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第62回 | 大人ライダー向けのバイク

英国発、MUTT-mc──このカスタムバイクは時空を超えた

バーミンガムは、かつてBSAやトライアンフが製造されていたイングランド中部の工業都市だ。この地を拠点とするのが、ハイエンドカスタムバイクの受注生産でつとに知られるMUTT Motorcycles(マット・モーターサイクルズ)である。略称はMUTT-mc。このカスタムブランドから、レトロなトラッカースタイルの10モデルが日本へ正規輸入されることとなった。しかも、10モデルのすべてが日本人に馴染みやすいサイズの125ccと250cc。ファッショナブルで入手しやすい選択肢が増えることを大いに歓迎したい。

上陸するのは125ccと250cc。ヨーロッパで人気のレトロモダンなトラッカースタイル

MUTT-mcが日本に輸出するのは、125ccが6モデル、250ccが4モデルの合計10モデル。いずれもヨーロッパでトレンドとなっているトラッカースタイルをもち、ダークなカラーリングとシンプルなパーツ構成が特徴のモデルばかりだ。1970年代のバイクを彷彿とさせる雰囲気だが、1960年代の英国車を想起させるところもあり、普段使いできる手軽な車格と相まって、レトロモダンとしてヨーロッパで人気を得ている。

正規代理店として日本での販売やメンテナンスを手がけるのは、二輪ではノートンやモリーニ、四輪ならフォードなどを販売するPCI(ピーシーアイ)だ。ピーシーアイは、自動車ディーラーを世界展開している上場企業「VTホールディングス」の100%出資によって2004年に設立された輸入販売業者で、提携ブランドを積極的に拡大している。

とはいえ、ピーシーアイが扱うブランドを見ると、必ずしも拙速な利益を優先しているようには思えない。バイクにせよクルマにせよ、一般受けするというより、どちらかといえば愛好家や趣味人が喜びそうなブランドばかりが並んでいる。大げさに言えば、そこにはモータリゼーションを支えようという気概を感じることもできるのだ。

その筋で有名な“チョッパーおたく”が製作した普段着のように使えるカスタムバイク

MUTT-mcのモデルが支持されている理由は、スタイルや機能性ばかりではなく、ビルダーとしてのバックボーンにもあるようだ。ブランドの代表者は、先駆的で非常に高価なカスタムハーレーを30年にわたって製作し、世界的にその名が知られているBenny Thomas(ベニー・トーマス)。ブランドの前身はBoneshaker Choppers(ボーンシェーカー・チョッパーズ)。そう聞けば、ハーレーフリークは大いに驚くのではないだろうか。

トーマスは自他ともに認める“チョッパーおたく”である。チョッパーは「ぶった切る」という意味で、ノーマルパーツをぶった切って作るオートバイのスタイルのこと。トーマスはこの分野のパイオニアであるアレン・ネスやジェフ・マッキャンに憧れ、“デンバー・スタイル”を生んだデンバー・マリンズを超えたいと願っていた。その一方、人々に広く愛されるバイクを作り、自分自身もそんなオートバイがほしいとも考えていたという。

彼はこう語っている。「私は長い間、ハイエンドなヴィンテージのカスタムバイクばかりを作ってきた。だが、MUTT-mcでは多くの人にとって身近なものを作りたかった。普段着のように使えて、安いだけでなく信頼性の高いモーターサイクルを作るべきだ」と。

そうして製作したのが125ccの小型車だ。搭載される単気筒エンジンはスズキ『GN125』から派生した中国製(スズキは中国の複数の工場と提携している)。このエンジンはシンプルで耐久性が高く、デザイン的にも優れていたことからトーマスの目にとまった。

その後、250ccモデルの生産を始めるのだが、こちらのエンジンもスズキ『DRシリーズ』や同じくスズキのデュアルパーパスモデル『グラストラッカー』でお馴染みである。それらのエンジンを元にトーマス自身が仕様を決め、ふさわしい味付けを施している。

販売開始は今年春。価格は125ccモデルが約50万円、250ccモデルが約60万円?

はたして生み出されたバイクたちは、じつにスタイリッシュだ。そのありようは時間を超えた個性を放ち、むしろ乗り手にセンスが要求されるむずかしさがあるかもしれない。

シティ(ロンドン市街)にこそ似合うのかもしれないが、この一台によってその場の雰囲気を変えてしまうほどの力もありそうだ。価格は125ccが50万円前後、250ccが60万円前後と考えられている。発売は2019年春を予定しているという。

冒頭に記したように、トーマス率いるMUTT-mcは拠点をバーミンガムに置いている。ここはロンドンとリヴァプールの中間地点に有る工業都市で、かつて世界一のバイクメーカーだったBSAの本社があった場所としても有名だ。現在も多くの自動車・バイク関連の工場が並び、ナショナル・モーターサイクル・ミュージアムもある。

ベニー・トーマスは自分が英国人であること、そしてMUTT-mcが英国産であると主張するためにも、バーミンガムで作り出していかなければならないと考えている。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) MUTT MOTORCYCLES
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
MUTT Motorcycles オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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