(元弁護士)行政書士 大久保宏明

プロフィール

1979年(昭和54年)司法試験合格
1982年(昭和57年)東京地方検察庁検事
1987年(昭和62年)検事退官・弁護士登録
2000年(平成12年)弁護士登録を自ら抹消
 その後株式会社ニュートン支配人等
2009年(平成21年)
2010年(平成22年)
2011年(平成23年)
2012年(平成24年)
行政書士試験合格
2014年(平成26年)行政書士登録・社会保険労務士登録

2002年(平成14年)より法律関係の教材を制作しています。法律を学ぶ皆さんの支援をします。

行政書士試験対策の教室概要

教室名『行政書士試験メール塾』マンツーマン・個別指導
教室責任者大久保宏明(おおくぼ・ひろあき Hiroaki Okubo)
講師大久保宏明
住所〒151-0053
東京都渋谷区代々木2-23-1-336

■■■ 大久保宏明:「代書人」という生き方 ■■■

 最近のことであるが、若手の弁護士が「三百代言(さんびゃくだいげん)」という言葉を知らないのに驚いた。

 明治時代初期、フランスに真似てつくられた「代言人」制度が、わが国の弁護士の発祥とされている。
 正規の資格をもった代言人だけが法律事件に関与できることとなったため、資格を持たない者が首を突っ込むと、三百代言・事件師・利権屋などと呼ばれて排斥されるに至ったというわけである。
 「三百」は、三百文(安いゼニ)という意味であった。

 もっとも、最近では、詭弁を弄することを「三百代言」というようになったので、弁護士を蔑視する際に用いられている。
 たしかに、一般人から見ると、原告と被告の主張が真っ向から対立する訴訟構造は、奇異に映るであろう。
 一方、または双方が、ウソをついているはずだ。
 そうした場面で、それぞれの代理人として熱弁をふるう弁護士の姿は、「平気でウソをつく人」というイメージでしかないのであろう。

 これに対し、「代書人」と呼ばれてきた行政書士(や司法書士)は、もともと争訟処理を業としない平和的な職業人であって、互いの主張が対立するという場面は、ほとんど生じない。
 ある程度の年齢に達したら、争訟処理を辞めて「代書人」に徹したほうが、心穏やかな日々を送れるだろう、と考える次第である。

 しかし、「代書人」たる行政書士の業務も、実際には、穏やかでないものが増えてきた。
 たとえば、権利義務に関する書類を代理作成すると、相手方から怒りの電話が来ることもある。

 有難いことに、「代書人」たる行政書士には、交渉権限がない。
 「代弁人」ではないからである。
 だから、平和的職業人としての生活を貫くには、反論したり議論したりせず、「ご本人に依頼されて代書しただけです。」と言い張ればよい。

 文字を書けない人たちのために種々の書面を代筆したり、恋文をきれいな文字で書いたり、そういう仕事で生活していた昔の「代書人」と同じように、詭弁を弄することなく生活の糧を得ていれば、それでよいのではないか。

 「代弁人」から「代書人」に転身した私は、今、幸せに暮らしている。


(元弁護士)行政書士 大久保宏明