ランボルギーニ「スクアドラ・コルサ」ブランドで作られた史上初のワンオフモデル
スーパーカーのカスタマーのなかでも、コレクターと呼ばれる人々は新車をオーダーするだけでは飽き足らない。自分だけの特別なワンオフモデルを所有したいと考える。
たとえば、エリック・クラプトンは、フェラーリに1976年の『512BB』をデザインモチーフにした『SP12 EC』を製作してもらい、日本でもフェラーリクラブ・ジャパン元会長の平松潤一郎氏が『SP1』をオーダーした。スーパーカー以外では、2017年にコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステで発表されたロールス・ロイス『スウェプテイル』も、顧客のオーダーで作られたワンオフモデルだ。『スウェプテイル』は、ロールス・ロイス史上最高額となる、1300万ドル(約14億5千万円)という価格でも注目を集めた。
ランボルギーニ『SC18 アルストン』も、そうした顧客からの要望によって生まれたワンオフモデルだ。スクアドラ・コルセによる史上初のワンオフであるのは前述のとおりだが、じつはこのクルマ、スクアドラ・コルセの未来を垣間見せる重要な一台でもある。
スーパートロフェオに出場するレーシングマシンから受け継いだエアロダイナミクス
『SC18 アルストン』のベースは、ランボルギーニのフラッグシップモデル『アヴェンタドール』。注目すべきは、スクアドラ・コルセがモータースポーツで培った経験をもとに、この車両のためだけに独自に開発したというエアロダイナミクス(空力性能)だ。
公道も走行可能とはいえ、『SC18 アルストン』はサーキットで走ることを主眼に置いて開発された。そのため、エクステリアは極限まで空力性能を追い求めた。フロントフードには、スーパートロフェオ用のレーシングカー『ウラカンGT3 EVO』を思わせるエアインテークを装着。サイド&リヤにも、やはり同じレーシングカーである『ウラカン スーパートロフィオ EVO』にインスパイアされたフィンやエアスクープを採り入れている。
カーボンファイバー製の大型リアウイングは3段階の調整機構を備えており、世界のどのサーキットを走行しても最適な空力特性を得ることが可能。当然ながら、軽量化もはかられている。ボディにはカーボンファイバーが採用され、このほかにも超軽量素材が使用されているという。グランドクリアランス(最低地上高)はわずか109mmだ。
エクステリアには、全体的にレーシングカーならではのムードが漂うが、同じく『アヴェンタドール』をベースとするスペシャルモデルで、2013年に3台のみが生産された『ヴェネーノ』のクーペモデルのようにも見える。これはオーナーがレーシングカーの先進性と『ヴェネーノ』の進化版となるデザインをリクエストしたためだという。
最高出力は770馬力。ベースは『アヴェンタドールSVJクーペ』のV12エンジンか?
パワーユニットは6.5L V12自然吸気エンジン。最高出力770hp/8500rpm、最大トルク720Nm/6750rpmと発表されている。トランスミッションはISR(インディペンデントシフティング・ロッド)7速AMT、駆動方式は電子制御多板クラッチ式の4WDだ。
それ以上の詳細は未発表だが、標準の『アヴェンタドール クーペ』より明らかにパワーアップされていることから、同モデルの最終版であり、その最強バージョンである『アヴェンタドールSVJクーペ』のエンジンがベースになっていると考えられる。
独特のデザインをもつエクゾーストや奏でるサウンド、そして足元の「ピレリPゼロコルサ」も、このワンオフモデルのために開発されたもの。ホイールはマグネシウム製で、フロント20インチ、リヤ21インチのセンターロックタイプを装着している。
コクピットでは、「ロッソ アラーラ(赤)」のステッチをアクセントとした「ネロ・アデ(黒)」のアルカンターラ仕上げの内装と、カーボンファイバー製の軽量バケットシートが目を引く。そのほかの装備については不明だが、サーキット走行中にマシンデータをリアルタイムでモニタリングすることのできるテレメトリーシステムを装備しているようだ。
愛好家のために「スクアドラ・コルサ」ブランドのスペシャルモデルを作るビジネス
ワンオフモデルゆえに価格は未発表。しかし、この『SC18 アルストン』を見たランボルギーニのコレクターから同様のオーダーが寄せられることは十分に想像できる。
事実、ランボルギーニは今後、「スクアドラ・コルサ」ブランドによるパーソナルでスペシャルなモデルを、モータースポーツ愛好家のために製作するビジネスを展開する予定だという。世界中のセレブリティやコレクターにとって、またひとつ新しいクルマ趣味の扉が開いたわけだ。この先もこうしたワンオフモデルが発表されていくに違いない。
Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)