ネットは元々炎の荒野(あるいは、やさしい世界は無いという話)
2019年6月15日 02:39
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全体公開
どうも、今酒ハクノです。
最近は時々「私は収益化するまでにこんなことを考えたよ、こんなことを考えておけばよかったなと今にして思うよ」みたいなことをここに書いています。
前回は「生放送と動画を両方やった方が絶対いいよ! 生放送をやるにしても、今やろうとしている生放送の対象が誰なのかよく考えた方がいいよ!」というようなことを書いたのではなかったかと記憶しています。
いい加減精神論のようなことが多くて「そろそろ具体的なすぐ使えるテクニックとか教えてくれよな~」と飽き飽きしているのではないかと思うのですが、申し訳ありません。
次回くらいからは、私が動画で具体的に気にしていることなんかを話していきたいなと思っているのですが、少なくとも今回はちょっと精神的な話をさせてください。
今日は、Vtuberをやっていく上で、ひとつどうしても覚えておいてほしいことの話です。
今回の内容、ひょっとしたらちょっと怒られるかもしれんな……とも思っています。
が、私がVtuberとして1年以上やってきた中で、一番大事にしてきたことですから、いつか伝えようとも思っていました。タイミングがあるとしたら今ではないかと思っています。
伸びたいという考えでVtuberをやっていく上で、私が絶対に大切だと思ってきたこと、そして今でも思っていること。
それは、「やさしい世界というものは、基本無い」と思いながら過ごすこと。
より端的に言うなら、世の中に期待しすぎず、為すべきことを為すことです。
最近はその辺どうなのかあまり存じ上げていないのですが、特に私がVtuberという世界に参入してからかなり早い時期は、「Vtuberの世界というのはやさしい世界だよね」という空気が結構流れていた記憶があります。
つまり、たとえリアルに居場所がない人であったとしても、Vtuberとして活動すれば居場所が見つかるし、かけがえのない仲間やファンを得ることができるし、お互いがお互いを尊重できる。
Vの世界というのは、そういうやさしい世界だ、という話ですね。
私はVtuberというものを始めた瞬間から、その「やさしい世界」を信じたことは一度もありません。
別にそれはVtuber界隈というものを否定的に捉えていたからではありませんし、誰か特定のVtuberの方に恨みがあったからでもありません(恨みを持つほどの人間関係をまず築いてません)。
ただ、「そもそも人間同士が関係を結ぶ以上、やさしいだけの場所などというのは存在しない」という確信があったからです。
意外に思われるかどうか分かりませんが、私にも今酒ハクノとして活動する以前のインターネット人生というものがありましたので、まぁ、いくつかのインターネットコミュニティの中で過ごしてきました。
特にツイッターというものが流行しだしてからは、気軽に他者と繋がることができるようになりましたね。
某アーティストのファン同士で繋がったり、某人気漫画のファン同士で繋がったり、某動画サイト好き同士で繋がったり、某ソシャゲ好き同士で繋がったり、あるいは(Vtuberと同じように)表現者同士のコミュニティで繋がったり……そういう場を転々としてきて今があります。
が、その中のどれひとつ取っても、トラブルと無縁という場所はありませんでした。
同じアーティストに救われたもの同士心は繋がっている……と謳われているはずなのに、解釈の違い、生きてきた文化の違いで揉め、衝突する人々がありました。
同じ漫画で感動した仲であるのだから、他者にも愛とリスペクトをもって接することができるはず……というお題目がどこへ行ったか、作品に対する意見の相違で大いに喧嘩し、「この作品はもう終わった」とアンチに転じていく人々がありました。
同じように表現をする者同士、大いに高め合っていけるはずだ……そう思って接していたはずなのに、裏で足を引っ張り合い、また金銭や肉体の関係でドロドロしていく人々がありました。
私は確かに褒められた人間性の持ち主ではありませんので、ひょっとしたら私の通ってきた界隈が偶然ろくでもない人間の集まりだったのかもしれません。
が、私がかつて見てきた人々のことを思い返してみると、どうもVtuber界隈の人々とそう違いはなかったように思えてならないのです。
私が過ごした様々な場所、そこに所属していた人々は、どこか現実の生活に鬱屈としたものを抱えている中、作品や表現といったものに希望を見出した人たちが大半だったはずです(そうじゃない、人生に大きな困難はないが趣味でやってるという方もいたでしょうけども)。
そして、同じ状況にある人々が自分だけではないと知り、その感情を分かち合おうとして繋がり、そこに人間関係が生まれたはずです。
こんなに素晴らしいものに救われた仲間なのだから、きっと素晴らしい人々に違いない。
そう錯覚してしまうのも無理はありません。
ですが根本的に言って、そこに集まっているのは「同じこと、同じものが好き」というだけの赤の他人でしかないんですね。
生まれた場所、育ってきた環境、受けてきた教育、読んできた本や漫画、観てきた映画やアニメ、聴いてきた音楽、何もかも違うわけです。
その中には当然聖人に近いような人格者もいれば、最低のゲスもいます。
ほとんどの方は聖人と最低のゲスの中間に位置しているでしょうが、ものの見方や考え方がそれぞれ全く違うわけですし、その中にはあなたからすれば信じられないような常識を持った方もあるわけです。
悲しいことですが、そういう人々が集まれば、どんなにそのコミュニティの根幹が素晴らしい可能性を秘めたものであろうと、トラブルが起きます。
私の知る限り、それはその漫画なら漫画が、アーティストならアーティストが、そしてVtuberならVtuberという概念自体が悪いのではありません。
人間とは「そういうもの」なのです。
繰り返しますが、私はVtuber界隈は最低のゲスの集まりだなどと言いたくてこの記事を書いているわけではありません。
所詮人間の集まりに、過度な期待をするなという話をしています。
ここは私のような人間でも輝ける「やさしい世界」なんだ。
そう儚い希望を持ってしまい、思い切って界隈に飛び込んだ結果……思ったほど動画は伸びず、生放送に人は来ず、理想と現実のギャップに苦しみ、あるいは他のVtuberやファンとの人間関係に苦しみ、気付けばツイッターで自分が伸びないことを嘆いたり、伸びているVtuber、その他自分の気に入らない人物の愚痴ばかり言うようになり、やがて姿を消したり界隈のアンチに転じたり……そういった人物を何人も見てきました。
全てはこの一言に尽きます、「期待するな」と。
Vtuberという表現方法は、現状(ちょっとだけ)他の表現手段より見てもらいやすい側面があるかもしれません。
ですが、それだけです。
それはVtuber界隈が優しい世界だからではありません。
Vtuberというものへの注目が依然としてある程度存在しているからです。
同じ志を持ったVtuberだからといって、誰とでも繋がれるわけではありません。
聖人もいれば最低のゲスもいて、その中間くらいの人も大勢いるVtuberという界隈の中に、たまたま信頼のおける友人ができることがあるというだけです。
あなたのことを熱心に推してくれるファンの方ができて、「ここはなんてやさしい世界なんだろう」と思うかもしれません。
ですが、それは別にVtuber界隈のやさしさでもなんでもありません。
あなたが頑張ったか、もしくは運がよかったのです。
あなたを「一生推す」と誓ってくれた方や、親しく情報交換をし続けてきたと思っていた方が、ある日突然あなたをリムっていたり、ブロックしていたり、あるいはまったくどこにも姿を見せなくなったりすることもあるかもしれません。
ですがそれは、やさしい世界が突如として裏切ってきたのではありません。
ファンや友人関係というのは、案外そういうものというだけの話に過ぎません。
この人なら信頼できると信じて会ってみた結果、凄まじい人格破綻者で暴言を吐かれたり、手ひどい詐欺にあったり、レイプされたりすることもあるかもしれません。
その時あなたは、「やさしい世界だと信じてたのに、裏切られた!」と感じるかもしれません。
ですが話は単純です。
あなたがどんなコミュニティに所属しようと、人間は一定確率でクズなのです。それだけの話です。
私は今酒ハクノとしてネットを歩く時、常に「ここは炎の荒野だ」と思っています。
怪我するような地形や飢えた獣がどこにいるか分からないですし、突然足元が崩れて落下するかもしれません。落ちた先が硬い岩盤だったり、燃え盛る炎である可能性もあるでしょう。
でもそれは、荒野が裏切ったからではありません。荒野とはそういう場所なのです。
荒野を歩いている最中、他のVtuberの方が見えたとします。
でもそれは、ただ同じ荒野を歩いているだけの人です。
話してみたら案外いい人かもしれませんが、強盗殺人を厭わない人だっているでしょう。
もし仲間になれたなら、それは「荒野に居る人は皆優しい」からではなく、単にラッキーだったからです。
相手から突然銃を突きつけられたとしても、荒野とはつまりそういう場所なのです。
私が、そしてVtuberをやっていきたいあなたが深く傷つかないために、これからも覚えておくべきことはそう多くありません。
ネットは元々炎の荒野なので、やさしい道がどこかにあると期待せず、ただ黙々と歩き続けること。
苦しい道で出会う人に仲間意識を持つ気持ちは分かるが、全員が善人と思わないこと。
そして、そういう中で馬が合う仲間や助けてくれる人に出会えたら……ひょっとすると一時の関係になってしまうかもしれませんが……それはとても幸運であるということです。
私をいつも応援してくださっている皆さん、私と仲良くしてくださっている皆さん。
本当にありがとうございます。
炎の荒野で皆さんに出会えたことに、私は心から感謝しています。