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【社説】

久保選手移籍 18歳の「翼」がはばたく

 漫画「キャプテン翼」を思い出した人も多いはずだ。サッカー日本代表の久保建英(たけふさ)選手がレアル・マドリードに入る。とりわけ日本の若者を勇気づけるだろう。その才能を世界に見せてほしい。

 十八歳になったばかりの久保選手は川崎市の出身。幼少期より天才サッカー少年として知られ、十歳の時、スペインでのレアル宿命のライバル、FCバルセロナの下部組織に入団し注目を集めた。

 四年前、バルセロナの外国人登録をめぐる規定違反が発覚。その影響で帰国を余儀なくされ、今はFC東京で活躍し日本代表にもなった。彼の動向は帰国後もスペイン各紙で取り上げられ、次代を担う選手として欧州で高い評価が続いていた。

 ここで指摘したいのはサッカー界におけるレアルの位置付けだ。クラブチームの欧州ナンバーワンを決めるチャンピオンズリーグ優勝は十三回、国内一部リーグ優勝も三十三回でいずれもトップだ。

 所属選手もすごい。

 過去にフランスのジダン(現レアル監督)、イングランドのベッカム、ポルトガルのロナルドらがいた。今も昨年の国際サッカー連盟(FIFA)最優秀選手モドリッチ(クロアチア)らが所属している。

 スペインサッカー界には選手の才能を見抜く目利きが多い。今回の契約は彼らが久保選手について「レアル選手としてやれる」と認めたことになる。サッカー後発国の日本としては快挙と言わざるを得ない。

 レアルとバルセロナとの試合は異常な緊張感に包まれファン同士の争いも苛烈を極める。バルセロナのあるカタルーニャ独立派と、首都の支配者側の戦いという図式にならざるを得ないためだ。両チームの戦いはスポーツの枠をはるかに超え、政治的対立をそのまま投影する場となっている。

 欧州各国では「キャプテン翼」のアニメ版が放映されている。主人公の大空翼にあこがれ選手を目指すケースも珍しくない。作品の中で翼はバルセロナの選手になるが、欧州の人々は久保選手と翼を重ね合わせるだろう。

 久保選手がレギュラーの座を勝ち取れば、日本サッカーの地位は確実に上がる。同時に日本人は久保選手を通し、巨額資金が動き、政治と絡み合い、ファンの異様な熱狂に包まれる欧州サッカーの神髄に触れることになる。気高き夢を抱き、壮絶な世界に羽ばたく若者を心から応援したい。  

 

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