ベンチャーだからこそ「高級路線」で攻めた

 ORBIAもFONIAも、500mlで3000円弱と、決して安くはない。だが、「居酒屋やコンビニで売れる価格帯にすると、量産しなければ利益が出ないのでベンチャーには向いていない」(稲川社長)と考え、高級路線として売り出せるようにブランディングを行った。その結果、FONIAシリーズは発売の約半年で約5000本を売り上げ、フランス、台湾など海外への輸出も好調だという。「今後はさらに輸出範囲を広げたい」と稲川社長は意気込む。

 同シリーズを初めて味わった際、「日本酒といわれれば日本酒だが、ワインやリキュールなど、洋酒のようでもある」という印象を持った。また、「一般的な日本酒好きな人がこういう酒を選ぶだろうか?」と素朴な疑問も抱いた。だが、同シリーズを取り扱うフランス料理店のソムリエからは「これまでの日本酒にはなかったワインのような複雑さと香りがあるので、油脂分の強いフランス料理にも合わせられる」という声が寄せられているという。日本酒の枠に収まらない「新しさ」が受けているのかもしれない。

バーの入り口から向かって左手にガラス張りの醸造室があり、4基の小型タンクで常時醸造を行っている
バーの入り口から向かって左手にガラス張りの醸造室があり、4基の小型タンクで常時醸造を行っている
[画像のクリックで拡大表示]
WAKAZEの稲川琢磨社長は大手外資系コンサルタント会社出身。同氏の実家は製造業を営んでおり、「家族の姿を見ながら日本の製造業に危機感を抱いたことも、会社を立ち上げたきっかけの一つ」と話す
WAKAZEの稲川琢磨社長は大手外資系コンサルタント会社出身。同氏の実家は製造業を営んでおり、「家族の姿を見ながら日本の製造業に危機感を抱いたことも、会社を立ち上げたきっかけの一つ」と話す
[画像のクリックで拡大表示]
バーでは同社が醸造委託をしている酒蔵のある山形県庄内地方の食材を使用。写真は「シャインマスカットの白和え」(写真左、600円)と「ボタニカルSAKE/FONIA TERRA~大地~」(写真右、グラス入り、950円)
バーでは同社が醸造委託をしている酒蔵のある山形県庄内地方の食材を使用。写真は「シャインマスカットの白和え」(写真左、600円)と「ボタニカルSAKE/FONIA TERRA~大地~」(写真右、グラス入り、950円)
[画像のクリックで拡大表示]
「刈屋梨と海老・サーモンのパフェ」(750円)と「ボタニカルSAKE/FONIA SORRA~天空~」(850円)
「刈屋梨と海老・サーモンのパフェ」(750円)と「ボタニカルSAKE/FONIA SORRA~天空~」(850円)
[画像のクリックで拡大表示]

(文/桑原恵美子)