その21薬その23薬は毒?後編

2019年05月05日

その22薬は毒?前編

 真夏の午前、私は二つのポカリスエットを持って哲学青年のいるアパートに向かった。哲学青年にモーニングコールしても返事はない。こうなったら現地に突撃だ!私は合鍵で哲学青年の部屋に入った。哲学青年は赤い絨毯の床でぐっすり眠っていた。哲学青年は不眠症で有名だ。私と付き合うようになってから安眠できるようになったらしい。私は冷たいポカリスエットのボトルを眠る哲学青年の頬に付けた。哲学青年は少し驚いたがすぐ笑顔になって起きた。哲学青年はポカリスエットを飲んでから丹念に身支度をした。私はその間本棚の本を手に取って読んでいた。


 身支度を終えた哲学青年と私は土曜日のカフェに行った。哲学青年はいつもの黒いスーツ姿、私は手の込んだブラウスとスパッツを着ていた。哲学青年はプラトンの「饗宴」を持ってきていた。哲学青年はギリシャ哲学とドイツ哲学を敬愛している。以前から私は哲学青年にギリシャ哲学を教えてほしいと言っていた。哲学青年はギリシャ哲学の自由の精神を語ってくれた。


 プラトンの「饗宴」はとても読み込んでいた。プラトンの「饗宴」は意外とおふざけであると哲学青年は語る。プラトンの「饗宴」のカオスっぷりには驚いた。だけどその本に登場している人物たちの、のびのびとした表現、生き生きとした描写には感動した。哲学青年の学びには自由がある。ときどきおかしなことを言うが、彼と語ることは至上の喜びだった。哲学青年との交際は知的であり、さらに男女の愛の喜びがあった。それまでの男性たちの付き合いが違う。官能と向学の二重奏だった。


 しばらくしてカフェのみんなが来た。カフェのみんなは私たちに祝福の言葉をもらった。夕方になって哲学青年と私はカフェに出た。夜には例の八王子の魔術師の医者に行かなければいけない。駅ビルの韓国料理の冷麺を食べてから八王子駅へと向かった。



gomafujin at 16:21│Comments(0)有る事件の告白 

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