「BMC」から「ローバー」、そしてBMW傘下へ。波乱万丈の歴史だったMINIの60年
『MINI』誕生のきっかけが1956年の第二次中東戦争だったと聞けば、少し意外に思うかもしれない。もう少していねいに言うと、第二次中東戦争をきっかけにした石油価格の高騰がきっかけだ。当時のヨーロッパでは、少しでもガソリン代を安くしようと、小排気量で2人乗りのミニカーが流行。しかしそれは、あまりにお粗末な乗り物だった。
『ミニ』はそんな状況を打破しようと「経済的なコンパクトカーでありながら、大人4人が乗れる室内を持ったクルマ」として開発されたのだ。今では当たり前だが、それまでになかった発想。まさに、自動車業界におけるイノベーションが生まれた瞬間だった。
こういった経緯から1959年に誕生した『MINI』だが、ここからの歴史は波瀾万丈だ。
当初はBMCが製造・販売を行っていた。MINIファンには人口に膾炙された話だが、BMCは、「オースチン・モータース」と「ナッフィールド・オーガナイゼイション」が合併して成立した自動車メーカー。前者には「オースチン」というブランド、後者には「モーリス」というブランドがあった。そして、初代『MINI』には、それぞれのブランド名を冠した『オースチン MINI』と『モーリスMINI』というモデルが存在した。
1960年代後半には、BMCは「スタンダード・トライアンフ」と合併で「BLMC」を設立。自ずとミニの生産・販売もここへ移管される。80年代にはBLMCから分社化された「ローバー」が生産・販売を受け継ぐ。日本ではこの『ローバー ミニ』が最もなじみ深いだろう。ローバーは1994年にBMW傘下となり、2000年に『ミニ』ブランドだけを残し、ほかのブランドは売却。BMWは2001年に新モデル『BMW MINI』を開発して市場に投入、現在へと至る。
『クーパー』『クーパーS』のガソリンとディーゼルに設定される60周年記念モデル
発表されたクルマが『MINI 60イヤーズ エディション』だったので、あえてMINI60年の歴史を簡単に振り返ってみたが、ここから、このクルマについての話をしよう。
『MINI 60イヤーズ エディション』は、3ドアと5ドアのハッチバックに設定され、それぞれ、ガソリン2種類、ディーゼル2種類のエンジンが搭載される。つまり、『MINI クーパー 60イヤーズ エディション』『MINI クーパーS 60イヤーズ エディション』『MINI クーパーD 60イヤーズ エディション』『MINI クーパーSD 60イヤーズ エディション』の4モデルとなる。
ボディカラーは「ブリティッシュ・レーシング・グリーン」。『ローバー ミニ』の時代から設定されたボディカラーで、MINIといえばこの色を想起するオールドファンも多いだろう。ルーフとドアミラーカバーは、写真の「ペッパーホワイト」、または「ブラック」から選ぶことができる。また、ボンネットストライプもアニバーサリーデザインとして特別感を醸し出す。足回りでは、6本スポークの専用17インチ軽量アロイホイールを装備した。
MINIのドアを開くと、足元に「60 Years」のアニバーサリーロゴが投影される演出
『60 Years』のアニバーサリーロゴが入ったエンブレムは、ボンネット、サイドスカットル、ドアシルフィニッシャー、フロントヘッドレストなどに配置。また、運転席側のLEDロゴプロジェクションによって、ドアを開くと足元にロゴが投影される。
装備面では、LEDヘッドライトやユニオンジャックデザインのリヤコンビランプ、LEDフォグランプ、ホワイトターンインジケーターのほか、インテリアライティングパッケージなどが標準で搭載される。内装はレザー仕様で、スポーツシートの素材は、通常はカスタマイズオプションのMINI Yours「レザーラウンジ・ダークカカオ」。そこへ外装色に合わせたグリーンのコントラストステッチがあしらわれた。スポーツステアリングも装備する。
MINIは2016〜18年まで3年連続で「日本で最も売れている輸入車」に輝いている
『MINI 60イヤーズ エディション』のイギリス本国での価格は2万9990ポンド(約444万円)。日本国内での販売は、まだBMWからアナウンスされていない。
日本は『MINI』の人気が特に高い。1990年代以降、世界的には販売に苦しんでいた『MINI』が生き残れたのは、日本の人気による部分も大きかったといわれている。それは、『BMW MINI』になってからも変わらない。外国メーカー車モデル別新車登録台数順位の推移によると、『BMW MINI』は2016〜2018年の3年連続、日本で最も売れた輸入車に輝いている。
『MINI 60イヤーズ エディション』も、日本に上陸したあかつきには、注目されることは間違いないだろう。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)