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第65回 | 大人ライダー向けのバイク

旧くて、新しい──Royal Enfieldの回帰的ニューモデル

Royal Enfield(ロイヤルエンフィールド)は、1851年にイングランドのウスターシャー州レディッチに設立された老舗オートバイブランドである。とはいえ、1970年に英国本社が倒産して以降はインドで生産され、1970年以前の車体構造をもつオールドルックなモデルばかりを作ってきた。しかし、近年のロイヤルエンフィールドは、もうクラシックオートバイブランドではない。新しい時代を迎えたブランドの象徴となるのが新型ツインエンジンを搭載した『コンチネンタルGT650』と『インターセプター650』の二台だ。

この空冷ツイン搭載の二台はレストア車? 復刻版? それともカスタムモデルなのか?

この2モデルを見たとき、1970年代を知っている諸兄なら、驚きと同時にきっとこう思ったはずだ。「このオートバイはレストア車? 復刻版? それともカスタム?」と。しかし間違いなくこれから発売されるニューモデルであり、それも時代のマインドを巧みに取り入れた、これからのロイヤルエンフィールドの指針のひとつとなるものだ。

英国の伝統あるオートバイメーカー、ロイヤルエンフィールドがインド企業のアイシャーグループ傘下に入って久しいが、1995年にブランドとして独立。それ以来ニューモデルを積極的に開発し、2017年には英国ミッドランドにテクノロジーセンターも開設した。多数のヨーロッパ人技術者も迎え入れ、新たな歴史を築こうとしている。

ブランドに期待される存在感と、時代に適合したテクノロジーとセンスの融合。その答えとなるのが『コンチネンタルGT650』と『インターセプター650』だ。鋼管フレーム、ツインリアショック、テレスコフォークというスタイルは“往年”そのまま。回帰的ニューモデルとも呼びたくなる雰囲気は、リターンライダーならずとも歓迎したくなるに違いない。

1950〜60年代のカフェレーサーのようなスタイルをもつ『コンチネンタルGT650』

2モデルの魅力は、性能云々ではなく、なんといってもスタイリングにある。はっきりとガソリンエンジンであることを主張する冷却フィンと大きなミッションケース、存在感のある燃料タンク、クロムメッキの2本出しメガフォンマフラー。前後ともに18インチホイールとしたことも、ふさわしいスタイリングにするためには必要な選択だったはずだ。

『コンチネンタルGT650』は、1950〜60年代のカフェレーサー全盛期に登場した同社の『GT250』を祖としており、低いクリップオンハンドルに小さなカウルの付いたシングルシートなど、ブリティッシュカフェレーサーの見本のようなスタイルをもつ。スポーティなライディングポジションとなっているが、街なかでも愉しめることだろう。

『インターセプター650』は、1960年代のアメリカ西海岸で広く受け入れられたデザートマシンを再現しているかのようだ。こちらは、1960年代に同社が生産していた736cc空冷パラレルツインエンジン搭載の『インターセプター』に啓発されたもの。ブリッジ付きのワイドハンドルに、ティアドロップ型の燃料タンク、ダイヤモンドキルトパターンをあしらったタンデムも愉しめる長めのシートが特徴となっている。

ロイヤルエンフィールドの新型二台は「快適なライディングとは何か」を問うている

『コンチネンタルGT650』『インターセプター650』ともに共通の空油冷4バルブSOHCパラレルツインエンジンは、最高出力47.7ps(35.0kw)/7250rpm、最大トルク5.3kgf-m(52kg-m)/5250rpmと、国産スポーツモデルと比べると数値的に控えめだ。

しかし考えすぎかもしれないが、この二台からは、まるで「快適なライディングとは何か」というアイデンティティーを突きつけられているように感じた。さらに、不等間隔爆発となる270度クランクを採用することで、トルク感を感じさせながら力強い排気音を与え、振動も抑えようという意図がうかがえる。バルブ機構にはローラーロッカーを採用して静粛性を向上。もちろん吸気は電子制御の燃料噴射で、排ガス規制に適合している。

ミッションは6速で、半乾燥の車体重量は『コンチネンタルGT650』が198kg、『インターセプター650』が202kg。ブレーキはフロントに320mm径ディスクと2ポッドキャリパー、リアには240mmの1ポッドを採用と、十二分な内容となっている。そしてリアサスペンションは伝統的なツインショックとしているが、これはまさにロイヤルエンフィールドとして期待されるスタイリングを守るためには外すことのできないポイントだ。

『コンチネンタルGT650』は約80万円、『インターセプター650』は約77万円から

インドで生産されていた1990年代までのロイヤルエンフィールドは、かつて英国で設計したオートバイを変更することなくそのまま作り続けているだけのブランドだった。しかしインドの経済復興にともない状況が一変。200年に及ぶ英国とインドの浅からぬ関係も相まって、まさしく英印両国は新しい時代に向けて大きく変わろうとしている。

ロイヤルエンフィールドは単気筒のイメージが強いが、このタイミングで新型ツインエンジンの2モデルを投入することには大きな意味がある。時代の変遷を、『コンチネンタルGT650』『インターセプター650』の二台が教えてくれているようでもあるのだ。ヨーロッパでの価格は、『コンチネンタルGT650』が6400ユーロ(約80万3000円)、『インターセプター650』が6200ユーロ(約77万8000円)とアナウンスされている。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Honda Motor
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Royal Enfield 650 Twins オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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