カネカに続きアシックスでもパタハラ? 育休後の不当な配置転換などに男性社員が抗議

中垣内麻衣子

障害者雇用に関する調べ物や就業規則の英訳をさせられる

 元の部署に戻れないかと思った男性は弁護士に相談。2016年10月からは兵庫県神戸市にある本社の人事付に配属された。配属は本社だが、普段は東京都渋谷区のオフィスに出社しているという。 「倉庫勤務ではなくなりましたが、障害者雇用に関する調べ物など雑務ばかりやらされていました。半年ほど上司からなんの連絡もなく、業務の指示が一切なかったこともあります。完全に干されたと思いました」  さらに男性は次男の誕生後、2018年3月から2019年4月まで2度目の育休を取得。直属の上司が変更になった後も、就業規則を英語に翻訳する仕事など、必要性の低い作業をするよう指示されたという。男性は「部署に配属したうえで、きちんとした業務を与えてほしい」と訴えている。同社を提訴することも視野に入れている。  「リクナビ2020」のアシックスのページには男性の育休取得率が100%となっている。男性でも育休が取りやすい環境だとアピールしているようだ。しかし男性は、「育休の取得対象者数が2人、取得者数が2人で取得率が100%になっています。しかし育休の取得対象者は実際にはもっといるはず。この数字はおかしいと思います」と話す。

「結局、会社はがむしゃらに働く社員を求めている」

 育休明けに子会社に出向を命じられたり、不必要な業務ばかりさせられたりしている男性。正当な理由がなければ、“パタハラ”に当たりそうだ。男性から相談を受けた首都圏青年ユニオンの原田仁希さんによると、最近こうした相談が増えているという。 「男性社員の意識が変わり、子育てに関わりたいという人が増えています。それなのに会社は旧態依然のままです。そのギャップがパタハラを生んでいます。つい最近も育休明けに違う仕事に配属されたという相談が寄せられました。子育て中は残業をしなくてよい制度があるのに『残業をしない人は使えない』と言われたともいいます。表面上は、育休の取得を促したり、女性活躍を謳ったりする企業が増えてきましたが、体裁にすぎず、実態が伴っていません。結局、会社はがむしゃらに働く社員を求めているんです」  男性が育休明けに子会社に出向させられたのはなぜなのか。アシックスに問い合わせたところ、「当件は、団体交渉中のため回答を差し控えさせていただきます。また、当社では、妊娠・出産・育児の期間にも人財が活躍できるよう、職場環境や支援制度の充実に取り組んでいます」という回答が返ってきた。 <取材・文/中垣内麻衣子>
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