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第64回 | 大人ライダー向けのバイク

ヤマハNIKEN──スチームパンクな三輪モーターサイクル

LMW(Leaning Multi Wheel)とは、ヤマハ独自のテクノロジーで、オートバイのようにリーンして旋回する三輪以上の車両の総称だ。スクーターの『パッソル』をベースにした1976年のコンセプトモデルに端を発する。それから40年余り。2014年に発売された125ccの三輪スクーター『TRICITY (トリシティ)』を経て、ついに昨年9月、LMWの本丸というべき『NIKEN(ナイケン)』がデビューした。2018年に登場した国産モーターサイクルのうち、もっともインパクトのあったモデルといっても過言ではない。

滑らかなコーナリングを実現するフロント二輪、リア一輪のマルチホイールモデル

モーターサイクル好きなら、専門誌やネットなどのメディアで、その外観やメカニズムをすでに目にしたことだろう。いや、もしかすると、2015年と2017年の東京モーターショーのヤマハブースにそれぞれ展示されたプロトタイプに触れているかもしれない。

『ナイケン』は、スクータータイプの『トリシティ』と同様に、フロント二輪、リア一輪のマルチホイールモデルだ。ヤマハは、これをLMWと呼んでいる。簡単にいえば、オートバイのようにリーン(傾斜)してコーナーを旋回することのできるテクノロジーをもったリバーストライク(逆トライク)のこと。『ナイケン』は、このLMWテクノロジーに加え、専用開発の新ステアリング機構を取り入れ設計されている。。それにより、LMWならではの安定感とスポーティで滑らかなコーナリング性能、自然なハンドリングを実現した。

ちなみに、「NIKEN」という名は二つの剣を意味する造語で、フロント二輪のフォークを剣の達人の二刀流になぞらえたものだという。とにかく見た目からしてインパクトがあり、いま高速道路や峠でもっとも熱い視線を浴びているモーターサイクルなのである。

スチームパンクでレトロフューチャー。メカメカしい印象の『ナイケン』のスタイル

そのスタイルは、いかつくてメカメカしい印象を見るものに与える。目を引くのは計4本の倒立式/タンデムフォークのフロントサスペンションだ。さらに、対向ピストン4ポットラジアルマウントキャリパー・298mm径のディスクをフローティングマウント。フロントブレーキは専用の120/70R15 Vレンジタイヤの外側に配置している。

ロサンゼルスにいる筆者の友人は、『ナイケン』をひと目見て「スチームパンク!」と言った。なるほど、この独特のフロント二輪はスチームパンクの世界観に欠かせない蒸気機関の動輪と主連棒のようにも見え、どことなくレトロフューチャーでさえある。

路面を睨むつり目の二眼ヘッドライトが特徴的なフロントのワイドカウルの外側には、LEDフラッシャーを組み込んだバックミラーを装着し、内側にはネガポジ反転の専用マルチファンクションLCDメーターパネルが収められた。メーター横には12VのDCジャックを標準装備。スマホなどのデジタル機器が手放せない現代では欠かせない装備だろう。

ツーリングの快適性を格段に向上させる「クルーズコントロールシステム」を装備

パワーユニットには、ヤマハのスポーツネイキッドバイク『MT-09』をベースとする水冷DOHC 3気筒4バルブエンジンが搭載された。排気量は845cc。FIセッティングを最適化し、スポーティかつマイルドな操作性を実現する。またスポーツ走行に応えるため、トランスミッションにはレーシングモデルの『YZF-R1』と同じ強度の素材を採用した。

最高出力85kW(116ps)/10000rpm、最大トルク87N・m(8.9kgf・m)/8500rpmというスペックは『MT-09』と変わりない。そして、エンジン特性を選べる「D-MODE」の内容も『MT-09』と基本的には同じだ。「1モード(もっともスポーティなモード)」「2モード(スムーズかつスポーティな走行フィーリングを低速から高速まで楽しめるモード)」「3モード(2モードより穏やかで扱いやすい出力特性を楽しめるモード)」の3つのモードから、ライダーの好みや走行環境などによって選択することができる。

もちろん、ライダーの好みや路面状況に応じて制御の強さを「1(弱)」「2(強)」「OFF」から選べる2モード選択式のトラクション・コントロール・システム、さらにクラッチレバーの操作荷重を軽減し、同時にバックトルクによる車体挙動への影響を抑止、市街地でのストップ&ゴーを軽快にしてくれるアシスト&スリッパー(A&S)クラッチも装備する。

うれしいのは、ツーリングの快適性を格段に向上させる「クルーズコントロールシステム」も装備することだ。4速以上のギアで走行している際にセット可能で、高速道路を使ってのロングツーリングで威力を発揮する。フロント二輪の安心感と相まって、これまで経験したことのないリラックス感をモーターサイクルで味わうことができるのだ。

燃費は60km/hの定地燃費値で26.2km/L、WMTCモードでは18.1km/L。航続距離約300kmのロングツーリングのために、燃料タンク容量18Lを採用している。

ヤマハ『ナイケン』の価格は約178万円。街を流せば人々の視線を間違いなく独占

カラーリングは「ダークグレーメタリックG(ダークグレー)」の1色のみで、価格は178万2000円(税込み)。ただし、『ナイケン』は受注生産となっているので街のバイクショップには並んでいない。手に入れたいなら取扱店にて予約する必要がある。

スポーツタイプの大型LMWである『ナイケン』は、増えつつあるリターンライダーのスキル不足を手助けし、若者を含めたより多くの人たちにモーターサイクルの愉しさを広める存在となるかもしれない。なにより、これほど特徴的なルックスをもつモーターサイクルで街を流せば人々の視線を奪い、高速道路の話題も独占することだろう。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Yamaha Motor
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Yamaha NIKEN オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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