残酷極まりないルーズベルト・ゲーム。堪忍袋の緒が切れたファンが、バスに乗り込む背中に罵声を飛ばす。ごもっともだ。ただ、あえて書く。スコアブックを見返しても、間違えた部分が見つけられないのだ。
魔の9回は田島から。「1日にも清水の勝ちを消したじゃないか」という声もあるだろうが、8連戦の初戦なのだ。5点リードで心配するのなら、それ以前に1軍のベンチには置いてはいけない。1点失ってなお1死一、三塁。中村を打席に迎えたところでR・マルティネスに代えたのも正解だ。セーブシチュエーションを満たしたのだから、迷っていたら火が広がる。しかし、3安打と四球で1点差の2死満塁まで悪化した。左の鈴木に打席が回ったところでロドリゲス。ブルペンが福(予備に先発要員の阿知羅)だけになるのを承知の上で、勝利への最善手を打ったのだ。
あとはブルペンでの状態だ。受けた人、見た人に確かめたが3人とも問題はなかった。どうすれば勝てたのか。僕には答えが見つからない。
「ライデル(マルティネス)は途中からいくことはあまりないし…。メンタル? それもありますが、経験値の問題もあります。次の試合ではこうならないよう。まだ終わったわけじゃありません」
ブルペンを預かる赤堀投手コーチは、誰もが苦しむ9回のスペシャリストだった。最優秀救援はプロ4年目に始まって、5度も獲得した。度胸と制球力で修羅場をくぐり抜けた右腕であっても、139セーブを挙げる間に45敗を喫している。「僕はメンタルが強かったわけではない。投げているうちに強くなったんです」という赤堀コーチに「次」に向けて、何が必要なのか。それだけを聞いた。
「考えないことです。本能的に。ただし、向かっていく姿勢だけは失わずに」。おびえれば、また負ける。わかっているのはこれだけだ。