進化したのは見た目じゃない。エアロダイナミズムと最先端テクノロジーに注目せよ
『ウラカンEVO』のEVOは、言わずもがな「Evolution(進化)」のEVOだ。ランボルギーニのモータースポーツ部門、スクアドラ・コルセによる『ウラカンGT3 EVO』や『ウラカン スーパートロフェオ EVO』といったレーシングカーにもその名が使われている。
しかし、エクステリアからは、その進化をすぐに読み解くことは難しいだろう。もちろん、フロントバンパーやホイールなどのデザインは微妙に変更されている。インテリアでは、センターコンソールに「8.4インチHMIタッチスクリーン」を配置したことがトピックスだ。従来のボタン類を廃してデジタル化し、スクリーンに指でタッチするだけで「LDVI」システムの状態、シートポジション、温度調節、オーディオなど、すべてのドライビング・ダイナミクスの制御とエンターテインメント機能の操作が可能になった。また、室内灯はドライビングモードに合わせて変更されるという。
パワートレインにも大きな変更はない。ベースの『ペルフォルマンテ』と同じ5.2L V10エンジンだ。スペックも同様で、最高出力640hp(470kW)/8000rpm、最大トルク600Nm/6500rpm。ここに7速デュアルクラッチLDF(ランボルギーニ・ドッピア・フリツィオーネ)が組み合わされ、0-100km/h加速は2.9秒、0-200km/h加速は9秒フラット、最高速は325km/hに達する。
では、いったいどこが進化したのか。それは、エアロダイナミズムと最先端テクノロジーの大幅な改良による走行性能の進化だ。まずエアロダイナミズムでは、アンダーボディを流れる空気を制御するフロントスプリッターや大型化されたエアインテークの採用により、第一世代『ウラカン』と比べて5倍ものダウンフォースと空力性能を実現した。
最先端テクノロジーでは、ドライビング・ダイナミクスを制御するすべてのシステムに改善がはかられるとともに、新技術も導入されている。それが、「LDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)の採用だ。「LDVI」は、『ウラカン EVO』に搭載されているさまざまなテクノロジーを統合制御する頭脳のような役割を持つ。
車両の頭脳「LDVI」のもと、数々の最先端テクノロジーが求める挙動を忠実に実現
『ウラカンEVO』は、テクノロジーの固まりだ。まず、車両の挙動を正確にリアルタイムに計測するのは、加速度センサーとジャイロスコープセンサーを搭載する「LPI(ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ)」である。
垂直方向のダイナミクスは「LMS(磁気レオロジー・サスペンション)」が制御し、横方向の車両ダイナミクスを制御するのは「ステアリング・システム」だ。「ステアリング・システム」では、「トルク・ベクタリング」と「トラクション・コントロール」とが一体となり縦方向のダイナミクスが決定される。
この「ステアリングシステム」は、さらに個別のテクノロジーが複雑に絡み合う。「トルク・ベクタリング」と「AWD(2軸間の常時トルク配分)」を利用し、「LDS(ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング)」と「LAWS(ランボルギーニ・オールホイール・ステアリング)」が四輪を制御しているのだ。これらのさまざまなテクノロジーを統合制御しているのが、前述の「LDVI」である。ドライバーの意志を理解し、必要があれば車両の挙動を事前に予測して最適化し、求める車両の挙動を忠実に実現してくれる。
『ウラカンEVO』の価格は2984万円。ひと昔前の扱いづらい猛牛はもう存在しない
意訳だが、ランボルギーニのステファノ・ドメニカリCEOは「どんな環境でも運転がしやすく、高い応答性や感覚的なドライビング体験を提供できる」とコメントしている。もちろん、車両の挙動、システムのすべてを統合制御し、ドライバーの次の動きやニーズをも予測する「LDVI」があってのこと。ひと昔前の扱いづらい猛牛は、ここには存在しない。
希望小売価格は、2984万3274円(消費税を除く)。これだけの最先端テクノロジーや動力性能を備えた一台だけに、相応の値段だろう。限られた富裕層にしか手が届かない別次元の存在だが、憧れは尽きない。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)