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有本香の「香論乙駁」

蓮舫さん、「国籍」や「台湾」をどうお考えですか

月刊Hanada2018年7月号』より

■蓮舫「今、日本人でいるのは、それが都合がいいからです」

蓮舫さんのことを本コラムで書くのは二度目である。昨年、記念すべき連載第一回(2017年7月号)に彼女のことを書いたのだが、こんなに早く二度目があるとは私自身、意外だ。

民進党を壊滅させた史上最悪の党首として、しばらく静かだった蓮舫さんが、立憲民主党の副代表に就任し、再び国会で吠えている。

「アナタの記憶は自在になくなったり、思い出したりするのですか?」

参院予算委員会の参考人招致の場で、白いジャケット姿の蓮舫さんは、独特のヘタな芝居めいた調子で、柳瀬唯夫元首相補佐官を責め立てた。これには、終始冷静沈着だった柳瀬氏が、一瞬ややムッとした表情を見せた。

当然であろう。柳瀬氏の心中は分からないが、あえて勘繰り代弁するなら、「お前が言うな」ではないか。日本国の国会議員、いやしくも大臣まで務め、野党第一党党首になりながら、自身の国籍がどこにあるかさえ「知らなかった。記憶が曖昧」と言い逃れようとした人物が、他人の記憶についてとやかく言うなど笑止千万だ。

そんなことを思いながら、国会審議のビデオを見返していた私の元へ、作家の百田尚樹さんから電話が入った。

「有本さんが20年以上前に、『蓮舫氏から国籍に関する、すごい発言引き出していた』とネット上でちょっとした話題になってるで。(問題の雑誌)憶えてる?」

問題の雑誌は、1995年7月18日発行の旅行雑誌『ジョイフル』8月号(近畿日本ツーリスト刊)で、「すごい発言」は巻頭インタビューで語られていた。当時私は、この雑誌の編集人(編集長)で、蓮舫さんにインタビューしたときのことも記憶している。


場所は、いまはなき東京・六本木プリンスホテル。蓮舫さん側からの指定だった。写真写りを考えて、カラフルな服装で来るゲストが多いなか、彼女はシンプルな真っ黒のワンピース姿で現れた。大ぶりな翡翠のブレスレットと、お祖母様の形見だという大粒の真珠のチョーカー、ピアスが美しく映えていた。

こういうことは事細かに覚えているのに、私は彼女の「国籍」についての発言をコロッと忘れていた。人の記憶などそんな不確かなもの、ましてや23年前のことである。

この時の蓮舫氏は、自身のことや2つの祖国への思いを率直に語っていて、私はそのオープンな態度に好感を抱いた。国籍については次のように話していた。

「今、日本人でいるのは、それが都合がいいからです。日本のパスポートは、あくまでも外国に行きやすいからというだけのもの。私には、それ以上の意味はありません。(中略)いずれ台湾籍に戻そうと思っています」

23年前のタレント時代の発言や記憶を糾弾するほど私は意地悪ではない。だが、彼女が一昨年、「二重国籍」を脱した前後にした釈明にあった矛盾、デタラメに、この23年前の「考え」を当てはめると妙にピタリとくる。

■改めて蓮舫氏に訊きたい!

同じインタビューのなかで、彼女は“台湾人”としての思いも語っていた。

「(台湾への)愛国心のせいかしら。台湾と中国とが単純に民族がつながっているとは考えにくい」

「台湾は一つの国として認められるべきだと思います。それを頑なに認めないというのは先進国としてすべきことではないでしょう。日本は、台湾との交流がさかんなはずなのに、一方で中国の顔色ばかり伺っている。少し情けない気がする」

私が彼女に好感を抱いたのは、このあたりのことも作用しただろう。日本でのタレント活動を休んで北京への語学留学をする直前だったこの時の蓮舫さんは、台湾の愛国者のようでもあった。

その彼女が21年後、一昨年9月の民進党代表選の最中には次のような発言をしている。

「『一つの中国』論で言ったときに、二重国籍と(いう言葉を)メディアの方が使われることにびっくりしている」

中国の法律が台湾国籍を持つ者に適用されるとの誤った認識から、「二重国籍」との言葉に「びっくり」したのか。それとも、北京留学を経て国会議員へと上り詰める年月のなかで「一つの中国」という思想に染まり、台湾は「国」でないから「二重国籍などあり得ない」とでも主張したかったのか。

二重国籍問題で追及を受けた際、彼女は「多様性」「差別」といった言葉を幾度か口にしたが、最近、多様性を旨とする移民国家・豪州での二重国籍議員の辞職が報じられている。

いま改めて、蓮舫副代表に、国会議員の国籍問題と、日台中の三国関係についてお話しいただきたいと思うのだが、どうか。

 

月刊Hanada2018年8月号』でも好評連載中!

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著者略歴

  1. 有本香

    ジャーナリスト 1962年生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌編集長、上場企業の広報担当を経験したのち独立。現在は編集・企画会社を経営するかたわら、世界中を取材し、チベット・ウイグル問題、日中関係、日本の国内政治をテーマに執筆。ネットメディア「真相深入り! 虎ノ門ニュース」、ニッポン放送「飯田浩二のOK! Cozy Up」レギュラーコメンテーター。著書に、『「小池劇場」が日本を滅ぼす」(幻冬舎)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす―日中関係とプロパガンダ』(石平氏と共著、産経新聞出版)など。