2死走者なしから追いつかれ、2死走者なしから勝ち越した。借金10同士の対決を分けたのは、四球とミスだった。2回の先制点はビシエドの四球から始まり、6回の失点は3連続四球で押し出し。そして8回。中日にとって歓喜の2点目を、オリックスから見ればこうなる。
「そうですね。あそこで歩かせて、ワイルドピッチで二塁に進ませてしまって…。もったいなかった。しかもツーアウトからですから」
西村監督の表情は、怒りを押し殺しているようにも見えた。この時点での三ツ俣の打率は7分1厘(14打数1安打)。美しいグラブトスで成立させた5回の併殺は、安打に等しい美技だったが、打席に入れば…。失礼ながら、まず打たれるはずのない打者をストレートで歩かせ、大島の2球目に暴投で得点圏に進めてしまった。正直、記録は暴投だが捕手の若月が止められる球に見えた。勝利をもぎ取った代走・亀沢の出番は、こうして整った。中日側に視点を戻すと、いただいたチャンスをしっかりとモノにしたわけだ。
高卒3年目ながら12球団屈指の投手に成長した山本相手に、白星をつかんだのは大きい。西村監督はここでもぼやく。「相手の先発(阿知羅)を早くマウンドから降ろさないと。防御率1点台のピッチャーが、勝ちと負けが同じなんて…」。12球団最弱の打線の援護力は、山本の登板時にはさらに低下する。防御率(1.63)を見れば、中日は2点与えると勝ち目はほぼなくなっていた。その2点目を与えなかったのは3番手・岡田の頑張りに尽きる。
四球は投手のミスという考えがある。いわんや暴投はバッテリーエラーである。つまり、互いにミスの応酬で終始した試合だった。しかし、勝った。敗者の反省は重苦しいが、勝者の反省は前を向ける。四球、暴投からの決勝打。いや、心から感謝…。