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第38回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

アウディe-tron GT concept──怪物GTは市販されるのか

「電動化攻勢」。これは、これからのアウディが示した今後の進むべき方向性だ。簡単に言えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車を増やしていくということ。具体的には、全世界の主要な市場において、2025年までに12の電気自動車を発売し、電動化モデルの販売台数を全体の約3分の1にすることを目指すという。その第一弾が2018年9月に生産が開始された『e-tron SUV』、第二弾が2019年に登場予定の『e-tron Sportback』。そして、第三弾がLAオートショーで華々しくデビューした『e-tron GT コンセプト』だ。

低い重心のグランツーリスモ。エクステリアに見て取れる次世代のアウディデザイン

『e-tron GTコンセプト』は、4ドアクーペのEV(電動自動車)である。全長4960mm×全幅1960mm×全高1380mmm。フラットでワイドなボディ、そして長いホイールベースといった特徴を備えた、典型的なグランツーリスモデザイン。EVにはめずしいフラットなフロアや低い重心も相まって、全体から受ける印象はアグレッシブでスポーティーだ。加えて、ホイールアーチとショルダー部分には立体的な造形が施され、ダイナミックなポテンシャルを強調している。

もちろん、アウディらしさはしっかりと踏襲。グリルの上部には、『RS』モデルのグリルに採用されたハニカムパターンを想起させるカバーをボディカラーに併せた塗装を施して装着。リヤエンドまで流れるような弧を描くルーフラインは、まごうことなきアウディのデザイン言語だ。

ただし、このアウディのデザイン言語を、次世代へと進化させたと感じさせる部分もある。ひとつは、リヤに向かってキャビンが大きく絞り込まれた意匠だ。そして、アウディデザインを象徴するシングルフレームグリルだ。これまでに発表された『e-tron』シリーズのシングルフレームグリルと比べると、そのアーキテクチャーは、より水平基調で躍動感を漂わせている。

フロントマスクは、矢印形状のマトリクスLEDヘッドライトが印象的だ。ライトにはアニメーション機能が組み込まれ、水平方向に広がる波をイメージした短い点滅がドライバーを出迎える。これは、将来的には市販モデルに搭載される予定だという。

リヤスタイルでは、車幅全体を横切って延びるライトストリップが目につく。外側に向かうにつれてリヤライトユニットへと融合されるこの意匠は、『e-tron』シリーズ共通のもの。視覚的にアウディのEVであることを認識させる。

動物由来の素材を排除。植物由来にこだわったサスティナビリティ重視のインテリア

インテリアは、エクステリアの近未来的でスポーティーな雰囲気と打って変わり、上質さが印象的。そして、日常の使い勝手にも配慮がなされている。

車内水平基調のインテリアが強調された、広々として落ち着いた空間だ。コックピットを中心として、センターコンソール、トップセクションの大型タッチスクリーン、ドアレールとコックピットのラインがドライバーを取り囲むように設置されている。各種機能やインフォテインメントをはじめとする操作系は、人間工学的に最適化された。

インストルメントパネル中央のディスプレイとセンターコンソール上部のタッチスクリーンは、ブラックパネル調仕上げ。一見すると宙に浮いているような印象だ。バーチャルアナログ表示にしたり、航続距離とともにナビゲーションのマップを拡大したり、インフォテインメント機能のメニューを表示させたり、さまざまなレイアウトに変化させることが可能だ。

次世代を感じさせる試みは、目に見える部分だけではない。サスピナビリティ(持続可能性)を重視し、インテリアからは動物由来の素材をいっさい排除。シート地やトリム地には、合成皮革を使用するなど、すべて植物由来を貫いている。

フラッグシップスポーツの『R8』を凌駕する最高出力により暴力的な加速性能を実現

気になる走行性能だが、前後のアスクルに設置されたモーターの最高出力は434kW(590hp)。アウディのフラッグシップスポーツ『R8』が397kW(540hp)なので、どれほどのモンスターマシンかは想像に難くないだろう。数値で表すと、0〜100km/hの加速は約3.5秒、200km/hにはわずか12秒で到達する。ただし、最高速度は航続距離を最大化するために240km/hに制限されているという。

もちろんアウディ伝統の4輪駆動システム「quattro」も健在だ。モーターが発生したトルクは、4つのホイールを介して路面へと伝達。前後のアクスル間だけでなく、左右のホイール間の駆動力も調整する電子制御システムによって、最適なトラクションが得られる。

気になる走行可能距離は、容量90kWh以上のリチウムイオンバッテリーと最大30%以航続距離伸ばすことができる回生システムを採用することで、400kmオーバー(WLTPモード)を達成した。また、充電時間は800Vの充電システムに対応することで、最速20分でバッテリーを80%まで充電可能だ。80%の充電でも320km以上を走行できるという。

夏には映画『アベンジャーズ4』に登場。どこまで市販モデルに性能が継承されるか

『e-tron GT concept』のテクノロジーは、同じフォルクスワーゲン・グループに属するポルシェと密接に協力して開発されている。ポルシェは、開発を進めていた『ミッションE』をブランド初となるEVスポーツカーの『タイカン』として、2019年後半〜2020年に発売する予定だが、『e-tron GT concept』と同じプラットフォームを採用し、出力も『e-tron GT concept』を上回るといわれている。

『e-tron GT concept』はいわゆるショーモデル。今年夏公開予定の映画『アベンジャーズ4』に登場するとアナウンスされているが、このままの状態で市販化はされない。

現在はアウディスポーツによって量産化への移行作業が行われており、量産モデルは2020年後半に登場する予定とされている。デリバリー開始は2021年初頭。このポテンシャルがどこまで市販モデルに引き継がれるか、興味深いところだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Audi e-tron GT concept オフィシャル動画
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第37回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

アウディR8──サーキットに生まれ、公道で作り込まれた

『R8』は、アウディが培ったモータースポーツのDNAを受け継ぐロードゴーイングカー。限りなく走りの純度を高めたフラッグシップスポーツだ。現行型は2016年にデビューした第二世代だが、今回、改良新型となるマイナーチェンジモデルが発表された。

さらながらレーシングマシン。新型『R8』のエクステリアはより攻撃的なデザインに

マイナーチェンジなので、基本的にはキープコンセプトだが、エクステリアから受ける印象はよりアグレッシブになった。特にフロントフェイスはエッジが立ったデザインだ。

シングルフレームグリルはやや立て幅が薄型化したように見え、フラットでワイドに進化している。また、グリル上部にも新たな意匠が追加されており、新デザインのフロントリップスポイラーやディフューザーも装備された。エンジンコンパートメントは、プラスティックとカーボンファイバーから選ぶことができる。

リアはさらに変化が大きい。テールライト下のエアアウトレットは横方向全体に広がって大型化。マフラーも現行型の中央から左右へと振り分けられた。

ボディフレームは、アルミとCFRP(炭素繊維複合材)を組み合わせた「アウディ スペース フレーム(ASF)」を引き続き採用する。すでに十分軽量だが、新型はフロントスタビライザーにもアルミとCFRPを使用し、さらに重量を約2kg削減している。

スーパースポーツにとって、重さは原罪。グラム単位での軽量化はもっと生まれた運命のようなものだ。馬力や総重量といった数値は発表されていないが、パワーウエイトレシオも向上しているだろう。

トップグレードは最高出力620馬力を発揮。クーペの最高速は330km/hに到達する

心臓部は、自然吸気の5.2L V型10気筒ミドシップエンジン。レーシングカーである『R8 LMS GT3/GT4』とほぼ同じ駆動技術が採用されているという。

ベースグレードの『R8 V10クワトロ』は、最高出力が540hpから570hpへと30hpアップし、最大トルクは55.1kgmから56.1kgmへと向上した。0ー100km/hの加速は、クーペが3.4秒、スパイダーは3.5秒。最高速は、クーペが324km/h、スパイダーは322km/hに到達するとされている。

さらに、トップグレードの「R8 V10パフォーマンス クワトロ」は、最高出力が620hp、最大トルクは59.1kgm。0〜100km/hの加速はクーペが3.1秒、スパイダーが3.2秒。最高速は、クーペが330km/h、スパイダーが329km/hに達するという。ただし、スペックについては公式リリースに記載がなく、これらはいずれも報道によるものだ。

足回りもサスペンションを進化させ、安定性と精度が増した。また、ステアリングは電動パワーステアリングとオプションの「ダイナミックステアリング」によって応答性が向上し、全速度域で道路からのフィードバックが正確に伝わるように改良されている。

乗り味を調整できる「アウディドライブセレクト」は、新型でも健在だ。これまでは、「オート」「コンフォート」「ダイナミック」「インディビジュアル」の4つだったが、そこへ「ドライ」「ウェット」「スノー」が加わることになった。

主要なパラメータを道路の摩擦係数に適合させることで、制動性能も高まっている。強化されたESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)も相まって、100km/hからでもわずか1.5mで停止可能。200km/hでも5mで停止できるという。

新型『R8』は半分以上のパーツがレーシングカー由来。日本導入台数は何台になる?

今回の発表は「Born on the track, built for the road.」という言葉から始まった。意訳すると、「サーキットに生まれ、公道で作り込まれた」といったところだろう。その言葉どおり、新型『R8』はレーシングカーである『R8 LMS GT3』と約50%、『R8 LMS GT4』と60%の共通パーツを使用している。

欧州では2019年初頭から販売が開始されるとのこと。前回は日本市場向け販売台数が限定100台とアナウンスされたが、新型ではどうなるのかも気になるところだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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