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第4回 | ホンダの最新車デザイン・性能情報をお届け

もうライバルはプリウスにあらず──ホンダ インサイト

日本語では「洞察力・眼識」という意味を持つ。初代がデビューしたのは1999年。「ハイブリッドカーの本格的な普及という新しい時代の到来を洞察するクルマ」という想いを込めて名づけられたといわれている。その名は『インサイト』。ホンダのハイブリッドの象徴的存在だ。第二世代の生産は2014年に終了していたが、2018年1月のデトロイトモーターショーで復活がアナウンスされ、プロトタイプを発表。同年夏には北米市場での販売が開始された。そして今回、ついに日本国内での販売がスタートした。

車名以外はすべて刷新。モデルチェンジのたびに大きく生まれ変わる『インサイト』

変わっていないのは名前だけ。『インサイト』は、初代、第二世代、そして今回の第三世代と、まったく別のコンセプトで開発されたクルマだ。初代はとにかく燃費重視。ガソリン量産車で世界最高燃費を最大の特徴として謳っていた。ボディをアルミ製、2シーターにすることで820kgという軽量を実現し、35km/L(10・15モード)という脅威の数値を実現した。しかし、販売面では振るわず、2006年に生産終了となる。

第二世代はその3年後、2009年に5人乗りのハッチバックとして復活した。初代の面影が残っていたのはリアの形状ぐらいのもの。間が空いたとはいえ、同じ車名のクルマがこれほどボディ形状を変えることはめずらしく、当時は大きな話題となった。

話題になった理由のひとつには、その形状からして、『プリウス』と真正面からぶつかったこともあっただろう。実際、第二世代の後期型だった『プリウス』と第二世代『インサイト』のライバル対決は、自動車雑誌などを賑わせた。小排気量で価格を抑えた第二世代『インサイト』は、スタートダッシュに成功。しかし、ライバル『プリウス』の販売戦略の巧みさなどもあり、徐々に販売台数を落とし、最終的には2014年に生産終了となる。

この第二世代の生産終了から4年。『インサイト』は三度復活するわけだが、今回も車名以外はすべてが新しくなっている。まさに、「ホンダならではのハイブリッド」のあり方を「insight(洞察)」する一台として生まれ変わったといっていい。

ハッチバックから自動車の保守本流セダンへ。細部の質にこだわって「品格」を表現

第三世代となる新型『インサイト』が目指したのは、「シンプルで時代に流されない、本質的な魅力を備えたクルマ」だ。それは、大きく様変わりしたボディ形状にも現れている。自動車の保守本流であるセダンを採用したのだ。

エクステリアでは、ハイブリッドらしさを訴求した初代、第二世代とは異なり、本質的な美意識を重視した。流麗なシルエット、シンプルなキャラクターライン、作り込んだサーフェース、巧みに細工されたホイールデザイン。そして、ボンネットフードを優美に走るライン、刀身の美しさを思わせるフロントグリル。細部にわたって質の高さにこだわることで、「品格」を表現したという。

インテリアは、インストルメントパネル全体をシンプルな面と線で構成。助手席の前に大きく張り込まれたソフトパッドは、ミシン目のアングルにまでこだわった縫製による素材を手張りで丁寧に仕立てるなどして、上質なおもてなし空間を実現している。

新型『インサイト』は基本モーターで走り、エンジンはモーターの発電機として使用

気になるのは、やはりハイブリッドシステムとそこから生み出される走行性能だ。ハイブリッドシステムは、ホンダ独自の「SPORT HYBRID i-MMD」を採用。これは、駆動用モーターと発電用モーターの2つのモーターを備えた2モーター・ハイブリッドシステムだ。

駆動用モーターは駆動軸と直結しており、減速時には回生を行う。高出力・高トルクを発揮し、滑らかでレンスポンスの良い走りが特徴だ。発電用モーターはエンジンと直結。エンジンの動力で効率的な発電を行い、走行用モーターに電力を供給する。この2モーター・ハイブリッドシステムを、1.5L DOHC i-VTECエンジンと組み合わせた。

スペックは、走行用モーターが最高出力96kW(131ps)/4000-8000 rpm、最大トルク267N・m(27.2kgf・m)/0-3000 rpm。エンジンが最高出力80kW(109ps)/6000rpm、最大トルク134N・m(13.7kgf・m)/5000 rpm。燃費はJC08モードで34.2km/Lだ。

ハイブリッドの良さを最大限引き出すために、道路状況やドライバーの操作、走行状況に応じて選べる走行モードも搭載した。燃費と走りのトータルバランスにすぐれた「NORMAL」、省燃費で走る「ECON」、伸びの良い加速感をもたらす「SPORT」を準備。それぞれのモードでは、エンジンを停止する「EVドライブ」、エンジンを発電機として利用する「ハイブリッドドライブ」、エンジンで走る「エンジンドライブ」を選ぶことができる。

ただし、『インサイト』におけるエンジンの主目的は発電機。基本はモーターで走ると考えていいだろう。そのため、EV的なドライビングができるように、アクセルオフ時の減速度を3段階に変更できる「減速セレクター」を装備した。また、操作面では、カーブなどで曲がるとき、狙い通りのラインで走れるように、少ないステアリング操作でスムーズな走りを実現する「アジャイルハンドリングアシスト」を搭載している。

新型『インサイト』は約326万円から。「三度目の正直」を期待せずにはいられない

グレードは「LX」「EX」「EX・BLACK STYLE」の3タイプで、価格はそれぞれ326万1600円、349万9200円、362万8800円となっている(すべて税込み)。

上級のミドルセダンに分類される価格といい、ボディ形状といい、すでに『プリウス』を仮想的としていないのは明らかだ。セダンが売れないといわれる昨今だが、『インサイト』はオーセンティックなセダンというより、クルマの本質を見極めながら最新のテクノロジーで新しい走行性能を手に入れた新世代のセダンと捉えることもできる。販売面で苦しんだ初代、第二世代の雪辱をはたせるのか。三度目の正直に期待せずにはいられない。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Honda Motor
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第5回 | ホンダの最新車デザイン・性能情報をお届け

ホンダの電動化戦略に注目──Honda e、ついにデビュー

2017年の東京モーターショー。ホンダのブースでひときわ注目を集めたのが『Honda Urban EV Concept(ホンダ アーバン イーブイ コンセプト)』だ。可愛らしくて親しみやすく、どこか懐かしい感じがするのだが、なぜか近未来的な雰囲気を持ち合わせた一台だった。この『Urban EV Concept』を進化させた新型EVが『Honda e』。市販化を念頭に置いたプロトタイプとして、3月のジュネーブモーターショーで初お披露目となった。

『Honda e』は懐かしいのに新しい。ホンダが培ってきたスモールカーの知見を凝縮

なんとも愛らしいフォルムだ。それでいて、新しさも感じさせる。『Honda e』は、ホンダが初めてヨーロッパで販売するEVだ。プロトタイプではあるが、ほぼこのままの形で販売されることが予想される。

エクステリアでは、親しみやすさをシンプルかつクリーンに表現。ホンダがスモールカーで作り上げてきた走りの愉しさと愛着が伝わる。

フロントドアハンドルは欧州車に最近よく見られるポップアップ式。走行時はドアに収納されている。リアドアハンドルは、すぐには見つけられないかもしれない。よく見ると、ピラー内に埋め込まれており、なんともスタイリッシュだ。サイドミラーも廃し、カメラを利用した「サイドカメラミラーシステム」が採用された。これらの意匠により、全体に“塊感”のある雰囲気。ホンダいわく「シームレスなボディーデザイン」である。

インテリアには上質な素材を使用し、ラウンジのような心地良い空間を作り出した。インパネ周りはかなりスッキリとした印象を受ける。中央には直感的かつマルチタスクの操作が可能な大型ディスプレーが鎮座。コネクテッドサービスをはじめとする、さまざまな機能が使える。そして左右には、サイドカメラの映像が映し出されるモニターを設置している。後席には特筆すべき点はないが、シートベルトから想像すると2人がけだろう。

走行距離は200km、30分で80%の急速充電。都市で使いやすいEVコミューター

プラットフォームはEV専用に新開発された。その外観から、コンパクトなボディながらロングホイールであることがわかる。おそらく、街中での走りやすさを担保しつつ、高速道路などではしっかりとした直進安定性を実現することだろう。言い慣れた言葉を使えば、「取り回しの良さと走行性能が両立されたクルマ」といったところだ。

ユニークなのはリア駆動であること。モーターの設置場所は発表されていないが、フォルムから想像するとリア側の可能性が高い。そうなるとRR(リアエンジン・後輪駆動)となるわけだ。コンパクトモデルではかなりめずらしく、すぐに思い浮かぶのは第三世代のルノー『トゥインゴ』くらい。心なしか、フォルムも少し似ているような気がする。

モーターの出力やバッテリー容量も現時点では未発表だが、EVとしての性能は、走行距離200km以上を達成と発表されている。30分で80%までの充電が可能な急速充電にも対応しており、都市型コミューターとしての使い勝手に考慮した性能となっているようだ。

『Honda e』は今年夏に欧州の一部で販売開始。2020年には日本でも販売される?

ホンダが発表した「2019年ジュネーブモーターショー発信骨子」によると、「欧州における電動化をさらに加速させるため、2025年までに欧州で販売する四輪商品のすべてをハイブリッド、バッテリーEVなどの電動車両に置き換えることを目指す」という。

ハイブリッド車では、すでに今年初めに販売を開始した『CR-V HYBRID』があるが、EVでは『Honda e』が初となる。夏には欧州の一部の国で販売を開始するという。ホンダのEV戦略の尖兵になることは間違いないだろう。2020年に日本での販売も決定しているという一部報道もあり、日産『リーフ』一択の日本のEV市場が活性化するかもしれない。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Honda Motor Europe
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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