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株式会社メディアドゥを退職します

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2019年6月末をもって、株式会社メディアドゥを退職することになりました。
最終出社日は5月31日で、現在は有休消化中かつ求職活動中です。
いい機会なので、メディアドゥで過ごした日々を振り返ってみます。
いわゆる退職エントリってやつです。

はじめに

記事の内容に関してなるべく正確性を期すように留意していますが、たぶんに主観的な内容が含まれます。
また、記載している情報は当時のものであり、現在のものとは異なる可能性があります。
この記事において、特定の企業や製品を不当に貶めようという意図はありません。
これらの点をご理解していただいたうえでお読みください。

メディアドゥとは

株式会社メディアドゥは、主に電子書籍の取次事業を行なっている会社です。
2017年の記事なので一部情報が古い部分はありますが、ダ・ヴィンチニュースによるインタビュー記事がわかりやすいです。

メディアドゥのシステムは、LINEマンガTマガジンなどのサービスで使われています。
他にも様々なサービスにシステムやコンテンツを提供しているので、あなたが読んでいる電子書籍にもメディアドゥが関わっているかもしれません。

なぜメディアドゥに入ったのか

僕が初めてメディアドゥという会社を知ったのは、大学内で行なわれた合同企業説明会でのことでした。
僕が読書好きであることを知っていた研究室の教授に、電子書籍の会社があることを教えていただいたのです。
ちょうど大学在学中に紙の本から電子書籍へシフトしていた僕にとって、電子書籍を扱う会社でエンジニアとして働くのは、まさに天職であると思われました。

当時の僕の思いを、実際に提出した履歴書から引用します。

近年、「若者の読書離れ」が問題視されています。 実際、私が千葉工業大学の学生を対象にアンケート調査を行なった結果、日常的に読書をするという学生は約半数でした。原因としては、スマートフォンの普及が考えられます。今までならば本を読んでいたであろう時間に、ゲームやSNSに興じているのでしょう。 一方、スマートフォンの普及によって、電子書籍の利用も増えてきました。電子書籍であれば、いつでも好きな本を読むことができますし、紙の本と違って物理的なスペースを必要としません。これは、私のように部屋を本で埋めつくす人にとって大きな利点です。人々にもっと本を読んでもらうために、電子書籍は最適な存在です。ゆえに、電子書籍に必要なすべてのシステム開発を一貫して行っている貴社を、強く志望いたします。

メディアドゥでやってきたこと

2016年4月に入社して以来約3年間、様々なことをやってきました。
非常に長いので、興味のない方は読み飛ばしてください。

技術研修

世の中には様々な技術研修の形がありますが、僕の場合は2ヶ月間の外部研修でした。
コンピューターやネットワークの基礎的な知識に始まり、HTML、CSS、JavaScript、Javaなどの言語を学び、最後に数人のチームを組んでウェブアプリケーションの開発を行なうというものです。
情報ネットワーク学科出身の僕にとっては大学でやってきたようなことばかりしたが、それゆえ他の人に教えるという経験もできました(いわゆる強くてニューゲーム状態)。

さて、この研修がなかなかにアレな感じでした。
どういう意味でアレだったのかは、当時の僕のツイートでお察しください。

今思えば、これがすべての始まりだったのかもしれません。

社内システム開発

研修を終えた僕らを待ち受けていたのは、社内システム開発でした。
6人がチームを組んで2つのシステムを同時に開発するというものだったのですが、このプロジェクトは紆余曲折を経て半年後に中止となりました。
この件は僕らにとって半ば黒歴史と化しており、プロジェクト名を口にした者は闇に葬り去られます。
このときのことはあまり覚えていませんが、しばしば終電を逃していたことだけは確かなようです。

チーム配属

ともあれ社内システム開発を終えた僕らは、それぞれのチームに配属されていきました。
メディアドゥは電子書籍の取次に必要なシステムを自社開発しており、企業説明会などの公の場では、コンテンツの配信を担う「md-dc」と、電子書店のサイトを構築するための「MDCMS」という2つのシステムの名前が挙げられることが多いです。

同社の電子書籍事業を支えているのは、「md-dc」と「MDCMS」という2つのシステムである。md-dcはコンテンツ配信システムであり、複数のサイトへのコンテンツ配信を行い、1カ月当たり2億を超えるダウンロードリクエストを処理する(2016年9月時点)。高い信頼性を備え、99.999%の稼働率を誇るが、サービス開始以来、実際に停止したのは計画停止時だけだという。一方、MDCMSは電子書籍ストアをスピーディに構築するためのシステムであり、読者管理からアクセス分析、売上管理/集計、サイト管理、課金/決済などの機能を備える。

僕が配属されたのは、そのどちらでもない「md-fp」というシステムの開発チームでした。
8人も同期のエンジニアがいるのだから1人ぐらいは同じチームになるだろうと踏んでいましたが、そのチームに配属されたのは僕一人で、主要メンバーも僕とチームリーダーの2人という実に小規模なチームでした。

md-fpの名前が表に出ることはあまりないのですが、2012年の記事にひっそりと登場しています。

「TSUTAYA.com様や紀伊國屋書店様の基幹システムとCASシステムとの直接接続する仕組みがなく、そのままではつながらなかったんです。とはいえ、TSUTAYA.com様や紀伊國屋書店様側のシステムを変更するのも難しいという事情がありました」(森氏)。だが、昨今の爆発的なスマートフォンの普及とそれにともなう電子出版の伸びは無視できないところに来ていた。「両社とのビジネスを推進するためには、1ヶ月の遅れが致命的になると思いました」(森氏)とのことで、両社の独自仕様をCASシステムで利用できるようにするアダプターシステムを開発することにした。このmd-dcのサブシステム「md-fp」で採用されたのが、EMCのストレージ「VNX」である。

ざっくり言ってしまえば、メディアドゥの基幹システムと電子書店の基幹システムの間に介在し、両者がやりとりをしやすいようにするのがmd-fpの主な役割です。

僕はこのチームにおいて既存のプログラムを改修したり、新たにプログラムを作ったりしました。
プログラムの大半はJavaで書かれており、幸いなことに当時の最新バージョンであるJava 8が使われていました。
僕はそれまでJava 7以前(あるいはJava 6以前)の知識しかなく、ここで初めて関数型インターフェースやStream、Optionalの存在を知りました。
古いコードはレガシーな書き方がされていましたが、最近作られたものはチームリーダーの尽力によってモダンな書き方がされていました。
僕もチームリーダーも品質を重視する傾向にあり、その点においては馬が合っていたと言えます(コードの書き方や命名などで意見が割れることはありましたが)。

配属された当初はなぜ自分がこのチームになったのだろうと疑問に思っていましたが、今となってはこのチームに配属されてよかったと言えます。
ただ、チームメンバーが少なかったのでメンバーが多い他のチームを羨ましくも感じていました。

2年目の気づき

1年目はとにかく力を身に付けることに必死で、がむしゃらに日々を送っていました。
ところが2年目にもなると、自身が置かれている状況をだいぶ客観的に見ることができるようになってきます。
当時の僕が書いた記事を見てみましょう。

クソ組織にいつまでも居続けることはありません。
あなたの人生は、組織に捧げるためにあるわけではないでしょう。
とはいえ、今の組織をやめたところであなたを待ち受けているのは、別のクソ組織かもしれません。
いざ別の組織に移ってみたら、前のほうがよかったなんてことになっては、目も当てられません。
我々はクソにまみれて生きていくか、数多あるクソの中から少しはマシなクソを見つけ出して生きていくしかないのです。

ここで、国語の問題です。

  • 【問】タイトルの「君」とはいったい誰のことか。漢字二文字で答えよ。

賢明なる読者のみなさんは、もうお分かりですね?

Tech Do

そんなこんなで、2年目もあっという間に過ぎてゆきました。
メディアドゥで3度目の春を迎えようとしている頃、社内で「Tech Do」という自主勉強会がスタートしました。
ジャンルを問わず各自が学んだ内容を発表する場で、業務時間を使って好きなことを勉強できるという素晴らしい制度です。
これを活用しない手はないと思い、何度か登壇をしました。

勉強のすすめ

勉強のすすめ / 2018-04-13 - Speaker Deck

  • 発表日:2018年4月13日
  • 発表時間:5分

JavaScriptフレームワークVue.jsの紹介

JavaScriptフレームワークVue.jsの紹介 / 2018-05-11 - Speaker Deck

  • 発表日:2018年5月11日
  • 発表時間:25分

エアコン本体とリモコンの温度設定にズレが生じる問題〜プログラムによる再現〜

エアコン本体とリモコンの温度設定にズレが生じる問題〜プログラムによる再現〜 / 2018-08-09 - Speaker Deck

  • 発表日:2018年8月9日
  • 発表時間:10分

wakerunプロジェクト

チームにもようやくメンバーが増え、wakerunというプロジェクトが始動しました。
そのプロジェクトはAWSやNuxt.jsを用いて開発を行なう想定で進められており、「ようやくモダンな開発ができるぞ!」と思っていた矢先に中止となりました。
チームリーダーが「うちの会社のいつも通りだった」のようなことを言っており、まさにその通りだと思いました。

md-ua

wakerunプロジェクトが中止になってしばらく経った頃、「md-ua」というシステムの開発チームにアサインされました。
もともと所属していたmd-fpチームを離れるわけではなく、2つのチームをかけもちするような形です。
Java製でオンプレ環境で動いているものをGoで作り直してAWSに移行するという、わりと大きめの案件を行なっているところでした。
ちょうど社内で「これからはGoだよね」といった空気を感じており、そろそろGoの勉強もしておくかと思っていたところをいきなり実案件に放り込まれた形です。
AWSやGoという未知の領域に足を踏み入れるのは、分からないことも多かったですが楽しい経験でした。

技術ブログ

メディアドゥはいまいちエンジニア界隈での知名度が低いということで、技術広報活動に力を入れていくことになりました。
その一環として、2018年12月26日にMedia Do Tech Do Blogという技術ブログがスタートしました。

僕はブログチームの一員として、その立ち上げと運営に携わりました。
このブログと同じくはてなブログを利用しており、ノウハウがあったのでそれなりに力になれたのではないかと思います。
執筆者としては、Tech Doのイベントレポートを書きました。

技術書典

これまた技術広報活動の一環として、技術書典6で『Tech Do Book #1』という技術書を頒布することになりました。
僕はこの本に対して、『Go+Echoでウェブページをフェッチするツールを作る』という記事を寄稿しました。

こちらは、BOOTHでダウンロード版を無料配布中です。

メディアドゥの良いところ

会社も人間と同じで、良いところがあれば悪いところもあります。
まずは、良いところから紹介していきましょう。

立地が良い

オフィスが竹橋にあるので、神保町や大手町まで徒歩で行くことができます。
竹橋駅直結のパレスサイドビルという複合ビルに入居しており、ビル内に飲食店やコンビニが多数存在するので、ビルから出ずに一日過ごすことも可能です。
特にカフェがやたら多く、スターバックス、ドトールコーヒー、上島珈琲店、サンマルクカフェとよりどりみどりです。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制度が導入されており、10:00-17:00のコアタイムと月の総労働時間さえ守れば、わりと自由な働き方ができます。
他の企業だとコアタイムが12:00-16:00などの場合もあるなか、10:00-17:00なのが微妙なところですが。

オタクが多い

やはり電子書籍を扱っている会社だけあって、職種を問わずオタクが多い気がします。
ジャンルも漫画に限らず、アニメや特撮、アイドルなど人によって様々です。
会社によっては『トクサツガガガ』の仲村のように肩身の狭い思いをしている人もいるでしょうが、メディアドゥにおいてはその心配は無用でしょう。

ポテンシャルがある

このあと述べていきますがまだまだ改善すべき点があるので、「俺がこの会社をよくしてやる!」といった気概のある人にとってはおあつらえむきかもしれません。
ご興味のある方は、Wantedlyから是非。

メディアドゥの悪いところ

次に、悪いところを紹介していきます。

ノー残業デー

月に1度、ノー残業デーというものが存在します。
一見よさそうな制度ですが、裏を返せばその日以外はイエス残業デーということです。
僕はフレックスタイムを活用してなるべく残業ゼロになるようにしていましたが、人によっては残業が常態化しているのかもしれません。

紙信仰

電子書籍の会社であるにもかかわらず社内の電子化が進んでおらず、なにをするにも紙で申請書類を出す必要がありました。
最近X-pointというシステムが導入されましたが、ウェブ上に紙の申請書類が再現されているのを見たときは思わず笑ってしまいました。
スキューモフィズムの時代はとっくに終わっていると思っていましたが、思わぬところでその息吹を感じることができます。

勤怠システムがアレ

CYBER XEEDという勤怠システムを使っているのですが、とにかくUIが使いづらいです。
あまりにも使いづらいのでCYBER XEED PLUSというChrome拡張を作りましたが、焼け石に水でした。
推奨ブラウザは「IE9.0以上」らしいので、ChromeやSafariなどという新参者を使っている僕たちが悪いのでしょう。

Slackを使いこなせない

もともとは技術部門だけがSlackを使っていたのですが、2018年4月から全社的に使われるようになりました。
ところが、DMやプライベートチャンネルの使用率が高く情報がオープンになっていなかったり、メンションやスレッドなどの機能もあまり活用されていませんでした。
そういう状態を鑑みてか、2019年6月からはLINE WORKSを使うようになるらしいです。
Slackの全社導入前はdirectという国産のチャットツールとSlackを併用していたのですが、またその時代に逆戻りですね。
LINE WORKSを導入するという話でしたが、いつの間にやらdirectを導入するということになっていました。

評価制度

職種を問わず共通の基準で評価されるため、エンジニアに適した評価がなされているようには思えませんでした。
また、評価項目の中に「ストレスやプレッシャーの元でも作業効率が落ちない」のようなものがあったのですが、僕は人間なのでストレスを受けると作業効率は落ちますし、それを改善しろと言われても人間をやめるかストレス源から離れるかぐらいしか思い浮かびませんでした。

なぜメディアドゥをやめるのか

今回の退職は様々な要因が重なった結果ですが、一言で言うのであれば「自身と会社の価値観の相違」でしょうか。
メディアドゥはIT企業のようでIT企業ではないというか、IT企業になりきれていないと感じることがままありました。
僕は典型的なエンジニア気質で物事を合理的に判断するきらいがあるため、そうではない(と僕が感じる)事象に対しては疑問符を浮かべざるをえませんでした。
半年ごとにやってくる期末評価でExcel方眼紙の上に自己評価を書かされるたびに、僕の中のやめたい指数は高まっていきました。
実を言うと今がやめたいピークではないのですが、ピークを迎える前にやめておいたほうが穏便にコトが進むだろうと判断した結果、このタイミングでの退職となりました。

今後について

フリーランスや起業という選択肢もあるのでしょうが、僕にとってはいずれも向いていないだろうと思われるので、普通にどこかの企業でエンジニアとして働こうと思います。
実はまだ次の会社が決まっていないので、今後はプライベートで開発をしながら求職活動を進めていきます。
できればVue.js/Nuxt.jsでフロントエンド開発がしたいのでその方向で探していますが、Javaもそれなりに好きなのでサーバーサイドも視野に入れています。

ご興味のある企業の方は、Wantedlyからどうぞ。

ポートフォリオはmunieru.jpにあります。

おわりに

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
退職エントリにはほしい物リストを貼るのが古来よりの習わしらしいので、僕もそれにならって貼っておきます。


ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)

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