2019年06月05日
その38哲学青年の洗脳技術
あの穏やかな哲学青年がみるみる変化する。だけど哲学青年のDVは独特だった。殴るとかはなかったのです。哲学青年のDVはマインドコントロールだった……。
私が哲学青年の意に染まぬことをする。哲学青年は決して怒鳴らない。むしろ心配する。いつもの君じゃないよ、どうしたの、僕に話してほしい、という。
私は語る。その時、哲学青年は琥珀色の眼で私を見つめる。目線は絶対に離さない。私は状況の説明の途中、哲学青年はこういう。それは本当に君の意志?誰かに操られていない?僕だったらこう思う、僕が考える論のほうが君本来の君じゃない?
こんなことを数回やられると、不思議なことに私の考えが混乱する。自分の考えがわからなくなる。そうして哲学青年の意見が正しく聞こえる!私は黙る。
「哲学青年、私って駄目な人間かなあ……。」
「そんなこと無い!君は悪い人間たちに利用されているだけだ!じつは君は人間でなく神の娘なのだ!可哀そうに……。君は清いからこそ悪者に狙われたのだ。僕は君を悪しき手から解放する。だから君は両親に会ってはならない。両親は君を病院に強制入院して閉じ込めるだろう。」
そうして哲学青年は私を抱きキスをする。
この哲学青年、言っていることがペテンではない。哲学青年は狂った人で真剣に言っている。彼にとって真実なのだ。哲学青年のやっていることは犯罪級だが、哲学青年はそれで私を救うと信じているのだ。私を本気で略奪婚しようとしているのだ。哲学青年は必死だった。略奪ごっこではない。
当時の哲学青年は私への恋で狂ってしまったのだ。これは犯罪というより悲劇なのだ。そうであったから私はシェイクスピアの世界に助けを求めた。シェイクスピアの会でも現在「リチャード三世」が終盤に差し掛かり、次回は「オセロ」だ。「オセロ」の予習にオペラの「オセロ」をDVDで観たが、「オセロ」の狂気はどこか哲学青年に似ていた。