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第68回 | 大人ライダー向けのバイク

スラクストンTFC──トライアンフが放つ新シリーズとは

「TFC」とは、「トライアンフ・ファクトリー・カスタム」の頭文字を取った名称だ。史上最高に美しく、個性的かつ魅力的なメーカーカスタムモデルを目指して誕生した新しいシリーズである。トライアンフにはこれまでにも『TFCボバー』や『TFCスクランブラー』など、「TFC」の名を与えられたモデルが存在したが、これらは多くの人には手に入らないもの。しかし、新生TFCは量産モデルのカスタムシリーズ。当然、限定車となるが、世界中のライダーが買うことができる。その第一弾が『スラクストンTFC』だ。

トライアンフ自身が最高峰のカスタムモデルを送り出す新シリーズの第一弾モデル

メーカー直のカスタムモデルが、最近増えてきている。これまで、カスタムのコンプリートモデルはショップのPRとして、イベントやカスタムショー向けに制作されてきたが、ここにきてメーカー・カスタムがバイク界のトレンドのひとつになっている。

その口火を切ったのが、BMWモトラッドの『R nine T』だ。フレーム、エンジン、タンク・シートながら、フロント周りとカラーリングの変更などを施し、ライダーの好みの肝を押さえた構成で、登場するやたちまち若者やリターンライダーの心をつかんだ。

現在は世界的に二輪ライダーの高齢化が進み、とくに日本ではユーザーの平均年齢が52歳を超えている(日本自動車工業会「2017年度二輪車市場動向調査」)。彼らには他人とは違うヨーロッパのバイクに乗りたいという人も多い。メーカー純正のカスタムモデルを折にふれて目にするようになったのは、おそらくそうした事情だと思われる。

そうしたなかで、英国の名門ブランド・トライアンフが2月に発表したのが「TFC(トライアンフ・ファクトリー・カスタム)」だ。名称でわかるとおり、トライアンフ自身が最高峰のカスタムモデルを送り出す新シリーズで、通常のラインナップとは異なる。今回紹介する『スラクストンTFC』は、このTFCシリーズ初となる量産型のカスタムモデルだ。

英国が誇る最高峰のクラフトマンシップ。完成されたカフェレーサースタイルを見よ

まずは、この完成されたカフェレーサースタイルを見てほしい。カーボンブラックで引き締められたカフェレーサーフェアリング(いわゆるロケットカウル)にシングルシートと、ブリティッシュバイク好き垂涎のパーツ類がメーカーカスタムで構築されている。

カーボンブラックのカラーは伊達ではなく、フロントマッドガード、ヒールガード、サイレンサーエンドキャップも軽量素材のカーボンファイバーによる美しい仕上げが施されている。さらに、アルミ削り出しのトップブリッジやブラシ仕上げのニッケル合金ミラーセンター、ティントスクリーン、アルミ削り出しオイルフィルターキャップなども装備する。シートはステッチディテールがあしらわれた本革シートだ。

ベースは2006年に登場したボンネビルシリーズの『スラクストン1200 R』。そこへ英国が誇る最高峰のエンジニアリングとディテール、そしてクラフトマンシップによる丁寧な仕上げが、タンクやシートの細部にいたるまで、みっちりと施されているのだ。

最高出力107馬力。野太いブリティッシュサウンドが響き渡るワンオフのマフラー

むろん専用チューンはスタイリングだけではなくパワートレインにも及んでいる。1200ccの水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブエンジンには大幅なアップグレードと軽量化が施され、『スラクストン1200 R』と比べて最高出力が10psアップ。その結果、最高出力107ps/8000rpm、最大トルク11.7kg-m/4850rpmのパワーを発揮する。

また、カーボンファイバーやアルミニウムを採用したことで、『スラクストン1200 R』から5kg軽量化されたのもポイントだ。見逃せないのがワンオフ製作のVance & Hines(バンス&ハインズ)製マフラーだろう。火を入れると野太いブリティッシュエキゾーストサウンドが響き渡り、ライダーの鼓膜を心地よく刺激してくれる。このマフラーには、エンドキャップ(独自のレーザーエッチ加工によるブランドロゴ入り)がつけられた。

そのほか、足回りではオーリンズ製フルアジャスタブルサスペンション、フロントブレーキはブレンボ製の310mm径フローティングダブルディスクを装備し、タイヤはレース仕様というメッツラー製の「Racetec (レーステック)RR」が装着されている。ちなみに、モデル名にある「Thruxton(スラクストン)」とはイギリスの地名で、この地にあったスラクストンサーキットで行われていた耐久レースに由来する。『スラクストンTFC』は、この耐久レースをオマージュして開発されたといっても過言ではないだろう。

価格は250万円。『スラクストンTFC』は世界限定750台の激レアカスタムモデル

そしてもうひとつ、『スラクストンTFC』は全世界でわずか750台のみが限定生産される超・限定モデルであることも書き添えなければならないだろう。一台一台が熟練のクラフトマンによるハンドメイドで製作され、ライダーの目に必ず入るメーター下の位置に「THRUXTON TFC」のロゴとシリアルナンバーが入ったプレートが装着される。

さらに、『スラクストンTFC』のオーナーには、トライアンフ・モーターサイクルのニック・ブルーアCEOのサインが入ったシリアルナンバーレター、個別のカスタムビルドブック、美しい専用カバー、各車両固有のTFCハンドオーバーパックも提供される。カラーリングはカーボンブラックのみで、価格は250万円。最上級のメーカーカスタムとなるレアモデルなので、気になる人は早めにトライアンフに問い合わせたほうがよさそうだ。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Triumph Motorcycles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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