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第67回 | 大人ライダー向けのバイク

新型は筋肉質で軽い──ドゥカティ ハイパーモタード950

スーパーモタードとは、簡単にいえばオンロードとオフロードを両方走れる最速バイクを決めるレースから生まれたオートバイのカテゴリである。ベースはオフロードだが、アスファルトの道路も走りやすいように設計されているため、あらゆるシーンに使うことができる。このカテゴリにおいて、ロードスポーツモデルをベースに高機能性と高速性能を与えたのがドゥカティの『ハイパーモタード』だ。1月にイタリア・ミラノで発表された新型『ハイパーモタード950』は、現行の『ハイパーモタード939』の後継となる2019年モデル。デザインもより筋肉質に一新された。

二輪レース界のチャンピオンを決めるテレビ番組から誕生した「スーパーモタード」

2005年のEICMA(ミラノモーターサイクルショー)でドゥカティから『Hypermotard(ハイパーモタード)』が発表されたとき、それはセンセーショナルだっただけではなく、「ドゥカティが新しいカテゴリを生み出したのだ」という期待感を世界中のバイクファンに与えてくれた。同時に、ほかのオートバイメーカーを大いに触発したに違いない。

その『ハイパーモタード』が大幅な改良を受け、2019年モデルの『ハイパーモタード950』として登場したのだ。よりエキサイティングなバイクになったのは言うまでもない。

そもそも「モタード」とは何か。起源は1980年代にアメリカ・カルフォルニア州で始まった「スーパーバイカーズ(Super Bikers)」に遡る。ロードレースやモトクロス、ダートトラックなどのジャンルを超え、「二輪レース界のチャンピオンを決める」というテレビ番組の色物的な企画が始まりである。しかし、その中身はユニークかつ魅力的だった。

舞台はアスファルトとダートを組み合わせ、ジャンピングポイントも設置された複合コース。マシンはモトクロッサーベースで、フロントホイールはロード用タイヤを履かせるために小径化し、その一方、ブレーキディスクは舗装路面での制動力を高めるために大径化され、風の抵抗を軽減するためにフロントフェンダーの前後を短くカットしていた。そのチューニング法は異様でありながらインパクトが強く、挑戦的で新しかったのだ。

『ハイパーモタード』はロードスポーツの骨格とスーパーモタードの操縦性を併せもつ

しかし、スーパーモタードの車両はオフ車がベースなのでハイウェイ走行には向かず、タンデムもできない。積載性もないに等しく、小さなタンクのためにロングランも難しい。とはいえ、そのアクティブで攻撃的なシルエットは捨てがたいものがあった。

ドゥカティの開発チームがまったく新しいカテゴリのモデルを模索していたとき、スーパーモタードのイメージや機能を参考にしたのは明らかだ。その結果、ロードスポーツモデルの骨格とエンジン、スーパーモタードの軽快な操縦性、そして独創的かつ先進的なデザインが与えられた『ハイパーモタード』が誕生することとなったのである。

『ハイパーモタード』は2007年の発売以来、短いスパンでモデルチェンジやラインナップの変更を重ねてきた。当初は1100ccモデルのみだったが、これは幅広いユーザーに受け入れられなかったため、2009年には803ccの『ハイパーモタード796』が登場。軽量化とともに構成パーツもシンプルになり、さらにスリッパークラッチ(バックトルクによる動力伝達の不同調を軽減)を採用したことで、扱いやすさが格段に向上した。

2013年にはフルモデルチェンジした第二世代の「821シリーズ」へと進化し、エンジンを水冷化して排気量も821ccに一本化。その後、排気量を937ccとした2016年モデルの「939シリーズ」が登場したものの、2017年モデルまで大きな変更がなかった。今回発表された2019年モデルの『ハイパーモタード950』は、第三世代となる。

2019年モデルの『ハイパーモタード950』は筋肉質なデザインと軽量化がポイント

もっとも大きな変更点は、なんといっても従来と比べて攻撃的で筋肉質なスタイリングになったことだ。それは、おもにサスペンションやホイールなどの足回りの変更によるものだが、同時にステンレス製のエキゾーストパイプをデュアルでシート下にまで伸ばし、またエンド部がスラッシュカットされたマフラーの存在感も際立っている。

その一方、目立たないものの、軽量化のためにトレリスフレームが新設計された。細部の見直しを含めて車体重量が8ポンド(約3.6kg、「950SP」は4.4ポンド)も軽量化されたことも、よりアグレッシブなライディングを愉しむうえでのポイントになっている。

ラインナップは『ハイパーモタード950』と『ハイパーモタード950 SP』の2モデルを展開。パワーユニットはミッションも含めて共通で、937ccのデスモドロミック水冷L型ツイン、通称「テスタストレッタ11°」が搭載された。最高出力は84kw(114hp)/9000rpmと従来比で4hpアップし、最大トルクは96Nm(9.8kgm)/7250rpmだ。

今回のモデルチェンジは、排ガスの新しい欧州規制EURO5に対応することも理由のひとつだったわけだが、結果として出力を上げながら扱いやすいキャラクターを手に入れたことになる。わずか3000rpmで82%のトルクを発生するエンジン特性と47度のバンク角は、タイトコーナーが続くワインディングでも十分に走りが愉しめるはずだ。

ちなみに、『ハイパーモタード950』と『ハイパーモタード950 SP』の違いは、サスペンションとホイール、専用カラーなどの外装だけに限られている。フロントサスは「950」がマルゾッキの45mm径で、「950 SP」はオーリンズの48mm径フルアジャスタブル。リアサスは「950」がザックス製、「950 SP」はオーリンズ。ホイールトラベルも異なり、「950」がF170/R150mm、それに対して「950 SP」はF185/R175mmとなった。

『ハイパーモタード950』の価格は165万円から。走行フィールへの期待が膨らむ

日本での販売価格(メーカー希望小売価格)は、『ハイパーモタード950』が165万円、『ハイパーモタード950 SP』が210万円となっている(いずれも税込み)。

『ハイパーモタード』シリーズは、車格から考えると軽い車体が初代から続く魅力のひとつだった。その系譜は2019年モデルにも受け継がれており、重量は「950」が178kg、「950 SP」は176kgしかない(ともに乾燥重量)。ホンダのアドベンチャーモデル『CRF1000L アフリカツイン』でも230〜250kg程度はあるので、これは驚くべき「軽さ」だ。はたしてその走行フィールはいかなるものか。期待は膨らむばかりである。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Hypermotard 950 SP オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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