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第13回 | MINIの最新車デザイン・性能情報をお届け

MINI 60 Years Edition──ミニが小型車の歴史を変えた

イノベーションを新機軸・革新と捉えるなら、1959年8月26日は、自動車100年の歴史に残るイノベーションが生まれた日といえるだろう。ブリティッシュ・モーター・コーポレーション、いわゆる「BMC」が『MINI』を世に生み出したその日だ。『MINI』は、何度かの生産・販売会社の変更を経て2000年に生産を終了するが、BMW傘下として復活。今でも『BMW MINI」として世界中で愛されている。今年は、誕生60周年のメモリアルイヤー。60年の歴史を重ねられる車種は、数えるほどしかない。そんな偉大なクルマに敬意を表し、アニバーサルデザインモデル『MINI 60 Years Edition(60イヤーズ エディション)』が発表された。

「BMC」から「ローバー」、そしてBMW傘下へ。波乱万丈の歴史だったMINIの60年

『MINI』誕生のきっかけが1956年の第二次中東戦争だったと聞けば、少し意外に思うかもしれない。もう少していねいに言うと、第二次中東戦争をきっかけにした石油価格の高騰がきっかけだ。当時のヨーロッパでは、少しでもガソリン代を安くしようと、小排気量で2人乗りのミニカーが流行。しかしそれは、あまりにお粗末な乗り物だった。

『ミニ』はそんな状況を打破しようと「経済的なコンパクトカーでありながら、大人4人が乗れる室内を持ったクルマ」として開発されたのだ。今では当たり前だが、それまでになかった発想。まさに、自動車業界におけるイノベーションが生まれた瞬間だった。

こういった経緯から1959年に誕生した『MINI』だが、ここからの歴史は波瀾万丈だ。

当初はBMCが製造・販売を行っていた。MINIファンには人口に膾炙された話だが、BMCは、「オースチン・モータース」と「ナッフィールド・オーガナイゼイション」が合併して成立した自動車メーカー。前者には「オースチン」というブランド、後者には「モーリス」というブランドがあった。そして、初代『MINI』には、それぞれのブランド名を冠した『オースチン MINI』と『モーリスMINI』というモデルが存在した。

1960年代後半には、BMCは「スタンダード・トライアンフ」と合併で「BLMC」を設立。自ずとミニの生産・販売もここへ移管される。80年代にはBLMCから分社化された「ローバー」が生産・販売を受け継ぐ。日本ではこの『ローバー ミニ』が最もなじみ深いだろう。ローバーは1994年にBMW傘下となり、2000年に『ミニ』ブランドだけを残し、ほかのブランドは売却。BMWは2001年に新モデル『BMW MINI』を開発して市場に投入、現在へと至る。

『クーパー』『クーパーS』のガソリンとディーゼルに設定される60周年記念モデル

発表されたクルマが『MINI 60イヤーズ エディション』だったので、あえてMINI60年の歴史を簡単に振り返ってみたが、ここから、このクルマについての話をしよう。

『MINI 60イヤーズ エディション』は、3ドアと5ドアのハッチバックに設定され、それぞれ、ガソリン2種類、ディーゼル2種類のエンジンが搭載される。つまり、『MINI クーパー 60イヤーズ エディション』『MINI クーパーS 60イヤーズ エディション』『MINI クーパーD 60イヤーズ エディション』『MINI クーパーSD 60イヤーズ エディション』の4モデルとなる。

ボディカラーは「ブリティッシュ・レーシング・グリーン」。『ローバー ミニ』の時代から設定されたボディカラーで、MINIといえばこの色を想起するオールドファンも多いだろう。ルーフとドアミラーカバーは、写真の「ペッパーホワイト」、または「ブラック」から選ぶことができる。また、ボンネットストライプもアニバーサリーデザインとして特別感を醸し出す。足回りでは、6本スポークの専用17インチ軽量アロイホイールを装備した。

MINIのドアを開くと、足元に「60 Years」のアニバーサリーロゴが投影される演出

『60 Years』のアニバーサリーロゴが入ったエンブレムは、ボンネット、サイドスカットル、ドアシルフィニッシャー、フロントヘッドレストなどに配置。また、運転席側のLEDロゴプロジェクションによって、ドアを開くと足元にロゴが投影される。

装備面では、LEDヘッドライトやユニオンジャックデザインのリヤコンビランプ、LEDフォグランプ、ホワイトターンインジケーターのほか、インテリアライティングパッケージなどが標準で搭載される。内装はレザー仕様で、スポーツシートの素材は、通常はカスタマイズオプションのMINI Yours「レザーラウンジ・ダークカカオ」。そこへ外装色に合わせたグリーンのコントラストステッチがあしらわれた。スポーツステアリングも装備する。

MINIは2016〜18年まで3年連続で「日本で最も売れている輸入車」に輝いている

『MINI 60イヤーズ エディション』のイギリス本国での価格は2万9990ポンド(約444万円)。日本国内での販売は、まだBMWからアナウンスされていない。

日本は『MINI』の人気が特に高い。1990年代以降、世界的には販売に苦しんでいた『MINI』が生き残れたのは、日本の人気による部分も大きかったといわれている。それは、『BMW MINI』になってからも変わらない。外国メーカー車モデル別新車登録台数順位の推移によると、『BMW MINI』は2016〜2018年の3年連続、日本で最も売れた輸入車に輝いている。

『MINI 60イヤーズ エディション』も、日本に上陸したあかつきには、注目されることは間違いないだろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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MINI 60 Years Edition
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第14回 | MINIの最新車デザイン・性能情報をお届け

Eクラシック ミニ──電動化された古き良き時代のMINI

いわゆる「クラシック ミニ」は英国を代表するミニマムカーである。1959年から2000年までオースチンやローバーといったブランドから販売され、現在の「BMW MINI」のルーツとなった。ボディサイズは、全長わずか3070mm、全高1400mm未満。これほど小さいのに大人4人が乗車することができたのだから、まさに画期的な小型車だ。その「クラシック ミニ」に電動モデルが登場。しかも、コンセプトモデルなどではなく、限定100台の市販車である。クラシカルなデザインと小さなボディもオリジナルのままだ。

英国の老舗エンジンメーカーが生産販売する「クラシック ミニ」初の量産電動モデル

生産終了してから19年が経過した「クラシック ミニ」を、現代にEV(電気自動車)として甦らせる。そんな計画が発表されたのは、今年2月に英国で開催されたロンドン・クラシックカー・ショーでのこと。製造と販売を行うのは、1971年に創業し、モータースポーツ用のエンジン設計などにかかわる英国企業のスウィンドン・パワートレイン社だ。

「EVなのだからベンチャー企業が作るに違いない」と考えるのは大間違い。英国南部のウィルトシャー州に本拠地をおくスウィンドン社は、英国ツーリングカー選手権やラリーに出場するレース車両にエンジンを供給する内燃機関のプロフェッショナル。そのエンジンメーカーが初めて手がける量産型EVが、今回の『Eクラシック ミニ』なのである。

「クラシック ミニ」の電動モデルはBMWも製作したことがあり、同社は現行型MINIにモーターを搭載したEVバージョンを計画している。しかし、100台というまとまった台数の電動「クラシック ミニ」が一般向けに販売されるのは、これが初めてのことだ。

EVパワートレインの最高出力は、オリジナルの「クラシック ミニ」のおよそ2倍

スウィンドン『Eクラシック ミニ』は、フルレストアした「クラシック ミニ」のボディに自社開発のEVパワートレインと蓄電容量24kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載する。モーターの最高出力は80kW(約109ps)。これはオリジナルモデルのおよそ2倍に相当する出力だ。それ加えて、EVの特性として低速から強力なトルクを発生する。

最高速度は80マイル(約128km/h)、0~100km/h加速は9.2秒。けっして速くはないが、遅くて困るほどでもない。とはいえ、エンジンを降ろしたことで車両重量は720kgに軽量化された。その結果、車両の前後バランスが良くなり、バッテリー搭載によって低重心化されたのでキビキビ走ることだろう。満充電からの航続可能距離は約200km。バッテリーの充電には4時間ほどかかるが、オプションで急速充電にも対応するという。

「クラシック ミニ」はミニマムカーなので荷室の狭さが弱点のひとつだったが、ガソリンタンクを排除したことでその点も少し改善された。容量は200Lに拡大している。

価格は約1128万円と高額! BMWも現行MINIの電動モデルを今年中に発表予定

インテリアはオリジナルモデルを受け継ぎ、極めてシンプルなデザインだ。とはいえ、パワーステアリング、パワーウインドウ、電動サンルーム、シートヒーター、充電用USBポートといったオリジナルになかったEVらしい装備を充実させている。Apple CarPlayやAndroid Autoに対応するインフォテインメント・システムはオプションだ。

ボディカラーは6色から選ぶことができ、標準でルーフの塗り分けも可能。価格は7万9000ポンド、邦貨換算で約1128万円とかなり高額だ。しかし、これはベース車両となる中古車をハンドメイドで修復することから生産を始めるため、やむを得ない部分もあるのだろう。なお、BMWも現行MINIのEVバージョンを今年中に発表する予定だ。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Swind
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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