@chablis777
シャブリ

---------------------------

----N----064---------------
----a-----------------------------
----t-----------------------
----u-Z-o-r-a--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------

公開を間近に控えた「白蛇姫」は俳優が 声を吹き込むアフレコ作業を残すのみとなりました。
その間も なつは セル画に線を写し取るトレースの練習に励んでいました。
♪~
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
一つの作品が終わるとアニメーターたちにもしばらく のんびりした時間が訪れるようでそれぞれが 自分の勉強などをして過ごしていました。
(仲)マコちゃん。(麻子)はい。
ちょっと これ見てくれる?
何ですか? これ。
奥原なつの描いた動画だよ。
一人で練習してたらしい。
仕上げの仕事しながらですか?うん そうだよ。
見てくれって今朝 僕のところに持ってきたんだ。
こんなに…。
とにかく描くのが早くてね あの子は。
これ 君が見てくれないか。
えっ…。
どうして私に?
何たって 君は 奥原なつの才能に最初に気付いた人かもしれないんだからね。
あれは才能なんでしょうか?
まあ 正直言って 僕にも分からないよ。
えっ?
君の意見を聞かせてほしい。
頼んだよ。
♪~
デッサンは全ての道に つながってるからさ。
(なつ)仲さん。
なっちゃん…。
ちょっと ごめん。
はい。 え~…。
すいません… あの 見てもらえましたか?
ああ それは 違う人に見てもらってるよ。えっ?
そう そう そうところで 君のお兄さんだけどさまだ あの劇団にいるのかい?
赤い星座ですか?はい いますけど… それが何か?
うん… アニメーションはプレスコといって最初に セリフや音楽を録音してから後で 我々が それに合わせて絵を描いたわけだけど描いてるうちに かなり変更されてとり直すことになったんだよ。
けど そのセリフを吹き込んだ映画スターが 2人とも声だけの出演は嫌だと言いだして降りてしまったんだよ。
降りた?うん。
2人ともっていうのは…?
あっ… 2人のスターが全部の声をやってたんだ。
会社は 話題になると思ってね。
演出の露木さんと まあ どうもうまくいってなかったようだからそれが原因だと思うけど。
露木さんも 全部違う声でセリフをとり直すと言いだしてさ新たに 役者を 2人立てたんだ。
で その一人が赤い星座の亀山蘭子になったんだよ。
えっ!?
(露木)これが白蛇姫です。
(蘭子)これが私?はい。
これは 人間の姫となった白娘です。
これ 私に似てませんわね。
どっかの映画スターじゃないのかしら?
私 こんなに美人じゃありませんわよ。
あっ いえいえ 問題はありません。顔は出ませんから。
声が美人なら もう それでいいんです。
まあ 正直に失礼なことおっしゃるのね。
アッハハハ… はい。 失礼しました。
この役は 亀山さんにしかできないと私は ずっと そう思っていたんです。
先日の「人形の家」のノラ役 拝見しました。
すばらしかった。
漫画映画といえどもこの作品には 芝居の深みが欲しい。
スターの声なんていらないんです。
まあ やってみましょう。よろしくお願いします。
それとですね こちらの侍女の小青役もお願いしたいんです。小青というのは 青魚の妖精なんです。
これも 私がやりますの?はい。
あっ 適当に 声を変えて頂いて。
(山川)豊富遊声先生がお見えになりました!
先生 おはようございます。(遊声)いや~ おはよう。
どうぞ こちら。はい。
亀山蘭子です。先生 よろしくお願いいたします。
蘭子ちゃんね。 よろしく。
あの 先生絵は 先に出来ちゃってるんで声を絵に合わせて頂くしかないんですが。
私は 活動弁士をやっていたんだよ。任せなさい。
(露木)よろしくお願いいたします。
(蘭子)「許仙様 白娘様があなたをお待ちかねよ」。
(遊声)「ぱいにゃんさま?」。(蘭子)「ええ。 私のご主人様あの城のお姫様ですわ」。
ちょっと待った。 ストップ。
あのね 小青は そんな やり手ババアみたいな声じゃないんですよ。
まだ 少女なんです。
少女でありながら 色気があってそれでいて ちゃめっ気もあるんですよ。
ちょっと やって。
「許仙様 白娘様があなたをお待ちかねよ」。
こうですか?もうちょっと 声に しなを作って歌うように。
「許仙様 白娘様があなたをお待ちかねよ」。
あっ いい。 そんな感じ。それで いきましょう。
あ… はい。お願いしますよ。 はい もう一回。
「許仙様 白娘様があなたをお待ちかねよ」。
「ぱいにゃんさま?」。「ええ。 私のご主人様あの城のお姫様ですわ」。
「お姫様が なぜ僕なんかに?」。
「そんなこと お会いになればきっと分かりますわよ」。
「許仙様 あなたに私の胡弓を弾いてほしいのです」。
(遊声)「こんな立派な胡弓を僕に?」。(蘭子)「ええ」。
「なんて美しい音色なんだ。まるで白娘様のように…。こんなきれいな音は 聴いたことがない」。
「それは あなたをお慕いする私の心そのものだからよ」。
「白娘様…ああ これは夢じゃないのか?」。
「夢じゃありませんわ 現実よ」。
♪~
咲ちゃん これも劇団のため活動資金を稼ぐためよね。
(咲太郎)はい そうです。
けど いいですよ。 面白いです。
豊富先生は さすがにお上手ね。元弁士だけあって。
上手ですが 森繁久彌ならもっと うまい気がします。
フッ… まあ。
失礼します。お兄ちゃん。
なつ! 仲さんも。
お久しぶり。仲さんにお願いして 見学に来ちゃった。
こんにちは。こんにちは。こんにちは。
妹のなつです。知ってるわよ。
なつは 偶然この会社に勤めてるんですよ。
ああ あなたが描いてる絵ってこれだったの?
はい… 色を塗ってるだけですけど。
(ドアが開く音)
あっ トミさん。(富子)あっ マコちゃん まだ仕事?
ちょっと聞きたいんですけど…奥原なつって優秀ですか?
優秀? …とは言えないわね。
入って1年もたってないし彩色の仕事は丁寧なんだけどとにかく遅いのよ。
遅い? 動画だととにかく早いって話だったけど…。
えっ? 何かあるの?
あの子 ただの素人なのかそれとも天才なのか…。
どっちなんでしょう?
何かあるの?
どっちだと思います?
(蘭子)「キャッ!」。(遊声)「離れろ 許仙!その女は 白蛇の化け物じゃ!」。
「何をおっしゃいます!」。「やめろ 法海!」。
「えい! 正体を現せ 白蛇め!」。
(蘭子)「許仙様 私を信じて下さい…」。
(遊声)「あっ 白娘! 白娘!どこ行った!? 白娘!」。
「こうなったら許仙様を思う私の心が勝つか私を憎むあなたの心が勝つか戦いましょう!」。
「望むところじゃ!とっとと消えうせい!えい!えい! やあ~!そら!」。
(蘭子)「私の心を思い知るがよい!」。
(遊声)「うわ~! うわ~…!ええい! やあ!勝ったぞ!ハハハ わしの勝ちじゃ!」。
(蘭子)「ああ 許仙様…ああ 許仙様…」。
♪~
(麻子)泣く直前に一瞬 何かを振り向いてまだ戦う目をしながら泣き伏せる。
これよ。 これが中割に入ることで見る人に 白娘の気持ちの伝わり方が全然違うでしょ!
(井戸原)これ 使ってもいいよね?
はい… ありがとうございます。
♪~
仲さん。
どうも ありがとうございました。
どう 映画を作る面白さ 感じられた?
はい。
こんなにドキドキするとは思いませんでした。
まるで 夢を現実に見てるみたいでした。
なっちゃん…次の作品の製作が決まったよ。
えっ 本当ですか? 楽しみです。
そこで…また 動画のテストを受けてみないか?
えっ!
なつよ… その夢の続きを見られるか。


via Twishort Web App