この空冷ツイン搭載の二台はレストア車? 復刻版? それともカスタムモデルなのか?
この2モデルを見たとき、1970年代を知っている諸兄なら、驚きと同時にきっとこう思ったはずだ。「このオートバイはレストア車? 復刻版? それともカスタム?」と。しかし間違いなくこれから発売されるニューモデルであり、それも時代のマインドを巧みに取り入れた、これからのロイヤルエンフィールドの指針のひとつとなるものだ。
英国の伝統あるオートバイメーカー、ロイヤルエンフィールドがインド企業のアイシャーグループ傘下に入って久しいが、1995年にブランドとして独立。それ以来ニューモデルを積極的に開発し、2017年には英国ミッドランドにテクノロジーセンターも開設した。多数のヨーロッパ人技術者も迎え入れ、新たな歴史を築こうとしている。
ブランドに期待される存在感と、時代に適合したテクノロジーとセンスの融合。その答えとなるのが『コンチネンタルGT650』と『インターセプター650』だ。鋼管フレーム、ツインリアショック、テレスコフォークというスタイルは“往年”そのまま。回帰的ニューモデルとも呼びたくなる雰囲気は、リターンライダーならずとも歓迎したくなるに違いない。
1950〜60年代のカフェレーサーのようなスタイルをもつ『コンチネンタルGT650』
2モデルの魅力は、性能云々ではなく、なんといってもスタイリングにある。はっきりとガソリンエンジンであることを主張する冷却フィンと大きなミッションケース、存在感のある燃料タンク、クロムメッキの2本出しメガフォンマフラー。前後ともに18インチホイールとしたことも、ふさわしいスタイリングにするためには必要な選択だったはずだ。
『コンチネンタルGT650』は、1950〜60年代のカフェレーサー全盛期に登場した同社の『GT250』を祖としており、低いクリップオンハンドルに小さなカウルの付いたシングルシートなど、ブリティッシュカフェレーサーの見本のようなスタイルをもつ。スポーティなライディングポジションとなっているが、街なかでも愉しめることだろう。
『インターセプター650』は、1960年代のアメリカ西海岸で広く受け入れられたデザートマシンを再現しているかのようだ。こちらは、1960年代に同社が生産していた736cc空冷パラレルツインエンジン搭載の『インターセプター』に啓発されたもの。ブリッジ付きのワイドハンドルに、ティアドロップ型の燃料タンク、ダイヤモンドキルトパターンをあしらったタンデムも愉しめる長めのシートが特徴となっている。
ロイヤルエンフィールドの新型二台は「快適なライディングとは何か」を問うている
『コンチネンタルGT650』『インターセプター650』ともに共通の空油冷4バルブSOHCパラレルツインエンジンは、最高出力47.7ps(35.0kw)/7250rpm、最大トルク5.3kgf-m(52kg-m)/5250rpmと、国産スポーツモデルと比べると数値的に控えめだ。
しかし考えすぎかもしれないが、この二台からは、まるで「快適なライディングとは何か」というアイデンティティーを突きつけられているように感じた。さらに、不等間隔爆発となる270度クランクを採用することで、トルク感を感じさせながら力強い排気音を与え、振動も抑えようという意図がうかがえる。バルブ機構にはローラーロッカーを採用して静粛性を向上。もちろん吸気は電子制御の燃料噴射で、排ガス規制に適合している。
ミッションは6速で、半乾燥の車体重量は『コンチネンタルGT650』が198kg、『インターセプター650』が202kg。ブレーキはフロントに320mm径ディスクと2ポッドキャリパー、リアには240mmの1ポッドを採用と、十二分な内容となっている。そしてリアサスペンションは伝統的なツインショックとしているが、これはまさにロイヤルエンフィールドとして期待されるスタイリングを守るためには外すことのできないポイントだ。
『コンチネンタルGT650』は約80万円、『インターセプター650』は約77万円から
インドで生産されていた1990年代までのロイヤルエンフィールドは、かつて英国で設計したオートバイを変更することなくそのまま作り続けているだけのブランドだった。しかしインドの経済復興にともない状況が一変。200年に及ぶ英国とインドの浅からぬ関係も相まって、まさしく英印両国は新しい時代に向けて大きく変わろうとしている。
ロイヤルエンフィールドは単気筒のイメージが強いが、このタイミングで新型ツインエンジンの2モデルを投入することには大きな意味がある。時代の変遷を、『コンチネンタルGT650』『インターセプター650』の二台が教えてくれているようでもあるのだ。ヨーロッパでの価格は、『コンチネンタルGT650』が6400ユーロ(約80万3000円)、『インターセプター650』が6200ユーロ(約77万8000円)とアナウンスされている。
Text by Koji Okamura
Photo by (C) Honda Motor
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)