新型『イヴォーク』は、クーペスタイルを維持しながらよりモダンなスタイリングへ
初代の『レンジローバー イヴォーク』は、2010年にデビューした。SUVの王道ブランド「レンジローバー」が持つ本格的なオフロード性能やプレミアム感といったDNAを受け継ぎながら、よりスタイリッシュなデザインとタウンユースに向いたサイズにより、ラグジュアリーコンパクトSUVという新しい価値を生み出したクルマだ。
その評価は、77万2096台以上の世界販売台数と217以上の国際的な賞を獲得したことを示すだけで十分だろう。まさに、偉大なる第一世代だ。
第二世代となる新型『イヴォーク』も、その進化は止まらない。それは、独自のクーペスタイルを継承しながら、よりモダンになったデザインからも見てとれる。独特の傾斜したルーフラインとリアに向かって上昇するウエストラインは、『イヴォーク』であることを主張しつつも『レンジローバー』ファミリーの一員であることを感じさせる。
全体的には、ショルダーラインとパワフルなホイールアーチにより、コンパクトモデルながらSUVのボリューム感を上手く表現した。21インチホイールも相まって力強くダイナミックな印象だ。フロントフェイスでは、超薄型マトリックスLEDヘッドライトがシャープさを、リアではランプのグラフィックが英国ルーツらしい上品さを醸し出す。
ドライバーの好みや行動パターンを学習するAIアルゴリズムをブランドで初めて採用
インテリアはスッキリとした面とシンプルな線で構成されたミニマムな空間。しかし、ホイールベースを延長したことで、先代よりも余裕がある広さとなっている。ちなみに、全長は先代と同じ4371mmだ。ラゲッジスペースも拡大され、10%増の591L。40:20:40の分割可倒式リアシートを倒すと、総容量は1383Lとなる。折り畳んだベビーカーやゴルフセットの出し入れも簡単だ。
ラゲッジスペースは10%増の591L。40:20:40の分割可倒式リアシートを倒すと、総容量は1383Lとなる。折り畳んだベビーカーやゴルフセットの出し入れも簡単だ。
コックピットには、「Apple CarPlay」や「Android Auto」にも対応するデュアルタッチスクリーン・インフォテインメント・システム「Touch Pro Duo」を搭載。高速化した最新ソフトウエア搭載しており、操作性を向上させた。
また、人工知能(AI)アルゴリズムを駆使してドライバーの好みや行動パターンを学習し、運転をサポートしてくれる「スマート・セッティング」をランドローバーとして初採用したのも新しい。シートポジション、運転中に流す音楽、エアコンの温度設定、さらにはステアリングコラムの設定も学習して制御し、高い快適性を実現する。
最大のトピックは電動化を見据えた新型プラットフォームとマイルド・ハイブリッド
ボディの注目点はデザインだけでなく、骨格にも及ぶ。最大のトピックスは、新型プラットフォーム「PTA(プレミアム・トランスバース・アーキテクチャー)」の採用だ。今後導入される電動パワートレインを見据えて、横置きでのエンジン設置が可能になった。新型『イヴォーク』では、それに先駆けて、ランドローバー初となる「48V MHEV(マイルド・ハイブリッド・システム)」も投入。ドライバーがブレーキをかけて17km/h以下になるとエンジンが停止。発車時には蓄えられたエネルギーを再び利用する。渋滞の多い都市部でも静かで効率的な走行が可能で、燃費にも貢献する。
一部報道では、マイルド・ハイブリッドと組み合わされるパワーユニットは、2L直列4気筒ターボの「インジニウム」エンジンで、ガソリン、ディーゼルともに3種類ずつとも伝えられている。また、ランドローバーの電動化戦略では、今後約1年間にPHEV(プラグイン・ハイブリッド)モデルも追加される予定だ。
走行性能では、フラッグシップである『レンジローバー』で初採用された「テレイン・レスポンス2」を搭載。走行中の路面状況を自動的に検知し、状況に応じてサスペンション、トランスミッション、トラクションといった車両設定を最適化し、ドライバーの負担を軽減してくれる。あらゆる地形、あらゆる天候で優れた走破能力を発揮するランドローバーのDNAはしっかりと継承されたというわけだ。
テクノロジー面では、世界初のユニークな機能がある。「クリアサイト・グラウンドビュー」だ。車両前方下部に設置したカメラで路面を撮影し、その映像をタッチスクリーン上に投影。まるでボンネットがないかのようにフロント下 180度の視角を確保する。段差のある中央分離帯やオフロードなどの障害物が多い路面などで有効活用できそうだ。
また、ジャガー・ランドローバーグループ初となる「クリアサイト・リアビューミラー」も搭載。乗員が多かったり荷物を積んだりしてリアビューの視認性が悪い場合、ミラー下面にあるスイッチをフリックすると、リアに設置されたカメラが後部を撮影。映像をミラーに映し出してくれる。視野角も50度と広く、暗がりでの視認性も高いのが特徴だ。
新型『イヴォーク』は今年前半に欧米でデリバリーを開始。日本にはいつ上陸する?
新型『イヴォーク』では、プレミアムブランドからコラボモデルが発表された。ひとつはスイスのウォッチ・ブランド「ゼニス」で、200本限定で特別モデルを発売する。ニューヨークに本社を置くプレミアム・オーディオ・カンパニー「Master & Dynamic(マスター・アンド・ダイナミック)」 は、新型『イヴォーク』にインスパイアされた限定ワイヤレス・イヤフォンを発表した。オーナならば、併せて手に入れたい逸品だろう。
日本での受注、発売は発表されていないが、イギリス本国、ヨーロッパ、アメリカではすでに受注が始まり、2019年前半にはデリバリーが開始される。プレミアムコンパクトSUVを狙っているカーガイにとっては、待ち遠しい日々が続きそうだ。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Jaguar Land Rover Automotive PLC
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)