トライアンフ自身が最高峰のカスタムモデルを送り出す新シリーズの第一弾モデル
メーカー直のカスタムモデルが、最近増えてきている。これまで、カスタムのコンプリートモデルはショップのPRとして、イベントやカスタムショー向けに制作されてきたが、ここにきてメーカー・カスタムがバイク界のトレンドのひとつになっている。
その口火を切ったのが、BMWモトラッドの『R nine T』だ。フレーム、エンジン、タンク・シートながら、フロント周りとカラーリングの変更などを施し、ライダーの好みの肝を押さえた構成で、登場するやたちまち若者やリターンライダーの心をつかんだ。
現在は世界的に二輪ライダーの高齢化が進み、とくに日本ではユーザーの平均年齢が52歳を超えている(日本自動車工業会「2017年度二輪車市場動向調査」)。彼らには他人とは違うヨーロッパのバイクに乗りたいという人も多い。メーカー純正のカスタムモデルを折にふれて目にするようになったのは、おそらくそうした事情だと思われる。
そうしたなかで、英国の名門ブランド・トライアンフが2月に発表したのが「TFC(トライアンフ・ファクトリー・カスタム)」だ。名称でわかるとおり、トライアンフ自身が最高峰のカスタムモデルを送り出す新シリーズで、通常のラインナップとは異なる。今回紹介する『スラクストンTFC』は、このTFCシリーズ初となる量産型のカスタムモデルだ。
英国が誇る最高峰のクラフトマンシップ。完成されたカフェレーサースタイルを見よ
まずは、この完成されたカフェレーサースタイルを見てほしい。カーボンブラックで引き締められたカフェレーサーフェアリング(いわゆるロケットカウル)にシングルシートと、ブリティッシュバイク好き垂涎のパーツ類がメーカーカスタムで構築されている。
カーボンブラックのカラーは伊達ではなく、フロントマッドガード、ヒールガード、サイレンサーエンドキャップも軽量素材のカーボンファイバーによる美しい仕上げが施されている。さらに、アルミ削り出しのトップブリッジやブラシ仕上げのニッケル合金ミラーセンター、ティントスクリーン、アルミ削り出しオイルフィルターキャップなども装備する。シートはステッチディテールがあしらわれた本革シートだ。
ベースは2006年に登場したボンネビルシリーズの『スラクストン1200 R』。そこへ英国が誇る最高峰のエンジニアリングとディテール、そしてクラフトマンシップによる丁寧な仕上げが、タンクやシートの細部にいたるまで、みっちりと施されているのだ。
最高出力107馬力。野太いブリティッシュサウンドが響き渡るワンオフのマフラー
むろん専用チューンはスタイリングだけではなくパワートレインにも及んでいる。1200ccの水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブエンジンには大幅なアップグレードと軽量化が施され、『スラクストン1200 R』と比べて最高出力が10psアップ。その結果、最高出力107ps/8000rpm、最大トルク11.7kg-m/4850rpmのパワーを発揮する。
また、カーボンファイバーやアルミニウムを採用したことで、『スラクストン1200 R』から5kg軽量化されたのもポイントだ。見逃せないのがワンオフ製作のVance & Hines(バンス&ハインズ)製マフラーだろう。火を入れると野太いブリティッシュエキゾーストサウンドが響き渡り、ライダーの鼓膜を心地よく刺激してくれる。このマフラーには、エンドキャップ(独自のレーザーエッチ加工によるブランドロゴ入り)がつけられた。
そのほか、足回りではオーリンズ製フルアジャスタブルサスペンション、フロントブレーキはブレンボ製の310mm径フローティングダブルディスクを装備し、タイヤはレース仕様というメッツラー製の「Racetec (レーステック)RR」が装着されている。ちなみに、モデル名にある「Thruxton(スラクストン)」とはイギリスの地名で、この地にあったスラクストンサーキットで行われていた耐久レースに由来する。『スラクストンTFC』は、この耐久レースをオマージュして開発されたといっても過言ではないだろう。
価格は250万円。『スラクストンTFC』は世界限定750台の激レアカスタムモデル
そしてもうひとつ、『スラクストンTFC』は全世界でわずか750台のみが限定生産される超・限定モデルであることも書き添えなければならないだろう。一台一台が熟練のクラフトマンによるハンドメイドで製作され、ライダーの目に必ず入るメーター下の位置に「THRUXTON TFC」のロゴとシリアルナンバーが入ったプレートが装着される。
さらに、『スラクストンTFC』のオーナーには、トライアンフ・モーターサイクルのニック・ブルーアCEOのサインが入ったシリアルナンバーレター、個別のカスタムビルドブック、美しい専用カバー、各車両固有のTFCハンドオーバーパックも提供される。カラーリングはカーボンブラックのみで、価格は250万円。最上級のメーカーカスタムとなるレアモデルなので、気になる人は早めにトライアンフに問い合わせたほうがよさそうだ。
Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Triumph Motorcycles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)