その15衣擦れその17聖娼

2019年04月09日

その16事件の始まり

 2016年7月最後の土曜日、哲学青年は私に秘密の病院に連れて行くと言った。以前哲学青年は私に一日だけ病院に行くから今夜は連絡できないというときがあった。


 哲学青年は土曜日になるといつものカフェに滞在する。それまで哲学青年ひとりだったが、その日から私も同行した。カフェのみんなに恋の成就を祝ってもらった。私が彼の想い人であることも驚くひともいた。夕方になると、私と哲学青年は八王子に向かった。途中食事をして、八王子の秘密の病院に着いた。夜の8時だった。


 八王子駅に近いひっそりとしたマンションの一室が病院だった。病院は洒落た雰囲気で医療器具などはない。そこには魔術師の医者がいた。品のいい紳士だが、なんだか眼が怖かった。この人が哲学青年の主治医だ。


 魔術師の医者は私の身体を調べて、今まで飲んでいる薬が悪いのでは?といった。哲学青年は私に薬を飲むことを止めたかったと初めて語る。薬が悪い?あれは父の知り合いの優秀な医者が調合した大切な薬だ。私は非定型精神病ゆえ薬を常に少量飲まなければいけない。魔術師の医者と哲学青年は私が薬を飲むことに反対した。


 私は15歳で精神病院に入院した。治療ミスで死にかけたことはあったが、病院の薬をためらいなく飲んでいた。病院のことにひとつも疑問を持たなかった。それを恋人と恋人の主治医が私の医療に反対する。魔術師の医者は家に帰ったら薬を調べるようにと言った。こうして診察は終わった。治療代は高額だが、哲学青年が払った。


 こうして私と哲学青年はそれぞれの家に帰った。私は困った。哲学青年が私に疑問を投げかける。君は親の言いなりになっている、と言った。初めての問いに私は戸惑った。私は自宅の部屋で哲学青年からもらったフラワーエッセンスを飲んだ。心地よい爽やかさが口に残る。


 最近私は生理でもないのに少し出血した。恋をして少しバランスを崩したかな?と思った。体重も少し減った。恋ゆえかなあ……。この仕組みは最後にわかることになる。




gomafujin at 12:03│Comments(0)有る事件の告白 

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