その41新婚生活その43発症

2019年06月15日

その42お腹空いた……

  哲学青年の魔術のせいで実家に戻れなくなった私。その日は水曜日だった。哲学青年が出勤してから私はアパートの家事をした。家事はもとから好きなので楽しかった、掃除したり洗濯したり……。だけどお腹空いた。哲学青年の冷蔵庫にはフラワーエッセンスと水とオレンジジュースしかない。私はキリスト教系カフェに行った。カフェでお茶とケーキを食べた。それで足りるの?当時空腹はさほど辛くなかった。生きていければいいと思っていた。都心に勤務している哲学青年もあまり食べなかったらしい。


 私と哲学青年は痩せていった。私はむしろ痩せた方がいいけど、もともと細身の哲学青年の体が心配だった。哲学青年が帰宅して食事と入浴を終えて後は寝るだけのとき、私は哲学青年に「トリスタンとイゾルデ」の話をした。禁断の恋をした騎士トリスタンと王妃イゾルデは森に隠れ住む。二人は愛し合ったが数ヶ月の森の生活で互いに痩せてしまった。


 私の家族は哲学青年の住処を知らない。自宅から20分無い距離で私は行方不明になった。それは狂おうしいほど愛し合う日々だった。寝る前必ず私は聖書を読み上げ祈りを捧げた。神様、どうか哲学青年と私を救ってくださいと。


 この時期私は命の薬を飲んでいない。私の命は徐々に危険に向かっていた。哲学青年に家に戻さないならどこかの病院に入院したいとも言った。哲学青年は断固反対した。そして私を抱きしめた。哲学青年は私を愛せば私の命は助かると思っていた。哲学青年が愛せば愛するほど私の生命は削られていった。




gomafujin at 11:36│Comments(0)有る事件の告白 

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