ナザリック地下大墳墓に忍び寄る複数の人影、バハルス帝国のワーカー達だ。この者達はある貴族の依頼でナザリックの調査に来たのである。その一団は近くの小高い丘の裏に拠点を設け各チームがどう攻略するか等を話している、この一団の中にあの漆黒の英雄も居るのだが彼は拠点の見張りである。
数日前アインズの自室、アインズと兄弟が話し合っている。
「ワーカーですか」
「はい、デミウルゴスの案でナザリックの新体制の防衛能力を確認したいとの事で」
兄弟は面白そうだと思ったのだがアインズはいい顔をしていない、骸骨なので表情は変わらないが雰囲気がそう感じさせる。
「どったのアインズちゃん」
「いや、デミウルゴスの意見は最もだと思うのですが皆で作ったこのナザリックに招き寄せるのはどうも腑に落ちなくて」
その意見を聞いて兄弟はお互いを見る、なに言ってんだこいつって顔で。そしてその顔のままアインズをジッと見る。
「… ルークさんにヤンさんは何も思わないのですか?」
「んー、別にいいんじゃないかな」
「そうそう、入られた位だったら別に。だって大切なアイテムとかは宝物殿にありますし」
「えぇ… もしかしたらこのナザリックを傷つけるかもしれないんですよ!」
アインズは少し熱をおび発言するがやはり兄弟には理解できないみたいだ。
「傷ついたら修理すればいいじゃん」
「… しかし他のメンバーが来た時に何処か欠けているなんて事があったらどうするんですか!」
「なに、そのワーカー達の件が終わった後皆で点検でもすればいいじゃないですか」
「いやしかし!」
「もうアインズちゃんは心配性だなぁ」
尚も熱くなるアインズを見て兄弟は笑う、アインズは少し黙った後にまた話始める。
「……… ルークさんもヤンさんも何で解らないんですか! ここは皆で作った大切な場所でしょう! 部外者がノコノコ侵入してなんでそんな笑ってられるんですか!!」
途中強制的に鎮静化されたが自分の気持ちをぶつける、しかし兄弟は変わらずだ。
「アインズさん、貴方の大切なモノは何ですか? このナザリック地下大墳墓自体が大切だと言うのであればその意見は正しい、しかし私達兄弟はこの墳墓自体はどうでもいいんです。ナザリックのNPC… 私達の子達が大切なんですよ、子供達を守れたら拠点なんて別にどこだっていいんですよ」
「だから俺達は笑ってるんだ、まぁもし予想外に強い奴が来るってんなら話は別だが… 子供達もそこそこ強いし何とかなるだろ、後デミウルゴスの案だしそこは大丈夫だろぉ? 自分達の子供を信じれない親なんてみっともないしな。しかし強いのが来たら俺達でやっつければいいじゃん! そこで俺達がやられたらそれこそこのナザリック… いや、ギルド【アインズ・ウール・ゴウン】の崩壊だわな」
兄弟はこの世界に来て一番真剣な顔でアインズを見つめ言い放った。アインズは二人が笑った理由が分かった、自分は過去の栄光を大切にしている事を、今の現状を二の次にして。言ってしまえばギルドメンバーとの思い出に縛られていたのだ。
「わかりましたかアインズさん、いやモモンガさん」
「まぁモモンガちゃんは石橋を叩いて壊して新しい橋を鋼鉄で作り直す性格だからしかたないよねぇ」
兄弟はいつもの様に笑う、そうだ今は一人じゃない、ルークもヤンもそして大切な子達もいるのだ。そしてアインズ… モモンガも一緒に笑ったのだった。
「まぁ今回の件は私達で何とかしますよ」
「モモンガちゃんはどうも子供達の前では魔王ぶっちゃうからねぇ」
「魔王ぶるってなんですかそれ! んー、じゃあ今回は頼みますね」
先ほどの会話の流れから兄弟にこの件を任せた、しかしアインズは雰囲気にのまれ忘れていた、兄弟はこの世界に来てから真面に働いた事が無い事を…
アインズとの話し合いの後兄弟は実行に移す為にある人物達に会いに行った、先ず初めに会ったのはシズだ、兄弟がシズを見つけると意味もなく頭を撫でくりまわす。シズは嬉しそうだ。そして兄弟はシズに幾つか訪ね許可を取ると次の人物に会うために第八階層へ向かったのだった。
その後もいろんな人物に会い許可やお願い、時には命令をし全ての下準備が完了した。兄弟はいつもの様に悪い笑みを浮かべている。