中東のホルムズ海峡付近を航行していた日本のタンカーが13日、何者かに攻撃された。船のエンジンルームから火が上がり、度重なる攻撃を受ける緊迫の事態に、身の危険を感じた船員らは救命艇で次々と脱出した。「なぜ狙われたのか」。運航会社の社員らは海路の安全を脅かす行為に怒りの声を上げた。
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タンカーを運航する海運会社「国華産業」の堅田豊社長は13日夕、東京都千代田区の本社で記者会見した。表情をこわばらせ、「なぜ我々の船がこのような攻撃を受けるのか。船員の生命と船舶の安全を脅かしたことに対する怒りがある」と憤った。
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会見は断続的に開かれ、担当者は現地の情報を確認するため事務所と会見場を頻繁に行き来した。堅田社長らは船の写真を使って説明したが、被害の詳細は「まだ分かっていない」と繰り返した。
同社や国土交通省によると、攻撃を受けたタンカー2隻のうち1隻は、同社がシンガポールの会社に委託して運航するパナマ船籍のケミカルタンカー。全長170メートルで、総トン数は1万9349トン。メタノール2万5千トンを積み込み、現地時間の10日午前、サウジアラビアのアルジュベール港を出た。22日にシンガポールに到着し、その後タイへ向かう予定だった。
最初の攻撃は日本時間13日午前11時45分ごろ。砲弾のような物が船の左舷後方にあるエンジンルーム付近を直撃し、火が上がった。船員が船に備え付けの消火設備で二酸化炭素(CO2)を噴射して消し止めた。
さらに約3時間後、今度は左の船体中央に攻撃を受けた。船内にとどまると危険と判断し、フィリピン人船員21人が救命艇を使って船外に脱出。近くを通った船に全員救助された。うち1人が軽微なけがをした。タンカーは現在も無人で漂流しているという。
攻撃を受けた海域では5月にもサウジアラビアなどの船4隻が攻撃を受けており、国交省は海運関係者などに注意喚起していた。午後6時すぎに記者会見した同省の担当者は「今回が海賊なのかはっきりしない。どのような性格の事案なのか分からない」と述べた。
業界団体も対応に追われた。海運会社でつくる日本船主協会(東京・千代田)はホルムズ海峡の運航に注意するよう会員企業約130社に呼びかけた。同協会の担当者は「日本の関係船が狙われたというより、運が悪かったのだと思う。首謀者や攻撃の意図が分からないと対策も取れない」と気をもんでいた。
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