「エルビスプレスリーはドーナツの食べすぎで死んだ」
と聞いた筈である。
しかし日本版・英語版Wikipediaのエルビスの項目には、ドーナツ(donut)の言葉は全く出てこない。
日本語版によれば、1977年ツアーを行っていたが、体調不良が続き、そのため医師から処方された薬の極端な誤用と不整脈で死んだとされている。
しかし英語版では1977年のツアーは、エルビス自身のカリカチャーみたいなツアーで、ひどいオーバーウェイトと薬物の大量の摂取にさいなまれ、ステージは最低と評されていたと書いてある。ツアーから一時帰宅したグレースランドで、8月16日入浴中に死亡。体重は153kgだった。検死は不整脈とされているが、後に肝臓疾患ではなかったかという見解も示されている、という記述である。
エルビスが、何らかの過食症にかかっていたのは疑いのないことだ。一部薬物をドラッグと間違えて書いてある記事があるが、医師が処方した薬と考えて差し支えないようだ。
ところでエルビスがドーナツで死んだと言う話は英語サイトでは全然発見できない。
ドーナツとエルビスにまつわる話は若干ある
エルビスは1954年「サザーン・メイド・ドーナツ」(ルイジアナ)のコマーシャルをやっている。
彼はトラック運転手からシンガーになった。ダンキン・ドーナツは、トラック・ドライバーがドーナツを好むことら起業し成功した。そういう労働者階級のヒーローのイメージが「ドーナツ死因説」に影響したかもしれない。アメリカではサンドイッチとドーナツでイメージ上階級対立があるらしい。
最も詳しい説明は、異母兄弟のBBCによるインタビューで
http://news.bbc.co.uk/1/low/talking_point/forum/2193305.stm
で読むことができる。その部分だけを要約すると
みんなエルビスがジェリードーナッツ(jellied doughnuts *注)を食べていたと言うがそんな姿は一度も見たことはない。また山のようにチーズバーガーを食べていたと言うが、アメリカ人はみんなチーズバーガーが好きだ。またもっと特殊なピーナッツ・バターとバナナのサンドイッチが好きだったと言う言うがアメリカ南部に行けばそんなもの当たり前の食べ物だ。そんなネガティブな話題は止めようぜ。
*注:日本ではジェリードーナツがジェリービーンズとドーナツに変えられて伝わっている場合がある。
ということだ。
確かにエルビスの死の直前の異常な太り方の憶測のひとつにジェリー・ドーナツが入っていたことは間違いないみたいだが、「ドーナツで死んだ」は「エルビスを見た」と同じような伝説近い感じがする。
日本版Wikipediaの豆知識の中の
「コーヒーや炭酸飲料、ピーナッツバターとバナナのサンドイッチが大好きである」
というのがガセビアに近いというのは上のインタビューで明かだ。そんなもの南部の人間はみんな好きだと言うことになる。
ところでこれが日本のサイトになるとすごい決め付け方である。
最強なのが
「ストレスでドーナツ狂いのプレスリー」
http://woman.nikkei.co.jp/culture/lecture/lecture.aspx?id=20000101qa334qa
エルビス・プレスリーは40過ぎに若死にしましたが、その死因は、ドーナツの食べすぎによる肥満でした。彼の使用人の証言によると、プレスリーはほとんど食事をせず、そのかわり、1日中ドーナツを自分のまわりに用意させ、それが切れると夜中だろうが何だろうが、運転手にロールスロイスをとばして買いにやらせたという逸話も残っているほど。その結果、体重は百何十キロにもなってしまいました。
みんなでまとめて考えて!
エルビス・プレスリーがでぶった原因は?
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=281601
エルビス・プレスリーは40歳過ぎという若さで死んだが、その死因はドーナツの食べ過ぎによる肥満でした。
彼の使用人の証言によると、プレスリーはほとんど食事をせず、その代わり一日中ドーナツを自分のまわりに用意させ、それが切れると夜中だろうがなんだろうが、運転士にロールス・ロイスを飛ばして買いにやらせたという逸話も残っているほど。
その結果、体重は百何十キロにもなってしまったのです。
しかも、まことしやかな噂によると、棺に遺体を納めるのが困難なほどになってしまっていたということです。その辺の話は無責任な話かもしれませんが、彼が異常なほどドーナツ好きで、減量できずに苦しみ続けていたというのは事実です。
プレスリーファンでさえ
サスピシャス・マインド エルビス・プレスリー
http://www.eigo21.com/03/pops/08.htm
エルビスは1977年8月16日にコンサート・ツアーの合間, 自宅で休養中に心臓発作で急死しました。 この頃のエルビスは自宅の冷蔵庫にドーナッツが欠く事がないほドーナッツを食べまくり,体型も崩れていたようです。糖分と脂肪の取り過ぎが死を招いたのかもしれません。
新たな伝説!
「クリスピー・クリーム・ドーナツでエルビスは死んだ」
http://blog.livedoor.jp/meg_nail/archives/50323182.html
(クリスピー・クリーム・ドーナツについて)
聞いた話によるとエルビスプレスリーが食べ過ぎて死んでしまった!というドーナツ。
美味しかった~!!
*以下類似のブログ内容は略URLだけ
http://metalsty.seesaa.net/article/29988922.html
http://happysakaba.seesaa.net/article/39399682.html
あとは単純にプレスリーはドーナツで死んだという伝説が一人歩きしており、その重大な証言者である「使用人」の姿は影も形も見えませんでした。
そういうわけで、僕は「エルビス・プレスリーはドーナツで死んでない」説を総合的に見て採用したいと思います。
クリスピー・クリーム・ドーナツが日本進出に当たって、デマを流した感じがするな。気分悪い!
さて僕は某首相経験者とは違って、エルビス嫌いですが、42歳で死んだことを冗談のネタにするのは止めました。
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補遺 2019年5月21日
2007年5月に書いたこの記事がGoogleの「プレスリー ドーナツ」での検索で2019年トップでヒットすることに最近気づいた。
その後追跡調査をした記事にアクセスはないので、それをこの記事に追加する。
なお、日本の「プレスリー死因ドーナツ説」は、死亡当時日本のラジオのDJが冗談で放送で言ったことに起因するという説もあることを付け加えておく。自力でその真相を調べていただきたい。
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「プレスリーはドーナツで死んでない」追跡調査
検索エンジンを変えたりして、もっといろいろ検索してみた。
確かに「エルビスが・ジェリー・ドーナッツをボディーガードに買いに行かせた」という話が出てきたがそれは短い匿名の書き込みはあった。しかもそれは肥満とも死亡とも関係付けられていない。
またメンフィスのエルビス・プレスリー通りに「クリスピー・クリーム・ドーナツ」がある。これがクリスピーでエルビスが死んだ説の原因か?
しばしば1973年以前の肥満していないプレスリーのことをプレ・ジェリードーナッツ・エルビスとよぶ言い回しがあったので、半ば冗談でプレスリーがドーナツで太ったという伝説が生きているらしいことはわかった。
しかし、「ドーナツでエルビス・プレスリーは死んだ」という声高な主張はないこともまた事実である。
ちなみに次のサイトはプレスリーの好物のレシピを紹介していところである。
http://www.squidoo.com/eatlikeelvis/
そのドーナツを含むエルビスの食生活に関するインタービューに関する部分を要約する。
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「メリー・ジェンキンス・ラングストン、ジェリードーナツについて語る キングのキッチン-南部のリビング」
Denise Gee Oct. 95
1977年の彼の死以来、 ジェリー・ドーナツ好きの評価を得ていたエルビス・プレスリーは肥満で死んだのだろうか?あなたは焼いたピーナツバターとバナナのサンドイッチだと言うんでしょう、と1963年から77年までエルビスのコックの1人だったメリー・ジェンキンス・ラングストンは言う。
240冊以上の本がエルビスの使用人によって書かれてきた。「グレイスランド・ゲイトの向こうのエルビスの思い出」を彼女も書いた。このインタビューは記録をはっきりさせるために登場してくれた。
「私はたった一度さえもエルビスがジェリードーナツを食べたのは見たことがありません」と、そして彼女は続ける。「けど私ご存知の通りエルビスは本当に甘い物好きで、まるで田舎の子供みたいでした。好物のケーキやパイに加えて、エルビスは野菜スープや、えんどう豆のチャウダー、コラードのサラダ、クリーム・ポテト、ロースト・ビーフ、ハム、ハンバーグ、ハムステーキ(お肉は一口サイズに切りました)などをたくさん食べることを切望したました。
彼はまた、大きなカントリースタイルの朝食、4~5個のスクランブルエッグ、半ポンドのソーセージあるいはよくカリカリに焼いたベーコン、それによく人がいう奴何度と思うけれど、5~6個のバターミルク・ビスケットを食べました。」
他に何か他のものは?
「そうね、エルビスは魚が嫌いでした。彼は在宅中には決して魚の調理すらさせませんでした。それと彼は骨付きのものには見向きもしませんでした。フライド・チキンでも。彼は骨なしが好きだったんです」
と彼女はささやくように言った。
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つまりエルビスはジャンク・フードで死んだわけではないということだ。どうしてもジャンク・フードで死んだことにしたい、なにかが大衆の心にあるのだ。なにしろジャンクフードの国だからね。他の料理は理解できないんだよ。共通の話題として。
ところで「クリスピー・クリーム」が、上品なイメージで日本に上陸した。ところがアメリカでは、ダイエット志向で甘味をおさえたクリスピー・クリームは業績が落ちてしまったそうだ。
アメリカ人は身体に悪くても甘ったるいドーナツが食べたいのだ。なぜなら甘ったるいからである。
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「プレスリーはドーナツで死んでない」蛇足
エルビス・プレスリーは、マスメディアに登場した最初のロックン・ローラーだった。というかマスメディアのある種の利用法を作った最初のアイドル・ロックン・ローラーだった。それはビートルズ以上に特筆に価する。
1956年4月に「ハート・ブレイク・ホテル」デビューするが、で1956年9月9日にエド・サリバン・ショーに出演している。これを皮切りにポップ・ミュージックのテレビ出演が一般化していくのである。
またエルビスが出現するまではまだシングル・レコード、LPに対してEPと呼ばれるレコードは規格が決まっていなかった。エルビスの出現で45RPMで7インチ(18cm)という規格標準化するのである。
ところでEP盤のレコードを俗称でなんというかご存知だろうか?
「ドーナツ盤」
である。
あわわわ!
ドーナツの食べ過ぎの伝説はここから出ているのかもしれない。さらにEPの由来がElvis Presleyの頭文字だという俗説まではびこっているらしい。本当はExtended playの略です。
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