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♪～
（麻子）ここが　あなたの机。
（なつ）はい。
♪～
なつは　晴れてアニメーターになりました。
♪～
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
昭和３２年の夏を迎えました。
（井戸原）次回作の長編映画は「わんぱく牛若丸」に決定しました。
（仲）それで　今回は　みんなからキャラクターを募集したいと思います。
（一同）え～…！
試しに　これが　僕が描いた牛若丸のキャラクター。
これも　まだ決定ではない。
牛若丸でも　もう　ほかのキャラクターでも何でもいいからみんなに考えてもらいたいんだよ。
例えば　母親の常盤御前　仇の平　清盛それに　武蔵坊弁慶動物たちだって　たくさん出てくる。
原画　動画　関係なく無記名で　キャラクターを募集して検討会を開きたいと思ってる。
これが　今回の脚本だ。
登場人物表も書いてある。
（仲）みんなの好きなキャラクターを選んで自由に描いてみてよ。
期限は　お盆休み明けまでとする。
みんな　奮って参加するように。
（一同）はい！
よし　以上！
♪～
あっ　マコさんマコさんも参加しますよね？
するわよ。　どうして？あっ　いえ…それじゃ　誰にも相談できないですね。
困りました。　いきなり　キャラクターを考えろと言われても…。
あなた　期待されてると思ってるの？
思ってません。なら　楽でいいじゃない。
そうですね…。
（茜）ねえ　なっちゃんも参加するでしょ？
あ…　しますよ。　せっかくですから。
それじゃ　相談できないわね。
期待されてないんだから楽にいきましょう　楽に。
あっ…　そうね。
あ　すいません…！今のは　自分に言ったんです。
あっ…　すごいわね　なっちゃん。
肝が据わってるのね。
あっ　いえ…。フフ…。
♪～（スピーカー「東洋行進曲」）あっ　来た！
えっ？
（スピーカー）♪「世界に巻き起こす希望の息吹」
（大杉）や～　皆さん漫画の皆さん　ご苦労さん　ハハ。お楽に　お楽に。（一同）おはようございます！
日本で　初めて挑んだ長編漫画映画「白蛇姫」が　この７月に公開され大ヒットを記録しております。
おかげで　この動画スタジオを立ち上げた私の面目も立ちました。
株主に首を切られずに済むところであります。
冗談ですから　笑ってもいいですよ。
（笑い声）
これも　ひとえに　漫画の皆さんの努力のたまものと感謝します。
次回作「わんぱく牛若丸」もどうぞ　頑張っていい漫画映画にして下さい。
（山川）はい　分かりました。
しかし　アータ。はい。
ここは　若い女の子もたくさんいて　いいね。
あっ　はい…。
♪～
皆さん　お母さんは　昔こんな漫画映画を作っていたんだと自分のお子さんに誇れるような立派な仕事をして下さい。
ハハハハ…。
何ですかね　あれ！あれって？
漫画の皆さんって私らが漫画みたいじゃないですか。
それに　お母さん　昔こんな漫画映画を作ってたって自分の子どもに誇れって何ですか？
それって　もう　その時に　アニメーターを辞めてるってことじゃないですか！
違うの？いいんですか？　それで　茜さんは。
もし結婚をしたり子どもを産んだりしたらこの仕事　辞めちゃうんですか？
そんなの　おかしいですよ。
せっかく努力してアニメーターになったんじゃないですか！
（麻子）辞めろって言わせなきゃいいんじゃないの？
え？
マコさん…。
会社から　辞めないでくれって引き止められるようなアニメーターになればいいんじゃない　だったら。
まだ何にもできないのに文句ばっかり言ってないで。
はい！　そうですよね…。
期待してないけど。
はい…。
失礼しました！
あんなふうになりたいの？
あんなふうって…。
う～ん　誰にしようかな…。
なつは　今　幸せでした。
う～ん…。
仕事に悩めば悩むほどそれを実感するようでした。
♪～
なつの鉛筆は　何を描いても　今はなつの夢を表現するかのようなそんな時でした。
（咲太郎）なつ。うん？
下に信哉が来てるよ。
えっ？
信さん！
見つかったの？
（信哉）うん。本当に？
同じ千葉にいたよ。　千葉の船橋って所だ。
ふなばし？まあ　座ろう　なつ。
うん。
川谷としさんって人がなっちゃんたちの親戚だよね？
うん。　お母さんのいとこ。一番仲がよかった人だって。
その　としさんと結婚した川谷幸一さんっていう人の行方を追った方がいいと思ったんだ。
それで　幸一さんを知っていそうな人を片っ端から探して訪ねていった。
それで　やっとその知り合いのうちの一人が今の幸一さんから来た年賀状を持ってたんだ。
それで　船橋の住所が分かったんだよ。
うん…。
幸一さんはね　戦争に行って足をけがしたらしい。それで　農業ができなくなって引っ越ししたらしいんだ。
それで　千遥は　今も一緒にいるんだよな？
分からない。その住所までは見に行ったんだ。
それで　それらしい女の子は見かけたけど声はかけなかった。
千遥かどうか　分からなかったの？
僕の記憶では分からなかった…　ごめん。
（亜矢美）しょうがないよ５歳の時に　ねえ　会ったっきりでしょ？
ねえ　お兄ちゃん会いに行こう！
うん…。会うのがダメなら　見るだけ。
とにかく　千遥が無事なことを確認したい。
そうだな…。
よし　すぐに行こう。うん。
（信哉）これが　船橋の住所だよ。
ありがとう。（亜矢美）ちょっと待った。
今　すぐ行こうって言ったね？うん。
いつ行く気？　今からすぐ？それとも明日？
向こうが　家にいそうな時の方がいいんじゃないか？
だったら　やっぱり休日か。
お盆…。
ねえ　お盆にしよう！
お盆？８月１５日…。
１５日に会いに行こう。
そうか…。
８月１５日…　それはいいね。
その日なら　千遥も　きっと私たちのことを思い出してくれるかもしれない。
そでしょ？
覚えていればな。
覚えてるよ！千遥だって忘れるはずない。
あんなにつらい思いしてきたんだから…その日々を忘れるはずない。
だけど…つらいことばっかりじゃなかったはずだよ。
楽しいことも　いっぱいあった。
うん…。
お～　来た　来た　来た！
おっ　頑張れ　頑張れ　頑張れ…！
鯉　久しぶりだね！うわっ　久しぶりだ！
♪～
よし…　８月１５日　会いに行こう。
うん！
♪～
８月１５日今年も　その日はやって来ました。
亜矢美さ～ん！ねえ　亜矢美さんってば　早く！
は～い　は～い　は～い　はいはい。お呼びでござんすか？
どうしましょう？どれを着ていけばいいと思いますか？
いつもの感じでいいんじゃないの。
だって　あんまり変な格好してたら妹に警戒されませんか？
警戒？　何を？知りませんけど…。
じゃあ…　これだろう。　はい。
えっ　これですか？うん。
何だか　遊んでるように見えませんか？
え～　そう？
じゃ…　これはいいんじゃない？
これですか？何だか　バカっぽく見えませんか？
バカっぽいんだ…あ～　これ　全部私の服だから。
あっ…　ごめんなさいあくまで　妹の視点から考えるとです。
早く行こうぜ。ちょっと待って。
ここだ。
どうする？
どうするって…ここまで来たら　行くしか…。
（ドアが開く音）
千遥？
♪～
ああ　なつよ慌てず　気を落ち着けて来週に続けよ。