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第32回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

SC18 アルストン──ランボルギーニの新たなるビジネス

「スーパートロフェオ」は、ランボルギーニによる世界最速のワンメイクレースである。オーガナイザーは、ランボルギーニのモータースポーツ部門「スクアドラ・コルセ」。そのスーパートロフェオの2018年シーズン最終戦が開催された昨年11月中旬、ローマで『SC18 アルストン』という名のモデルがランボルギーニから発表された。一見すると『アヴェンタドール』のレース仕様のようだが、じつは顧客のオーダーによる特注車。スクアドラ・コルセが製作した史上初のワンオフモデルでもある。「SC18」はスクアドラ・コルセが2018年に手がけたことを示し、「アルストン」は顧客の子息の名前を表している。

ランボルギーニ「スクアドラ・コルサ」ブランドで作られた史上初のワンオフモデル

スーパーカーのカスタマーのなかでも、コレクターと呼ばれる人々は新車をオーダーするだけでは飽き足らない。自分だけの特別なワンオフモデルを所有したいと考える。

たとえば、エリック・クラプトンは、フェラーリに1976年の『512BB』をデザインモチーフにした『SP12 EC』を製作してもらい、日本でもフェラーリクラブ・ジャパン元会長の平松潤一郎氏が『SP1』をオーダーした。スーパーカー以外では、2017年にコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステで発表されたロールス・ロイス『スウェプテイル』も、顧客のオーダーで作られたワンオフモデルだ。『スウェプテイル』は、ロールス・ロイス史上最高額となる、1300万ドル(約14億5千万円)という価格でも注目を集めた。

ランボルギーニ『SC18 アルストン』も、そうした顧客からの要望によって生まれたワンオフモデルだ。スクアドラ・コルセによる史上初のワンオフであるのは前述のとおりだが、じつはこのクルマ、スクアドラ・コルセの未来を垣間見せる重要な一台でもある。

スーパートロフェオに出場するレーシングマシンから受け継いだエアロダイナミクス

『SC18 アルストン』のベースは、ランボルギーニのフラッグシップモデル『アヴェンタドール』。注目すべきは、スクアドラ・コルセがモータースポーツで培った経験をもとに、この車両のためだけに独自に開発したというエアロダイナミクス(空力性能)だ。

公道も走行可能とはいえ、『SC18 アルストン』はサーキットで走ることを主眼に置いて開発された。そのため、エクステリアは極限まで空力性能を追い求めた。フロントフードには、スーパートロフェオ用のレーシングカー『ウラカンGT3 EVO』を思わせるエアインテークを装着。サイド&リヤにも、やはり同じレーシングカーである『ウラカン スーパートロフィオ EVO』にインスパイアされたフィンやエアスクープを採り入れている。

カーボンファイバー製の大型リアウイングは3段階の調整機構を備えており、世界のどのサーキットを走行しても最適な空力特性を得ることが可能。当然ながら、軽量化もはかられている。ボディにはカーボンファイバーが採用され、このほかにも超軽量素材が使用されているという。グランドクリアランス(最低地上高)はわずか109mmだ。

エクステリアには、全体的にレーシングカーならではのムードが漂うが、同じく『アヴェンタドール』をベースとするスペシャルモデルで、2013年に3台のみが生産された『ヴェネーノ』のクーペモデルのようにも見える。これはオーナーがレーシングカーの先進性と『ヴェネーノ』の進化版となるデザインをリクエストしたためだという。

最高出力は770馬力。ベースは『アヴェンタドールSVJクーペ』のV12エンジンか?

パワーユニットは6.5L V12自然吸気エンジン。最高出力770hp/8500rpm、最大トルク720Nm/6750rpmと発表されている。トランスミッションはISR(インディペンデントシフティング・ロッド)7速AMT、駆動方式は電子制御多板クラッチ式の4WDだ。

それ以上の詳細は未発表だが、標準の『アヴェンタドール クーペ』より明らかにパワーアップされていることから、同モデルの最終版であり、その最強バージョンである『アヴェンタドールSVJクーペ』のエンジンがベースになっていると考えられる。

独特のデザインをもつエクゾーストや奏でるサウンド、そして足元の「ピレリPゼロコルサ」も、このワンオフモデルのために開発されたもの。ホイールはマグネシウム製で、フロント20インチ、リヤ21インチのセンターロックタイプを装着している。

コクピットでは、「ロッソ アラーラ(赤)」のステッチをアクセントとした「ネロ・アデ(黒)」のアルカンターラ仕上げの内装と、カーボンファイバー製の軽量バケットシートが目を引く。そのほかの装備については不明だが、サーキット走行中にマシンデータをリアルタイムでモニタリングすることのできるテレメトリーシステムを装備しているようだ。

愛好家のために「スクアドラ・コルサ」ブランドのスペシャルモデルを作るビジネス

ワンオフモデルゆえに価格は未発表。しかし、この『SC18 アルストン』を見たランボルギーニのコレクターから同様のオーダーが寄せられることは十分に想像できる。

事実、ランボルギーニは今後、「スクアドラ・コルサ」ブランドによるパーソナルでスペシャルなモデルを、モータースポーツ愛好家のために製作するビジネスを展開する予定だという。世界中のセレブリティやコレクターにとって、またひとつ新しいクルマ趣味の扉が開いたわけだ。この先もこうしたワンオフモデルが発表されていくに違いない。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第37回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

最強オープン──アヴェンタドールSVJロードスター

『イオタ』の名は、ある世代の男たちにとって特別な響きをもつ。言わずとしれたランボルギーニの幻のスーパーカーである。この『イオタ』に由来する車名を与えられ、900台が昨年限定発売された『アヴェンタドールSVJ』は、“史上最強のアヴェンタドール”として大きな話題となり、瞬く間に完売となった。その興奮が収まらぬなか、さらなる魅力を加えた一台が登場した。オープントップモデルの『アヴェンタドールSVJロードスター』だ。至高のV12サウンドをオープンエアで愉しむ。こんな贅沢がほかにあるだろうか。

伝説の「J」再び。最速記録をもつ『アヴェンタドールSJV』のオープンバージョン

スーパーカー世代の男性は、「SVJ」という三文字に胸を踊らせるに違いない。1969年に先行開発の名目でたった一台だけが作られ、のちに事故で失われた伝説の実験車両「J」。その純正レプリカにつけられた名前だからだ。レプリカは『イオタ(Jota)』、あるいは『ミウラSVJ』と呼ばれている。「SVJ」は「スーパーヴェローチェ イオタ」の略だ。

ベースとなったのはランボルギーニ初のミッドシップスポーツカー『ミウラ』。生産台数については諸説あるが、6台、または8台ともいわれる。まさに幻のスーパーカー。だからこそ、『アヴェンタドール』シリーズの頂点に立つ存在として「SVJ」の名をもつモデルが登場したとき、ランボルギーニファンやスーパーカーファンが沸き立ったのである。

『アヴェンタドールSJV』が搭載するのは、最高出力770ps/8500rpm、最大トルク73.4kg-m/6750rpmを発生する6.5L V型12気筒エンジン。出力とトルクは、標準モデルよりもそれぞれ30hpと30Nm高められている。その圧倒的なパフォーマンスは、ニュルブルクリンク北コース“ノルドシュライフェ”での量産車最速タイム(当時)で証明済みだ。

従来の最速タイムは、昨年9月にポルシェ『911 GT2 RS』が記録した6分47秒3。『アヴェンタドールSJV』は、それを2秒以上も短縮する6分44秒97という驚異的なタイムを記録した。この最速クーペのオープンバージョンとなるのが、3月のジュネーブモーターショー2019でお披露目された『アヴェンタドールSJVロードスター』だ。

0-100km/h加速は驚異の2.9秒。ランボルギーニ史上“最速・最強”のロードスター

オープントップには『アヴェンタドールSロードスター』と同様の脱着式ルーフを採用した。ルーフは左右2分割式のカーボンファイバー製で、これを手動によって取り外す。クルマを降りなければならないが、オープン化の作業は非常に簡単で、ルーフも軽量。取り外したルーフはフロントのボンネット内にきれいに収納できるように設計されている。

電動で開閉するリヤウインドウを新たに採用したのもトピックだろう。ルーフを着けたクローズドの状態でも、ここを開ければV12サウンドをより愉しむことができるのだ。

脱着式ルーフにあわせてリヤのエンジンパネルの形状もフラットなものへと変更された。ただし、パネルにデザインされたランボルギーニファンにおなじみのY字は健在だ。そのほかのエクステリアはクーペを継承。大型エアインテーク、ワイドなサイドスカート、ヘキサゴン型スポイラー、リヤでは高い位置に設置された大型リアウィングが目を引く。

オープン化によって車重はクーペより50kgほど重くなっているが、それでも1575kg程度に収まっている。全長4943mm×全幅2098mm×全高1136mmものボディサイズをもち、12気筒エンジンを搭載するスーパーカーであることを考えると望外に軽量だ。それにより生み出されたパワーウエイトレシオはわずか2.05kg/hp。0-100km/h加速は驚異の2.9秒、0-200km/h加速は8.8秒でこなし、最高速度は350km/h超をマークする。

可変型エアロダイナミクスの搭載により、トップスピードを落とさず空力性能を強化

特筆すべきは「ALA2.0(アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ2.0)」と呼ばれるテクノロジーの装備だろう。『アヴェンタドールSJVロードスター』が搭載するのは、クーペと同じ最高出力770ps の V12エンジン。この強力なパワーユニットを軽量ボディに積めば、車体を制御できず、フロントから浮き上がって一回転しかねない。

そこで、トップスピードを落とすことなくダウンフォースを強化する、ランボルギーニの特許技術である「ALA」が必要となるのだ。「ALA」は、簡単にいうと能動的に空力の負荷を軽減してくれる可変型エアロダイナミクスのこと。速度ではなく、車両状態に連動するという特徴をもつ。フロントスプリッタとエンジンフードのアクティブフラップをモーター制御することにより、フロントとリヤの空気の流れをコントロールしてくれる。

この「ALA」と、搭載されたすべての電子装置をリアルタイムで管理し、加減速やローリング、ピッチング、ヨーイングといった車両の挙動を常に把握する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ」(LPI)が連動し、あらゆる走行条件下で最高の空力設定を整えてくれる。さらに、曲がる方向に応じて「ALA」の設定をスポイラーの左右いずれかに切り替え、どちらかに多く気流を発生させる「エアロ・ベクタリング」も備える。

駆動方式は四輪駆動で、フロントアクスルとリアアクスルとの間トルク配分は道路条件、グリップ、ドライビングモードに応じて、リアルタイムに変化する。また、後輪操舵システム「ランボルギーニ・リアホイール・ステアリング」や磁性流体プッシュロッド式のアクティブサスペンションを採用し、高次元のドライビングダイナミクスを実現した。

走行モードは、標準の「STRADA(ストラーダ)」、スポーティな走りの「SPORT(スポーツ)」、サーキット走行向けの「CORSA(コルサ)」、そしてこの3種類をベースに自分好みにカスタマイズすることができる「EGO(エゴ)」の4種類から選択可能だ。

『アヴェンタドールSVJロードスター』は800台限定生産。価格は6171万4586円

インテリアは航空機に着想を得たデザインとなっており、ドアやメータークラスター、コンソールなどにカーボンファイバーを採用。シートやダッシュボード上部、コンソールボックスにはレザーやアルカンターラを使用している。また、コクピットの随所にもY字デザインがあしらわれ、「SVJ ロードスター」のインテリアプレートも装備する。

限定生産台数はクーペよりも100台少ない800台。日本での価格は、クーペからおよそ600万円高となる6171万4586円(税込み)と発表されている。しかし、これはあくまでも参考価格だ。ランボルギーニは、顧客の要望に応じてボディカラーやインテリアに事実上無限の選択肢を用意しており、それらによって価格も大きく変動する。

ランボルギーニのフラッグシップモデル『アヴェンタドールSVJ』のずば抜けたパフォーマンスはそのままに、オープン化をはたした『アヴェンタドールSVJロードスター』。シリーズ最速・最強の称号をもつオープンモデルの上陸がいまから楽しみでならない。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Lamborghini Press Conference – ジュネーブモーターショー2019
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