穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
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第77話……なんとなく七並びで縁起良さげです(^^

考察回にして解説回。
だけどネムへの贔屓は……

『止まるんじゃねぇぞ……!!』

と後書きの付録込みで鉄華ムーブ。




第77話:”ふへんもの  ~ The memory of たっち・みー ~”

 

 

 

モモンガは疑問だった。

別の言い方をすれば、100年以上前に日本の飛騨高山地方に実在したという都市伝説がある”聞きたがりの智天使・チタンダエル”が『私、気になります!』と時間と空間を越えて降臨しそうな程度には気になっていた。

それは、

 

”デスペナで同じぐらいのLVに落ちたクレマンティーヌと、なぜネムがああも有利に戦えたのか?”

 

だった。

参考までに書いておくと、第45話によるとブレインに斬られる前のクレマンティーヌの総合Lvは33。

そして第53話でエンリの《マキシマイズマジック/魔法最強化》をかけた第7位階魔法《リザレクション/蘇生》で復活するが、デスペナの関係で現在はLv29に低下。

どうでもいいが使える位階にブーストが掛かる”蓮の杖”(ロータス・ワンド)”の力があったとはいえ、蒼薔薇の頭(ラキュース)聖王国の妹の方(ケラルト)が使える《死者復活/レイズデッド》より2位階も上の信仰系魔法を使えるエンリはやはり只者ではない。

強力な女神官(信仰系マジックキャスター)であり、同時に将軍職が取れるほど高い指揮能力を持ち、おまけに前衛でタンク役を引き受けられるほどの頑強さまで兼ね備えている。

モモンガやキーノに比べるなら確かに全体的に低いLvだが、それでこれだけ多芸なのだから恐れ入る。

 

だが、姉妹でありながら全く別の、ある意味正反対の戦闘特化型ビルドを行っているのがネムだ。

ネムの職業(クラス)Lvは22話時点で……

 

・ファイター:Lv5

・ウエポンマスター(ジーニアス):Lv3

・ハルバーディア(ジーニアス):Lv5

・ライダー:Lv5

・アーチャー:Lv3

・サージェント:Lv1

・コマンダー:Lv1

・テイマー:Lv2

・ベルセルク(ジーニアス):Lv4

○総合Lv29

 

もう、某純銀の聖騎士(たっちさん)もビックリな戦闘系一本槍のガチビルドだった。

だが、その生一本のビルドだからこそ付くボーナスというのも確かにある。

 

(なるほどな……)

 

転移前のサービス最終日に入手した感知系としてはおそらくユグドラシル最上級の世界級(ワールド)アイテム”戦闘力5のスカウター”をかけてネムを見れば、前に確認した時とは明確な際が出現していた。

それは、

 

シールダー(盾使い):Lv1 ← New!

 

おそらく一連の戦いの最中、目出度く総合Lv30に到達していたのだ!

だが、それだけじゃない。

 

注意

・総合Lv30に到達/非魔法系職業スキルが合計25Lvに到達

職業(クラス)Lvにおいて魔法職が未習得

・前衛戦闘職、後衛戦闘職、防御戦闘職、騎乗戦闘職を全て1つ以上習得

以上の条件をクリアしましたので、特殊スキル”武辺者(ふへんもの)を習得しました。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(武辺者……”()()()()()”ね)

 

武辺者とは直接的な意味は物の本によれば『勇敢な武士。武事にすぐれた人。 武道に関係する人。また、武勇のある人』とあり、本来なら”ぶへんもの”とか”ぶへんしゃ”と読むのが正しい。

それをわざわざ”ふへんもの”としてるあたり、ユグドラシル運営サイドが何を言いたかったのか見え隠れしている。

スカウターといい”ふへんもの”といい、運営サイドのお偉いさんには一世紀以上前の某週間少年漫画雑誌(ジャンプ)の熱烈なファンでもいるのだろうか?

そのうち○○級アイテム『洞爺湖と掘られた木刀』とか出てきそうで怖い。

 

そのあたりの透けて見える意図は特殊スキル”武辺者”にも生きていて、その中身は……

 

PvP時(一騎討ち)に”先読み”が自動発動。また1対多数の場合は人数差に応じてバフがかかる』

 

と中々に強烈だ。

”先読み”とは単純に言えば、行動予測のことだが、これにネムの固有異能(タレント)がからむとかなり厄介な代物に化ける。

ネムのタレントは、

 

Lvとは無関係にあらゆる武技をマスターでき、また同時発動可能な精神力上限が無くなる。

 

である。

モモンガはネムへのナデナデを続行しながら、

 

(道理でおかしいと思ったんだよ。俺の知ってる限り、ネムは《能力超向上》も《疾風走破》も今日初めて見たはずだし。ネムがいくら”武の天才”でも、不完全だったとはいえ一目見ただけで武技をコピーするなんて異常すぎる)

 

ネムのタレントは確かに強烈を通り越してむしろ凶悪まであるが、でも完璧というわけじゃない。

確かにLvとは無関係に武技をマスターできるが、普通の人間がそうであるように自分より下のLvの者が使う武技の方がやはりマスターしやすい。

加えて武技その物はマスターできたとしても、身体能力(パラメータ)的にそれをどこまで再現できるかはまた別問題だ。

今回のクレマンティーヌとの模擬戦は、割とそれが如実に出ていた。もし、《能力超向上》あるいは《疾風走破》がオリジナルの使い手同様の効力を発揮していたら、結果は全く別になっていただろう。

 

例えば使っていた他の武技、《能力向上》やブレイン直伝の《領域》などと比べ、モモンガから見れば明確な精度や再現率に差があったのは、練度の差……つまり、ぶっつけ本番で使ったか、あるいは普段から使って慣れてるかの差だろう。

《四光連斬》に関しては、本来両手で使う武技を、無理矢理片手で使えばああもなるというものだ。

いや、むしろ一応とはいえそれなりに形になっていたネムの天武の才を褒めるべきだろうか?

 

(だが、それにしても驚いたなぁ~。特殊スキルとタレントの相乗効果で初見再現なんて……でも、)

 

「ネムはもしかしたら、特殊スキルの発現を無意識に気づいていたのかな?」

 

「モ、じゃなかったお館様?」

 

きょとんとするネムに微笑みかけ、

 

「なんでもないさ」

 

 

 

モモンガがお骨でも受肉時でも縁が無さそうな特殊スキルに妙に詳しいのは、相応の理由があった。

 

たっちさんが持っていたスキルか……)

 

そう、ワールドチャンピオンまで駆け上った、未だ色褪せぬ憧れの存在……純銀の聖騎士(たっち・みー)が保有し、その強さの根源の一つが、この”武辺者”であった。

彼は結局、その上位互換スキルである”大武辺者(だいふへんもの)”までマスターしたのだが、

 

(でも、ただの”武辺者”って言うより、むしろ……)

 

脳裏に浮かんだのは、モモンガが知る限り習得したのはたっち・みー只一人の限りなくユニークスキルに近いそれ……『パラメータが追いついていれば魔法以外の全ての戦闘スキルを一目見ただけで再現する』とまで謳われた、ユグドラシルに数多あった戦闘系特殊スキルの中でも頂点にして到達点である能力の一つ、

 

「ネムはそのうち、本当に”見稽古(みげいこ)”をマスターできるかもね」

 

「ほえ? ”みげいこ”?」

 

モモンガはひどく優しげな、そして懐かしむような目で、

 

「ああ。私が尊敬する正義の味方……最強の武人が持っていた特別なスキル(チカラ)だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。

種族違いとはいえ技的にたっちさんの継承者になりかねないガチビルドのネムっちでした。
お骨様にとって色々な意味で”特別な存在”になりそうな悪寒?
ネム、無自覚あるいは無意識だけど、同時に確信犯的なビルドにしてる可能性も否定できない。
多分、ギルメンとの思い出を懐かそうに語るモモンガ様を物心付いた頃から見て育ったろうから。



☆☆☆


付録:ネムのレベルアップ時修正データ

ネム・エモット
種族:(これでも一応)人間
二つ名:狂戦士(ジ・ベルセルク)
職業(クラス)Lv
ファイター:Lv5
ウエポンマスター(ジーニアス):Lv3
ハルバーディア(ジーニアス):Lv5
ライダー:Lv5
アーチャー:Lv3
サージェント:Lv1
コマンダー:Lv1
テイマー:Lv2
ベルセルク(ジーニアス):Lv4
シールダー:Lv1 ← New!
総合Lv30

固有異能(タレント):Lvとは無関係にあらゆる武技をマスターでき、また同時発動可能な精神力上限が無くなる。

特殊スキル:”武辺者” ← New!
PvP時(一騎討ち)に”先読み”が自動発動。また1対多数の場合は人数差に応じてバフがかかる

備考
シールダーが発現したのは、これまで”自立防御型浮遊十文字機動盾(アンロック・クロスガーディアン)”を半ば戦場での標準装備としてきた累積と、クレマンティーヌ戦にて本来の防御兵器としてではないにせよ円形小盾(バックラー)を集中的に使っていたからだと思われる。
また、

・総合Lv30に到達/非魔法系職業スキルが合計25Lvに到達
職業(クラス)Lvにおいて魔法職が未習得
・前衛戦闘職(ハルバーディア)、後衛戦闘職(アーチャー)、防御戦闘職(シールダー)、騎乗戦闘職(ライダー)を全て習得

以上の条件を満たしたため、特殊スキル”武辺者”を獲得。タレントとの相乗効果で制限はあるようだが凡そLv的に下位の者が使う武技を一見するだけで習得。また身体能力(パラメータ)が習得している武技に適応していればある程度再現できるようだ。
ただし自分の技として十全に使いこなせるようになるまでは、やはり慣熟がいる。







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