「そんなフレーズ、使い方はやはり自分が好きなんでしょうかね」
伊藤 とにかくやらないとって思いました。「なんでもいいから自分たちの身の周りにあるもので作ってみて」って言われて、でも「なんでもいい、って言われたって……」という、本当にそんな感じで……。
石黒 そこで、後楽園でも、黒のドレスで髪をアップにした大人っぽさで、会場が度肝を抜かれたあの名曲、人形を持ちながら歌われた「アンティックドール」の詞も生まれてくると……?
伊藤 ちょうど、パリに行ったときにアンティックドール買ってきてあったから、それについて書こうてみようかなあ、って。アンティックドールなので、長い年月の間にいろんな持ち主のところを巡ったんだろうなあ、なんていうところからイメージを固めていって詞を書いて、曲も渡辺茂樹さん(注:キャンディーズのバックバンド「MMP」のリーダーからのちに音楽プロデューサー。故人)と一緒に作ったんですよね。
石黒 あの世界観は素晴らしいです。すごいと思いました。高校生だった僕にとって、3人とも、アイドルとは思えない才能をひしひしと感じました。そんな憧れのお姉さんが、時を経たいまご自身で詞を書かれて、どう思われました?
伊藤 若い頃とは違う魅力を感じてもらえればいいな、と思います。
石黒 昔の詞を眺めていて、フィードバックとかは?
伊藤 それは特に意識してなかったんですが、出来上がってから考えていたら、使ってる言葉が重なったりしてるんですよね(笑)。だから、そんなフレーズ、使い方はやはり自分が好きなんでしょうかね。
石黒 変わらない! いいじゃないですか!
伊藤 たとえば、ですね。「女なら」に「世界中が後ろ指 背を向けたとしても」って書いてるんですけど、振り返ってみたら、キャンディーズ時代に詞を書いた「悲しみのヒロイン」の中では、「世界中の悲しみを背負った」「誰も話し相手 背中向けてしまう 」とかあるわけですよ! 変わらないですよね~(笑)
石黒 いやほんと変わらないと思います! なにもかも、あの頃と、いい意味で。変わらない感受性、素敵だなあと。
伊藤 そういう表現が好きなんですね。自分でもハッとします。他にもあって、「ミモザのときめき」で、「こんな一人も 好きな時間」って書いてますが、キャンディーズ時代の作詞で、「黄色いカヌー」に「一人一人の時間を持てば」って出てくるんですね。わあ、変わってないじゃない、わたし!(笑) って思いました。