのだから、こういう心構えを持って行動を起こした方がよいのではないか、というメッセージだろうと思います。

 第二に、メッセージの中に自己責任の原則といいますか、原則というよりは、むしろ、これが現実だろうと思いますので、この点が資料5にも触れられているとは思いますが、この原則がずれると全体が崩れてくるのではないか。自己責任の現実を直視することも必要というメッセージも必要ではないかという感じはいたしました。

 特に長期の資産形成・取り崩し、という意味での資産運用が問題になってくるわけですが、何人かの委員のご指摘の通り、運用すれば必ず結果が出るわけではなくて、運用そのものは個人としてのリスクテークであり、それなりの自己責任を伴うものです。この辺も含めた明快な説明が必要ではないか。これは、例えば報告書の前文とか、そのようなところに出てくることか思います。

 第三に、つみたてNISAとiDeCoの問題です。個人的には、これが当面の対応策の目玉になってくるかと思います。その点が報告書、資料4の資産形成制度の中に入ってくるのかと思いますが、このワーキング・グループでも特につみたてNISA、iDeCoに関する政府に対する要望といった、意見が相当ありましたので、報告書には、その辺を織り込んでいただければ有難いです。

 言いかえれば、つみたてNISA、iDeCoを顧客本位原則の観点から見直していただいた上で、ワーキング・グループとしては、そういう要望が強く出たというような形でのまとめ方はできるのではないかと思いました。

 最後に、今日はiDeCoの大変貴重なお話を伺いまして、ありがとうございました。iDeCoを含め、確定拠出年金全体の最大の問題は運用だと思います。結局、現在の確定拠出年金の運用を見た場合、個人資産全体からそれだけを分離して、そこだけ資産配分をする、あるいはリスク配分をしている点が問題です。

 個人個人は、当然、預金もそこそこ持っており、あるいは今後、長期にわたる給与所得という意味でのキャッシュポジションも持っているわけで、資産全体の中で見れば、iDecoについて独自の資産配分をする必要はほとんどないわけです。つまり、元本確保型でiDeCoをやるということは、基本的に目的に合っていないと思います。

 これは、多分、業界側にも責任があると思いますが、結果的にこうなっているということは、100年時代にはあまり対応していないわけです。この辺について、業界も含めて、もう一度、基本的に考え直す必要があると思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、林田委員、どうぞ。

【林田委員】
 ありがとうございます。では、3点だけ短く申し上げます。

 先ほど厚労省の方からも金融庁と連携してというお話があって、大変心強く思いました。iDeCoを担当する厚労省とNISAを所管する金融庁は、非課税措置などを財務省から勝ち取るという局面においてはライバルということになるわけですけれども、制度を利用する側にとってみれば、どちらも重要な資産運用の選択肢になっています。

 ですから、厚労省と金融庁はよく連携をして、よりよい制度はどうなのかというところもよくディスカッションされて、制度の進化をさせていくということをお願いしたいと思います。また、現行制度の周知などの面でも一緒にできることがあれば、しっかり連携して取り組んでいただけたらと思います。

 それから、心構えの紙についてですけれども、これ全体としては、おおむね妥当な内容なのではないかと思います。やみくもに中高年者に投資を強要するようなものではないですし、投資リスクに十分留意することなどにも触れている、注意点も盛り込まれているということで結構ではないかと考えます。

 ただ、惜しむらくは、いろいろな意見に忖度されたことが中身を長文化させてしまっているということで、全体として、スパッと何が言いたいのかが伝わりにくくなっている。これは何人かの委員の方もご指摘されました。構成を工夫するなどして、よりシャープなものにする。

 その際、こぼれてしまったものについては、報告書の本体で救済するという形にして、パンフレットなどで届ける部分については、メッセージをしっかりと出していくようなやり方もあるのではないかと思いますので、提案したいと思います。

 それから、金融サービスの方向性ですけれども、どんなに金融機関が便利でニーズに沿った金融商品を開発したとしても、金融機関に対する顧客の信頼がしっかりなければ十分な普及というのは難しいのだろうと思います。ですから、何度も申し上げておりますけれども、金融業界の方々には顧客本位の姿勢をトップから現場の末端に至るまで、徹底して信頼を得るということに努めていただきたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもどうもありがとうございました。

 それでは、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】
 ありがとうございます。2点、コメントさせていただきます。

 1点目は、資料5で、小森課長が表現を丸めたと説明された点について、コメントいたします。現状認識の冒頭に、前回の資料では「長寿化に伴い資産寿命も延ばす必要がある」とされていたのが、本日の資料では「資産寿命も延ばすことが望まれる」に変わっています。このような変更は、資産寿命の延伸について、前回のワーキング・グループで、今、高齢期にある方を念頭に置いて、一律に資産寿命を延ばすために高度な資産運用を行う必要があると誤解される可能性があり、やや行き過ぎではないかという指摘に対処していただいたのだと思います。

 しかし、現役期やリタイヤ期前後の方にとっては、資産寿命という考え方は非常に重要であると思います。そのため、右側に、主に現役期やリタイヤ期後のという注意書きがついているのだと思います。

 そこで改めて現状認識の項目の構造を見てみると、左側に事実の認識が書かれていて、右側ではそれに対してどういった施策が必要かという話になっていると思います。事実の認識としては、「資産寿命を延ばすことが望まれる」という形で丸めるよりも、「寿命より先に資産寿命が尽きる可能性が高くなっている」ということを端的に書くことが望ましいと思います。このことは、現役期の方にも、リタイヤ期の前後の方にも、高齢期の方にも全てに当てはまることですし、直視しなければならない現実として、すなわち出発点として明記することが望ましい気がいたしました。

 同じく資料5について、「余剰資産」という言葉が消えていることにも注目したいと思います。このことに、私は賛成です。変更された箇所の実質的な内容は変わっていません。つまり、いざというときの備えの資金を別に用意しておいて、長期的な観点から資産運用をすることが望ましいという実質は変わっていません。ただ、「余剰資産」という言葉は、受け手の方で、お金が余っていないから、資産運用が出来ないと理解される可能性があります。しかし、特に積立投資は、余剰資産を投資するという表現と馴染みにくい気がします。ですから、「余剰資産」という言葉を使わなくなったことに私は賛成したいと思います。

 3点目は、現役期の最後のレ点のところで、「金融サービス提供者が顧客側の利益を重視しているかという観点から、長期的に取引できる提供者を選ぶ」という点に関してコメントします。長期的な取引関係は非常に重要ですが、その一方で、合わないと思ったら、取引先を変更するという選択も重要だと思います。もちろん長期的な取引関係の重要性を否定するわけではありません。ただ、金融取引の相手方を変えることのコストがあまり高くないような仕組みが望ましいのではないかという意見です。

 例えば上場株式や投資信託の移管は、私の印象では簡単にできると思います。これに対して、例えばNISA口座やiDeCoは、移転の手続が非常に煩雑です。特にiDeCoについては、現在、多くの金融機関が努力されてサービスを提供されていますが、サービスの内容は、私が調べた限りでは相当程度のばらつきがあります。ですから、一旦iDeCoをやってみようとある金融機関で口座を開いた方の中には、別の金融機関に変えたいと考えている方も結構いらっしゃるのではないかと思います。

 そういった場合に、長くつき合わざるを得ないではなく、長くつき合いたいと思えるような関係をつくるためには、ある程度、iDeCoとかNISAの口座の移管の手続が容易であることが望ましいと思いました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、福田先生、どうぞ。

【福田委員】
 ありがとうございます。高齢社会の資産形成に焦点を当てた報告書というのは、これまでもあまりなかったものですが、今回、こういう形でまとめられるということ自体は非常に高く評価したいと思います。

 ただ、現状認識として、何人かの方がおっしゃったこととも多少かかわるのですけど、現段階では明示的に書かれていない大きな問題は、日本経済の低迷という問題だと思います。例えば事務局の資料の3の12ページでしょうか、アメリカの資産は2.7倍になって、日本はほとんど伸びていないことに関連して、それ自体は事実であるけれども、それと同じ期間にアメリカの物価は1.5倍になって、賃金は2倍になっているのです。一方、日本の物価はほとんど横ばいで、名目賃金は若干下がっているという状況も同時にある。そうした中で、起こったことは、単に資産の運用の在り方だけの問題とも言えない要素というのはかなりあるということだと思います。

 そういう意味では、こういう報告書に悲観的なことばかり書くというのは決していいことではないのだけれども、こういうふうに運用すればアメリカのようにバラ色になるのかというと、必ずしもそうではないという面はあるのだと思います。こういう方向性にもっていくこと自体は非常にいい提案になっていると思いますけれども、現実はそんなに甘くない点があるという点は、印象として持ちましたということでコメントさせていただきたいと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、島田委員、どうぞ。

【島田委員】
 どうもありがとうございました。基本的な方向性は非常に賛同いたしております。それから、幾つか申し上げることも、ほかの委員の方たちもご指摘があった部分があるかと思います。

 最初に申し上げたいのは、全体で見ると個々の人たちに、自分たちの将来に向けてより長く働き、お金を自分でつくっていってください、準備してくださいということが大きなメッセージの基本だと思います。そして、そのために、それを引き受ける金融機関がしっかりと、目先ではあまりもうからない仕事かもしれないけれども、真面目に働いてください、お客様のために働いてくださいということがメッセージになっていると思います。

 国も、つみたてNISAや一般NISA、あるいはiDeCo、企業年金のDCなどについて、非常に真剣にお取り組みいただいているのは私どもはよく存じ上げております。けれども、こういうメッセージが出てきたときに、多分、受け取る側は、国は何かバンザイしちゃったのと受け取る可能性があると思います。ですから、もう一つの主体として、国が腹をくくって、こういった方向に対して一生懸命みんなをサポートしていきますということも、メッセージとしては必要ではないのかと思います。

 どのようにメッセージを出すかということは、議論が必要ですけれども、とにかく長く働いて、年金を受け取る年齢を遅くしてくださいというようなことを言うのであれば、最初に考えられるのは、つみたてNISAにしても、NISAにしても、iDeCoにしても、企業型DCにしても、拠出期間を引き延ばしていくこと。そして、準備が十分できるように拠出限度額を引き上げていくこと、そういったことを基本的には認めていただかなきゃいけないと思っております。ですから、そういった将来に対しての要望についても、1つの柱になってくるのではないかと思います。

 それから、現役世代の金融資産額の減少、高齢者の金融資産額の少ない世帯の割合が増加しているということに関して言うならば、委員のご指摘にもありましたけれども、自助だけではなくて、どこかには共助、あるいは公助といったものについても考えているんだよという部分も必要なのかと思います。それがメッセージを薄くしてしまうと考えるのではなくて、より安心してメッセージを受け取れる形になるとお考えいただけたらありがたいと思います。

 もう一つ、「信頼できるアドバイザー」という言葉が資料5の部分で繰り返し出ており、前回もお話しさせていただいたのですけれども、資産形成、資産管理にかかわって、中立以上に顧客の立場に立って資産寿命を延ばすことを考えてくれるアドバイザーというのがほんとうに必要とされていると思います。

 そういったアドバイザーであるということは、基本的には金融機関から独立した立場にあり、利益相反が存在しない方が望ましい。ただし、現状では、そういう人たちはなかなか難しいと思いますけれども、将来的には米国のCFPのような倫理規範を持ったプロフェッショナルが育っていき、そうした方たちが十分に生活を独立して行えるようなビジネスモデルを広げていく環境整備が必要ではないかと思います。

 それに即した資格なのか、制度なのか、さまざまな手当ても今後考えていく必要があるのではないかと思います。ごく一部、そういう形で成功していらっしゃるアドバイザーの方はいらっしゃいますが、なかなか広がらないというところに大きなハードルがあるのではないかと考えます。

 そして、こういう方たちはすぐには育たないわけですから、現状では、おそらく金融機関の中の方たちにお願いするというのが現実的分であると思います。そうした場合にも、「顧客のニーズに寄り添う金融機関」という言葉が先ほど委員の中から上がっておりましたけれども、そうであるならば、もちろん顧客本位の業務運営の徹底をしていただければ、それで完結するという考え方もあるかもしれませんが、販売とアドバイスの人員の切り分けであるとか、評価、あるいは報酬体系を区別するといったことについて、もう少し積極的にお取り組みをいただくことはできないかというのが一つお願いでございます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、神作委員、どうぞ。

【神作委員】
 ありがとうございます。2点、コメントをさせていただきます。

 第1点は、既に数名の委員の先生方からもご発言があった点でございますけれども、国民と投資先企業との間をつなぐ、インベストメントチェーンに介在する関係機関が全て顧客本位と申しますか、国民の資産形成のために尽力する、そのようなつながりが途切れることなく連続していないと、幾らリテラシーをといっても、国民が行動に移すための前提となる、投資に対する信頼を得ること自体、なかなか難しいところがあるのではないかと思います。

 そのような観点から申しますと、たとえばアセットオーナーも含めて、インベストメントチェーンに漏れがなく信頼が連続することが重要であると思います。例えば、具体的には、企業年金の場合には、ほんとうにそもそも年金の運用者等の関係者の善管注意義務が果たされているのか、利益相反の規制が働いているのか。さらに、スチュワードシップ活動をきちんと行っているのか。また、企業年金の母体である企業自体も、年金受給者の利益のために企業年金に対し適切な対応をしているのか。こういった基本のところにまだ問題点があって、本来であれば法的措置も含めて検討するべき点が残されているように思います。

 2番目に、今申し上げたことを前提として、メッセージ性という点ですけれども、ある程度、背中を押すということが非常に大きなメッセージになるかと思うわけですけれども、第1の点がある程度確保できるということであれば、さらに一定の税制上の措置などがあれば、方向感と申しますか、背中を押すような、そのようなメッセージがもうちょっと具体的に伝わるとよいと思います。

 私、前回、自助ということを申し上げましたけども、自助の発揮の仕方というのもいろいろありまして、自分で積極的に選ぶというのもありますけれども、オプトアウトという形で選んでいくというようなこともあり得るかと思います。そのときに背中を押すというような形での自助をさらに公的に支える、そのような仕組みも考えられると思いますので、第1点で述べたことを前提に、第2点についてさらに検討していく余地があるのではないかと感じました。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】
 資料6の高齢社会における金融サービスの方向性は今日初めて出てきたものですけれども、私は、前回の心構えに比べて方向性は抽象的で、物足りないという印象を受けました。

 金融機関ができないことは書けないとか、金融庁は金融機関を監督する立場にあるので、金融庁の文章で書くと強制になってしまうじゃないかといった懸念があることは、よく理解できます。

 この方向性というのは、金融機関の心構えを示しているのであれば、今すぐできなくとも、将来に向けてやっていってもらいたいと、そういうことを書くことは許されるのではないかと思います。例えば上の方向性のところに書いてある3つ目の黒い菱形のところで、「資産の運用・保全の高度化に資する商品・サービスの充実」というのが挙がっていて、おそらくこれに対応するのが2の右下の2つのチェック、非金融サービスとも連携した総合的なサービスの提供とか、その下の環境づくりの推進というところではないのかと思うのですが、上だけを見ると、高度化に資するといっても、この高度化の内容がどういうものなのかが明確でなく、下を見ると少しはわかるのですが、まだ抽象的で、もう少し具体的にこういうことができるじゃないかとか、こういうことを目指して商品を開発してほしいといったメッセージ性が出てきたらよいのではないかと感じました。

 また、上の欄の共通する前提・事項としてというところの2つ目のところで、「サービスが持続可能になるよう、コストの開示や適切な対価を請求」と書いてあるのですが、コストの開示は当たり前のこととして、適切な対価の請求というのは、要するに安くしろということではないかと思うのですが、そうだとしたら、商品をそろえてもサービスの対価が高ければ多くの高齢者は利用できないわけだから安くしてほしいというメッセージが入っていると思うので、それをもう少し明確に伝わるように書いたらどうかと感じた次第です。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】
 私からは3点申し上げたいと思います。

 まず、1点目は資料5についてです。こちらの資料ですけれども、現役期、リタイヤ期前後、高齢期と分けてまとめてありますが、その前に全体像を示していただけるといいのではないかと思いました。

 例えば、現役世代のうちは、少額でも、なるべく早い時期から資産形成をしていき、なるべく長く働き、最終的には運用しながら取り崩していくというような全体設計図があった上で、それぞれの時期にどういう対応をしたらいいかを述べたほうがわかりやすいと思います。そうすることで、先ほど野尻委員が指摘されたような、積み立てしながら取り崩すといった矛盾もなくなるのではないでしょうか。

 また、この資料を皆さんが読んでいくに当たっての目的をもう少し明確にしてもよいと思います。人生100年時代を過ごす上で、充実した暮らしを送るためにどういう対応をとったらいいかというのがそもそもの目的だと思うのです。それがないまま、単に資産寿命を延ばそうとか、資産が尽きるといったような言葉を並べるのだけでは暗い未来しかみえてこない気が致します。

 2つ目ですが、実行にあたっては「顧客本位の業務運営」が行われるということが大前提です。金融サービスを提供するすべての金融機関にも当てはまると思いますし、国にも当てはまるのではないかと思います。

 野村委員の資料7にもありましたが、(資産形成・活用を行う上では)個人にとってわかりやすい制度であることが大前提だと考えます。制度のシンプル化、具体的にはNISAの恒久化や、iDeCoに関しても拠出限度額の統一といったことも含めて、皆さんがわかりやすく制度をシンプルに捉えて活用しやすくしていただきたいと思います。

 最後に、3つ目ですが、今日、厚生労働省の方がお越しになっているので、iDeCoについて気になる点を幾つか申し上げたいと思います。

 長寿化に向けて、最終的に運用するだけでなく、受け取り方が大事になってくると思いますが、運営管理機関によっては(取り寄せた資料に)給付に関する記載が全くないところもありました。コールセンターに電話をしても、自社の給付について理解していないなど、顧客視点の対応になっていないところもあります。

 また、iDeCoでは継続教育についても行われていません。先ほど鹿毛委員もおっしゃいましたが、本来は金融資産全体で資産配分を考えることが大事で、その上でiDeCoの商品選びを検討する必要がありますが、企業型と違って導入研修もなく、継続教育もない中では、個人がそのように考えるのは難しい現状もあります。ここはぜひ改善していただきたいと思います。

 そして、情報開示です。iDeCoとNISAでは制度も法律も異なるので、いたし方ない面もありますが、例えば、投資信託などについて(iDeCoで購入する場合とNISAで購入する場合では購入時の開示資料の)用語も統一されていません。個人がある投資信託の積み立てを行うときに、iDeCo口座で行うときもあれば、NISA口座で行うときもあります。同じ商品を買うときに、買う場所によって用語、その他が統一されていないというのは、わかりにくく、改善の余地があると考えます。

 最後に、ほかの委員さんからもありましたが、iDeCoは運営管理機関によって対応にかなり差があります。今は苦情を申し立てる機関等もないので、何かあったときに対応していただけるような機関をできればつくっていただきたいです。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 厚労省の吉田課長、何かございますか、よろしゅうございますか。

【吉田企業年金・個人年金課長】
 今、制度改善、考えておりますので、いただいたご指摘は前からも言われている部分があります。限度額の拡大とか、年齢の拡大のみならず、こういう執行面の課題についてもしっかり考えていきたいと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、永沢委員、上田委員、神戸委員の順でお願いします。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】
 ありがとうございます。私は、今後、作成される報告書のあり方などにつきまして、資料4以下に従いまして意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、資料4の報告書の本体のところでございますけれども、ここにつきましてお願いしたいこととしては、3つの世代に分けて、各世代が使える、望まれるリテラシー、今後望まれる金融サービス、そして制度について提言する形が望ましいと考えており、そのようになることを期待しております。

 また、黒沼委員のご指摘と重なりますが、国民に期待する心構えに関する議論に時間を相当さいたためか、金融機関への指摘の部分が弱いと感じており、国民ばかりに期待するような内容にならないようにしていく必要があると思っております。その点は強くお願いするところでございます。

 それから、資料4の付属文書に当たる①心構えは資料5に該当するわけですが、これにつきましては、前回、「資産寿命の延伸」という言葉をめぐって私も意見を申し上げましたが、この部分は意見が色々と出やすいところではございますが、加藤委員がご提言されましたように、すっぱりと事実は事実ということで書いたほうが良いように思います。耳障りの良い言葉を使うよりも、そのほうが国民にはわかりやすいのではないかと私は思いました。

 続いて、自助と公助がある中で、自助の割合を高めていくことの必要性を、強いメッセージとして出していく必要があると思っております。それから、その下の具体的なイメージのところですけれども、現役世代については、中野委員もご指摘のように、現役世代は、できることがたくさんあり、可能性に満ちた人たちであるわけで、行動を起こせる世代ですので、危機意識を持って、行動できることを行動にしてくださいということをメッセージとして強く出していいのではないかと思いました。

 2番目のリタイヤ期の前後の世代につきましては、ここが一番悩ましいところで難しいところですが、この世代はとり得る方法がよくわからないというのが実状と思っております。本ワーキンググループでは有識者をお招きしていろいろな資料をお示しいただき、とても参考になっていますが、その中でも、私は、本日、厚労省の方から提出行っただいた資料の38ページと、その中で高田委員の資料を引用されていますが、この2つが特に参考になりました。このような資料や情報を国民にも広く提供して、もっと活用していただきたいと思いました。

 それから、少し戻りますが、資産寿命を延ばさなければならない理由ですが、先ほどの厚労省の資料は、ほかの委員の方々はご存知のことばかりだったかもしれませんが、私は知らなかったことが多々ありまして、とても勉強になりました。先ほども申し上げましたように、とても腑に落ちるところが多かったので、国民が現状を知るには、こういう資料はとても役立つと思います。

 最後の高齢者のところでございますけれども、これも中野委員のご発言と重なりますが、自分の生活だけでは余る人もいると思います。お金は、人の寿命が尽きた後も残るわけですから、そういう方には、社会や次世代にお金を回せる人は回していっていただくことも選択肢としてお示しできたらと思います。そのような内容があると暗さを払拭できて明るさが増すと中野委員がおっしゃいましたけど、私も同感です。

 それから、資料6は金融機関向けと思いますが、細かいことを申しますけれども、この種の資料にはすぐに「商品・サービスの多様化」という言葉が使われるのですけれども、消費者としては、商品がこれ以上多くなることは勘弁してくれという思いがありまして、既存の商品の組み合わせを可能にするとか、カスタムメイドを可能にするというような発想をお願いできないでしょうか。数が増えることだけは勘弁してくれというのは、一言伝えておきたいと思います。

 それから、もう一点、リタイヤ前後の世代ところですが、「顧客の利益に沿ったワンストップ化サービスの提供」はまさに消費者の求めているところであり、非常に重要なポイントだと思いますし、かねてより頻繁に言われてきた言葉であると思いますが、ここでお願いしたいこととして、私ども消費者は一つの金融機関に集約をすることを求めている訳ではありません。複数の金融機関と取引しております現状を前提に、ワンストップでやれるようになることが理想であり、幸い、フィンテックも進んできておりますので、統合サービスというものを介してワンストップが可能になると望ましいと思います。

 資料の4の一番下の※のところでございますが、平易な言葉というのは、シンプルであること、短文であることだと思っております。また、イメージイラストなども効果的に使って、一般消費者が手にとって目を通してみようという気持ちになりやすいもの、厚くないものをつくっていただきたいと思います。面倒でしょうけど、世代別、対象別など、丁寧につくっていただきたいと思っております。

 最後に、こうしてつくったものが一般消費者の手元に届けられ、使われることが必要です。高田委員からもご提案があったように、還暦前研修のようなものを各自治体で開催していただくのもいいかもしれないと思います。既に大企業では退職前研修というものを人事がされていると伺っていますが、そういった場でも配付いただけるように厚労省のお力をかりたいと思いますし、また、中小企業のようなというところについては、商工会議所などにもご協力いただいて届けるということが考えられるのではないでしょうか。

 厚労省の方から、厚労省でも統合ポータルサイトをつくられるというお話がありました。そうした他省所管のポータルサイトや、金融広報委員会の「知るぽると」のようなポータルサイトもあります。そう行ったサイトにこういったものも載せていかれたらよろしいのではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 上田委員、どうぞ。

【上田委員】
 ありがとうございます。2点ほど申し上げさせてください。

 先ほど来、本件、国民向けメッセージというような性質のものであるということで、ほんとうに大事な論点だと思っております。国民向けのメッセージでは、ストーリーをつくって最終的な解決策というところを、まずお見せする、そして各論に入っていくということが大事だと思っています。

 ストーリーづくりにおいては、今、厚労省様からも立派な資料が出ていますし、田原課長からも立派な分析が出ていますので、こういったものをつくって、まず現状認識のところで極めて厳しいということをしっかり見せる必要があると思います。

 諸外国と比べても我が国は、そもそも貯蓄率も決して高くはない。さらに言うと、老年世代における所得は低いというようなことを考えますと、決して豊かな国ではないように感じます。また、より若い世代になると、公的年金も、今後減りますとは政府としてなかなか言いづらいのかもしれませんが、多分減るでしょう。先ほどほかのメンバーからもありましたけれども、調整ではなくて減る方向性というのは避けられないといったことを、メディア等の批判はあるかもしれませんが、むしろ、それを認識することが我々の国民、特に次世代にとっては必要なことだと思いますので、そういったメッセージというのは伝えていただきたい。

 最後の解決策ですが、これもいろいろな各論はあると思うのですけど、一言で言うと、資本所得の増加、これに尽きるのだろうと資料を拝見して思いました。労働所得については、65歳ぐらいまでは既に生活のための労働の目的が少なくない。これは、公的年金の関係だと思いますが、今後、公的年金の支給開始はより高くなるわけです。高齢になって健康はだんだん弱くなっていくということになると、労働所得をこれ以上増やせるのかと考えますと限界があります。これに対して、日本は資本所得のところが少ない。

 さらに言うと、全体の所得自体が少ないわけですから、これを別に海外と比較する必要もないのですが、さらに増やすためには資本所得のところを増やすしかありません。厳しい現状認識から、資本所得の増加という最後の解決策というところは、あらゆるライフステージに共通のものだと思いますので、ここは、まずしっかりと打ち出していただきたいと思います。

 そういう意味で、実は私、前回のこの資料の議論に参加していないので、やや観点、ずれたことであれば恐縮ですが、実はご説明いただいた中で、前回は、資料5の一番上、「資産寿命を延ばすことが必要である」を「望まれる」に変えましたとおっしゃったのですが、なぜ婉曲にされたのかというのが、私の率直な意見でございます。私、レポートを書いたりするときに、「望まれる」と書くのは、ほんとうは「必要だ」と言いたいのだけれども、反発が多くていろいろと怒られると怖いので、「望まれる」と書く場合もあったりしますので、ここは、むしろ、怒られてもいいから、厳しい状況を踏まえて、「必要だ」ということはしっかり認識として持っておいてもいいのかと思っています。

 資産寿命という概念そのものも、しっかり持つべきです。我々、長寿化、そして未来はあまり明るくないということは、国民の多くは認識できているとは思うのですが、一方で資産寿命という明確な概念というものは、それほど共有されていない面もあると思います。そこをもっと政府として、みんなに認識してもらいたいといったところは出してもいいのかと思っております。以上が第1点です。

 第2点、こちらは簡潔に申し上げます。こういった目的に向かっていくときに、金融サービス提供者が、大変重要であるということで、特に資料でも多く出ていますが、アドバイザー、あるいはコンサルティングサービスの提供が、重要だと思います。日本の場合、主たるサービス提供者は、金融機関であると思うのですが、リテールビジネスの環境は極めて厳しいという中で、しかも、手間暇もかかれば、損失が出たときのクレーム対応等々含めると、金融機関として、ここをビジネスとしてサステイナブルにやっていけるかというと結構、厳しい環境があるということがあるかと思います。

 これをしっかり認識しませんと、金融機関もサービスをやめてしまうという選択肢も十分あるわけで、特に今、フィンテックという中で対面サービスをどこまで提供できるか。本件、特に高齢者になればなるほど対面サービスの重要性は増すと思うのですが、そこへきちんとリソースが配分できるという環境、これは、金融サービス提供者と当局との間でしっかり方向性について認識を持っていただきたいと思っています。

 ちなみに私、今、イギリスに在住しているのですけれども、イギリスでは金融サービスを受け始めるのはとても簡単です。なぜかというと本人確認のプロセスが勘弁。そしてネットで始められる。一方では、これは漏れる世代があります。そういうリテラシーがある世代、人たちはいいのですが、リテラシーがない世代は、例えば高齢者世代で資産がある人はお金を払ってアドバイザーを雇えるのですが、そうではない人たちは完全に漏れてしまう。そういった点も含めて、金融サービスをどう提供させていくかということは、しっかり確認をいただきたいと思います。

 最後、アドバイザーについて1点だけ申し上げさせてください。独立のアドバイザーは大変重要だということが書かれていて、これは、いいと思うのですが、ただ、アドバイザーについての報酬体系、これ、コミッションでいくのか、フィーでいくのか。つまり、商品を回転させて、そこで手数料を取るビジネスであれば、この会議で議論されている金融機関が手数料稼ぎに投資信託を売っているのと全く変わらないわけです。あるいは、全体の資産に対するフィデューシャリーという形でのパーセンテージで報酬でやっていくのかと。例えば、そういう活動されている例があれば、そういうご紹介も含めて、いろいろな選択肢というものを見せていただければと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、神戸委員、どうぞ。

【神戸委員】
 ありがとうございます。資料5と6、それぞれについて話させていただければと思っています。

 まず資料5ですが、座長から、できるだけ具体的にというお話がありましたので、1の現状認識の1つ目のレ点、「長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが望まれる」ことに対するあるべき対応については、「現役期における」の後に、「積み立てによる」という文言を加えて頂き、積み立てて欲しいというメッセージを伝えるべきだと考えます。

 何故かといいますと、以前のWGでお話しさせていただいたのですが、貯蓄額が二極化している大きな理由の1つとして、天引き貯蓄や、自動積み立てを行っていた人と行っていなかった人で、何十年かの間に大きな差ができてしまったということがあると思います。

 今のリタイヤ前後世代、あるいはリタイヤしている世代というのは、かつて日本人の貯蓄率が高いと言われてきた背景の一つにもなっていると思いますが、この積み立ての習慣を持っていたケースが多いと考えられます。企業に入社すると、周囲から財形や持ち株会に入るのが当たり前と言われて、わけもわからないうちに積み立て始めていた人も多かったわけです。それが、自己責任による任意加入が一般的となったことによって、20代~40代の方では、収入の一部を将来に向けて積み立てるという習慣がだんだん薄れて来ていると感じています。そのあたりを明確にメッセージとして伝えるためにも、「積み立てによる」あるいは、「積み立て形式による」といった表現を入れていただけると、ありがたいと思います。

 他の委員の方々もおっしゃっておられるように、早いうちから積み立てを習慣的にやっていただくためには動機づけが必要です。その動機づけの一つとして、公助だけではこのぐらい厳しい、放っておくと大変になるということをはっきり示すべきだろうと思います。
ただし、公的年金に関しては、逆に悲観的に考えすぎて、破綻をおそれて国民年金に入らないといった方もおられるので、そちらも打ち消す必要があると思います。制度自体は大丈夫だけれども支給水準は厳しくなるというところを動機づけのために伝えて、それを積み立てなどによる自助でというメッセージが、一般生活者に対してしっかり伝わるようにしたほうがいいと思います。

 次に、2のリタイヤ期前後の3つ目のレ点にある「長い人生を見据えた、中長期的な資産運用の継続と計画的な取崩しの実行」について、考えるべき対応の2つ目の丸印の記述なのですが「長期・積立・分散投資を現役期より行っていない場合であっても、長寿化を踏まえると、リタイヤ期前後から」の後に、「一般NISAなどを利用して」というのを入れていただけるといいのではないかと思います。

 実際に、私どもがご相談させていただくケースでも、リタイヤ前後から年間40万円ずつつみたてNISAをスタートするのでは、リタイヤ後に備えるのは、積み立てが可能な期間を考えると難しいといえます。多くの場合、現状では従来型のNISAで月10万円ずつ、ご夫婦であれば月20万円ずつ、5年間で1,200万円の非課税投資をおすすめしています。これですと積み立て形式で、リタイヤ前後からでも、教育費がかからなくなる第2の積み立て黄金期とも呼べる時期の積み立てや退職金の運用に対応できるので、高齢の方向けに一般NISAはできれば残していただきたいと思っています。

 現役期の2つめのレ点の矢印の後につみたてNISA、iDeCoなどを利用してと書かれているのに呼応する形で、ここも矢印の後に「一般NISAなどを利用して」ということで、一般NISAの制度も残してほしいというところを金融庁の意向としてにじませていただけるとありがたいと思います。

 同様に、3つ目の丸印の「なお、退職金等の資産を運用する場合は」というところも、加齢とともに取れるリスクが小さくなっていくことも意識し、「一般NISAなどを利用して」と加筆していただけるといいのではないかと考えます。

 次に、資料6については、今回初めて拝見したわけですが、2点ございます。1つは、現役期に対する部分について、金融サービス提供者の考えられる対応という部分で、米国などの場合、現役層がリタイヤに向けて資産形成を行っていく上で、企業型の確定拠出年金、あるいは退職口座の部分の金融資産全体に占める比率が非常に大きくなっています。

 今後わが国でも同様の状況になっていくとすれば、資料6の2で言う金融サービス提供者、あるいはインベストメントチェーンの中に、企業というのも入って来る必要があるかもしれません。企業型の確定拠出年金では企業が商品ラインアップを決定しますので、個々の従業員が自由に商品を選べるわけではありません。その結果、商品を従業員が買う上でのインベストメントチェーンの中に、企業も入らざるを得ない格好になってしまっていると言えるでしょう。厚労省さんのご検討事項なのかもしれませんが、何らかの対応が必要になるのではないかと考えます。

 もう一点は、今度はリタイヤ期前後、あるいは高齢期におけるワンストップ化サービスについてです。先ほど他の委員からのご指摘もありましたが、ここの部分についてもう少し検討すべき対応を明らかにするために、他業態、あるいは外部アドバイザー等とのアライアンスも検討するべきといった表現を入れられたらいかがかと思います。

 もともと、大手の金融機関であればあるほど内製化のモーメントが強く働きやすいという傾向が見受けられます。内製化の方向だけを考えるといろいろ厳しい問題も待ち受けているでしょう。例えばワンストップ化サービス、従来の金融機関のビジネスモデルというのは融資業務中心でしたので、一定期間ごとに転勤があり、その時にチェックが行われるといったシステムが基本だったということになるのでしょうが、顧客に寄り添うとなると転勤というのは好ましくない制度といえます。いかにお客さんに対してきちんとワンストップで、しっかりフォローし続けるかという部分に関して、業法などを考えると、単独では対応しにくいところもあるはずですので、そういうところを含めて、他業態、あるいは外部のアドバイザーなどとのアライアンス、協働といった仕組みを真剣に検討していただくことも必要かと思います。

 非金融サービスを含めて、外部と連携したサービス・商品というものを考えていかれるということも必要かと思いますので、その辺の記述を、もう少し具体的に入れていただけるとありがたいと思いました。

 最後に、厚労省さんのご担当に関わることですが、公的年金については、できるだけ働いていただいた後で繰り下げて受給したほうが長寿化への対応としてはいいだろうと私も思うのですが、実際に我々が顧客にアドバイスを行う場合には、加給年金の問題が出てきます。ご存知の通り加給年金は、現状では繰り下げ受給ができないので、夫婦間の年齢差が大きいか小さいかによって、判断するべきだというアドバイスにならざるを得ません。

 加給年金部分も繰り下げられるのであれば、可能な限り働いた後で受け取って、働けなくなってからの収入に当てたほうがいいと私も思うのですが、その辺りについても、厚労省さんの委員会などでご検討いただけるとありがたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。吉田課長、よろしゅうございますか。

 それでは、時間が来ておりますけど、上柳委員にご発言いただいて終わります。どうぞ。

【上柳委員】
 全体のメッセージとして、公的年金が減るので、いろいろ備えをしなきゃいけないというメッセージを出すことは、残念ですけれども、しようがないことかもしれません。

 ただ、そのときに、その対応として資本所得を増やすように考えることが、ベストではないかもしれないけども、それを想定しており、しかも、資本所得を増やすことを、国であるとか、あるいは企業であるとか、年金基金ではなくて、個人にお任せしたいと想定しているということを、きちんとこの全体のスキームの前提としているということを、反対もたくさんあるとは思いますけれども、示すことが必要ではないかと思います。そうであって初めて、反発する人もいるかもわかりませんが、理解される方が腹落ちをして、こうやらざるを得ない。あるいは日本は、こういう方向を選ぶのだということを理解されるのではないかと思います。

 今日の事務局資料3の4ページを見ますと、資本所得を個人が増やすという方向だけが世界の趨勢でもないとも読めますので、そこのところの説明をきちんとすることが重要だと思いました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 今日も大変貴重なご意見をたくさん出していただきまして、ありがとうございました。予定の時間を過ぎてしまいまして、申しわけございませんでした。

 追加のご意見、ご指摘とか、提案とかございましたら、ぜひメール、電話等で事務局までお寄せいただければありがたく存じます。

 次回以降も今日と同じテーマを取り上げます。具体的には、高齢社会における資産の形成・管理の心構え、それから金融サービスの方向性という、この2本柱を含めて高齢社会における金融サービスのあり方、このテーマを中心にご審議をお願いすることになります。

 本日は、以上で散会いたします。どうもありがとうございました。



―― 了 ――












 

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