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第70回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

これは40代向きのメルセデスだ──新型CLAクーペ登場

メルセデス・ベンツ『Aクラス』は昨年秋の登場以来、カーガイやメディアから多くの注目を集めている話題のクルマだ。「Hey! メルセデス」のかけ声で起動する音声アシスタントシステム「MBUX」が大きな理由のひとつだろう。ユーザーの人気も高く、12月には3000台以上を販売した。そして『Aクラス』のモデルチェンジは、その兄弟モデルの『CLAクーペ』も刷新されるということにほかならない。予想どおり、1月のラスベガスで新型『CLAクーペ』が発表された。むろん搭載されたのはさらに進化したMBUXである。

オシャレでコンパクト、価格も手頃。ユーザーの平均年齢が若いメルセデス・ベンツ

『CLAクーペ』は、ハッチバックの『Aクラス』と基本コンポーネントを共有する4ドアクーペだ。『Eクラス』をベースとする『CLSクーペ』の弟分にあたる。コンパクトで取り回しがよく、価格も手頃。それでいてスタイリッシュなデザインをもつことから、メルセデス・ベンツのラインナップのなかではユーザーの平均年齢が若いモデルでもある。

今年1月にラスベガスで開催されたCES(旧コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)2019で発表された2代目『CLAクーペ』は、ベースの『Aクラス』のフルモデルチェンジを受けてのもの。当然、メカニズム面は新型『Aクラス』に準じているが、対話型音声アシスタントシステムの「MBUX」はアップデートされた最新バージョンを搭載する。

ダイムラー次期CEOのオラ・ケレニウス氏は、発表会場で「我々の2018年の努力の結晶だ」と語っていたが、新型『CLAクーペ』に対する自信がうかがえるだろう。

最新の「プレデター・フェイス」を採用し、ボディの大型化に伴って室内空間も拡大

スタイリング自体は、先代『CLAクーペ』と大きく変わっていない。サメの尖った鼻先を思い起こさせる傾斜したノーズ、パワードームと呼ばれるボンネットのプレスライン、ロー&ワイドなフォルムと、従来と同じくスポーティでスタイリッシュだ。しかし、フロントマスクには新型『Aクラス』と同様にプレデター・フェイスが採用され、リヤではナンバープレートをトランクリッドからバンパーに移設。より伸びやかな印象となった。ハッチバックの『Aクラス』と異なりサッシュレスドアが採用されているのも先代と同様である。

先代との大きな違いは、ボディサイズだ。全長4688mm×全幅1830mm×全高1439mmと、初代に比べて48mm長く、53mm広く、わずかに2mm低くなった。これは室内空間の拡大を求めるユーザーの声に応えたもので、特にひじまわりは前席35mm、後席も44mm拡大された。コンパクトさが魅力だったため、全幅が1800mmを超えてしまったことは少々残念だが、大型化は世界的な流れなので仕方ないところだろう。

最新版「Hey!メルセデス」。ジェスチャーコマンド対応のMBUXインテリアアシスト

内装は基本的に『Aクラス』を受け継いでいる。タービン状のエアダクトが特徴的なインパネは、従来のようなメーターフードを持たず、連続した2つの大型タッチスクリーンが設置された。新世代のメルセデス・ベンツであることを主張するデザインだ。

ハイテク装備のトピックは、「Hey!メルセデス」のかけ声で起動する対話型インフォテイメントシステム「MBUX」に、新たに「MBUXインテリアアシスト」が導入されたことだろう。これは手をかざすだけで操作可能なジェスチャーコマンドのことで、タッチスクリーンやセンターコンソールのタッチパッドに手を近づけるだけで画面の操作ができたり、助手席の方向に手を伸ばすと室内照明を点灯させたりすることができる。

新型『Aクラス』もそうだったが、こうした先進装備を『Sクラス』などの上級モデルではなく身近なモデルから採用していくのは、最近のダイムラーの戦略のようだ。

外装にオレンジのアクセントが入るデビュー記念モデル「エディション1」を設定

新型『CLAクーペ』のバリエーションは現在のところ、最高出力225ps、最大トルク350Nmを発揮する2.0Lガソリンターボに7速DCTを組み合わせる「CLA250」のみ。FF(前輪駆動)と四輪駆動の4MATIC(4マチック)が選択可能だ。エクステリアにオレンジのアクセントが入るデビュー記念の「エディション1」も設定される(写真のモデル)。

今後は、『Aクラス』に準じた「180」やAMGモデルの「AMG CLA 35」「AMG CLA 45」なども追加される見込みだ。好評のシューティングブレークも加わるに違いない。

いち早くニューモデルを手に入れたいなら「エディション1」で決まりだが、そうでなければ追加ラインナップを待ってもいいだろう。どちらにしても国内導入が待ち遠しい。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Mercedes-Benz CLA Coupé オフィシャル動画
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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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