骨と吸血鬼兄弟   作:大三元
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二十話 ワーカーと吸血鬼兄弟 下

 

「次ぃ~、えぇ~っと… 数が多いからヘビー… ヘビーローテーション!」

 

チーム名を間違えられたが訂正する勇気がなく呼ばれたヘビーマッシャーチームは前へ出る。皆一様にガタガタと震えているが生きてここから帰るため、覚悟を決める。

 

「えー、めんどくさいからそこのずんぐりむっくり、答えろ。お前達はなぜここへ来たんだ?」

 

ルークがグリンガムを指し問いかける、エルヤーの時と同じくその眼光だけで死人が出そうな勢いだ。ここで嘘をつくのは愚策だと考えたのか正直に話す。

 

「お、俺達は金の為にここへ来た!」

 

「金の為ねぇ~」

 

相手のプレッシャーに押しつぶされそうになりながら答える、それを興味無さそうに返事をするヤン。ここでグリンガムは選択を間違えたと思った、相手の反応が良くない、このままでは死んでしまう。

 

「あ! 後ッ! この素晴らしい墳墓に興味が湧いたのだ! これ程素晴らしい墳墓は他には無い! 実に素晴らしい!!」

 

全力でよいしょする、もう褒める事に集中しすぎて語学力が乏しくなっているのだがもうそんな事自分自身気づいていない。相手の様子を伺うと先ほどよりは表情が柔らかくなっている気がした。

 

「素晴らしいか」

 

「素晴らしいねぇ~」

 

ルーク、ヤンは顔を見合わせる、エルフ達の時と同じだ。この行動を見てグリンガムは心の中で安堵した。

 

「あと一歩足りないかな」

 

「そうだねぇ、っという事で連帯責任でぇ~す! ベビーパウダーには試練を与えまぁす」

 

ヤンが言い終わるとヘビーマッシャーは消えて行った、消える瞬間の皆の顔は驚きの顔だった。

 

 

 

「次は… 女の子居るからそっちは最後、竜狩り前へ来い」

 

先のチームと同じく震えながら前に出るがリーダーであるパルパトラだけは震える事無くしっかりとした足取りで進む。

 

「おぉ~、流石ロートルいいねいいねぇ」

 

その姿を見てヤンは楽しそうに話す。ルークもどこか楽しそうだ。

 

「いい度胸だ、お前に聞いてやろう。お前達はなぜここへ来たんだ?」

 

ルークがパルパトラに聞く、先ほどと同じだ。しかしパルパトラは変わらぬ態度で話始める。

 

「ワシらも金の為じゃ、まぁこれじゃワシらは助からんじゃろうて。じゃからワシからの願いじゃ、この老骨の命一つで他の者を助けて貰えんかのぉ」

 

リーダーの言葉を聞き他のメンバーは驚愕した、我らのリーダーが身を挺して私達を守ろうとしてくれていると。その落ち着いた姿は初めから命を投げ出す覚悟があったからだと。

 

「ん~、打算ありありだけどまぁいいかな~。どう兄ちゃん」

 

「うん、まぁいいんじゃないか?」

 

「っと言う事でお前達は合格だ」

 

そしてヤンが言い終わると竜狩りは消えた。

 

 

 

そして最後に残ったのはフォーサイト、リーダーであるヘッケランは色々と考えていた。話さないの死、本当の事を言えばいい顔をしないが褒めればそれなり、仲間を庇えば合格。他のリーダー達から得た情報だ、そこから導き出せるのはもちろん…

 

「じゃあ最後!」

 

「俺達はn」

 

「あ、もう理由言わなくていいよぉ!」

 

この言葉を聞いてフォーサイトのメンバー全員気が抜けてしまった、今までのは一体何だったのかと。しかし相手の話した言葉を聞いてヘッケランは激怒した。

 

「そこのエルフ? いや、ハーフか、おっぱい揉ませて」

 

「じゃあ俺は尻揉ませて」

 

「やめろぉおおおおお!」

 

いつの間にかイミーナに近付いている二人に向け剣を抜き突撃する。兄弟は難なく避けるとジト目でヘッケランを見る。

 

「あぁ~、お前の女なんだ」

 

「こんな男がいいんだ」

 

「な、なに! 悪いの!?」

 

イミーナが声を上げる、兄弟はやる気なさげに、ヘッケラン、イミーナは臨戦態勢だ。仲間がこんな状況なのでロバーデイクも武器を手に取るがアルシェは茫然と見ているだけだ。

 

「え? やるの?」

 

ルークがやる気満々のフォーサイトに向け言うが相手は答えない、険しい表情で見てくるだけだ。仕方ないのでどうにかしようと兄弟は動いた、素早く傍観しているアルシェに近付くと持ち上げ胴上げを始める。アルシェはもうどうにでもなれといった感じだ、その光景を確認した他の三人は助けようと攻撃を仕掛ける、しかし兄弟には攻撃が効かずなすすべはなかった。

 

「「わぁ~っしょい!わぁ~っしょい!」」

 

「くっ! ロバー何とかしなさいよ!」

 

「何とかと申しましても魔法が効かないんじゃ…」

 

「畜生ッ!」

 

兄弟はひとしきりアルシェを胴上げすると次はロバーデイクに近づき手を取ると回り始める。

 

「かぁ~ごぉ~めぇ~かぁ~ごぉ~めぇ~」

 

「なっ! うぉっ!」

 

「かぁ~ごぉのぉなぁ~かぁのぉとぉ~りぃ~はぁ~」

 

ロバーデイクは困惑してなすがままだ、残されたメンバーもなぜこんな事をしているのか解らず困惑する。そして満足するまで回ると次はイミーナに近づき胸と尻を揉みしだく。

 

「おぱーいおぱーい」

 

「けぇーつ!けぇーつ!」

 

触れられた事でイミーナは確信した、相手は自分達をどうこうする気がないことを。ヘッケランは助けようと無意味だと解っている攻撃を仕掛ける。

 

「離れろぉおおおっ!」

 

結果は解っていた、何も効果がないことは…

 

 

 

その後ひとしきり兄弟に遊ばれたフォーサイトは気が付くと墳墓の地表部分に居た、足元には両手で持てる程の財宝と共に。不思議に思いながらも早くこの墳墓から離れたかったため拠点へ財宝をもって駆けた。

 

 

 

 

 

 

因みに飛ばされた方々のその後、先ずエルヤーは餓食狐蟲王の元へ。エルフ達は第六階層の一角に建てられた小屋に、中にはユリが居る。ヘビーマッシャーの皆はハムスケとリザードマンが居る部屋へ飛ばされ一緒に訓練を5日ほどさせられた後フォーサイトと同じく財宝を持たされ開放された。最後の竜狩り達は拠点へ直接転移させられていた。

 

 

 

助かった皆はもうあの墳墓には近づかないと、そしてあの墳墓の主人達の馬鹿げた強さを雇い主に報告したのであった。

因みにこの報告を聞いたアインズは敵に宝を与えた兄弟をボコボコにしたとかしてないとか…

 

 

 

 

 

 

「はぁ、あの御兄弟は一体何をお考えになられているのか… 至高の御方々のお考えは私程度では測りしれないという事ですかね」

 

デミウルゴスは兄弟の今までの行動を振り返り考えていた、一見ふざけているように見えてやる時はやる、しかしやはりふざけているその行動を。初めは私達の為にあえて御ふざけになられていると思ったのだがどうも違うらしい、しかし… 相談相手であったアルベドはアインズ様との結婚話で使い物にならなくなり御纏め役であるアインズ様もお話では元々ただの人間だったと聞き、しかしそれは生前の話だと解釈したので忠義心は変わりない。パンドラズアクターは御兄弟と一緒にふざけるし。もう自分もそこまで頑張らなくて良いではないのかっと思ったのだが創造主で在らせられるウルベルト様が戻ってこられた時の為に頑張らねばと一人悩みながら仕事に集中するのであった。

 

 

 

 

 

 



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