クライスラーとフィアットの統合によって誕生したJeepブランド初のコンパクトSUV
『レネゲード』は2014年に発表され、日本では2015年から販売されているJeep初のコンパクトSUVだ。車名のレネゲード(Renegade)は「背教者、反逆者」という意味。しかし、そのアウトローな名前とは真逆のポップなスタイリングをもち、都市部でも取り回しに困らないコンパクトなボディも相まって、隠れたヒットモデルとなっている。
このクルマの誕生にはFCAのアライアンスが深く関係している。じつは、Jeepブランドを有するクライスラーが2014年にイタリアのフィアットと完全統合してFCAとなり、両者の共同開発によって生み出された初のモデルが『レネゲード』なのだ。基本メカニズムはフィアットのコンパクトSUV『500X』と共有し、アメ車でありながら日本向けのモデルはイタリアで生産されるという少々変わった成り立ちをもつ。とはいえ、セブンスロットグリルや台形のホイールアーチなど、Jeepブランドの伝統はしっかり受け継いでいる。
これまで日本向けにも「ブラックエディション」「デザートホーク」「ナイトイーグル」といった特別仕様車が用意されてきたが、デザイン変更を伴うマイナーチェンジは初めて。今回の改良には、デビュー以来の「5年分のアップデート」が施されているのだ。
フロントとリヤが新デザインに。『ラングラー』譲りの意匠をもつヘッドライトに注目
マイナーチェンジのポイントは、大きく分けてふたつ。ひとつはフロントとリヤが新デザインになったこと。もうひとつは新世代エンジンを搭載したことである。
まずデザイン面では、グリルとバンパーからなるフロントフェイシアのカラーと形状が一新され、従来と比べて精悍さが増した印象だ。ヘッドライトとテールライトは、2018年にフルモデルチェンジを受けた兄貴分の新型『ラングラー』にインスピレーションを得ており、アイコニックな意匠に変更されたことでモダンな表情へと生まれ変わった。
ヘッドライトは、単にデザインを変えただけではなく、デイタイムランニングライト、ハイ/ロービーム、フォグランプのすべてを新設計LEDヘッドライトに統一。従来のキセノンヘッドライトに比べて明るさが20%向上し、夜間の視認性が大幅に高められている。このほか、アルミホイールが新デザインになり、ドアミラーの色がシルバーからグレーに変更されたことも新しい(「Limited」)。ドアミラーにはオート格納機能も追加されている。
外観と同様にポップなデザインのインテリアには、オーディオナビゲーションシステムの「Uconnect」に地上デジタルテレビチューナーが追加され、もちろんスマホと連携が可能だ。また、従来と同じく、「LaneSense車線逸脱警報プラス」や「ブラインドスポットモニター/リアクロスパスディテクション」といった先進安全装備が装備される。
まず「リミテッド」グレードのみが2月23日から日本で先行発売。価格は335万円
もうひとつのトピックとなるパワートレインは、ガソリンターボである点はこれまでと同じだが、1.4L直列4気筒マルチエアエンジンに代わって新世代の1.3Lマルチエア2エンジンが採用された。マルチエア2は、セントラルダイレクトインジェクション、インタークーラー付ターボチャージャー、スタート&ストップ機能を搭載し、優れたパフォーマンスと低燃費を両立する高効率エンジンだ。最高出力は11psアップの151ps、最大トルクは40Nm増となる270Nmを発揮。6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせる。燃費は、従来のカタログに記載されていたJC08モードより実用燃費に近いWLTCモードで13.5km/L。低燃費を謳うとおり、優れた燃費性能を発揮する。
グレード展開に変わりはない。これまでどおり「Longitude(ロンジチュード)」「Limited(リミテッド)」「Trailhawk(トレイルホーク)」の3タイプが導入される。まず中心的グレードの「リミテッド」が2月23日から国内先行発売され、価格を抑えたエントリーモデルの「ロンジチュード」と4WDモデルの「トレイルホーク」(メイン写真と下の写真)は春頃の発売を予定。「リミテッド」の価格は355万円(税込み)となっている。
日本の都市部でも使い勝手のいいコンパクトなボディ、老舗SUVブランドの「Jeep」を感じさせるデザイン、そして手頃な価格と、三拍子が揃った『レネゲード』。今回のマイナーチェンジにより、Jeepの末弟の魅力がさらにアップしたことは間違いない。
Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)