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第18回 | ボルボの最新車デザイン・性能情報をお届け

キーワードはクラスレス──ボルボXC40が素晴らしい理由

COTY(日本カー・オブ・ザ・イヤー)は、日本国内で販売される乗用車のなかから、もっともその年を象徴するのにふさわしい車両に与えられる称号だ。ボルボはこのCOTYを2017-2018、そして2018-2019と、2年連続で受賞している。輸入車ブランドが連覇したのは、およそ40年に及ぶCOTYの歴史上初めてのこと。この快挙をなし遂げた立役者のうちの一台が、ボルボ初のコンパクトシティSUV『XC40』である。じつは、『XC40』はCOTYの選考委員のみならず、ユーザーからの評価も高く、納期が最大で1年となるほどの人気となっている。『XC40』はなぜ多くの支持を集めるのだろうか。

9カ月で目標の2.7倍となる4000台を受注した『XC40』。納期は最大で1年待ち!

少し前までのボルボには、「安全だが、どこか垢抜けない」という印象があった。これを払拭したのが、2016年の『XC90』を皮切りに、『V90』『V90クロスカントリー』『XC60』『XC40』『V60』と、立て続けに発表されたニューモデル群だ。なお、ボルボでは、「XC」はSUVを、「V」はステーションワゴンを、数字はボディサイズを表している。

これらの新型車は、スウェーデン車らしい明るい雰囲気の内外装を追求し、メルセデス・ベンツをはじめとするドイツのライバルとは違ったプレミアム性も兼ね備えることで高い評価を得ている。JAJA(日本自動車輸入組合)の2018年度上半期の輸入車新規登録台数でも、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、BMW、アウディ、MINIのドイツ勢に続くのがボルボなのだ。日本国内市場におけるシェアも5%近くに伸びている。

このうち、COTY 2017-2018を受賞したのがミドルクラスSUVの『XC60』。そして2018-2019の受賞でボルボを連覇に導いたのが、ひと回りコンパクトな『XC40』だ。

『XC40』は、ボルボのSUVシリーズのボトムエンドを担うモデル。この『XC40』のヒットからわかるのは、初めてボルボを買う新規ユーザーからの支持も獲得しているという事実だ。なにしろ、2018年3月に販売を開始すると、年内の国内割当て分は即完売。同12月までに目標の2.7倍となる4000台を受注し、納期は最大1年にもなっている。

クラスの枠組みからユーザーを解放。最先端の安全装備を全グレードに標準装備する

なぜ『XC40』は高い評価を得たのか? 最大の理由は「クラスレスの魅力」にある。つまりファミリー層からプレミアム層にまで支持される幅広いバリューを有しているのだ。

ボルボのSUVシリーズは、大きい順に『XC90』『XC60』『XC40』の3モデルをラインナップする。しかし、「90」がもっともエライのかというと、けっしてそうではない。それぞれに異なる個性が与えられえている。ボルボはそれを「VC90はフォーマルな革靴」「XC60は少しライトな印象のスウェード靴」「XC40は軽快なスニーカー」と例えた。

『XC40』は『XC90』の廉価版などではなく、カジュアルSUVとしての魅力を追求している。そのため、エントリーSUVといっても、ボルボの大きな特徴である先進安全装備(インテリセーフと呼ぶ)は上位モデルとほぼ同等だ。一例を挙げると、部分自動運転機能の「パイロットアシスト」、道路逸脱回避をサポートする「ランオフロードミティゲーション」など、その装備は10以上に及ぶ。内外装の装備やマテリアルも見劣りしない。

しかも、『XC40』は、この世界最高レベルの先進安全装備をすべてのグレードに標準装備している。これはコンパクトモデルでは非常にめずらしいケースといえるだろう。

クルマ、とりわけ欧州車は、貴族的な人々の乗り物として誕生した成り立ちもあり、良くも悪くもクラスソサエティ(階級社会)と深い関係にある。そうしたクラスの枠組みから解放してくれた点こそ、『XC40』がユーザーを惹きつける魅力であるように感じる。

ボディカラー、ルーフカラー、内装色。『XC40』は“選ぶ愉しみ”もその魅力のひとつ

サイズも日本向きだ。全長4425mm×全幅1875mm×全高1660mmのボディは、車幅こそ少々大きいものの、全長は十分にコンパクト。日本の都市部でも取り回しに困ることはない。だからこそ、コンパクトシティSUVとして選ばれているのだろう。

2.0L「Drive-E」ガソリンターボエンジンは、「T4」「T5」の2つのチューンが用意されるが、実際に乗ってみると140kW(192ps)の「T4」でも十分にパワフルで軽快だ。乗り心地も、どちらかといえば硬質なドイツ車に対し、どこか優しさを感じる。プレミアムコンパクトSUVの購入を検討している人が候補に入れたくなるのもうなずけるのだ。

しかも、カジュアルな「モメンタム」、スポーティな「Rデザイン」、ラグジュアリーな「インスクリプション」の3タイプから選ぶグレードに始まり、グリルのデザインにボディカラー、それと組み合わせるルーフカラー、内装色に素材選びと、頭を悩ませるくらいに選択肢が多い。これだけ「選ぶ愉しみ」の多いコンパクトSUVもそうそうない。

価格は389万円から。『XC40』はヨーロッパでも、もっとも優秀なクルマに選ばれた

『XC40』のグレードには、「モメンタム」「Rデザイン」「インスクリプション」のほかに価格を抑えたエントリーモデルもあるが、ここにもクラスソサエティは存在しない。好みやユーザーのライフスタイルに合わせて選べるようになっている。価格はエントリーモデルの「T4」が389万円から、「T5 AWD インスクリプション」が549万円からだ。

ちなみに、発売当初のデータでは低価格モデルではなく「Rデザイン」や「インスクリプション」が人気だったというから、価格だけで選ばれているわけではないことがわかる。

『XC40』が獲得したのはCOTYだけではなく、じつは、2018年のECOTY(ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー)も受賞している。ECOTYは年間5000台以上という販売台数基準の関係から、伝統的にルノーやフィアットなどの小型車が受賞するケースが多い。言い換えると、それだけ『XC40』がユーザーに広く支持されている証拠でもあるのだ。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Volvo Car Corporation
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
The Volvo XC40: City Living Made Simple
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第17回 | ボルボの最新車デザイン・性能情報をお届け

ライバルは飛行機──ボルボの完全自動運転車に刮目せよ

成功者がプライベートジェットを所有したがるのはなぜか。それはセキュリティチェックのために空港で長い列に並んだり、見知らぬ人と狭い空間に押し込められたり、フライト時間を他人に合わせたり、十分に眠ることができなかったりする不便さから逃れるためだ。プライベートジェットの利用は「非生産的な移動手段の解消」と言い換えることもできるだろう。移動の際に用いる空間に「オフィス」「リビング」「寝室」などを備え、移動しながら「何か」をすることができれば、当然のことながら生産性も向上する。ボルボが9月に発表した自動運転のコンセプトカー『360c』は、まさにこの点をテーマとしている。

まるで「移動する部屋」。ハンドルもなければ進行方向を向いたシートもないクルマ

自動運転、電動化、コネクテッドが自動車業界の重要なテーマとなるに従い、世界各国の自動車メーカーがさまざまな「未来のクルマ」を提案している。ボルボが発表した新しい自動運転のコンセプトカー『360c』も、多様な未来像に対するひとつの問いかけだ。

完全自動運転のEV(電気自動車)なので、車両にはコクピットが存在せず、当然ステアリングも装備しない。動力はモーターだからエンジンも搭載しない。そのため設計の自由度が高く、室内からは進行方向を向いたシートも取り除かれた。室内のレイアウトは、テーブルを中央に置いた「リビング」、あるいはベッドと収納のみの「寝室」のようになる。

考えられる用途は、おもに「動くオフィス」「睡眠できる快適な環境」「リビングルーム」「エンターテインメントスペース」の4つ。まさしく移動する部屋といった趣である。

変わる移動の概念。完全自動運転が実現すれば、混雑する都市に住む必要もなくなる

このコンセプトカーがテーマにしているのは「非生産的な移動手段の解消」だ。完全自立型のクルマが登場すれば、人々は移動時間を仕事や睡眠、食事、さらに趣味やインプットの時間に使うことができる。ボルボは移動時間の価値を変えようとしているのである。

都市部に在住し、通勤電車に揺られて会社に行くといった現代人のライフスタイル、そして都市計画のあり方自体も変わっていくかもしれない。移動時間にあらゆることが可能となり、クルマが動くオフィスになると、混雑する都市に住む必要がなくなるからだ。

すると都市から地方へと人口が拡散し、都心に住んで働くという価値も見直されることになる。近年注目を集めるリモートワークや二拠点生活を進化させたかたちである。

そうなれば、都市部の交通渋滞が解消され、住宅の選択肢が広がることから不動産価格の抑制も期待できるだろう。むろん『360c』はEVなので、排気ガスによる環境汚染への対策にもなりうる。もはや自動車メーカーの枠を超えたスケールの大きな提案なのだ。

ファーストクラス並のプライベート空間で移動。自動運転車は航空業界にとって脅威

事実、ボルボはこのコンセプトカーによって、従来の自動車メーカーのあり方にとらわれないビジネスモデルを模索している。たとえば、こうした完全自動運転のクルマが実際に普及したときに、それを脅威と感じ、競合する可能性が高いのが航空業界である。

アメリカやヨーロッパは路線が多く、運賃も安価なので、飛行機は便利な移動手段となっている。その反面、利用にはストレスがともない、空港へ行く時間や行列に並ぶ時間などの無駄も多い。とはいえ、長距離を自分でクルマを運転して移動するのは大変だ。

しかし、『360c』のようなクルマがあれば、ドア・ツー・ドアによりファーストクラス並のプライベート空間で移動できるのである。いってみれば「地上を移動するプライベートジェット」だ。ファーストやビジネスクラスの利用客は確実に減るのではないか。

もちろん、完全自動運転が実現するのはまだ先のことだ。人々には「機械にすべてを委ねるのは不安」「事故を起こしたときに誰が責任を負うのか」といった懸念が渦巻いている。それでも、ボルボが問いかけるクルマの未来には興味を抱かざるをえないのだ。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Volvo Car Corporation
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
VOLVO 360c オフィシャル動画
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