骨と吸血鬼兄弟   作:大三元
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二十五話 国と吸血鬼兄弟

 

魔導国にエ・ランテルが割譲され数日、まだまだ新しい王やアンデット達に慣れない市民達が大半を占めていた。そんな街を兄弟はあちこち歩き回っていた、東に未来を憂う者あれば行って一緒に飲み騒ぎ、西にアンデットを嫌う者あれば行って一緒に飲み騒ぎ、南にアンデットを怖がり泣く子供あれば行って一緒に遊び騒ぎ、北に諸外国のスパイあれば一緒に飲み騒ぐ。その姿を見た民は一様に心を開きアインズ・ウール・ゴウン魔導国の繁栄を願った。

 

 

 

 

 

 

「あの兄弟は楽しそうでいいなぁ~、それに引き換え俺は… はぁ~…」

 

アインズ・ウール・ゴウン魔導王ことモモンガは魔導国の法整備やらなんやらを片付けていた。大半はデミウルゴスやアルベド、パンドラズ・アクター等の知能が高い者に任せているのだがそれでもまとめる者としての職務をを全うしている。執務室にノックの音が響いた、入ってきたのはデミウルゴスだ。

 

「失礼しますモモンガ様、至急ご報告したい事がありまして…」

 

何やら神妙な顔で話すデミウルゴス、その危機迫る雰囲気を感じ取ったモモンガは話を聞く。

 

「どうしたデミウルゴス、話してみよ」

 

「は、ありがたき幸せ、では… ルーク様並びにヤン様が反旗を翻しました」

 

「え?… えぇえええええええええええええ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ある馬車の中、兄弟とフードを被りマントで全身を隠した者二人が話している

 

「私達が仲間になるんだ、人類の事は安心してほしい」

 

「しかし何故敵対国である我がスレイン法国に…」

 

「なぁに、面白そうじゃん? ただそれだけだよ、魔導王と一戦やるのも悪かねぇ」

 

何時もと違う真剣な顔で兄弟は話す、法国の者達は表情は見えずとも怯えた雰囲気だ。

 

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓に帰ってきたモモンガは今回の件について情報を集めていた、先ず発覚した経緯だが兄弟を護衛していた隠密型の傭兵NPC達が皆拘束されていた事がきかっけだ、その拘束した人物は兄弟である、傭兵NPCからの情報なので間違いない、そして同時刻ルーク、ヤン両方の私室から手紙が見つかった。いつもと違いふざけが一切ないその文にはスレイン法国へ行く事、人類の為にスレイン法国で働く事、人類の為なら魔導国と敵対する事を辞さない事、といった内容が書き綴られていた。

 

「どうして… どうしてなんだ! あんなにも俺達の事を大切にしていたじゃないか!」

 

モモンガは激怒し落胆し嘆いた、その姿を見る事しか出来ない階層守護者達。そしてモモンガは自室へ籠ってしまった、妻であるアルベドやシャルティアも息子であるパンドラズ・アクターでさえ部屋へ入る事は禁止された。

 

 

 

 

「守護者各位に集まってもらったのは他でもない、今回の一件… ルーク様、ヤン様の事です」

 

ある一室でデミウルゴスがアウラ、マーレ、コキュートス、シャルティア、パンドラズ・アクターに向け話している、アルベドはモモンガの部屋の前から動かないため今回は呼ばれていなかった。皆顔が暗い。無理もない、あの御兄弟がこのナザリックから去ってしまったのだから。

 

「何方かこの件に関して何か知っていることはないかね?」

 

「そんな事… 私達が知りたいわよ」

 

「ぼ… 僕達が何か不敬な事をしたからかな…」

 

アウラ、マーレは涙を浮かべながら話す、そこへコキュートスがゆっくりであるが話し始めた。

 

「ソウデアルナラマダイイ、再ビ功績ヲ上ゲ私達ガ使エル者ト認メテモラエレバ戻ッテクダサルカモシレヌ。シカシ前ニ話シテクダサッタ【リアル】ナル場所ヘ帰ル為ニ出テ行カレテイタラ…」

 

「そ… そんな事は無いでありんす! あの御方達はお亡くなりになるまで私達と暮らすと宣言して下さった… そう! あの場所で宣言してくださったのでありんす!!」

 

シャルティアが反論する、その表情は鬼気迫るものだった。そして今まで黙っていたパンドラズ・アクターが徐に話を始める。

 

「皆さん、落ち着いてください。 悲しいのは私も変わりません、しかし今ここで嘆いていても何も事は起きないではないですか… なら皆で如何したら良いか話し合いませんか?」

 

その言葉で皆が静かになる、相変わらず暗い雰囲気のままだ。今回の話し合いで分かった事は何もなかった…

 

 

 

 

 

 

会議の後自室へ戻ったデミウルゴスは机の上に見慣れない紙切れがある事に気付いた、その紙切れを持ち上げ書いてある文字を確かめる【第二段階へ】。たったこれだけしか書かれていなかったがデミウルゴスはすべてを理解した、大切にその紙切れを懐へ仕舞うと不敵な笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

同刻パンドラズ・アクターも自室にて見慣れない紙切れを見つけた、デミウルゴスと同じく書かれている文字を確かめる、【あのアイテムを起動させよ】 パンドラズ・アクターもすべてを理解した、そして一人帽子を深くかぶり笑ったのであった。

 

 



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