骨と吸血鬼兄弟   作:大三元
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十七話 埴輪と少女と吸血鬼兄弟

 

ナザリック地下大墳墓玉座の間、そこに呼ばれたのはンフィーレアとエンリとネム。一般メイド達が両脇に立ち笑顔で一斉にいらっしゃいませと言う。ネムはその豪華な部屋にはしゃぎ走り回りエンリを困らせる。

 

「はぁ~! すごいすごいすごいすごい!」

 

「ネム! 戻ってきなさい!」

 

走り回り最後はアインズの膝に到着する、アインズを見上げながら興奮した様子で話す。

 

「すごい! こんなのすごすぎるよ!」

 

「そんなにすごいか? いや、そうだな。すごいだろう! 私の住む場所は」

 

上機嫌でアインズはネムの頭を撫でながら答える。

 

「うん、すごい! ゴウン様がお創りになったんですか?」

 

「はっはっは! その通りだ、私達の仲間達とな!」

 

「すごーい! ゴウン様のお仲間の方達もすごーい!」

 

「はっはっはっはっはっは!」

 

興奮冷めやらぬ様子なネムと更に上機嫌になるアインズ、その様子を見つつエンリは謝る。

 

「ゴウン様、申し訳ありません。妹が無礼を働いてしまい」

 

「気にする事はない! ネムどうだね、私の… いや私達が作った家を一緒に見て回らないかね?」

 

「うん! 見たいです!」

 

「そうかそうか! ならばいろいろと見せてあげよう!」

 

上機嫌のままネムを連れ部屋を出るアインズ、残された二人は応接間に案内された。

 

 

 

 

 

 

その頃兄弟はいつもの様に遊んでいた、廊下で会ったセバスの周りを手を繋いでグルグル回っている。

 

「ルーク様、ヤン様、私は今から色々と準備があるのですが」

 

「かぁ~ごぉ~めぇ~かぁ~ごぉ~めぇ~」

 

「かぁ~ごぉのぉなぁ~かぁのぉとぉ~りぃ~わぁ~」

 

セバスはいつもの真剣な顔つきで正面を見ているが兄弟は阿保面で歌っている。数分このやり取りをして満足したのか兄弟はセバスに何も言わず立ち去っていく、その二人に一礼するとセバスは業務に戻った。次の被害者に選ばれてしまったのはたまたまそこに通りかかったユリである。二人はユリを見つけると素早く近づき先ほどと同じく回りだす。

 

「あ、あのルーク様? ヤン様?」

 

「かぁ~ごぉ~めぇ~かぁ~ごぉ~めぇ~」

 

「かぁ~ごぉのぉなぁ~かぁのぉとぉ~りぃ~わぁ~」

 

兄弟達はやはり先ほどと同じように阿保面で歌いだす、ユリは困惑しながらもその行為を見ているだけだった。

 

 

 

 

 

 

「じゃあネム! 次は私の部屋へ行こうか!」

 

「うん! ゴウン様!」

 

手を繋ぎお互い上機嫌で廊下を歩く、後ろで控えているメイド達も笑顔だ。アインズの部屋につくとここでもネムは走り回る。

 

「すごーい! ここの部屋もすごーい!」

 

「はっはっは! そうだろう! この家具はなぁ!」

 

楽しそうにアイテムの説明をするアインズに嬉しそうに聞くネム、本当に二人は上機嫌だ。

 

 

 

 

 

 

「かぁ~ごぉ~めぇ~かぁ~ごぉ~めぇ~」

 

兄弟は標的をユリからたまたま近くを通ったペストーニャへ移った。兄弟達は同じことをした、ペストーニャは困り顔になりながらも終わるのを待っている。

 

 

 

「じゃあネム、エンリの元へ戻ろうか」

 

「うん!」

 

二人が部屋をでた、すると何やら近くから声が聞こえてくる。その声を聞いたネムはそちらの方向へ向け走り出す。

 

「わぁああ! はははははっ!」

 

「あっ! ちょっ!」

 

アインズがネムを止めようと手を伸ばしたが時すでに遅し、ネムは見てはいけないものを見てしまった。

 

阿保面で歌いながら回る兄弟、そして犬の顔をしたメイド。ネムに気が付いた三人はピタリと止まった、そしてアインズがネムの顔を手で覆った時にはもう遅かった、そこにはいいものを見つけたという目でネムを見る兄弟がいたのだった。

 

「ネ、ネム! 見たか!?」

 

アインズがネムに問う、見るからに焦っている。

 

「うん! お兄ちゃん達が犬のメイドさんの周りを楽しそうに回ってた!」

 

アインズは手でよく見えないが笑顔で答えたネムを見て少し落ち着いた、ペストーニャの顔が犬だったからよかったのかと考えたその時ネムはアインズの手から消えた。

 

「ん? うぉっほぅ!」

 

気づいたアインズは気配を頼りに目をやるとそこにはネムを抱きかかえ走り去る兄弟が廊下の角を曲がるところだ。アインズとペストーニャはしばし固まったままだった。

 

 

 

 

 

 

兄弟はアインズから離れるために走った。時には転移を使い必死に離れた、こんなナザリック内で楽しいイベントを逃す訳にはいかないと思い。

 

「お兄ちゃん達どこいくのー?」

 

ネムが笑顔で話しかけてくる。

 

「とぉっても楽しい所だぞ~!」

 

「キラキラ光る宝石や見た事もないアイテムがいっぱいあるんだぞぉ~」

 

そうこうしているうちに目的の場所に着いた、そして奥に進んで行くと一人の人物が現れ挨拶をする。

 

「んルゥーク様! ヤァン様! そして可愛らしいお嬢様! ご機嫌麗しゅう存じまぁす!」

 

オーバーリアクションで挨拶する人物、そうパンドラズ・アクターである。その姿と動きを見てキャッキャッと笑うネム、そして兄弟は何やら着替えている。

 

「ぉお嬢様ッ! お名前を伺っても?」

 

「私ネム!」

 

「ネェエム様ッ! 以後お見知りおきを」

 

二人が話していると準備が完了した兄弟がパンドラの両脇に並ぶ、あの時と同じパンドラの衣装だ。

 

「「んネェエムさッまッ!」」

 

「んネムさま~!」

 

兄弟はパンドラと同じ感じでオーバーリアクションをし口調も真似る、そしてネムも面白がって真似する。

 

「いいねぇネムちゃん、じゃあ君にもこの服をあげよう」

 

ルークがネムに服を渡す、そしてネムは何も考えず嬉しそうにその場で着替えるのだった。着替え終わったネムにいろいろと吹き込む兄弟、そしてそれをうんうんと首を振りながら見守るパンドラ、皆笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

「すまないエンリ、馬鹿兄弟にネムを奪われてしまった…」

 

「えっ? ルークさんとヤンさんにですか?」

 

顔は見えないが申し訳なさそうに言うアインズとなぜ?っといった感じで話すエンリ。ンフィーレアも心配している。

 

「そうです、まぁ部下に探させているので直ぐにみt」

 

言い終わる前に扉が勢いよく開く、そこにはパンドラと兄弟とネムが居た。皆同じ服装で同じポーズで立っている。パンドラは当たり障りのない仮面を被って顔を隠している。

 

「あ…」

 

「ネムッ!?」

 

アインズは固まりエンリは驚きンフィーレアは何も言わず出てきた四人を見つめる。

 

「「「ンァアインズサッマッ!」」」

 

「んあいんずさまっ!」

 

あの事件の時と同じようにパンドラと兄弟は演じる、そしてネムも教わった通り同じく演じる。アインズはもうだめだ、エンリとンフィーレアは苦笑いして見守るだけだった。

 

 

 



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