富裕層を満足させるために培った技術が注ぎ込まれた極上の4シーターオープンカー
『コンチネンタルGT』は、現在のベントレー唯一の2ドアモデルだ。初代がデビューしたのは2002年。当時は2000万円を切る安価な価格(ベントレーとしては)だったことから、ブランドに新たなファンをもたらしたクルマでもある。コンバーチブルは歴代モデルのすべてに設定され、第三世代のデビュー時からオープン仕様が待たれていた。
昨年11月に発表された新型『コンチネンタルGTコンバーチブル』は、今年で創業100周年を迎えるベントレーが彼らの顧客である富裕層を満足させるため、その培ってきた技術を注ぎ込んだ極上の一台だ。自動車に求められる性能や愉しみのほぼすべてを備え、ラグジュアリーオープンらしく4シーターであることも特徴のひとつとなっている。
パワートレインは、最高出力635ps、最大トルク900Nm を発揮する6.0L W型12気筒ツインターボエンジン。8速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせ、駆動方式にはフルタイム4WDシステムを採用した。パフォーマンスは圧倒的で、0-100km/h加速3.8秒、最高速度333km/hと、ピュアスポーツカー顔負けである。
あえて伝統的なファブリック製のルーフにすることでエレガントな雰囲気を作り出す
エクステリアでは、英国らしさが際立つ素材を用いたソフトトップが印象的だ。ラグジュアリーカーにもかかわらず、RHT(リトラクタブルハードトップ)ではなく、あえて伝統的なファブリック製とすることで、じつにエレガントな雰囲気を作り出している。
ルーフのカラーは、英国の伝統的なツイード模様を現代的にアレンジした素材を含めて7色をラインナップ。そして、前輪を135mmも前に出すことで実現したロングノーズの伸びやかなボディにまとうカラーは70色に及ぶ。これらを組み合わせて“選ぶ愉しみ”は、新車でベントレーを購入するオーナーだけが味わうことのできる醍醐味である。
とりわけコンバーチブルの場合、オープン時に室内が外部に露出するために、内外装のコーディネートが非常に重要になる。内装もエクステリアの一部となるからだ。
ボタンを押すとウッドパネルが回転して12.3インチのタッチディスプレイが現れる!
インテリアで注目したいのは、ベントレーのエンブレムのように、センターコンソールを中心にして左右に伸びるウッドパネルに施された回転扉のような仕掛けである。
ベントレー・ローテーションディスプレイと名づけられたこのウッドパネルでは、スタートボタンを押してエンジンを始動させると、中央部が回転してベントレー史上最大となる12.3インチのタッチディスプレイが現れる。しかも、じつは3面式になっており、「コンパス」「外気温」「クロノメーター」の三つのアナログメーターを並べることも可能となっている。格調高い伝統的なスタイルのインテリアに、デジタルディスプレイは必ずしも似合わない。そこで、ボタンひとつで伝統から先進へと変わる仕掛けを施したのだろう。ベントレー・ローテーションディスプレイには、そんなブランドの考えが表れている。
その伝統のウッドパネルには、持続可能という観点で入手した希少なコア材やダークフィドルバックのユーカリ材など8種類が設定され、使用範囲は10 平方メートル以上にも及ぶ。ベントレーキルティングが施されるシートのレザーは15種類から選択でき、さらにカーペットは15種類、ルーフライニング(天井)も8色から選ぶことが可能だ。
センターコンソールには、パテック・フィリップやフランク・ミュラーといったスイスの高級機械式時計のムーブメントなどの仕上げに用いられる、「コート・ド・ジュネーブ」と呼ばれる繊細な装飾が熟練の職人の手によって施されている。
シートは20WAYの調整式で、マッサージ機能と冬場のオープン時にうれししいネックウォーマー(首元から温風を排出)を装備する。ステアリングだけでなく、アームレストにまでヒーターが入っていることも特筆すべきだろう。なお、オーディオは18スピーカー、出力2200W の「Naimオーディオシステム」など3種類が用意された。
新型『コンチネンタルGTコンバーチブル』の納車は夏以降。価格は2818万円から
ロングノーズとなだらかに下りていくルーフラインを持つ『コンチネンタルGT』は、ラグジュアリーではあるが、スポーティな印象も強い。それがファブリック製のルーフを持つコンバーチブルになると、ぐっとエレガントさが強まるから不思議なものである。
ボディカラーも自然とクーペとは違う雰囲気のものを選びたくなるが、このクルマにはホイール、ルーフカラー、インテリアカラー、ウッドパネル、カーペット、ルーフライニングと、一つひとつを吟味して自分だけの一台を作り上げる“選ぶ愉しみ”がある。そこから『コンチネンタルGTコンバーチブル』との暮らしが始まるといってもいい。
日本での価格は2818万円から。今年の夏以降に納車を開始すると発表されている。
Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Bentley Motors
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)