骨と吸血鬼兄弟   作:大三元
<< 前の話 次の話 >>

24 / 29
二十三話 ニワトリと吸血鬼兄弟

この数日で兄弟は色々な実験をした、王都での蒼の薔薇の接触やアインズでの人体実験等々結果は上々後は王国と帝国の開戦を待つばかりである。

そんな最中に皇帝ジルクニフから開戦開幕に最大の魔法を放ってくれと云う書状が届いた。

 

「う~ん… どうする兄ちゃん」

 

「却下だ、そんな事をしたら後々に響いてくる。今は出来るだけ人間を生かしたい」

 

「そうだよなぁ、それに見つけたアイテムも使えないしな」

 

っという事で皇帝には丁寧にお断りの書状を渡すことになった、のそ書状の最後の一文には【魔法より面白い光景が見れるのでそれで我慢してください】といった文が添えられていた。これを読んだ皇帝ジルクニフは大層困惑したとか。

 

 

 

 

 

 

開戦当日、王国軍と帝国軍がカッツェ平野で睨みあっている。王国軍は約25万、帝国は約6万の兵がそして帝国側で出陣するアインズ・ウール・ゴウン魔導国の兵はたった3人、アインズ・ウール・ゴウン魔導王とルーク・バレンタイン、ヤン・バレンタイン兄弟のみである。当初それなりの数を出す予定ではあったのだがルークの【え? 三人で十分じゃない?】の一言でこの数になった、しかし護衛の為そこら辺には隠密に特化した者がうじゃうじゃ居るのだが人間には気づかれていない。

 

 

 

帝国軍の最前列には魔導国の三人と帝国の使者のニンブルが居た、相手の兵をゆっくりと見渡した後ルークが懐から卵を取り出した。

 

「アインズさん、このアイテム覚えていますか?」

 

「ん? ………あっ あの時のコラボアイテムですか? なぜ今そのアイテムを?」

 

アインズはルークの取り出した卵に見覚えがあった、そう緑の服に三角帽子でとがった耳が特徴の勇者が活躍するゲームとのコラボ時に出回ったアイテムである、確か効果はニワトリの召喚獣を呼び出し使役できるだった筈。こんな大軍相手には効果がないアイテムじゃないかとアインズは首を捻る。

 

「アインズちゃん、こいつのフレーバーテキスト覚えてない?」

 

「いや、すまんな。流石にコラボアイテムのテキストまでは覚えていない」

 

「そっかぁ… まぁ見てたらわかるから大丈夫! じゃあ手はず通りゲート繋げちゃってぇ」

 

言われるがままアインズは敵兵のど真ん中にゲートを繋げる、そしてルークがいつの間にかふ化させていた生まれたてのニワトリを放り投げる。

 

 

 

 

 

 

 

王国軍兵士の隊列の間に突如不気味な空間が現れた、兵士たちは武器を構え身構える。しかしその空間から出てきたのは何の変哲もないただのニワトリだった、ニワトリが出てくるとその不気味な空間は消え残るはニワトリ一匹のみ。恐る恐る一人の兵士が持っていた槍でチョンっとつつくと「コケーッ!」っと言って逃げ回る。その姿を見て違う兵士が「脅かしやがってこの野郎!」っと剣でニワトリを切りつけた、辛うじて避けたニワトリだったが羽にかすったらしく血が出る、そしてニワトリが大声でもう一度鳴く、すると空が暗黒に染まった。そう、空に無数のニワトリが現れたのである。そこから王国軍は混乱状態に陥っていった、現れたニワトリたちが兵士達を攻撃する、その嘴で、その足の爪で、兵士達もニワトリ達を倒そうとするがどうやってもガキンッっという金属音がするだけで攻撃が通らない。

 

 

 

 

 

 

「作戦の第一段階は成功、あとは向こうが折れてくれるまで見てればいいでしょう」

 

ルークがそういうとアインズを見る、アインズは口を開けたまま固まっていた。

 

「いやぁ~、この世界ではフレーバーテキストが現実になるなんてねぇ。いろいろ実験して分かったんだ、たまには俺達も仕事するんだぜぇアインズちゃん」

 

ヤンは笑う、帝国の使者であるニンブルもアインズと同様敵兵の惨状を見て固まっている。

 

 

 

 

 

 

ニワトリの大軍が現れてから1時間ほどたった時一瞬にしてニワトリ達が消えた、どうやら効果が消えたようだ。

 

「結構時間かかりましたね、まぁ無理もないでしょう… あれだけのニワトリの中から最初の一匹を見つけて殺すのは容易ではないですから」

 

王国軍はほぼ戦闘不能状態、残っている兵もよろよろと立っているのが精いっぱいといった様子だ。

 

「じゃあ帰ろっかアインズちゃん、それとニンジンだっけ? 帝国の兵士を引き上げさせろ! もう面白いのは終わったからねぇ」

 

「は… はい…」

 

魔導国の三人はゲートでその場から消えた、そして残された帝国軍もヤンの言うとおりにし本国へ引き上げて行った。

 

 

 

 

 

 

カッツェ平野での一件を聞いたジルクニフは驚愕した、たった一匹のニワトリの力だけで王国軍を戦闘不能状態にした事を。この一件以来ジルクニフは魔導国の事を考えるたびに髪の毛が抜けていったとかいかなかったとか…

 

 

 

そして二日後に王国から帝国、魔導国宛に書状が届いた。帝国の要求、エ・ランテルとその周辺を魔導国に渡す旨、そして渡すから兵を進めないでくれっといった内容だった。この内容を読んだ兄弟は大いに喜んだ、第一段階が上手くいったのだから。

 

 

 



※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。