北区に家を建てた。

引越しの日、荷物を運ぶトラックが近所の家の自家用車をこすった。賠償問題が生じた。
二階に荷物を運び上げてくれた知人が階段の上で足を滑らせてもんどりうってこけた。

幸先の悪い、スタートだった。

周囲は2,3区画開けただけの山の中。

隣家の軒先が、隣に並んでいる町にしか住んだことが無いから、さびしくて死にそうだった。

手伝ってくれた人が、もんどりうってこけた階段の最上階。
そして、その階段の上がり口。

この二か所から「パチン!パチン!」という音がよく聞こえた。

新築の家は材木が伸縮するから「ばきっ」と、家鳴りすると言われる。

そうじゃないのよね。
パチン!と、電気がショートしたような音。

昔の電気のスイッチを落としたときに出た音に似ていたから、

夜、二階で寝ようとするとき、階段の下でパチンパチンと、音がするので、夫が電灯をつけたり消したりしているのかと思って、尋ねても、何もしていないと言う。

やかましかったよ、パチン!パチン!・・・・・パチン!階段の上と下で。

これが、ラップ音?

そんな・・・気持ちの悪い。
電燈が消えた後に、器具が冷えてパチンというのかな?
あれこれ、考えてみる。

でも、ある日、電燈なんか全然点さない、真昼間、おもいっきり大きな音で「ぱっちん!」とやられた時・・・ラップ音以外の何物でもないと思ったわ・・・

この家に引っ越してから、いろいろ気味が悪かった。
まずは、2歳の娘が、一人きりで部屋で昼寝から覚めると「こわい、こわい、こわい」と、泣き叫びながら家の外に飛び出す。

なんか、家の裏をみると、そこで自殺した人がぶら下がっている気がする。

そのほかにも、庭の一郭とか、なんか、「ぎょっとする」場所がある。

やがて、隣に家が立ち並ぶと、隣家の人が「娘が二階で幽霊を見たから」といって、引っ越していった。
右隣の夫婦が離婚して、半年後には奥さんの方が亡くなる。
お迎えの家も一時、別居。
ななめ迎えは、夜逃げ・・・

「無事なの、お宅だけやねえ・・・」と言われたけど、結局、夫が脳卒中じゃ、あんまり無事ともいえないね。

そういうときに、私は、あのあてつけに自殺した幽霊の夢を見て・・・先祖じゃないというのだから、この土地にゆかりのある亡者だろうと思って、お施餓鬼を重ねたのです。

完全にラップ音を聞かなくなるまでに10年以上かかったと思うけど、徐々に、ならなくなって、やがて、まったく音はしません。

あのころは二階で何かしていると、階段の上のあたりから誰かが、私の背中をじっと見詰めている気がして、何度も振り返りました。
恐かったですね。

入信した夜、見た夢には七段飾りの立派なお雛様の前に3歳ぐらいの子どもが、座っていて、サザエさんのタラちゃんのようなエプロンをして・・・突然、ごぼっと嘔吐して、前向きに倒れました・・・

親戚中探しても3歳で亡くなったこどもなんて無かったので・・・どうしていいかわからなかった。

娘は肥満児になると同時に、幼稚園でも口を利かない、何を指示されても、ぼーとして動かない子供になっていき、先生から「お母さん、お宅の子供さんは、異常です」と言われ「小学校に上がるに際して、学校に申し送っておきました」と障害児扱い・・・

家では「今日、こんなお遊戯を習った」と楽しげにやってみせるのに、幼稚園では、なにもしないらしい。 
お兄ちゃんは闊達で、クラス代表になる子なのに・・・妹は、障害児あつかい。

やがて、私は、修行の途上で「あなたの娘さんにとって伯父か伯母にあたる人が、三歳で亡くなっている。その供養を」と言われるのですが・・・戸籍上では、いないのです、そういう子供は。

でも、あの奇妙な夢と重ねて気にはなりました。
とはいえ、戸籍に存在しないのに・・・

それから2年もして、あまりにも、娘が消極的でめそめそするので、思い余って「三歳で亡くなった方」のお施餓鬼をしました。

その日の夕方「お母さん、Mちゃんが、今日は来るなり、エレクトーンの鍵盤に手を置きましたよ!」と、先生に褒められました。
その日まで、お稽古を始めようにも、鍵盤に手を載せようとしないのが先生の苦労だったのです。

とにもかくにも三歳で亡くなった伯父か伯母のお施餓鬼をした日から、娘が別人になったのは、事実です。肥満児から解放されるまでには4年かかりましたが。

教団仲間にこういう話をしても、同じぐらい奇妙な体験をした人は、あんまりいません。
だから、私は、常日頃は、こういう話はしないんです。

でもね・・・今の時代は、こういう不思議なことが明かされていく時代に差し掛かっていると思うから・・・

ちなみに、私は霊が見えるわけでもないし、神様の声が聞こえるわけでもありません。
ただ、「嫌な場所」というのは、あります。
昼間、かんかん太陽が照っているのに、しらじらと暗さを感じる場所があります。

ああいう場所は、きっと、なにか陰惨なことがあったのだと思う。

私の住むところは、有馬への街道沿いで、昔、よく追剥が出て、旅人が悲惨な目にあった場所に当たるようです。

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