私たちは当事者なんです:高木浩光氏が危惧する、「不正指令電磁的記録に関する罪」のずれた前提と善なるエンジニアが犯罪者にされかねない未来(Coinhive裁判解説 後編) (3/3)

» 2019年06月14日 05時00分 公開
[高橋睦美@IT]
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積極的な取り締まりが進められている背景は

 昨今、不正送金やフィッシング詐欺、流出したID/パスワードを用いた不正ログイン、ランサムウェアによる金銭の詐取などさまざまな「サイバー犯罪」が横行しており、警察庁もその対策、摘発に力を入れる姿勢を明らかにしている。

 だが、本当に金銭的に、あるいは社会的に実害を及ぼす案件(特に、海外の事業者がからむもの)の対応が後手に回っている一方で、Coinhiveやアラートループのようなプログラムが取り締まられ、検挙の実績は増加していくのかもしれない。

 そうした動きを裏付けるような文書が、2019年2月15日に警察庁から出された「不正指令電磁的記録に関する罪の取締りの推進及び取締りに当たっての留意事項について」とする通達で、各都道府県警に対し、「取り締まりを通じて法の趣旨が広く国民に周知されるよう、積極的な検挙広報を実施」していくよう求めている。

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 高木氏は「この文書の言っていることは間違ってはいないが、どういう範囲で積極的にやるべきかについては何も言及しておらず、条文を繰り返すだけで何の基準も示していない」と危険性を指摘し、エンジニア一人一人が批判を行ったり、あるいは国会議員に訴えたりといった形で問題提起を行うべきだと呼び掛けた。

 高木氏は最後に講演後の質疑応答に答え、こんなコメントもしている。

 「今やコンピュータを全ての人が使っている時代。法律学者も弁護士も、皆さん使っており、ITのことを分かっている人が相当増えている。そうすると、過去に先駆者的に使っていた人だけでなく、本来の刑法の専門家、刑事弁護の専門家が意見を述べていくべきだと思う」

 「私たちは当事者なんです。放っておいたら大変なことになる。こういった罪ができたら、意図に反するものは全部犯罪になるのか、バグが出ても犯罪になるのか……といったことを分析し、整理していくことを、誰がやってくれるのか」と述べ、刑法の観点からしっかり議論していくべきだとした。

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