『命は限りあるから意味があるし、美しい』なんていうフレーズは、自分が死んで灰になったずっと後のセカイで『不老不死』を手に入れるであろう未来人に対する嫉妬深い愚かな欺瞞だーー by西暦2050年に不老不死を実現した科学者・神エル(じんえる) プロローグα(50%) xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx ??? 世界は目が眩むほどの白く輝く光に満たされており、地平線はどこまでも続いている。 目を凝らしてみても、その終点を視認することは出来そうにない。 まるで時が止まったかのように静寂に支配された世界を、少女の美しく儚げなソプラノの声が破る。 「いよいよですね」 「ああ、この『ゲーム』が開始されてから、もう2か月余りか……。ありったけの想像力をつぎ込んで創り始めたとき、構想の段階から考えると、すでに3000年以上たったんだよなあ。本当に、いよいよといった感じだよ」 対するは壮観な男性の力強いテノール。 「暫定一位は、今なおラファ様 ―― プレイヤー名は『インノケンティウス3世』。彼より『幸せ』になれるでしょうか?」 「ならなくちゃあな。何しろ『神の座』は一枠しかないんだ。いつまでも、『大天使』の地位に甘んじてはいられないよ。今回ばかりは、行けそうな気がする。なんたって、他ならぬ僕自身がゲームを創造して『制作』したのだから」 「ですが、どうしてミカ様はこのようなゲームをお造りに?最近のテンプレでありきたりなモノからの脱却とのことですが、明確な敵もゲームクリア条件もグランドクエストもない。勝利条件は『どれだけ幸せになれたか?』ミカ様も知っての通り、その曖昧で不明確な内容に反感を抱いている者たちも少なからずいます。もちろん、ミカ様の豊かすぎる想像力は誰もが認めていますが」 男は、苦笑すると終点の見えない地平線のその先を見据える。 「この世界には変化がない。何も変わらない。物質も精神的なのつながりも。だから自分が何のために此処に存在しているのかも解らない。こんな世界で僕は『生』というものを全く実感することができないんだ。生きているって感じがしない。ただ、終わらない世界で日々を自堕落に貪っていくだけだ。それが僕は、たまらなくつまらないんだ。だから全力の想像力をつぎ込んで「終わり」がある世界を創造した。あちらで僕らは等しく『死』という逃れられない終わりを迎える。いつか終わる。ならばこの魂はきっとここよりもずっと輝けるはずだ」 そう語る男は、どこまでも楽しそうだ。 「終わり、『死』とは、どういうものなのでしょう?こればかりは『この世界』の住人たる我々では、言葉で概念だけ伝えられてもいまいちピンときませんね。きっと実際に経験して、終わり ーー 『死』を迎えてみないとわからないのでしょう。楽しみだけど、ちょっとだけ怖い気もします」 「ああ、『製作者』たる僕でさえ、それを完全には理解できていないよ。こんな世界で生まれてきたんだ。想像できないのも無理はない。我々の想像力には限りがある。ああ、そろそろ時間だ。じゃあ、行ってくるよ。お前もすぐに。もしかしたら、向こう側で会えるかもな?」 少女は、柔らかに微笑むと 「偶然、天文学的かつ奇跡的な確率であちらの世界で出会えたとしても、記憶をなくした我々では、互いを認識できないじゃありませんか」 「ハハハ。そうだな。でも会ってみたいものだ。記憶を封じ、心を消し、姿を変えようが、そこに残るものはきっとある。お前はお前だ。お前を構成するその魂は同じなのだから。人格が完全に消えることはない。その何%かは、確実にアバターへと引き継がれる。そいつは、僕たちの意識の奥底の暗闇の中、無意識の領域で抑圧され今も燻っている。言うなれば、もう一人のボクだ。そいつに託すんだ」 そう言うと、男は踵を返し、直径5メドルほどある巨大な
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nttq
2019年6月17日 22時57分
『制作』? 『製作者』? どちらの「せいさく」が正しいので?
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nttq
2019年6月17日 22時57分
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