9カ月で目標の2.7倍となる4000台を受注した『XC40』。納期は最大で1年待ち!
少し前までのボルボには、「安全だが、どこか垢抜けない」という印象があった。これを払拭したのが、2016年の『XC90』を皮切りに、『V90』『V90クロスカントリー』『XC60』『XC40』『V60』と、立て続けに発表されたニューモデル群だ。なお、ボルボでは、「XC」はSUVを、「V」はステーションワゴンを、数字はボディサイズを表している。
これらの新型車は、スウェーデン車らしい明るい雰囲気の内外装を追求し、メルセデス・ベンツをはじめとするドイツのライバルとは違ったプレミアム性も兼ね備えることで高い評価を得ている。JAJA(日本自動車輸入組合)の2018年度上半期の輸入車新規登録台数でも、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、BMW、アウディ、MINIのドイツ勢に続くのがボルボなのだ。日本国内市場におけるシェアも5%近くに伸びている。
このうち、COTY 2017-2018を受賞したのがミドルクラスSUVの『XC60』。そして2018-2019の受賞でボルボを連覇に導いたのが、ひと回りコンパクトな『XC40』だ。
『XC40』は、ボルボのSUVシリーズのボトムエンドを担うモデル。この『XC40』のヒットからわかるのは、初めてボルボを買う新規ユーザーからの支持も獲得しているという事実だ。なにしろ、2018年3月に販売を開始すると、年内の国内割当て分は即完売。同12月までに目標の2.7倍となる4000台を受注し、納期は最大1年にもなっている。
クラスの枠組みからユーザーを解放。最先端の安全装備を全グレードに標準装備する
なぜ『XC40』は高い評価を得たのか? 最大の理由は「クラスレスの魅力」にある。つまりファミリー層からプレミアム層にまで支持される幅広いバリューを有しているのだ。
ボルボのSUVシリーズは、大きい順に『XC90』『XC60』『XC40』の3モデルをラインナップする。しかし、「90」がもっともエライのかというと、けっしてそうではない。それぞれに異なる個性が与えられえている。ボルボはそれを「VC90はフォーマルな革靴」「XC60は少しライトな印象のスウェード靴」「XC40は軽快なスニーカー」と例えた。
『XC40』は『XC90』の廉価版などではなく、カジュアルSUVとしての魅力を追求している。そのため、エントリーSUVといっても、ボルボの大きな特徴である先進安全装備(インテリセーフと呼ぶ)は上位モデルとほぼ同等だ。一例を挙げると、部分自動運転機能の「パイロットアシスト」、道路逸脱回避をサポートする「ランオフロードミティゲーション」など、その装備は10以上に及ぶ。内外装の装備やマテリアルも見劣りしない。
しかも、『XC40』は、この世界最高レベルの先進安全装備をすべてのグレードに標準装備している。これはコンパクトモデルでは非常にめずらしいケースといえるだろう。
クルマ、とりわけ欧州車は、貴族的な人々の乗り物として誕生した成り立ちもあり、良くも悪くもクラスソサエティ(階級社会)と深い関係にある。そうしたクラスの枠組みから解放してくれた点こそ、『XC40』がユーザーを惹きつける魅力であるように感じる。
ボディカラー、ルーフカラー、内装色。『XC40』は“選ぶ愉しみ”もその魅力のひとつ
サイズも日本向きだ。全長4425mm×全幅1875mm×全高1660mmのボディは、車幅こそ少々大きいものの、全長は十分にコンパクト。日本の都市部でも取り回しに困ることはない。だからこそ、コンパクトシティSUVとして選ばれているのだろう。
2.0L「Drive-E」ガソリンターボエンジンは、「T4」「T5」の2つのチューンが用意されるが、実際に乗ってみると140kW(192ps)の「T4」でも十分にパワフルで軽快だ。乗り心地も、どちらかといえば硬質なドイツ車に対し、どこか優しさを感じる。プレミアムコンパクトSUVの購入を検討している人が候補に入れたくなるのもうなずけるのだ。
しかも、カジュアルな「モメンタム」、スポーティな「Rデザイン」、ラグジュアリーな「インスクリプション」の3タイプから選ぶグレードに始まり、グリルのデザインにボディカラー、それと組み合わせるルーフカラー、内装色に素材選びと、頭を悩ませるくらいに選択肢が多い。これだけ「選ぶ愉しみ」の多いコンパクトSUVもそうそうない。
価格は389万円から。『XC40』はヨーロッパでも、もっとも優秀なクルマに選ばれた
『XC40』のグレードには、「モメンタム」「Rデザイン」「インスクリプション」のほかに価格を抑えたエントリーモデルもあるが、ここにもクラスソサエティは存在しない。好みやユーザーのライフスタイルに合わせて選べるようになっている。価格はエントリーモデルの「T4」が389万円から、「T5 AWD インスクリプション」が549万円からだ。
ちなみに、発売当初のデータでは低価格モデルではなく「Rデザイン」や「インスクリプション」が人気だったというから、価格だけで選ばれているわけではないことがわかる。
『XC40』が獲得したのはCOTYだけではなく、じつは、2018年のECOTY(ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー)も受賞している。ECOTYは年間5000台以上という販売台数基準の関係から、伝統的にルノーやフィアットなどの小型車が受賞するケースが多い。言い換えると、それだけ『XC40』がユーザーに広く支持されている証拠でもあるのだ。
Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Volvo Car Corporation
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)